2025

■Surprise appointment

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 奏多先輩から呼び出されて、スクールバス乗り場で待つ。今日は水曜日だからサークルは活動日。だけど、今日はこっちを優先しろと言われた。スクールバス乗り場っていうことは、どこかに行くのかな……。何も聞かされてないから、ちょっと不安だ。

「よーうツッツ、来たな」
「おはようございます」
「次のバスは何分だ? えーと、2分後か。じゃもうちょっとだな」
「やっぱり、バスに乗るんですか?」
「乗らねーのにこんなトコで待ち合わせる必要なんかねーだろ」
「そ、そうですよね……」

 やってきたバスに乗り込み、そのまま水薙駅へ。豊葦市駅方面と青池駅方面のどっちに行くのかなと、奏多先輩の後をついて改札を通る。あ、青池駅方面だ。ホームへと続く階段を下りて、電光掲示板を見上げる。青池方面、青浪行きの電車は5分後に着くらしい。

「お前も普段は向環だよな。水薙なんかそうそう来ねーだろ」
「あ、はい、そうですね」

 俺はJRと向島環状鉄道を乗り継いで通学している。実は奏多先輩(と春風先輩)とは家の方角が一緒で、JRの駅で言うと一駅くらいしか違わない。向環の駅ならともかく、星鉄の駅で一緒に電車を待っているのは少し不思議な気分だ。

「よし、乗るぞ」
「は、はい」

 やってきた電車に乗り込んで、座席に座る。向環の電車はボックス席がその存在を主張してるけど、星鉄とか、地下鉄は真っ直ぐな座席が都会的だなって思う。ボックス席はボックス席で味があるとは思うけど、あれはきっと人口密度の高い場所ではスペースパフォーマンスが悪いんだろう。

「あ、あの……奏多先輩」
「ん?」
「これから、どこに行くんですか…?」
「インターフェイスの定例会。花栄にあるフィネスタのビルの会議室だ」
「て、定例会…!? な、何で俺が…?」
「サークルと同じように、インターフェイスも代替わりシーズンだ。奈々さんと入れ替わりでウチから出す次期定例会メンバーに、俺がお前を選んだ。だからこうして顔見せのために連れてってるってワケだ」
「俺が、定例会…!? む、無理です……」
「やってねーのに決めつけんな。お前の悪いトコだぞ」
「す、すみません……」
「ま、そんなリアクションも想定済みだから前もって要件を言わなかったんだ。言ったらお前絶対素直にスクールバス乗り場に来なかったろ」
「それは……」
「否定できませんっつー顔だな」
「すみません」

 ただのお出掛けではないとは思ってたけど、まさか定例会に選出されただなんて……。1年生は6人いて、俺以外のみんなの方が、こういう組織で活動するのには向いてそうなのに。で、でも、奏多先輩は本当に力強く、淀みなく、俺がお前を選んだって。何でだろう。

「あの……何で、俺なのか、っていうのは、聞いても、大丈夫ですか?」
「まあ、そのためにわざわざ人員を選ばなくてもいいっつー風には言われてんだが、一応考慮したんだよな。俺が今サキちーとやってる音源管理システムの開発? その仕事を教えられる人間が最低1人は欲しい。ウチの人間でそれを担保しとこうっつーのがひとつ」
「あ、プログラムの知識……ですか。でも、ジュンとうっしーの方が、強いと思います」
「俺はお前に自分と似た点を感じてんだ」
「え、まさか。俺なんかが奏多先輩と似たところなんて」
「何か問題を見つけた時、解決策を自分で作る。そういうスタンスだな。俺なら学祭の時のシフト管理システムだし、お前ならMD収納棚か。ジャンルは違うけど、少なからず問題解決への道筋を考える、そういう点を評価してる」
「あ、ありがとうございます」
「それに、お前は細かいところに目を配れる奴だ。ユーザビリティっつーか、モノを触る人間に対する気配りか。あと、俺が頭に巻いてたタオルが粗品だって気付く観察力だとか。システムのコードなんざAIに投げりゃ秒で出るだろうがな、結局最後にチェックしたり、実際に使うのは人間だ。このシステムの仕事をするに当たって、俺は使う人間のことを考えられる奴に仕事を教えたいと思ってる。プログラムの知識がある4人の中じゃ、その点抜きん出てるのはお前だ」

 まさか奏多先輩がそんな風に見ていてくれているだなんて思ってもなかったし、奏多先輩自身の仕事のスタンスみたいな物も見えて、やっぱり凄いなって思う。学年の上では1つしか違わないけど、実際には3歳上だし、いろいろな経験をしてきてるんだろうなあって、改めて思う。

「たーだ、俺は手放しでお前を評価してるワケじゃねーぞ。これまで腐るほど言って来てるがお前が人に怯えてんのはとっとと治せって思ってるからな。人見知りですっつって牽制して壁を作っちまったら、向こうが来てくれなくなってコミュニケーションなんか一生取れなくなるんだぞ」
「す、すみません……」
「まあ、定例会の任期は2年だ。1年間はやらかしたとしてもちょっとはフォローしてやるし、まずは人間に慣れろ。話はそこからだ」
「はい……やってみます」

 人がたくさんいるところに行くのは、やっぱり少し怖い。組織の中で、自分に何が出来るのかもわからないし、本当に仕事が出来るのかなって、不安でしょうがない。だけど、奏多先輩なりの理由があって俺が選ばれてるんだから、頑張らないとな、とも思う。初めての場所だし、緊張するけど。

「しっかし、定例会がツッツで対策委員が殿なあ。ウチの6人の中じゃ大穴の2人が役員になってて笑っちまうな」
「え、殿が、対策委員、なんですか…?」
「春風が殿にベタ惚れで、何としても殿を連れてくっつって一生懸命説得してたぜ?」
「へ、へえ……」


end.


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奏多によるだまし討ちの強制連行。だまし討ちはMMPの伝統芸。
ツッツが奏多の後ろをとことこついてってる感じだととても可愛らしいと思う。
家の方角が一緒ということは、奏多とツッツが電車で一緒に帰ってるとかもあるのか

(phase3)

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