2025
■中の人の地が隠し切れない
++++
「おはよぉございまぁす」
あんまり聞いたことが無い声の挨拶、強いて言えばサドニナ先輩に近い雰囲気があるなと思って誰が来たのかを確かめたら、ピンクのチェック柄のジャンパースカートを着て、頭にも同じ柄のリボンを付けた夢子。今までの黒ずくめとは何から何まで全然違ってて、メイクとかも違うし、何が一番の変化って、素肌を出してること。
「えっと、夢子、だよね?」
「愛紗(あーしゃ)だよぉ」
「えっと、イメチェン?」
「転生ですよぉまつり先輩っ」
「きっしょ!」
この間、夢子がインターフェイスの飲み会で問題を起こした。占い師への一方的な恨みで、占い師見習いだっていう緑ヶ丘の中に頭から氷水をぶっかけるという事件だったんだけど、エマによる事情聴取の内容を聞けば聞くほどアタシは擁護できないなって思っちゃった。
アイドルになりたくて芸能事務所のオーディションを受けて落ちて、一緒にオーディションを受けようって誘って連れて行った友達はもうアイドルとしててデビューしてて。その子を見る度悲しくなるっていうのはわかんないでもないけど、占いに縋ってダメで、結果占い師全員を恨むのはちょっとわかんない。しかもその占いって雑誌に載ってるヤツで、お金払って個別に見てもらうヤツでもないっていう。
その事件の結果、インターフェイスの行事にこれからも出て来るなら一緒の班になるのはちょっと……という同班拒否も何人かから出されてしまった。緑ヶ丘の子とは多分もう関われなさそう。でも本人はABCでの活動もインターフェイスでの活動も続けるって言っている。一応、今後ああいうことを起こせば即アウトだからねと警告はした。
「きしょいなんてひどい~」
「ゴメンうっかり本音が出ちゃった。あっでも体育会系とぶりっ子ってあんま相性良くなさそうじゃない? 他の子ならかわいいって言ってくれるかもよ」
曰く転生。今までが黒ずくめでベールを被っていたことを思うと、腕とか脚とか、肌の露出がすっごいしその肌が真っ白い。多分今までめっちゃ守ってたからだ。メイクの仕方も全然別人みたいに変わってるし、声のトーンまで違う。今までも、多分今もそれなりに作ってて、どっちも地声じゃないなさては。
「おはよー」
「ねえみわ大変、夢子が本人曰く転生した」
「ん~? うん、いいんじゃない」
「興味ないタイプの「いいんじゃない」じゃないですかぁ~ひどい~」
「煤闇の人狼はやめたの?」
「何ですかそれ~」
「確か"宵闇の巫女"じゃなかったっけ?」
「だから最初からホワイトロリータ夢子にしておけば良かったのに。でも今の色味は違うか」
「ちなみに、名前も変わったらしいよ。何だっけ」
「愛に、糸に少ないの紗で、あーしゃだよぉ」
「ちとせならかわいいって言ってくれるんじゃない」
みわには刺さらなかったか。まあ、みわだし刺さる物の方が少なそうではある。アタシたちの学年だと確かにちとせが最後の砦っぽくはあるんだよなあ。エマは多分無知ボケをかまして悪気なく殴るだろうし。
「それはそうと、その路線変更をしたことによってある意味吹っ切れてるじゃん」
「吹っ切るも何もないですけどぉ~」
「またアイドルのオーディション受け始めるみたいなこと?」
「アイドルを始めるにはもうババアなんでぇ~、SNSで世界取りに行こうかなってぇ」
「ふーん、頑張って」
「まつりアルフォート食べる?」
「あっ食べる」
「ねえひどい~! 愛紗を無視しないで~!」
「何か、ここまで真逆にキャラ転換したからには多少雑に扱ってもいいかなって」
「前からしゃあしゃあとはしてたよ。ガワが違うだけ」
インフルエンサーみたいなことを目指すってことでいいのかな? アイドルにしてもインフルエンサーにしても、表舞台で活躍する人になりたいっていうのが野望みたいだ。じゃあ今までは何だったんだって感じもするけど、あれもあれでアタシたちの周りからは浮いてたし、キャラ作りの一環だったのかな?
