2025

■僕たちは元気です

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「おーい朝霞、来たぞー」
「ああ、入ってくれ」
「邪魔するぜー」
「邪魔をする」
「朝霞、さっそくだけど食材は台所でいいか?」
「ああ。好きなところに置いてもらって。冷蔵庫も開けてもらって大丈夫だし。あっ、昨日農学部のオープンファームでいろいろ調達して来てるから、それも使ってもらって」

 USDXのタメ組で鍋をやることになった。この間、高崎と一緒に鍋をやった。それを写真付きでSNSにアップしたら、菅野かんのが「鍋をやるなら俺も混ぜろ!」と絡んで来たのでそれじゃあタメ組でやるかと。俺とリン君の予定が一番合いにくいので、そこを揃えてあとの2人に融通を利かせてもらう形での開催だ。
 このメンツで鍋をやるんだと伊東さんに言ったら、その場合誰がお世話をするのと疑問が投げかけられた。恐らくは菅野すがのになるだろう。聞くに、菅野は婿入り修行の一環とかで、去年頃から料理の練習を始めたらしい。まだまだ難しいことは出来ないけど、最低限暮らすのに困らない程度には形になってきたそうだ。俺なんか1人暮らし5年目でまだ全然なのに。

「菅野、台所は任せていいか? 俺は部屋のセッティングするし」
「わかった」
「なー朝霞ー」
「どうした菅野かんの
「お前ん家で鍋やる時ってやっぱフツーの鍋だろ? ああ、あの、具材を煮る器の話な」
「何を以って特殊というのかはわからないが、鍋をやるときはごく一般的な土鍋だな」
「だろ? でも、俺はどぉーしても辛いのが食いたかったから、これを買って来た!」

 そう言って奴が取り出したのは、鍋の真ん中が仕切られた物だ。鍋の食い放題の店に行った時とかに2種類の出汁を選ぶ時とかに使っている、ああいう鍋だ。と言うか家庭用でもあったんだな。菅野は辛い鍋が食べたいが、俺がそこまで辛い物が食べられないと知っているのでどうしたものか考えた結果、鍋を買ったらしい。

「なかなかのゴリ押しだな」
「この鍋お前にやるし、今後もぜひ活用してくれ」
「え、何か悪いな」
「つか俺の家にあってもしゃーねーし。こーゆーのをフル活用出来るのって1人暮らしの奴じゃね?」
「言いたいことはわからないでもない。それじゃあ、ありがたく使わせてもらいます。それで、お前が辛いのを食いたいのはわかったけど、そうじゃない方は何鍋の予定なんだ?」
「味噌豚骨。〆はラーメンがいいよなってことになって、ラーメンに合う出汁で俺ら3人がジャンケンで戦って、俺が勝った」
「担々鍋でひとつ希望を叶えているのだから引けと言ったが一向に引かん」
「担々鍋はお前もスガもいいなって言っただろ!」

 俺は辛い物があまり得意ではないので、菅野かんのが食べたいレベルの鍋を食べると辛さでもんどり打ってぶっ倒れることになるだろう。思い出されるのは去年プチメゾンの慰労会に呼ばれた時のバーベキューソースだ。多少なら大丈夫だけど、熱いと辛いが掛け合わさると、猫舌なのも相俟って本当にダメだ。

「カン、鍋を貸してくれ。1回洗うから」
「うーい。あっ、そうだ朝霞」
「ん?」
「せっかくだしちょっと動画撮ろうぜ」
「動画?」
「主にコイツのためな! 最近じゃソル以上に生存報告が必要になってるだろ。撮るからっつって別に何をするワケじゃねーし、鍋が映るだけの何てこたない画にはなるだろうけど。サブチャンに適当に投げるレベルのゆるいヤツよ」

 ここのところ忙しくしているリン君は、ゲーム実況への参加頻度がやや落ちがちだ。ソルこと塩見さんは社畜期間中の生存報告用としてツミツミ動画を上げているけど、リン君はそういうこともなく、SNSの投稿もそこまで活発ではないのでバネはどうしたというコメントもちらほらと見かけるようになっていた。
 動画を撮ることを俺が了承する前に、菅野かんのは撮影の準備をしてしまっている。そこまで準備されると何か断りにくい。映るとマズそうな物だけ無いか一通り確認して、無いと判断したものの、映りそうな場所にある物は一箇所に固めておくことに。お世辞にも綺麗とは言えない部屋だ。映ってしまうとみっともない。

「そういや似たようなことを菅野すがのも言ってたな」
「えっ、スガも言ってたのか!?」
「撮れ高を求められる実況動画の撮影は時間的にも厳しいかもだけど、4人でバッセンに行ってそこで実写動画撮ろうかー的な話だな」
「え、てか何でバッセン?」
「2人動画を撮る前にちょっと話してて、その流れで越谷さんの話題になったんだよ」
「越谷さんて、お前の班の?」
「そうそう。俺の前の班長の。あの人が野球やってた人で、たまにバッセンに連れてってもらってたっていう話の流れな」
「え、朝霞お前野球やんの」
「や、全然全然! 越谷さんがやってんのを見てただけだ」
「リンも確か野球はやってねーだろ?」
「オレがやっていたのは硬式テニスだ」
「誰も野球はやってないけど、手頃に撮影出来そうかなーと思っただけだ。はい、鍋通りまーす」
「いよっ! 待ってました!」

 菅野すがのが2種類の出汁の入った鍋を持って来て、それがコンロの上に乗るとこれはこれで普段と違う鍋の様相でワクワクしてきた。さっそく撮影しようぜと菅野かんのが声を上げ、録画が始まるのと同時にいただきますの号令がかかる。いや、ちょっと待て。気付いてしまった。

「なあお前ら、2種類の鍋食うなら器いるだろ。うちにそんなにたくさん鍋食う器なんかねーぞ」
「買って来てねーワケねーだろ?」
「ならさっさと出せ」
「フツーに出すの忘れてた。皿配りまーす」
「つかこれ鍋雑談動画? 何喋るべきなんだ?」
「鍋食ってウメーって言ってりゃいーんじゃねーの。あー、担々うめー! マイ醤を増し増しで、っと」
「チータ、この動画使って私信やっていい?」
「あ~ん? 私信だあ?」
「ナユー、元気かー?」
「ああ、確かにナユさんは辛いの大好きだった」
「辛み増し増しで思い出した」
「アイツぜってー味覚障害だって」
「去年ナユさんがカレーうどんを作ってくれて、それを俺の彼女と、ナユさんの友達と一緒に食べてたんだけど、一味唐辛子の瓶てあるじゃん」
「あるな。うどんとかそばにかけても美味い」
「ナユさん1回に瓶の半分くらいをザーッとうどんの上にかけてて」
「アイツが甘み辛みに対して極端な味覚であることは否定せん」


end.


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唐突にナユさんのことを思い出すなど。カレーうどんの件も懐かしい。
リン様多忙問題は結構メンバー内でも話題になってる様子?

(phase3)

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