2017(04)

■白く白々しい

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 テレビでは連日どこかの地域の大雪のニュースを伝え、それを雪のあまり降らない向島でどこか他人事のように聞いている今日この頃。いくら向島大学が山だと言われていても、5センチ積もれば大事件。今年はそんな風に降った覚えもない。
 今日はヒロと高崎先輩から教わったダブルトークについての事柄を復習するためにサークル室まで出て来ていた。少し休憩しようとスマホでニュースを見ていたのだ。相変わらず大雪の影響が続いているところでは続いているらしい。

「何か、何十年ぶりの大雪とか言われても実感ないよな」
「せやね、ボクら生まれとらんし。そもそも向島とか白影のこととちゃうしね」
「いや、お前ボランティアとか行ってみたいって言ってるんだったらどこの話だろうが別に」
「遠くやからどうでもええっていうこととちゃうよ。生まれる前のことって地元の話なら繰り返し聞くから何となく知っとるけど、遠いからよー知らんっていう話やよ。地震とか台風なら聞くけど雪の話なんか聞かんやん」
「ああ、そういうことか」
「ホンマノサカ人の揚げ足取りばっかやわ。しやけど、雪多いってことはスキー場にはええんちゃうの」
「それはそうかもしれないな。俺たちが行くまで雪が残ってますように」

 お願いしまーすと柏手を打つ。今度、インターフェイスの2年生でスキー場に遊びに行くことになっているのだ。ただ、ほぼ全員雪に馴染みはないし、ウィンタースポーツにしても初心者。俺も道具を持ち合わせていないから、現地でレンタルする。
 大雪が降って恩恵を受ける人たちもいるであろうことを考えると、自然を相手にするということがいかに難しいかとまざまざと思い知らされる。実際、スキー場に行く道中で大雪で立ち往生、なんてことになろうものなら死にかねない。

「これから向島に雪が降るとしても、もーええわ。授業が休講にならん雨雪に用はないんやよ」
「お前さすが過ぎるな。そこまで突っ切ってくれるとわかりやすくていい」
「しやけど、晴れたら晴れたで花粉飛ぶやろ、よーアカンわ」
「お前って花粉症だったのか。いや、常にぐずぐずだから慢性鼻炎なんだと思ってたけど」
「慢性鼻炎やよ。でもって花粉症なんやよ」
「ヒロ乙」
「何やの、自分花粉症とちゃうからって」
「いや、俺も春はキツい。眠くなるし」
「ノサカのそれは年中やん」

 寒いのも嫌、あったかいのも難があるとワガママ放題の俺とヒロだ。結局、風邪にさえ気を付けていれば秋頃が一番過ごしやすいのかもしれない。何より、食べ物がおいしいというのも大きいじゃないか。

「それはそうと、4年生追いコンの件で菜月先輩と連絡を取り合ってたんだよ」
「へー、そうなんや。そーいや係やったね」
「それで、菜月先輩のご実家のお写真が送られて来てて。見るか?」
「見る」

 緑風の実家に戻られている菜月先輩から送られてきたメールに添付されていた写真は、一言で言えば白かった。「積雪がそろそろ100センチを超えそうです」という文面と、真っ白になったお庭の様子。
 庭に植えられている木や小さな倉庫がひょっこりと頭を出しているけれど、それくらい雪で埋もれてしまっているということなのだろう。ただ、それでも緑風はまだ「災害」というクラスには達していないそうだ。

「で、これがどーかしたん」
「それで、今日ここに来る前に菜月先輩にメールを送ったんだよ。果たして菜月先輩は緑風から脱出できるのかと思って」
「元々雪に強い地域やし、ちょっと落ち着いたら平気ちゃう?」
「ただ、それから返信が来ないのが不気味でしょうがないなと思って」

 そして漂うしばしの沈黙。結局、元々雪に強い地域の人だからちょっと落ち着いたら何とかしてくださる、あるいは、無理そうでも連絡はいただけるだろうという結論に落ち着いた。菜月先輩だもんな、当然だぜ!

「MMPって菜月先輩以外全員無能かポンコツ、もしくはクズなんだとつくづく思う」
「あれっ、ノサカいつもならそこに圭斗先輩含めたら怒るんに」
「いや……実は夏合宿のときから薄々察してたんだ。圭斗先輩のカリスマや政治力は確かにすごい。だけど一般市民としての圭斗先輩は素晴らしくイケメンで神々しいというだけのお方じゃないか」
「今のひとつも貶してなかったような気ぃするわ」
「俺に圭斗先輩が貶せるワケがないじゃないか、意味がわからない」


end.


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真面目なノサヒロをやり始めて数ヶ月。未だ覚醒状態のヒロには慣れないし、ワガママ放題させたい気持ちはすごくある
さて、今回は少しタイムリーに大雪の話題。学校や仕事のない菜月さんは実家できっと雪かきに追われていたことでしょう
そしてとうとうノサカが圭斗さんをもクズ集団の中に含めてしまったぞ……さすがのノサカでも薄々感付いてはいたんだね!!

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