2025
■先輩ってすっごいんだ
++++
「ああ! 野坂先輩、いらっしゃって良かったです」
「どした?」
「あの、野坂先輩のお母さんにぜひお礼をお伝えしたくて」
「や、意味がわからない」
俺の顔を見つけたと思えば、俺の母さんにお礼? 春風の話がぶっ飛び過ぎて俺には何が何だか。春風と母さんに接点があるとは考えにくいし。ワンチャン科学館で会う可能性はあるかもだけど、そこまでの認知はないだろう。
「話せば少し長くなってしまいますが」
「いいよ、聞くよ。自分の親が絡んでるらしい話だし、気になるから」
「ええと、話は遡れば2週間ほど前のことになるかと思います。実は、徹平くんとケンカをしてしまいまして」
「えっ!? 春風ってすがやんとケンカすんの!? ちなみに、その内容は聞いても差し支えない?」
「大丈夫です。ええと、『謎がより多いのは地面の下か空の上か』という話なのですが」
「はあ」
思わず宇宙猫かエジプト壁画のような顔になってしまったが、要は、春風は天文学、すがやんは考古学という互いの専攻の話でヒートアップしたという話なのだろう。この場合、テーマがテーマだしケンカと言うより学術的な議論とか論戦と言う方が多分ニュアンスが合うような気がする。
春風の言い分は、宇宙は今この瞬間も物凄い速度で広がり続けているし、既にある部分にしてもまだわからないことがほとんどなので、謎は増え続けているしより多い。すがやんの言い分は、現段階でわかっている歴史も暫定的な物だし、地面に埋もれた人の営みは科学だけで正解は導けない。だから謎がより多い。とのことだった。
「春風、ちなみにそのケンカって解決したの?」
「このテーマの結論はまだ出ていませんが、仲直りは済んでいますのでご心配なく」
「それで俺の親がどう関係すんの?」
「徹平くんから私とケンカをしていると聞いた菅谷先生が、先日星港市科学館で行われていた深海展のチケットを下さったのです。2人で行って、普段と違う領域の知見を深めて来なさいと」
「ほう」
「そのチケットを菅谷先生に下さったのが、野坂先輩のお母さんだと聞いたのです」
「ナ、ナンダッテー!? どういう繋がりだ!?」
「菅谷先生の高校の先輩なんだそうですよ。科学部でそれはそれはお世話になっていたと。今でも憧れなんだそうです」
確かにすがやんも青浪っ子だから、そういう世間の狭さ的なヤツが全くないとは言い切れないっちゃ言い切れないよなとは思う。高校の先輩後輩。はあ。って言うか母さんて高校で科学部だったのか。そんな話は家じゃ全然しないから、こうやって第三者から聞かされると新鮮だ。
「そういうことなので、ぜひ野坂先輩のお母さんにお礼を伝えたかったのです」
「そういうことなら。伝えておきます。確かに預かりました」
「よろしくお願いします」
「でも、学生時代の先輩とか後輩と何十年経ってもいい関係でいられるのは普通に羨ましいかもしれない」
「本当ですよね」
「俺で例えれば、50になっても菜月先輩や圭斗先輩とお付き合いがあるってことだろ? 凄いなあ」
「菅谷先生によれば、野坂先輩のお母さんは本当に凄い方でいらっしゃるそうで」
「そうか? 俺から見ればただのイケメン好きの主婦だけど」
「高校時代からリーダーシップが凄かったそうですし、星ヶ丘大学の理工学部を首席で卒業されているという話ですよ。それから、青浪のあらゆる人脈が繋がっているそうで、青浪政財界の大物も野坂先輩のお母さんには頭が上がらないとか」
「どこまでが本当かわからないけど、え、首席ってマジ?」
「私の聞いた話では。この母にしてこの子あり、に見えますが」
星ヶ丘の理工学部を出てることは知ってたけど、成績の話なんかしないから全然知らないよな。って言うか星ヶ丘って理系の偏差値が高いことで有名じゃないか。向島大学の情報科学部が56くらいで、星ヶ丘の理工って62とか63はあったよな。その話がマジなら我が親ながらヤバいな。どうせ俺は安牌を取りましたとも。ランクだけなら星大にも行けたけど、確実性って大事。それより。
「すがやんの母さんが憧れの先輩を盛ってる説はないか? 憧れの先輩はずっと凄いことを俺はよーく知ってるぞ」
「菅谷先生ですし無いと思いたいですが、憧れの先輩を語る際に、やや誇張した表現になってしまうというのは心理として理解は出来るので、全く無いとは言い切れないかもしれません」
「何か、少し科学好きなただのイケメン好きの主婦だと思ってた親が伝説の傭兵だったことを知ったみたいな感情を抱いてる」
「家族でも知らないことはたくさんあるでしょうし、同じ時代を共にした人だからこそ知っていることもたくさんあるでしょうね」
「なるほど」
親の謎にはこれ以上踏み込まないことにし、科学館に勤めるイケメン好きの主婦で留めておくことにした。こういう場合、必要以上に踏み込むとロクでもないことに巻き込まれるのが定石だ。
「深海展は本当に面白かったですし、このチケットを持っていると水族館の入館料が少し安くなるというキャンペーンが行われていたので展示を見た後で水族館に行ったのですが、そこでちとせさんと千颯さんと会いまして、水族館の歩き方も教えてもらえて楽しく過ごせました」
「丸く収まったようで何より」
空の上でも地面の下でもなく海の底。確かに海、特に深海も謎だらけの領域ではあるらしいんだよな。あー、俺も菜月先輩と科学館に行きてー…! 春風とこの手の話をするとまあここに着地するよな。クソッ、見せつけてきやがって。いや、動いてない俺が悪いんだけれどもだ。50になっても付き合いがある先輩か。いや、その付き合いの名前が肝心なんだよ。
end.
