2025

■Celebrate a Birthday!

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「奈々さんどーもお待たせしました」
「そんなに待ってないよ。それより昼放送お疲れさまッ」

 時間があれば3限の時間にランチにしながら少し話でも、と松兄に誘われたので、授業もないし大丈夫だよと返事をして現在に至ってる。理系の人ってガッチガチに授業詰まってそうな印象なのに大丈夫なのかなって思ったけど、何か今日は休講になったみたい。たまにあるよね、そーゆーコト。
 さっきまで昼放送が流れていた食堂に、今度は利用者として正面から入って、食券を買って、トレーを取ってレーンに並ぶ。うちはラーメンの気分だったから醤油ラーメンを、松兄はチキン南蛮の定食を頼んだ。松兄は定食に付け合わせのサラダだけじゃちょっと足りないと言って別にサラダを頼んでたから、食事には気を遣ってるんだなあって思った。

「いただきまーすッ」
「アンタがそーやってラーメンを前にウッキウキなの、カワイイっすね」
「また調子のいいこと言って。何か頼みたいことでもあるの?」
「まあ、頼みたいことと言えば頼みたいことかもしんないっすね。別に無理にとは言わないんすけど。でも、今の件はそれとは全く関係のない俺の本意なので」
「それで、本題って?」
「食いながらでいいんで聞いて下さい。アンタ、今度の月曜日ってサークルの後に何か予定あります?」
「ないけど、どーかした?」
「今度の火曜日、来月の2日っすね。そこがかっすーの誕生日なんで、まあ、せっかくハタチになりますし、ちょっと荒っぽく祝ってやろうかと。サークルメンバー揃えてメシでも行こうかなと思ってるんすよ」
「えーッ! いいねいいねッ! って言うかカノンってもうすぐ誕生日なんだッ!?」
「そーなんすよ。たなべでハタチの挑戦っつー体で満腹に挑まそうかと」
「あっ、たなべに行くのは確定なんだね」
「この人数が入れる店の規模だったらあそこが安牌かなと」
「雰囲気もちょうど合ってると思うよッ」

 今までのMMPでは誰かの誕生日だからといって特に何かするようなサークルじゃなかったけど、こーゆーところが新しい風を感じるよね。強いて言えば三井先輩が個人で誰かの誕生日になるとプレゼントを持ってきてたように思うけど、みんなあんまり歓迎してないような感じだったし。こーた先輩なんか激辛ドッキリをされてブチ切れてたような記憶がある。
 サークルメンバーみんなでご飯に行くとなると、11人の大所帯が一気に動くことになる。どこの店なら入れるのかとか、予約を入れなきゃとか、松兄がカノンに内緒でいろいろ考えてくれてるみたい。提案のあったたなべだったら11人が入っても普通のお客さんが入れなくなることもないし、店の雰囲気も賑やかな感じでカノンの誕生日には合ってる気がするよね。

「この話って他のみんなにはもうしてあるの?」
「もちろん。あとは奈々さんの予定を押さえるだけっす」
「さすがの根回しだね」
「ちなみにすがやんも招集掛けてるんで12人の会になる予定っす。まあ、6人席を2つ押さえとけば11人でも12人でも一緒だろっていう」
「えーッ! すがやんにも声かけたのッ!?」
「ある意味で唯一の同期みたいなトコはあるじゃないすか。一応2年は4人いますけど、他3人が後発組で、1年の時から一緒にやってきたのはすがやんですし。アイツの言葉を借りれば"半分MMP"なんで? 一応声かけとくくらいはしとかないとなーと」
「それですがやんは何て? 確か活動曜日は緑ヶ丘も一緒だったはずだし大丈夫そう?」
「全然大丈夫だって言ってたっすよ」
「よかったーッ、楽しみだねッ!」

 何かこっちの都合で簡単にすがやんを呼び過ぎてるような気がしないでもないけど、緑ヶ丘さん的にもすがやんはたまにこっちに来るくらいの方がイキイキするからって理由で快く送り出してくれてるみたい。ウチの1年生たちもすがやんを他校の先輩のようには扱ってないし、馴染み方がすンごいよね。さすが、ウチの先輩たちの陰の力に負けなかった陽のパワー。

「じゃ、そーゆーコトなんで月曜夜、よろしくお願いします。例によって春風とジャックに車出してもらうんで、足のことはご心配なく」
「とりぃってこーゆー騙し討ちみたいな企画、怒ったりしなかった?」
「悪い意味の騙し討ちじゃないんで問題ないっすよ。かっすーを祝う会っつー前提があるんで喜んで協力するっつってたっす」
「あ、そーなんだ。よかったよかった。1年生はほら、松兄の発案だったら「さすが兄貴!」って言ってすぐ乗ってくれそうだけど」
「何だかんだ今年度のサークルを盛り上げようとしてたのはかっすーですしね。まあ、時折粗さだとか、雑さはありましたけど。だからこそみんな協力してくれてるんすよ」

 そう。カノンは何だかんだこの1年ずっと頑張ってくれてたんだよね。先輩たちがいなくなって存続も危ないってなったサークルに、まずはとりぃと松兄を誘ってくれて、新歓もすっごく頑張ってくれて。それで急にたくさん1年生といろはがやってきて驚いたけど、何とかかんとかやってこれた。

「はー久々のラーメンおいしかったーッ。ごちそうさまでしたーッ」
「うん、学食のラーメンにこんなニッコニコな女子、マジで天然記念物モノっすよ」
「うち的には結構普通のつもりだったんだけど。ほら、菜月先輩も学食じゃ塩ラーメンしか食べないって話だったし、黙々と塩ラーメンをうまうましてるのが可愛らしいって圭斗先輩も言ってたっす、うっすうっす」
「菜月サンは塩派なんすね。つかこんだけメニューあって塩ラーメンしか食わないって」
「サラダは絶対食べないね。インターフェイス夏合宿でもフライの付け合わせの野菜を野坂先輩に食べてもらってたって話だし。生野菜があんまり得意じゃないみたいなんだよね」
「サラダはあるなら食った方がその後体の調子良くね? 3限眠くなる奴とか糖質ばっか取ってんだろって話よ」


end.


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カノン誕のアポ取りの話。奈々はサークル後に直帰することが多い。
奏多は体を気遣うのもそうだけど、多分普通にサラダが好き。スガPと同じラインぽそう。
奏多とパロでサラダに使うドレッシングの話とか、その作り方で盛り上がっててもいい。

(phase3)

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