2025

■ウワサに聞く楽しいの!

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「カズ、悪いな。夜勤明けに時間取ってもらって」
「ううん、全然平気だよ。どったのカオル」

 昨日、カオルから「明日家に行って大丈夫か」と連絡が入った。いつものようにご飯でも食べに来るのかなと思って、夜勤明けで良ければ全然大丈夫だよと返信をした。慧梨夏は仕事だって聞いてたけど、慧梨夏が行ってるならカオルが休みのこともあるよなーって。弁当が必要な日でもなかったし(弁当のスケジュールは2週間ごとにもらっている)。

「今日な、ウチの大学のオープンファームがあって、それに行ってきたんだ」
「あー! ウワサに聞く星ヶ丘のめっちゃ楽しいイベントでしょ!? 今年も予定合わなかったーちきしょい」

 星ヶ丘大学のオープンファームというのは、農学部が開催するイベントで、学業の一環で育てた農産物や畜産物、それらの加工品などが買えるらしい。野菜とかもめっちゃ売ってるって話だし、俺も行ってみたいって前々から言ってるんだけど、なかなか予定が合わないよな。何でだろ。おかしくね?

「で、日頃から世話になってるお礼ってことで、これを」
「えっ!?」

 ドンとカオルが出したのは米10キロ。しかも銘柄米。日頃から世話になってるお礼なあ。まあ、確かに食の面ではお世話してるっちゃお世話してるけど、弁当を作るなら1人分も2人分も一緒だし、大体その分は毎月ちゃんとお金でもらってる。米10キロなんて、米の高騰が叫ばれてる今となっちゃそんな簡単に出すようなモンでもないんだって。

「あの、カオル……聞くのも怖いけど、これでいくらぐらいになんの…?」
「4000円だったかな? それくらい」
「やっす!」
「だから競争率もヤバくて、俺の足じゃ絶対取れないから山口に走ってもらった」
「おおー、さすが俺のヒーローだぜよっぺ。でも、よっぺが走ってる間、カオルは何してんの?」
「俺は競争率の高い所を迂回して野菜を取りに行った。あっ、それも持って来てるしぜひ使ってくれ」
「マジでー、ありがとー助かる~。あれっ、でもこんなのどーやって持って来たの? カオル徒歩か自転車っしょ?」
「こないだ二輪買ったんで、それで」
「えー!」

 カオルは基本徒歩か自転車、それから地下鉄で移動してるって話だけど、最近会う機会が増えた高ピーと話してるうちに乗り物があるのはいいなって思って、原付二種の免許を取ってサクッと乗り物を買ったんだそうだ。ただ、徒歩と自転車でも十分間に合ってるのでそうそう毎日乗ってるワケじゃないみたいだ。

「って言うかカオル、俺もバイク乗りなんだから相談してくれても良かったのに!」
「そうだよな、何でか全然その発想にならなかった。まあ、身近なところで言えば戸田のバイクも見てたし、サクッと乗るなら二種かなとは思ってたんだ。本音を言えば車が欲しいけど、それはもうちょっと先で」
「ああー、つばちゃんを見てたらねー。二種も選択肢に入ってくるよね。でも新基準ではなかったんだね」

 とにもかくにもそんな事情で、米を含めた荷物を持って来るのはさほど大変ではなかったとのこと。高ピーから注意されたのは、二輪で移動してると不意にお酒が飲みたくなっても絶対に飲めない、飲んじゃダメだということ。これはもちろんそうだね。でもカオルもお酒は大好きだから、結構念押しされたみたい。特に俺の家でのノリと勢いは怖いぞって。

「えっ、って言うか下にそのバイクあるってこと? 見せて見せて」
「まだ持って来た物の披露が終わってないし、後でな」
「えー。じゃあ、後でね」
「そんで、これ。持って来る間にちょっと冷めちまったんだけど、鶏の唐揚げな」
「おっ、うまそー。今日の夕飯に出そうかな。この唐揚げって、何か凄いの?」
「スーパーで鮮魚コーナーとか行くと、店員の人が魚捌いてくれるサービスとかってあるだろ」
「見たことあるね」
「学生がそこで鶏を捌くんだよ」
「え」
「それはもう新鮮な鶏肉だ。俺たちは命をいただいているのだということを再確認させられた」
「うへー。言ってることはわかるんだけど、そこで捌くのかー……」
「カズ、そーゆーの苦手か」
「多分、目閉じちゃうかも」
「まあ、人を選ぶことであるのはわかる。山口も本来そういうのあんま得意じゃないけど、アイツ、焼き鳥屋でバイトしてたし将来は自分の店構えるのが目標だろ。だから絶対に見とかないとっつって結構無理して凝視してたな」

 唐揚げの味はとんでもなく美味いのでぜひ適切にあっため直していただいてくれ、とカオルは淡々と言う。俺は鶏を捌くところを直接見てはいないけど、命をいただいているのだということを肝に銘じてありがたくいただこうと思う。鶏だけじゃなくて農作物という広い意味での植物も、命ある物のカテゴリーでいいだろう。

「あっ、思い出した。そーいや慧梨夏から聞いたけど、何か鍋食べたいんだって?」
「そーそー! 冬の間に1回晩飯サブスク権使って鍋食いたいなって話をしてたんだよ。追加費用がかかるなら喜んで払います、っていうトコまで」
「こっちとしては全然オッケーだしそれはもう大歓迎だよ」
「こないだ高崎と鍋やってたんだけど、お前の鍋がどんだけ凄かったかっつー話聞いてたら羨ましくなって。前に定例会でやったのは圭斗のおでんだったし」
「あーあー、あったあった! 懐かしー! 鍋やるなら3人じゃ味気ないしもうちょっと人がいてもいいかなって思うよなー」
「伊東さんは高崎に声かけるって言ってたけど」
「やるんだったら具体的に日程とか考えないとね。仕事のシフトとか見ながらになりそうだけど」

 ガチるなら絶対夜勤明けか休みの日。何鍋がいいかなー。そんなこと考えてたら今から楽しくってしょうがないな。

「そしたらカオル、バイク見せてよ」
「オープンファームの成果はまだ終わってないぞ」
「えっ、まだあるの!?」


end.


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何か知らんうちにPさん乗り物買ってたんだけど。ノリと勢いって怖い。

(phase3)

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