2025
■軍曹に欣喜雀躍
++++
「真希ちゃんお久し振りっす」
「おっ奏多、元気にしてたかい?」
「超元気っすよ!」
「それじゃあ久々に簡単なラリーでもするか。腕が鈍ってないか見てやるよ」
大学祭の合間の自由時間に、バドサーの方に顔を出す時間を作って会いに来たのはこの間の春に卒業してった真希ちゃんだ。真希ちゃんはパッと見た感じあんまり変わってなさそうで、俺の腕を試そうとするところなんかもまんまだなーって感じがして超楽しい。やっぱ世話になってた人に会えると嬉しいわな。かっすーも来れば良かったのに。
「ところで真希ちゃん、前原さんて来てないんすか?」
「昨日はロボコンの方に顔出してたはずで、今日はどうかな? ゼミメンで飲んでたはずだし二日酔いが治ってたら来るんじゃないか?」
「あの人は相変わらずっすねー。来てたら勝負仕掛けてやろうと思ったのに」
「アンタも相変わらずだよ。ねえ佑人」
「そうですね。まあ、こちらとしてはその方が助かりますけど」
「うるせーよお前は」
真希ちゃんとお遊びラリーをやりながら、近況を聞いたり話したり。さすがに情報棟の裏とかじゃガチマッチは出来ないんで、落とさない程度のウォーミングレベルだ。
「あ! そーいや真希ちゃん、昨日菜月サン来てったっす」
「おっ、菜月に会った!? 生きてたか」
「バリバリ生きてたっすよ」
「そーかそーか、ならよかった」
「明日真希ちゃん来るっすよっつったら、よろしく伝えておいてくれって投げられて。自分で真希ちゃんにLINEでも何でもすればいいのにって言ったら、ゴリ押しされました」
「菜月ってのはそーゆーヤツだよ。まあ、生きてんのが分かったから良しとするよ」
「え。あの人そーゆー感じなんすか」
「コミュニケーションなんかは必要最低限でいいってタイプだし、口数も、黙ってる時はずっと黙ってるし、LINEは既読付くのが嫌って言って頑なにメールで連絡とるタイプだし」
真希ちゃんが言うには菜月サンは結構な根暗らしい。ちょっと意外に思えたが、クールではあるけど明るくキャッキャするタイプではなさそうよな、とは少し納得した。そもそも奈々さんや4年生の先輩たちによれば、少し前までのMMPは陰の集団だったらしい。今年の春に卒業してった人らも例に漏れず陰の者。つまりそういうことだ。
「そんで、橘亮介から聞いたことを確かめたくて、菜月サンとも撃ち合いしてたんすよ」
「亮介ってのはアレだろ、菜月の地元の悪友でマエトモのライバルとかの」
「そーっす」
「この間、彼が在籍する青丹の大学のサークルと交流会をやってたんです。奏多は橘さん本人からご指名されて」
「へえ、菜月に基礎を仕込んだすっごい性格悪いサウスポーって話だろ。どうだったんだい」
「ゲーム自体は普通に負けました。噂通りゲーム中の性格はすっごい悪かったっす」
「あー、やっぱり」
「やっぱりって何すかやっぱりって!」
「奏多はねえ、普段は飄々としてる素振りなのにバドミントンの話になるとまっすぐ過ぎんだよ。だからマエトモに遊ばれるんだって話は何遍もしただろ?」
「何遍も聞きましたよ」
「アンタは頭がいいからある程度先を読むことは出来るけど、あくまで正攻法と言うか、定石の範囲内での読みに過ぎないんだよな。マエトモだとか、亮介みたいな連中にはそれこそコロッコロよ」
そう言いながら真希ちゃんは手の平を回している。そうそう、と佑人も便乗して頷いてるのには普通に腹が立ったけど、そういうところが自分の甘さでもある。今となっては勝ちに貪欲なプレイングはしてないけど、負けるとやっぱ悔しいし、何がダメだったのか反省はしたくなるのでそういう性分なんだと思う。
「それで、菜月の腕はどうだった? そこらの素人よりはやれただろ」
「そんなモンじゃないっす。あの人マジで佑人ばりに拾いやがります」
「そうだろそうだろ。守備範囲が広いんだよ」
「へえ、奏多が俺を比較対象にするとか、俄然気になって来たな」
「や、バドミントン自体は普通に素人だけど、あの人何やってたんでしたっけ? 体育会系って話ですけど」
「菜月がやってたのはバスケだね」
