2025
■人付き合いのとっかかり
++++
とりぃ先輩から推薦を受け、インターフェイスの技術向上対策委員の会議に出席することになった。会議の場には、2年生の先輩の他に、次期対策委員として選出された各校の代表も集まっている。夏合宿などで話したことがある人もいるが、そうでない人もいる。威圧感を与えないようにしたいとは、思うが。
「ねえねえ、せっかくだし今いる1年6人でこれからご飯でも食べに行かない? あっ、もちろん無理にとは言わないけど」
会議後、星大のがっくんが切り出す。彼については、夏合宿で同じ班だったパロから少し聞いている。「明るくて楽しい子だよ、ヘビが苦手だから気を付けてあげてね」とのことだ。星港市内、しかも花栄のど真ん中でさすがにヘビは出ないだろう。
「わあ~、いいわね~。どこへ行く~?」
「私も行きたいのよ。みんな、何が食べたいのね?」
緑ヶ丘のちむりーとは何度か話したことがあるが、穏やかな雰囲気の人だという印象だ。青敬の美瑛についてはツッツから聞いているが、少しマイペースなところはあるけど職人としての目は本物だ、とのこと。ツッツが言うのだから、家業の焼き物にしろ映像作品での粘土にしろ、土を扱う職人としては凄いのだろう。
「この近くだったら、親子丼かお好み焼きが食べたいなー」
「ああ、美味しそう。いいね。俺は賛成」
近くの店をスマホで検索して、食べたいメニューを提案してくれたのは青女のならっち。大学ではひかりんと呼ばれているそうだが、夏合宿の時に星大のひかるん(大ちゃん)と名前の響きが似ていて紛らわしいという理由でこちらではならっち名義でいくことにしたそうだ。そしてそれに賛同した星ヶ丘の将門。彼とは2度顔を合わせたことがあるが、印象はとてもいい。
「殿はどうする?」
「ああ。せっかくだ、ぜひ行こう」
「やったー! 来てくれてありがとね! ならっち、調べてくれたお店の混雑具合はどう?」
「んー、お好み焼きの方がすぐ入れそうかな?」
「じゃ今回はお好み焼きの方に行ってみよう」
来てくれてありがとね! と俺の手を両手で握り上下にブンブンと振るというコミュニケーションの形は、これまでに経験がない。ここまでで既にがっくんの勢いにやや圧倒されている。パロからの情報が無ければ引いてしまっていたかもしれない。がっくんとならっちを先頭に、残る4人がそれについて歩くという形だ。
「何か、ここまでで次の対策メンバーの色が見えて来た感じがあるね」
「と、言うと」
「がっくんとならっちが話をグイグイ前に進めて、ちむりーと美瑛がマイペースに、だけど頭脳だとか技術で固めて、俺と殿が一番後ろでみんなと全体の様子を見てる、みたいな」
「……俺は、まず、皆に受け入れられるかを、心配していた」
「え、全然心配要らないのに。俺は殿と一緒で嬉しかったし」
「自分も、将門がいて、少し安心感は覚えた」
このメンバーの中であれば、将門と一番テンションが近いだろうから、集まった顔ぶれの中にいてくれたことは素直に安心できた。2年生の先輩は9人で活動しているが、自分たちは6人だ。その分、より活動の中で密に接していくことになるだろう。皆の人となりもこれからわかってくるだろうし、印象も変わるだろうが、第一印象も大切にしていたい。
「ねえねえ殿? 今、ちむりーから聞いたのよ。殿はお菓子作りが得意なのね」
「いや、製菓は、まだまだ練習中だ」
「謙虚なのね」
「あら~。先輩たちも、アップルパイを作っているって仰っていたわ~。それに、この間、スイートポテトをお土産に持って来てくれて~」
「えー、美味しそうなのよ! 殿のことはツッツから聞いているのね。優しくて、料理上手なのよ。それに、畑仕事も上手なのよ。焼き芋にしたサツマイモが大きくて甘かったそうなのね」
「私もすがやん先輩から聞いたわ~。本当に羨ましい~」
「美瑛は、ツッツと今も連絡を取り合っているのか。焼き芋は、割と最近の話だが」
