2025
■倹約の次なるフェーズ
++++
「映像見る系の授業、マジねみー。金曜にこれは地獄だぜ」
「と言うかお前は別に夜に特別強いワケでもないのに深夜帯にバイトしてるから睡眠時間が足りてないんだろ」
「腹減ったしよー」
シノは大学近くのカフェとガソリンスタンドの併設店でバイトをしてるんだけど、基本的には深夜帯のスタッフとして働いている。そのために危険物取扱者の資格も取ったくらいだ。果林先輩は親の扶養云々関係なくシフトに入って食費を稼いでいたけど、シノは扶養の範囲内でバイトをしているのでシフトに入るのは週2くらいだ。
ただ、それが平日のことが多いので、日中の授業に影響が出ている。それでなくても成績のことはいつだって佐藤先生に釘を刺されているのに、バイトが原因の睡眠不足で授業中に居眠りをしてれば後がどうなるか。ノートが取れてないのも自業自得だ。ちゃんと寝ろとは思ってはいるけど、学業面での手助けは惜しまない。
「直接サークル室行くか? 腹減ったならどっか寄ってもいいけど」
「や、今すぐ食わなきゃいけないレベルでもないから直で行く。ガマンガマン」
シノは基本的に倹約家なので、使わなくてもいいお金は極力使わないようにしている。今もガマンガマンと言いながら、マイボトルの中のお湯をすすっている。ちなみにこのお湯もさっきの授業の前に食堂の給水器で補給したものだ。白湯を飲むと聞くと玲那のモーニングルーティンか、シノの節約のイメージが付いてきた。
「うわ、めっちゃソースの匂いする」
「ホントだ。どこからだろ。おはようございます」
「おざーす、って高木先輩っすか!」
「ササ、シノ、おはよう」
サークル室に入ると、高木先輩がお好み焼きを食べているところだった。さすがは前機材部長、食べる時はミキサーから離れた平場の席に陣取って。透明な容器に入ったこのお好み焼きは、第1学食の2階にある購買で買える物。緑ヶ丘大学は食べ物を買うと一言で言っても選択肢が豊富にあるのが魅力のひとつだろう。
「うわー、これはマジでダメなヤツ…! 高木先輩が俺を陥れようとしてる」
「シノ、お腹空いてるの?」
「ちょっと空いてきたトコっす」
「じゃあこれ好きなだけ食べていいよ」
「え。今の俺に好きなだけとか言ったら全部食うかもっすよ? や、さすがに先輩の物っすし空気は読みますけど」
「ああ、でも今ある3分の2くらいは食べても大丈夫だよ」
「それじゃあお言葉に甘えて! いただきます!」
第1学食2階の購買のお好み焼きは、100円で結構なボリュームなのがハイコスパだとして密かな人気商品だ。第2学食カフェテリアで売ってる180円のお好み焼き(豚/イカ)とはまたちょっと違うんだよな。そしてシノは高木先輩から受け取ったそれに目を輝かせている。今ある3分の2というと結構な量になるけど高木先輩の貴重な食事の機会なのでは。
「マジうめー」
「あの、高木先輩。このお好み焼きって、先輩の昼食とかそういう位置づけの物とかじゃ」
「確かにお昼ご飯はお昼ご飯なんだけど、結構食べて残ってるのがこれ」
「え、あんまり減ってないように見えますけど」
「何か今日から2階の購買でブラックフライデーキャンペーンが始まったとかで、2週間? 月末くらいまで品替わりで増量したりちょっと安くなったりとかっていう企画やっててさ。今日はお好み焼きが価格据え置きで1.5倍に増量されてるっていうんで、まあ買いますよね」
「えっ!? このお好み焼きって100円っすよね!?」
「100円だね」
「価格据え置きで1.5倍!?」
「日によって内容は違うみたいだけどね。今日はお好み焼きが1.5倍だったよ」
「激アツじゃないすか!」
これは俺が聞いても激アツだと思うので、安く量を食べたいシノと高木先輩にとっては激アツも激アツな企画だろう。シノは高木先輩のお好み焼きを食べながら、今から購買に行って間に合うかなと言っている。まさか行く気か。しかし、大学内に選択肢がいくつもあるということは、店側も選ばれるための努力をしないといけないのだなあと思ったりして世知辛い。
「でも、この手の企画だと大体サキが「増量より値引きしてくれればいいのに」って言うよな」