「ああー、なるほど。反射いいワケだ。あとアレ。ラケットのスイッチが厄介」
「菜月曰くあれは"横着"らしいな。あんま派手に動いて体力消耗したくないから、届く方の手で拾うっていう」
「あの感じだとちゃんとしたコートで、ちゃんとしたクツでやられてたら多分俺もバテてたかもわかんないっすね」
昨日はコンクリの上で、しかもあの人はピンヒールのブーツであんだけ食らいついて来やがったから、ガチられると延々ラリーが続いてた可能性はある。あと、野坂さんに言うとぶっ殺されるだろうがあの人も多分そこまで性格は良くないから、最悪いいトコまでやられる可能性はある。
「えっ、俺もやりたいんだけどその先輩と」
「張り合おうとすんなよ佑人、ちょっと自分よりディフェンスいいかもって人現れたからって」
「奏多、佑人とチェンジで」
「えっ。あ、はい」
「何かアンタから調子に乗ってる感が滲んでたから、久々に思いっ切り打ち込んでやるよ。全部拾いな」
「ひゅ~っ、お山の大将なのバレてんぞ佑人~」
「うるさい奏多。真希さん、お手柔らかにお願いします」
「ナメたこと言ってんじゃない。行くよ!」
「っぱ軍曹はこうでなくちゃ!」
佑人が真希ちゃんにボコボコにされてんのを見て俺はやっぱこれが軍曹よな~と感激したし、この様子をチラッと見に来た麻生さんも「真希さんカッコいい!」と憧れを募らせた様子。真希ちゃんを見ちゃったら麻生さんはやっぱまだ軍曹と呼ぶには早いわな。いや、真希ちゃんが昇進した可能性は十二分にあるが。パワーとキレが相変わらずヤベえ。
「はーっ……真希さんヤっバい」
「つか真希ちゃん全然ブランク感じないっすね」
「アタシだろ? 会社でバドミントンクラブに入ってるからね。ブランクは一切ないよ」
「そりゃ卒研やってる4年は叩き直されるワケだ」
end.
++++
菜月さんは、と言うかフェーズ1のMMPは陰の集団。
(phase3)
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「真希ちゃんお久し振りっす」
「おっ奏多、元気にしてたかい?」
「超元気っすよ!」
「それじゃあ久々に簡単なラリーでもするか。腕が鈍ってないか見てやるよ」
大学祭の合間の自由時間に、バドサーの方に顔を出す時間を作って会いに来たのはこの間の春に卒業してった真希ちゃんだ。真希ちゃんはパッと見た感じあんまり変わってなさそうで、俺の腕を試そうとするところなんかもまんまだなーって感じがして超楽しい。やっぱ世話になってた人に会えると嬉しいわな。かっすーも来れば良かったのに。
「ところで真希ちゃん、前原さんて来てないんすか?」
「昨日はロボコンの方に顔出してたはずで、今日はどうかな? ゼミメンで飲んでたはずだし二日酔いが治ってたら来るんじゃないか?」
「あの人は相変わらずっすねー。来てたら勝負仕掛けてやろうと思ったのに」
「アンタも相変わらずだよ。ねえ佑人」
「そうですね。まあ、こちらとしてはその方が助かりますけど」
「うるせーよお前は」
真希ちゃんとお遊びラリーをやりながら、近況を聞いたり話したり。さすがに情報棟の裏とかじゃガチマッチは出来ないんで、落とさない程度のウォーミングレベルだ。
「あ! そーいや真希ちゃん、昨日菜月サン来てったっす」
「おっ、菜月に会った!? 生きてたか」
「バリバリ生きてたっすよ」
「そーかそーか、ならよかった」
「明日真希ちゃん来るっすよっつったら、よろしく伝えておいてくれって投げられて。自分で真希ちゃんにLINEでも何でもすればいいのにって言ったら、ゴリ押しされました」
「菜月ってのはそーゆーヤツだよ。まあ、生きてんのが分かったから良しとするよ」
「え。あの人そーゆー感じなんすか」
「コミュニケーションなんかは必要最低限でいいってタイプだし、口数も、黙ってる時はずっと黙ってるし、LINEは既読付くのが嫌って言って頑なにメールで連絡とるタイプだし」