「ツッツとは仲良しなのよ! この間も、きぬと3人でうちの工房で焼き物体験をしたのよ。それに、ツッツは私のおじいちゃんのお気に入りなのね。サークルで、先輩たちに道具を片付けろって怒られるから、今度はお道具箱を作ってもらおうと思ってるのよ。ツッツの作る物は細かいところまで気が回ってて使いやすいのね」
「へえ~、美瑛のおうちは、焼き物の工房なのね~」
「代々続いてるのよ」
「凄いな、家に工房があるのか。でも、きぬが迷惑かけなかった? 落ち着きないから陶芸とか出来なさそうだし」
「一応大丈夫だったのよ。お世辞にも上手とは言えなかったけど、初めてならそんなものなのよ。ツッツは凄く上手だったのね」
美瑛がツッツのことを褒めているのを聞いて、嬉しく思った。サークルでも初めは人見知りの様相だったし、インターフェイスの現場でも、人に怯えては奏多先輩に荒療治をされて来たという経緯がある。恐らく美瑛とは物づくりという共通点で気が合ったのだと考えられるが、そういう相手が1人でもいることが、これからの人付き合いを楽にするだろう。
「みんなー、お店もう入れるよー」
「ありがとう~」
「自分で焼くスタイルだってー。楽しそー!」
「この中で料理得意な人ー!」
「……殿、手を上げるのね」
「殿が上手よ~。私も、最低限は出来るわ~」
「2人いるなら美味しいお好み焼きになりそう! 良かったー! コツとか教えてねー」
「焼き方を書いた紙が、そこにある。その通りに、やればいいと思うが」
「それを読んだ上でみんなでワイワイやりたい! それで親交を深めるって寸法だよ!」
end.
++++
これはグイグイ来る方のコミュ強がくぴ。ならっちのキャラ立ちはこれから。
すっかり片付けが苦手で定着した美瑛。お道具箱編はあるのかないのか。
(phase3)
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とりぃ先輩から推薦を受け、インターフェイスの技術向上対策委員の会議に出席することになった。会議の場には、2年生の先輩の他に、次期対策委員として選出された各校の代表も集まっている。夏合宿などで話したことがある人もいるが、そうでない人もいる。威圧感を与えないようにしたいとは、思うが。
「ねえねえ、せっかくだし今いる1年6人でこれからご飯でも食べに行かない? あっ、もちろん無理にとは言わないけど」
会議後、星大のがっくんが切り出す。彼については、夏合宿で同じ班だったパロから少し聞いている。「明るくて楽しい子だよ、ヘビが苦手だから気を付けてあげてね」とのことだ。星港市内、しかも花栄のど真ん中でさすがにヘビは出ないだろう。
「わあ~、いいわね~。どこへ行く~?」
「私も行きたいのよ。みんな、何が食べたいのね?」
緑ヶ丘のちむりーとは何度か話したことがあるが、穏やかな雰囲気の人だという印象だ。青敬の美瑛についてはツッツから聞いているが、少しマイペースなところはあるけど職人としての目は本物だ、とのこと。ツッツが言うのだから、家業の焼き物にしろ映像作品での粘土にしろ、土を扱う職人としては凄いのだろう。
「この近くだったら、親子丼かお好み焼きが食べたいなー」
「ああ、美味しそう。いいね。俺は賛成」
近くの店をスマホで検索して、食べたいメニューを提案してくれたのは青女のならっち。大学ではひかりんと呼ばれているそうだが、夏合宿の時に星大のひかるん(大ちゃん)と名前の響きが似ていて紛らわしいという理由でこちらではならっち名義でいくことにしたそうだ。そしてそれに賛同した星ヶ丘の将門。彼とは2度顔を合わせたことがあるが、印象はとてもいい。
「殿はどうする?」
「ああ。せっかくだ、ぜひ行こう」
「やったー! 来てくれてありがとね! ならっち、調べてくれたお店の混雑具合はどう?」
「んー、お好み焼きの方がすぐ入れそうかな?」
「じゃ今回はお好み焼きの方に行ってみよう」
