2025
■冬のぬくもり
++++
「ごっそーさんでした」
「ごちそうさまでした。よし、じゃあ3限行くか」
「あ、ちょい待ち。俺水筒にお湯足してくわ」
「オッケ、了解」
シノがマイボトルを持ち始めた。この間の対策委員の会議後、くららと一緒に出掛けたときに誕生日プレゼントの名目で買ってもらった物だそうだ。シノもくららの誕生日近くにはプレゼントをあげていたそうなので、倹約の鬼でもそういうところはきちんとしてるんだなあと感激して泣きそうになったのはここだけの話だ。
もらった水筒は毎日フル活用されている。と言うか、多分現実的に欲しい物をリクエストしたんじゃないかと思う。食堂に備え付けられている給茶機から直にお湯を補給して、持っている時はお茶のティーバッグをその中で揺らしているし、無い時はそのまま白湯を飲んでいたりする。ペットボトル飲料を買うより安上がりだし、保温保冷が効くのがお気に入りなんだそうだ。
「お待たせー、もういいぜ」
「その水筒、500くらい入るっけ?」
「600入る」
「あ、結構入るな。えっ、って言うか午前でもう1回空にしたのか」
「何だかんだ結構飲んでるかも。外出ると寒みーし、教室は乾燥して喉乾くし。学食マジ最高」
「まあ、給水スポットとしてフル活用出来るもんな。何と言うか、図書館の件といいお前は払った学費をあらゆる形で回収するよな」
「ここの水を水筒に入れるなってまだ書かれてないからセーフの理論な」
「と言うか、朝イチでお湯入れに来てるだろ」
「来てます」
こういうところではしっかり倹約の鬼っぷりが継続されているので、くららにプレゼントをあげたという話が本当にどれだけ凄いことなのかというのがわかるよな。しかも、0.6リットル入るちゃんとしたメーカーの水筒だとまあまあいい値段がする。それをもらうということは、それ相応の物をあげたんだろうし。
俺たちが日常的に使っている第1学食から講義棟までは少し歩かなければならない。落ち葉が風に舞い、カラカラと路上を転がる。少し強く風が吹き付けると、シノは寒がる素振りを見せる。シノは向島エリアの中でも温暖な西形市の出身で、寒さの話題になると決まって「西形はミカン育ててるから」と言う。豊葦は雪が降ることもまああるので、要は気候が違うのだと言いたいらしい。
「これだけ寒さに弱くてよく対策委員の後から出掛けられたな」
「言ってバイトは基本深夜帯だしそれくらいは普通に出来るぞ」
「それは失礼しました。でもくららと一緒でもそんなリアクションしてるのかって話だよ」
「会議の後はあったまってるから別に、普通だよ」
シノとくららは1年の時の夏合宿でペアを組んでから仲が良い。今は対策委員でも一緒だし、少なくともシノの方はただの友達以上の感情を持っている。一方、くららの方もシノのことを意識しているとは彩人が言っていた。彩人はみちるとその手の話をよくするそうだけど、如何せんくららは内気で豆腐メンタルだから進展するかどうかはシノ次第だろうなあという見方をしているとか。
俺の見方としては、だとするとくららは自分からも攻めないと厳しくなってくるぞ、と。緑大の中で見ているだけでも、まいみぃの存在が結構大きい。特に佐藤ゼミでの活動は非日常感が強いし、日を跨ぐこともザラにある。一緒に何かを成し遂げたときの達成感が恋愛感情に転嫁されたとしてもおかしくない。しかも、まいみぃは結構ガンガン攻めるタイプだし。
「今って結構どこもイルミネーション始まってるっけ」
「花栄はもうやってたぞ」
「そうか」
「お前は何かそういうの、パートナーと行ったりすんの?」
「あー……どうかな、まだ予定はないし、行ったら行っただけど、玲那は多分イルミネーションとかはあんまり興味なさそう」
「確かにレナとイルミネーションてちょっと違うわ。すがやん春風とイルミ……っつーよりかはプラネタリウムだなー」
「いや! ここは敢えてすがやんにはとりぃとイルミネーションデートをしてもらいたい!」
「ササってすがやんの話になると熱量上がるよな。それでいつもサキに睨まれてんのに」
「いや、何かこう、すがやんには幸せになってもらいたいなって」
「あー、サキのジト目が見えるー。……あっ、思い出した!」
「ん?」
「イルミネーションと言えば、それこそこないだ対策後に海月と出掛けた時の話だけど、くるみと北星もイルミネーションを見に来てたっぽくて」
「おっ、いよいよそこも動きが?」
北星がくるみのことを好きらしいというのは割とインターフェイスのみんなが知っていることだけど、表立って冷やかすことはせずに密かに応援しているという感じだ。ただ、如何せんくるみは北星を「動画のアドバイスをくれるすっごい人!」のように思っていて、それこそ進展はするのかしないのか……という状況。それが、イルミネーションデートだと!?