しかし誰も来ない。同期たちなら多少のフォローもしてくれるかもだろうし、ちとせなら多分ある程度褒めてくれそうだ。だけど待てど暮らせど来ない。この間に、アタシたちに雑に扱われて、それに対してひどい~とブリブリするパターンが完成しつつある。インフルエンサーとは。実はこのサークル誰もそういうのに興味ないよね?
「さっそく愛紗がバズるための企画をみんなで考えたくてぇ~」
「スベったらアタシたちの所為にされるヤツじゃん! アタシは関わらないよ!」
「世の不条理を呪いながら、水をひっくり返すショート動画。ジャンルはスカッと系で、オチのところで水をバシャッと」
「芸人として活動するの?」
「似たようなものじゃないの」
「ちがう~! そういうのじゃなくて~かわいいの~!」
「じゃあ適当な曲に合わせてダンスでもしとけばいいんじゃないの」
「そういうのでもなくて~、もっと新しいので~」
「あ、やっぱ関わりたくないわこの企画会議」
「ホワイトロリータ夢子と五寸釘愛紗の掛け合いとか。スマホあるしいくらでも合成できそう」
それを聞きながらプルプル震えてる夢子の様子を見る感じ、夢子だろうと愛紗だろうとみわが天敵なのには変わりないんだろうなあ。アタシは早々にギブアップしたけど、まだ相手してるだけみわは優しい。夢子で遊んでるだけのような気がしなくもないけど、悪意がないからこそのみわだしなあ。
「ひどい~! みわ先輩は春からずっといじわる~!」
「愛紗名義では初対面の体じゃないの」
「そーゆートコ~!」
「キャラ名義で世界取りたいって言ってるのに設定と物語がブレてる。それならまだ2つのキャラを操る中の人の方が勝負できそう。知らないけど」
end.
++++
夢子が愛紗に転生したらしい。インターフェイスの反応が気になるところ。
青女にも何年かに1人はヤベーのが湧いてて欲しいし、それでいて活動は継続して欲しい。
(phase3)
.
++++
「おはよぉございまぁす」
あんまり聞いたことが無い声の挨拶、強いて言えばサドニナ先輩に近い雰囲気があるなと思って誰が来たのかを確かめたら、ピンクのチェック柄のジャンパースカートを着て、頭にも同じ柄のリボンを付けた夢子。今までの黒ずくめとは何から何まで全然違ってて、メイクとかも違うし、何が一番の変化って、素肌を出してること。
「えっと、夢子、だよね?」
「愛紗(あーしゃ)だよぉ」
「えっと、イメチェン?」
「転生ですよぉまつり先輩っ」
「きっしょ!」
この間、夢子がインターフェイスの飲み会で問題を起こした。占い師への一方的な恨みで、占い師見習いだっていう緑ヶ丘の中に頭から氷水をぶっかけるという事件だったんだけど、エマによる事情聴取の内容を聞けば聞くほどアタシは擁護できないなって思っちゃった。
アイドルになりたくて芸能事務所のオーディションを受けて落ちて、一緒にオーディションを受けようって誘って連れて行った友達はもうアイドルとしててデビューしてて。その子を見る度悲しくなるっていうのはわかんないでもないけど、占いに縋ってダメで、結果占い師全員を恨むのはちょっとわかんない。しかもその占いって雑誌に載ってるヤツで、お金払って個別に見てもらうヤツでもないっていう。
その事件の結果、インターフェイスの行事にこれからも出て来るなら一緒の班になるのはちょっと……という同班拒否も何人かから出されてしまった。緑ヶ丘の子とは多分もう関われなさそう。でも本人はABCでの活動もインターフェイスでの活動も続けるって言っている。一応、今後ああいうことを起こせば即アウトだからねと警告はした。
「きしょいなんてひどい~」
「ゴメンうっかり本音が出ちゃった。あっでも体育会系とぶりっ子ってあんま相性良くなさそうじゃない? 他の子ならかわいいって言ってくれるかもよ」
