2025

■既にある年末に向けて

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 12月に休みがあるワケねーだろふざけんなぶっ殺すぞとLINEが入ると、夏は本当に終わったのだなと理解する。同様に、青山さんから“打ち合わせ”と称して会おうという連絡が来ると、いよいよ年の瀬かと時間と季節が進んでいることを実感する。

「リン君て今年もmish-mashで出るの?」
「一応そのような話にはなっている」
「だよね、カン君がやらないはずないよね」

 年末の音楽祭は今年で3回目になろうとしている。今年も青山さんは主催としてライブハウスや出演者などの調整を行っている。社会人2年目になったということで、仕事とプライベートのペース配分などにも余裕が出来、より主催としての練度が上がっているようだ。
 青山さんはブルースプリング名義で出演する。オレは現状ブルースプリングとmish-mashで出ることになっている。しかしオレはまあまあ忙しくしているのでブルースプリングの新曲を書く余裕はあまりなく、出来たとして1曲である旨は伝えた。
 ブルースプリングというバンド自体、実質的に開店休業状態だ。年に一度演るか演らないかという程度なので、去年書いた曲でも十分新曲扱いで大丈夫だろうと、学業への労いをもらった。どうもオレは周囲のハードワーカーらと比較するとマルチタスクが苦手であるようだ。
 一方、ゲーム実況者グループ内の寄せ集めであるmish-mashというバンドは、カンノが例によって曲を書いているようで、書けるごとにサンプルの音源を内輪のグループチャットに上げてくる。スガノと塩見さんはいつも反応が早いなと思いながら、オレが一番最後に返信をするという流れだ。

「mish-mash、普通に凄くカッコいいから今年も楽しみなんだよね。インストピアノジャズロックでいいのかな?」
「あのバンドはカンノが「鍵盤が2人いることをフルに生かしたい!」と言って鼻息を荒くしているな」
「だよねえ。もちろんたいっちゃんは安定だし塩見さんもカッコいいんだけど、鍵盤が強いよね」
「カンノとセッションをするときは、大体オレがピアノでカンノがシンセを担当しているという扱いになるが、mish-mashは曲によっては2人ともが“ピアノ”担当になる。個人的にはそういう曲の方が演奏するに当たっては好ましいと思っている」
「リン君の好みのバンド編成ねえ~。その辺てやっぱアレなのかな? ゴリゴリのエレクトロニカよりはアンプラグドにより近いクラシックな感じがいいとか?」
「あまり深く考えたことはないが、可能性としてはありそうだ」

 ただ、如何せんmish-mashは曲の難易度が高い。カンノがバンドメンバーに甘えて好き放題暴れ散らかしているからだ。聞くに、仕事で作る音楽と趣味で作る音楽はあくまで別物で、仕事では注文に制限がある分、趣味の方では思い切り好き勝手にやるのだと。

「こないだリン君と北辰に行ってさ、路上のパフォーマンスを見てからずーっと! ブルースプリングでやりたい欲が高い状態で維持されてるワケ」
「路上をか」
「路上も出来れば最高だけど、リン君が忙しいなら今年は無理は言わないよ。音楽祭で暴れられれば満足出来ます」
「2人編成のブルースプリングの場合、どうしても音がやや軽くなるという問題があるだろう」
「そうだね、ベースがいないから」
「その前提で書いた曲は音を重くするためにピアノがやや暗くなりがちで、路上でやるには向かんと思っていたところだ」
「セットリストどうしようねー」
「そんなものはいつものように、適当に飲みながら音を合わせて作る流れになるのだろう」
「でもリン君忙しいでしょ?」
「オレ程の天才ともなると、最低限の時間があればその程度のタスクは完了させられる。音楽祭の予定は“既にある物”としてスケジュールに連なっている。その関連の時間を確保することも必要なタスクのうちだ」
「リ、リン様~!」
「気色悪い、離れろ」

 音楽祭をそんなに大事に思ってくれているなんて~と手を握ってくるのに対しては、無言で振り払う。大事かどうかはともかくアンタは問答無用でオレのスケジュールを押さえるだろうし、イベント自体、参加してみると悪くないからまた出ているだけに過ぎん。

「本当は芹ちゃんも含めた完全体ブルースプリングをお届け出来れば最高なんだけどねー、それが出来るようになるまで何としても体裁を維持することだね」
「だとすれば、青山さんの脳が改造されない限りは難しいかと」
「えっ、脳!? 怖いこと言うねリン君」
「そうでなければ性欲減退の薬物療法でも行うのだな」
「え~? 性欲あってこその俺だと思わない? ドラマーは明るい変態って言うじゃん」
「“明るい”を免罪符にするな。アンタは病的な変態だ。アブノーマルにも程がある。だからあの人に逃げられるのだろう」

 春山さんがどこに逃げているのかは一応聞いているが、それをこの人に伝えると必ず面倒なことに巻き込まれるので死んでも言うかと誓っている。ブルースプリングの完全体など、余程のことがない限り実現はせんだろう。カンノはきゃんきゃんと喚いているが、こちらにはこちらの事情がある。

「リン君、勉強しながら本当にお疲れさまだよねえ」
「仕事をしている人に言われてもな」
「いやあ、定時で働いてるだけの人間よりちゃんとゴリゴリに研究してる学生の子の方がハードワークだよ。インフルエンザが流行るのも早くなってるし、くれぐれも体には気をつけて」
「アンタもな」
「芹ちゃんから聞いたことがあってさ」
「何と」
「リン君て、肝心なときにインフルエンザでいなくなることが多いとかそんなような感じのことを」
「確かにあの人のスターウォーズ休暇とインフルエンザへの罹患が重なった時には恨まれた覚えがあります」
「よく寝て、お風呂にも入って、ホルモンバランス整えて!」
「アンタもな」


end.


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ピアノ×ドラムのインストバンドのライブを見て年末が近いことを思い出す。
リン様は忙しくしているけど、プライベートな時間がひとつもないということでもなさそう。
青山さんは相変わらずああなので、しばらく完全版の披露はなさそう。

(phase3)

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