真希ちゃんが言うには菜月サンは結構な根暗らしい。ちょっと意外に思えたが、クールではあるけど明るくキャッキャするタイプではなさそうよな、とは少し納得した。そもそも奈々さんや4年生の先輩たちによれば、少し前までのMMPは陰の集団だったらしい。今年の春に卒業してった人らも例に漏れず陰の者。つまりそういうことだ。
「そんで、橘亮介から聞いたことを確かめたくて、菜月サンとも撃ち合いしてたんすよ」
「亮介ってのはアレだろ、菜月の地元の悪友でマエトモのライバルとかの」
「そーっす」
「この間、彼が在籍する青丹の大学のサークルと交流会をやってたんです。奏多は橘さん本人からご指名されて」
「へえ、菜月に基礎を仕込んだすっごい性格悪いサウスポーって話だろ。どうだったんだい」
「ゲーム自体は普通に負けました。噂通りゲーム中の性格はすっごい悪かったっす」
「あー、やっぱり」
「やっぱりって何すかやっぱりって!」
「奏多はねえ、普段は飄々としてる素振りなのにバドミントンの話になるとまっすぐ過ぎんだよ。だからマエトモに遊ばれるんだって話は何遍もしただろ?」
「何遍も聞きましたよ」
「アンタは頭がいいからある程度先を読むことは出来るけど、あくまで正攻法と言うか、定石の範囲内での読みに過ぎないんだよな。マエトモだとか、亮介みたいな連中にはそれこそコロッコロよ」
そう言いながら真希ちゃんは手の平を回している。そうそう、と佑人も便乗して頷いてるのには普通に腹が立ったけど、そういうところが自分の甘さでもある。今となっては勝ちに貪欲なプレイングはしてないけど、負けるとやっぱ悔しいし、何がダメだったのか反省はしたくなるのでそういう性分なんだと思う。
「それで、菜月の腕はどうだった? そこらの素人よりはやれただろ」
「そんなモンじゃないっす。あの人マジで佑人ばりに拾いやがります」
「そうだろそうだろ。守備範囲が広いんだよ」
「へえ、奏多が俺を比較対象にするとか、俄然気になって来たな」
「や、バドミントン自体は普通に素人だけど、あの人何やってたんでしたっけ? 体育会系って話ですけど」
「菜月がやってたのはバスケだね」
「ああー、なるほど。反射いいワケだ。あとアレ。ラケットのスイッチが厄介」
「菜月曰くあれは"横着"らしいな。あんま派手に動いて体力消耗したくないから、届く方の手で拾うっていう」
「あの感じだとちゃんとしたコートで、ちゃんとしたクツでやられてたら多分俺もバテてたかもわかんないっすね」
昨日はコンクリの上で、しかもあの人はピンヒールのブーツであんだけ食らいついて来やがったから、ガチられると延々ラリーが続いてた可能性はある。あと、野坂さんに言うとぶっ殺されるだろうがあの人も多分そこまで性格は良くないから、最悪いいトコまでやられる可能性はある。
「えっ、俺もやりたいんだけどその先輩と」
「張り合おうとすんなよ佑人、ちょっと自分よりディフェンスいいかもって人現れたからって」
「奏多、佑人とチェンジで」
「えっ。あ、はい」
「何かアンタから調子に乗ってる感が滲んでたから、久々に思いっ切り打ち込んでやるよ。全部拾いな」
「ひゅ~っ、お山の大将なのバレてんぞ佑人~」
「うるさい奏多。真希さん、お手柔らかにお願いします」
「ナメたこと言ってんじゃない。行くよ!」
「っぱ軍曹はこうでなくちゃ!」
佑人が真希ちゃんにボコボコにされてんのを見て俺はやっぱこれが軍曹よな~と感激したし、この様子をチラッと見に来た麻生さんも「真希さんカッコいい!」と憧れを募らせた様子。真希ちゃんを見ちゃったら麻生さんはやっぱまだ軍曹と呼ぶには早いわな。いや、真希ちゃんが昇進した可能性は十二分にあるが。パワーとキレが相変わらずヤベえ。
「はーっ……真希さんヤっバい」
「つか真希ちゃん全然ブランク感じないっすね」
「アタシだろ? 会社でバドミントンクラブに入ってるからね。ブランクは一切ないよ」
「そりゃ卒研やってる4年は叩き直されるワケだ」
end.
++++
菜月さんは、と言うかフェーズ1のMMPは陰の集団。
(phase3)
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