曰く転生。今までが黒ずくめでベールを被っていたことを思うと、腕とか脚とか、肌の露出がすっごいしその肌が真っ白い。多分今までめっちゃ守ってたからだ。メイクの仕方も全然別人みたいに変わってるし、声のトーンまで違う。今までも、多分今もそれなりに作ってて、どっちも地声じゃないなさては。
「おはよー」
「ねえみわ大変、夢子が本人曰く転生した」
「ん~? うん、いいんじゃない」
「興味ないタイプの「いいんじゃない」じゃないですかぁ~ひどい~」
「煤闇の人狼はやめたの?」
「何ですかそれ~」
「確か"宵闇の巫女"じゃなかったっけ?」
「だから最初からホワイトロリータ夢子にしておけば良かったのに。でも今の色味は違うか」
「ちなみに、名前も変わったらしいよ。何だっけ」
「愛に、糸に少ないの紗で、あーしゃだよぉ」
「ちとせならかわいいって言ってくれるんじゃない」
みわには刺さらなかったか。まあ、みわだし刺さる物の方が少なそうではある。アタシたちの学年だと確かにちとせが最後の砦っぽくはあるんだよなあ。エマは多分無知ボケをかまして悪気なく殴るだろうし。
「それはそうと、その路線変更をしたことによってある意味吹っ切れてるじゃん」
「吹っ切るも何もないですけどぉ~」
「またアイドルのオーディション受け始めるみたいなこと?」
「アイドルを始めるにはもうババアなんでぇ~、SNSで世界取りに行こうかなってぇ」
「ふーん、頑張って」
「まつりアルフォート食べる?」
「あっ食べる」
「ねえひどい~! 愛紗を無視しないで~!」
「何か、ここまで真逆にキャラ転換したからには多少雑に扱ってもいいかなって」
「前からしゃあしゃあとはしてたよ。ガワが違うだけ」
インフルエンサーみたいなことを目指すってことでいいのかな? アイドルにしてもインフルエンサーにしても、表舞台で活躍する人になりたいっていうのが野望みたいだ。じゃあ今までは何だったんだって感じもするけど、あれもあれでアタシたちの周りからは浮いてたし、キャラ作りの一環だったのかな?
しかし誰も来ない。同期たちなら多少のフォローもしてくれるかもだろうし、ちとせなら多分ある程度褒めてくれそうだ。だけど待てど暮らせど来ない。この間に、アタシたちに雑に扱われて、それに対してひどい~とブリブリするパターンが完成しつつある。インフルエンサーとは。実はこのサークル誰もそういうのに興味ないよね?
「さっそく愛紗がバズるための企画をみんなで考えたくてぇ~」
「スベったらアタシたちの所為にされるヤツじゃん! アタシは関わらないよ!」
「世の不条理を呪いながら、水をひっくり返すショート動画。ジャンルはスカッと系で、オチのところで水をバシャッと」
「芸人として活動するの?」
「似たようなものじゃないの」
「ちがう~! そういうのじゃなくて~かわいいの~!」
「じゃあ適当な曲に合わせてダンスでもしとけばいいんじゃないの」
「そういうのでもなくて~、もっと新しいので~」
「あ、やっぱ関わりたくないわこの企画会議」
「ホワイトロリータ夢子と五寸釘愛紗の掛け合いとか。スマホあるしいくらでも合成できそう」
それを聞きながらプルプル震えてる夢子の様子を見る感じ、夢子だろうと愛紗だろうとみわが天敵なのには変わりないんだろうなあ。アタシは早々にギブアップしたけど、まだ相手してるだけみわは優しい。夢子で遊んでるだけのような気がしなくもないけど、悪意がないからこそのみわだしなあ。
「ひどい~! みわ先輩は春からずっといじわる~!」
「愛紗名義では初対面の体じゃないの」
「そーゆートコ~!」
「キャラ名義で世界取りたいって言ってるのに設定と物語がブレてる。それならまだ2つのキャラを操る中の人の方が勝負できそう。知らないけど」
end.
++++
夢子が愛紗に転生したらしい。インターフェイスの反応が気になるところ。
青女にも何年かに1人はヤベーのが湧いてて欲しいし、それでいて活動は継続して欲しい。
(phase3)
.