「や、向こうにもこっちのことが見えてたっぽくて聞かれたついでに聞き返したら、イルミネーションを踏まえた夜間撮影の練習だよ! って言ってた」
「はーっ……北星、頑張れ」
「でもくるみが撮った写真を見る限り、2人とも技術がガチってるし、俺もそういうところのストイックさは見習ってかないとなーと思った。北星は最近とりぃに教えんのに夜間撮影の勉強してたっぽくてさ」
「とりぃも撮る人なのか」
「何か、1000年に一度の彗星と流星群が同時に来てたとかで忙しかったらしい」
「はあ」
俺もこれっていう強みが欲しいよなー、とシノは水筒からお湯を一口、ずず、と啜る。大丈夫だ。お前はもう十分ミキサーとして戦えてるし、真面目で貪欲なんだから。
end.
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くるちゃんと北星のイルミネーションはすごく真面目な練習会。
炭酸やスポーツドリンク可の水筒なら夏場も有効活用出来そうだしシノには向いてそう
(phase3)
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「ごっそーさんでした」
「ごちそうさまでした。よし、じゃあ3限行くか」
「あ、ちょい待ち。俺水筒にお湯足してくわ」
「オッケ、了解」
シノがマイボトルを持ち始めた。この間の対策委員の会議後、くららと一緒に出掛けたときに誕生日プレゼントの名目で買ってもらった物だそうだ。シノもくららの誕生日近くにはプレゼントをあげていたそうなので、倹約の鬼でもそういうところはきちんとしてるんだなあと感激して泣きそうになったのはここだけの話だ。
もらった水筒は毎日フル活用されている。と言うか、多分現実的に欲しい物をリクエストしたんじゃないかと思う。食堂に備え付けられている給茶機から直にお湯を補給して、持っている時はお茶のティーバッグをその中で揺らしているし、無い時はそのまま白湯を飲んでいたりする。ペットボトル飲料を買うより安上がりだし、保温保冷が効くのがお気に入りなんだそうだ。
「お待たせー、もういいぜ」
「その水筒、500くらい入るっけ?」
「600入る」
「あ、結構入るな。えっ、って言うか午前でもう1回空にしたのか」
「何だかんだ結構飲んでるかも。外出ると寒みーし、教室は乾燥して喉乾くし。学食マジ最高」
「まあ、給水スポットとしてフル活用出来るもんな。何と言うか、図書館の件といいお前は払った学費をあらゆる形で回収するよな」
「ここの水を水筒に入れるなってまだ書かれてないからセーフの理論な」
「と言うか、朝イチでお湯入れに来てるだろ」
「来てます」
こういうところではしっかり倹約の鬼っぷりが継続されているので、くららにプレゼントをあげたという話が本当にどれだけ凄いことなのかというのがわかるよな。しかも、0.6リットル入るちゃんとしたメーカーの水筒だとまあまあいい値段がする。それをもらうということは、それ相応の物をあげたんだろうし。
俺たちが日常的に使っている第1学食から講義棟までは少し歩かなければならない。落ち葉が風に舞い、カラカラと路上を転がる。少し強く風が吹き付けると、シノは寒がる素振りを見せる。シノは向島エリアの中でも温暖な西形市の出身で、寒さの話題になると決まって「西形はミカン育ててるから」と言う。豊葦は雪が降ることもまああるので、要は気候が違うのだと言いたいらしい。
「これだけ寒さに弱くてよく対策委員の後から出掛けられたな」