「言うな。まあ、サキは小食だから量を増やされてもあんまり嬉しくないんだろうけど」
「今回のキャンペーンは値引きの方もあるみたいだよ。いつ、何が値引きになるかまではわかんないけど」
「シノ、何が来たらアツいと思う?」
「丼もの」
「ああー、わかる。第2学食のとはまた違うずっしり感が上の購買の丼の魅力だよな」
「最近自分でも少しメシ作るようになってきたからわかるけど、1人分作るのが逆にムズいとか、かけた金とか時間に対して得られる満足感みたいなモンを比べて、多少高くても買った方が良かったら無理に作らないとか、そういう選択も出来るようになってきた」
シノはポテトとか唐揚げ、それからハンバーグなどは自分で作った方が安く量を食えるじゃんって理由で家で作ることを覚えた。だけど、手間とか時間とか、満足感とお金を天秤にかけるということをしていたのかと、ただただ1人暮らし費用を貯めるためのガムシャラな節約とは違う倹約のフェーズに移行していたのだなとしみじみする。
「あっ、あと唐揚げも増量して欲しい」
「唐揚げは自分で作れるだろ?」
「唐揚げは鵠沼先輩直伝の美味いのが作れるけど、あれは「やるぞ!」って気合が必要なんだよ。あー、めっちゃ唐揚げ食いてぇーって時は作るけど、ちょっと食べたい程度の時は買った方がいい」
「そんな話してたら唐揚げ食べたくなっちゃった。シノ、責任とってよ」
「じゃ俺今から自分の分お好み焼き買ってきますし、唐揚げも買って来ましょうか?」
「え、いいの」
「その分の金をどうするかは相談ってことで」
「シノ。お前お好み焼き食わせてもらったんだから唐揚げの分は先輩からは取るなよ」
end.
++++
緑大は私立大だし学内の店に関しても運営元がそれぞれ違ってたりしてもいいかななどと
価格高騰の波に負けない無敵のお好み焼きがあってもいい。学生のためという体。
MBCCの焼きそばとGREENs唐揚げを自分で作れるシノ。地味にメチャ強なのでは。
(phase3)
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「映像見る系の授業、マジねみー。金曜にこれは地獄だぜ」
「と言うかお前は別に夜に特別強いワケでもないのに深夜帯にバイトしてるから睡眠時間が足りてないんだろ」
「腹減ったしよー」
シノは大学近くのカフェとガソリンスタンドの併設店でバイトをしてるんだけど、基本的には深夜帯のスタッフとして働いている。そのために危険物取扱者の資格も取ったくらいだ。果林先輩は親の扶養云々関係なくシフトに入って食費を稼いでいたけど、シノは扶養の範囲内でバイトをしているのでシフトに入るのは週2くらいだ。
ただ、それが平日のことが多いので、日中の授業に影響が出ている。それでなくても成績のことはいつだって佐藤先生に釘を刺されているのに、バイトが原因の睡眠不足で授業中に居眠りをしてれば後がどうなるか。ノートが取れてないのも自業自得だ。ちゃんと寝ろとは思ってはいるけど、学業面での手助けは惜しまない。
「直接サークル室行くか? 腹減ったならどっか寄ってもいいけど」
「や、今すぐ食わなきゃいけないレベルでもないから直で行く。ガマンガマン」
シノは基本的に倹約家なので、使わなくてもいいお金は極力使わないようにしている。今もガマンガマンと言いながら、マイボトルの中のお湯をすすっている。ちなみにこのお湯もさっきの授業の前に食堂の給水器で補給したものだ。白湯を飲むと聞くと玲那のモーニングルーティンか、シノの節約のイメージが付いてきた。
「うわ、めっちゃソースの匂いする」
「ホントだ。どこからだろ。おはようございます」
「おざーす、って高木先輩っすか!」
「ササ、シノ、おはよう」
サークル室に入ると、高木先輩がお好み焼きを食べているところだった。さすがは前機材部長、食べる時はミキサーから離れた平場の席に陣取って。透明な容器に入ったこのお好み焼きは、第1学食の2階にある購買で買える物。緑ヶ丘大学は食べ物を買うと一言で言っても選択肢が豊富にあるのが魅力のひとつだろう。
「うわー、これはマジでダメなヤツ…! 高木先輩が俺を陥れようとしてる」