来てくれてありがとね! と俺の手を両手で握り上下にブンブンと振るというコミュニケーションの形は、これまでに経験がない。ここまでで既にがっくんの勢いにやや圧倒されている。パロからの情報が無ければ引いてしまっていたかもしれない。がっくんとならっちを先頭に、残る4人がそれについて歩くという形だ。
「何か、ここまでで次の対策メンバーの色が見えて来た感じがあるね」
「と、言うと」
「がっくんとならっちが話をグイグイ前に進めて、ちむりーと美瑛がマイペースに、だけど頭脳だとか技術で固めて、俺と殿が一番後ろでみんなと全体の様子を見てる、みたいな」
「……俺は、まず、皆に受け入れられるかを、心配していた」
「え、全然心配要らないのに。俺は殿と一緒で嬉しかったし」
「自分も、将門がいて、少し安心感は覚えた」
このメンバーの中であれば、将門と一番テンションが近いだろうから、集まった顔ぶれの中にいてくれたことは素直に安心できた。2年生の先輩は9人で活動しているが、自分たちは6人だ。その分、より活動の中で密に接していくことになるだろう。皆の人となりもこれからわかってくるだろうし、印象も変わるだろうが、第一印象も大切にしていたい。
「ねえねえ殿? 今、ちむりーから聞いたのよ。殿はお菓子作りが得意なのね」
「いや、製菓は、まだまだ練習中だ」
「謙虚なのね」
「あら~。先輩たちも、アップルパイを作っているって仰っていたわ~。それに、この間、スイートポテトをお土産に持って来てくれて~」
「えー、美味しそうなのよ! 殿のことはツッツから聞いているのね。優しくて、料理上手なのよ。それに、畑仕事も上手なのよ。焼き芋にしたサツマイモが大きくて甘かったそうなのね」
「私もすがやん先輩から聞いたわ~。本当に羨ましい~」
「美瑛は、ツッツと今も連絡を取り合っているのか。焼き芋は、割と最近の話だが」
「ツッツとは仲良しなのよ! この間も、きぬと3人でうちの工房で焼き物体験をしたのよ。それに、ツッツは私のおじいちゃんのお気に入りなのね。サークルで、先輩たちに道具を片付けろって怒られるから、今度はお道具箱を作ってもらおうと思ってるのよ。ツッツの作る物は細かいところまで気が回ってて使いやすいのね」
「へえ~、美瑛のおうちは、焼き物の工房なのね~」
「代々続いてるのよ」
「凄いな、家に工房があるのか。でも、きぬが迷惑かけなかった? 落ち着きないから陶芸とか出来なさそうだし」
「一応大丈夫だったのよ。お世辞にも上手とは言えなかったけど、初めてならそんなものなのよ。ツッツは凄く上手だったのね」
美瑛がツッツのことを褒めているのを聞いて、嬉しく思った。サークルでも初めは人見知りの様相だったし、インターフェイスの現場でも、人に怯えては奏多先輩に荒療治をされて来たという経緯がある。恐らく美瑛とは物づくりという共通点で気が合ったのだと考えられるが、そういう相手が1人でもいることが、これからの人付き合いを楽にするだろう。
「みんなー、お店もう入れるよー」
「ありがとう~」
「自分で焼くスタイルだってー。楽しそー!」
「この中で料理得意な人ー!」
「……殿、手を上げるのね」
「殿が上手よ~。私も、最低限は出来るわ~」
「2人いるなら美味しいお好み焼きになりそう! 良かったー! コツとか教えてねー」
「焼き方を書いた紙が、そこにある。その通りに、やればいいと思うが」
「それを読んだ上でみんなでワイワイやりたい! それで親交を深めるって寸法だよ!」
end.
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これはグイグイ来る方のコミュ強がくぴ。ならっちのキャラ立ちはこれから。
すっかり片付けが苦手で定着した美瑛。お道具箱編はあるのかないのか。
(phase3)
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