「言ってバイトは基本深夜帯だしそれくらいは普通に出来るぞ」
「それは失礼しました。でもくららと一緒でもそんなリアクションしてるのかって話だよ」
「会議の後はあったまってるから別に、普通だよ」
シノとくららは1年の時の夏合宿でペアを組んでから仲が良い。今は対策委員でも一緒だし、少なくともシノの方はただの友達以上の感情を持っている。一方、くららの方もシノのことを意識しているとは彩人が言っていた。彩人はみちるとその手の話をよくするそうだけど、如何せんくららは内気で豆腐メンタルだから進展するかどうかはシノ次第だろうなあという見方をしているとか。
俺の見方としては、だとするとくららは自分からも攻めないと厳しくなってくるぞ、と。緑大の中で見ているだけでも、まいみぃの存在が結構大きい。特に佐藤ゼミでの活動は非日常感が強いし、日を跨ぐこともザラにある。一緒に何かを成し遂げたときの達成感が恋愛感情に転嫁されたとしてもおかしくない。しかも、まいみぃは結構ガンガン攻めるタイプだし。
「今って結構どこもイルミネーション始まってるっけ」
「花栄はもうやってたぞ」
「そうか」
「お前は何かそういうの、パートナーと行ったりすんの?」
「あー……どうかな、まだ予定はないし、行ったら行っただけど、玲那は多分イルミネーションとかはあんまり興味なさそう」
「確かにレナとイルミネーションてちょっと違うわ。すがやん春風とイルミ……っつーよりかはプラネタリウムだなー」
「いや! ここは敢えてすがやんにはとりぃとイルミネーションデートをしてもらいたい!」
「ササってすがやんの話になると熱量上がるよな。それでいつもサキに睨まれてんのに」
「いや、何かこう、すがやんには幸せになってもらいたいなって」
「あー、サキのジト目が見えるー。……あっ、思い出した!」
「ん?」
「イルミネーションと言えば、それこそこないだ対策後に海月と出掛けた時の話だけど、くるみと北星もイルミネーションを見に来てたっぽくて」
「おっ、いよいよそこも動きが?」
北星がくるみのことを好きらしいというのは割とインターフェイスのみんなが知っていることだけど、表立って冷やかすことはせずに密かに応援しているという感じだ。ただ、如何せんくるみは北星を「動画のアドバイスをくれるすっごい人!」のように思っていて、それこそ進展はするのかしないのか……という状況。それが、イルミネーションデートだと!?
「や、向こうにもこっちのことが見えてたっぽくて聞かれたついでに聞き返したら、イルミネーションを踏まえた夜間撮影の練習だよ! って言ってた」
「はーっ……北星、頑張れ」
「でもくるみが撮った写真を見る限り、2人とも技術がガチってるし、俺もそういうところのストイックさは見習ってかないとなーと思った。北星は最近とりぃに教えんのに夜間撮影の勉強してたっぽくてさ」
「とりぃも撮る人なのか」
「何か、1000年に一度の彗星と流星群が同時に来てたとかで忙しかったらしい」
「はあ」
俺もこれっていう強みが欲しいよなー、とシノは水筒からお湯を一口、ずず、と啜る。大丈夫だ。お前はもう十分ミキサーとして戦えてるし、真面目で貪欲なんだから。
end.
++++
くるちゃんと北星のイルミネーションはすごく真面目な練習会。
炭酸やスポーツドリンク可の水筒なら夏場も有効活用出来そうだしシノには向いてそう
(phase3)
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