「シノ、お腹空いてるの?」
「ちょっと空いてきたトコっす」
「じゃあこれ好きなだけ食べていいよ」
「え。今の俺に好きなだけとか言ったら全部食うかもっすよ? や、さすがに先輩の物っすし空気は読みますけど」
「ああ、でも今ある3分の2くらいは食べても大丈夫だよ」
「それじゃあお言葉に甘えて! いただきます!」
第1学食2階の購買のお好み焼きは、100円で結構なボリュームなのがハイコスパだとして密かな人気商品だ。第2学食カフェテリアで売ってる180円のお好み焼き(豚/イカ)とはまたちょっと違うんだよな。そしてシノは高木先輩から受け取ったそれに目を輝かせている。今ある3分の2というと結構な量になるけど高木先輩の貴重な食事の機会なのでは。
「マジうめー」
「あの、高木先輩。このお好み焼きって、先輩の昼食とかそういう位置づけの物とかじゃ」
「確かにお昼ご飯はお昼ご飯なんだけど、結構食べて残ってるのがこれ」
「え、あんまり減ってないように見えますけど」
「何か今日から2階の購買でブラックフライデーキャンペーンが始まったとかで、2週間? 月末くらいまで品替わりで増量したりちょっと安くなったりとかっていう企画やっててさ。今日はお好み焼きが価格据え置きで1.5倍に増量されてるっていうんで、まあ買いますよね」
「えっ!? このお好み焼きって100円っすよね!?」
「100円だね」
「価格据え置きで1.5倍!?」
「日によって内容は違うみたいだけどね。今日はお好み焼きが1.5倍だったよ」
「激アツじゃないすか!」
これは俺が聞いても激アツだと思うので、安く量を食べたいシノと高木先輩にとっては激アツも激アツな企画だろう。シノは高木先輩のお好み焼きを食べながら、今から購買に行って間に合うかなと言っている。まさか行く気か。しかし、大学内に選択肢がいくつもあるということは、店側も選ばれるための努力をしないといけないのだなあと思ったりして世知辛い。
「でも、この手の企画だと大体サキが「増量より値引きしてくれればいいのに」って言うよな」
「言うな。まあ、サキは小食だから量を増やされてもあんまり嬉しくないんだろうけど」
「今回のキャンペーンは値引きの方もあるみたいだよ。いつ、何が値引きになるかまではわかんないけど」
「シノ、何が来たらアツいと思う?」
「丼もの」
「ああー、わかる。第2学食のとはまた違うずっしり感が上の購買の丼の魅力だよな」
「最近自分でも少しメシ作るようになってきたからわかるけど、1人分作るのが逆にムズいとか、かけた金とか時間に対して得られる満足感みたいなモンを比べて、多少高くても買った方が良かったら無理に作らないとか、そういう選択も出来るようになってきた」
シノはポテトとか唐揚げ、それからハンバーグなどは自分で作った方が安く量を食えるじゃんって理由で家で作ることを覚えた。だけど、手間とか時間とか、満足感とお金を天秤にかけるということをしていたのかと、ただただ1人暮らし費用を貯めるためのガムシャラな節約とは違う倹約のフェーズに移行していたのだなとしみじみする。
「あっ、あと唐揚げも増量して欲しい」
「唐揚げは自分で作れるだろ?」
「唐揚げは鵠沼先輩直伝の美味いのが作れるけど、あれは「やるぞ!」って気合が必要なんだよ。あー、めっちゃ唐揚げ食いてぇーって時は作るけど、ちょっと食べたい程度の時は買った方がいい」
「そんな話してたら唐揚げ食べたくなっちゃった。シノ、責任とってよ」
「じゃ俺今から自分の分お好み焼き買ってきますし、唐揚げも買って来ましょうか?」
「え、いいの」
「その分の金をどうするかは相談ってことで」
「シノ。お前お好み焼き食わせてもらったんだから唐揚げの分は先輩からは取るなよ」
end.
++++
緑大は私立大だし学内の店に関しても運営元がそれぞれ違ってたりしてもいいかななどと
価格高騰の波に負けない無敵のお好み焼きがあってもいい。学生のためという体。
MBCCの焼きそばとGREENs唐揚げを自分で作れるシノ。地味にメチャ強なのでは。
(phase3)
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