++++
すがはるちゃんのケンカの時期が9月下旬から10月上旬くらいかな、と決まりそうな感じ。
ナノスパはご都合主義で出来ています。ノサママの千佳子さんとやんママのくみちゃんは先輩後輩。
(phase3)
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「ああ! 野坂先輩、いらっしゃって良かったです」
「どした?」
「あの、野坂先輩のお母さんにぜひお礼をお伝えしたくて」
「や、意味がわからない」
俺の顔を見つけたと思えば、俺の母さんにお礼? 春風の話がぶっ飛び過ぎて俺には何が何だか。春風と母さんに接点があるとは考えにくいし。ワンチャン科学館で会う可能性はあるかもだけど、そこまでの認知はないだろう。
「話せば少し長くなってしまいますが」
「いいよ、聞くよ。自分の親が絡んでるらしい話だし、気になるから」
「ええと、話は遡れば2週間ほど前のことになるかと思います。実は、徹平くんとケンカをしてしまいまして」
「えっ!? 春風ってすがやんとケンカすんの!? ちなみに、その内容は聞いても差し支えない?」
「大丈夫です。ええと、『謎がより多いのは地面の下か空の上か』という話なのですが」
「はあ」
思わず宇宙猫かエジプト壁画のような顔になってしまったが、要は、春風は天文学、すがやんは考古学という互いの専攻の話でヒートアップしたという話なのだろう。この場合、テーマがテーマだしケンカと言うより学術的な議論とか論戦と言う方が多分ニュアンスが合うような気がする。
春風の言い分は、宇宙は今この瞬間も物凄い速度で広がり続けているし、既にある部分にしてもまだわからないことがほとんどなので、謎は増え続けているしより多い。すがやんの言い分は、現段階でわかっている歴史も暫定的な物だし、地面に埋もれた人の営みは科学だけで正解は導けない。だから謎がより多い。とのことだった。
「春風、ちなみにそのケンカって解決したの?」
「このテーマの結論はまだ出ていませんが、仲直りは済んでいますのでご心配なく」
「それで俺の親がどう関係すんの?」
「徹平くんから私とケンカをしていると聞いた菅谷先生が、先日星港市科学館で行われていた深海展のチケットを下さったのです。2人で行って、普段と違う領域の知見を深めて来なさいと」
「ほう」
「そのチケットを菅谷先生に下さったのが、野坂先輩のお母さんだと聞いたのです」
「ナ、ナンダッテー!? どういう繋がりだ!?」
「菅谷先生の高校の先輩なんだそうですよ。科学部でそれはそれはお世話になっていたと。今でも憧れなんだそうです」
確かにすがやんも青浪っ子だから、そういう世間の狭さ的なヤツが全くないとは言い切れないっちゃ言い切れないよなとは思う。高校の先輩後輩。はあ。って言うか母さんて高校で科学部だったのか。そんな話は家じゃ全然しないから、こうやって第三者から聞かされると新鮮だ。
「そういうことなので、ぜひ野坂先輩のお母さんにお礼を伝えたかったのです」
「そういうことなら。伝えておきます。確かに預かりました」
「よろしくお願いします」
「でも、学生時代の先輩とか後輩と何十年経ってもいい関係でいられるのは普通に羨ましいかもしれない」
「本当ですよね」
「俺で例えれば、50になっても菜月先輩や圭斗先輩とお付き合いがあるってことだろ? 凄いなあ」
「菅谷先生によれば、野坂先輩のお母さんは本当に凄い方でいらっしゃるそうで」
「そうか? 俺から見ればただのイケメン好きの主婦だけど」
「高校時代からリーダーシップが凄かったそうですし、星ヶ丘大学の理工学部を首席で卒業されているという話ですよ。それから、青浪のあらゆる人脈が繋がっているそうで、青浪政財界の大物も野坂先輩のお母さんには頭が上がらないとか」
「どこまでが本当かわからないけど、え、首席ってマジ?」
「私の聞いた話では。この母にしてこの子あり、に見えますが」
星ヶ丘の理工学部を出てることは知ってたけど、成績の話なんかしないから全然知らないよな。って言うか星ヶ丘って理系の偏差値が高いことで有名じゃないか。向島大学の情報科学部が56くらいで、星ヶ丘の理工って62とか63はあったよな。その話がマジなら我が親ながらヤバいな。どうせ俺は安牌を取りましたとも。ランクだけなら星大にも行けたけど、確実性って大事。それより。
「すがやんの母さんが憧れの先輩を盛ってる説はないか? 憧れの先輩はずっと凄いことを俺はよーく知ってるぞ」
「菅谷先生ですし無いと思いたいですが、憧れの先輩を語る際に、やや誇張した表現になってしまうというのは心理として理解は出来るので、全く無いとは言い切れないかもしれません」
「何か、少し科学好きなただのイケメン好きの主婦だと思ってた親が伝説の傭兵だったことを知ったみたいな感情を抱いてる」
「家族でも知らないことはたくさんあるでしょうし、同じ時代を共にした人だからこそ知っていることもたくさんあるでしょうね」
「なるほど」
親の謎にはこれ以上踏み込まないことにし、科学館に勤めるイケメン好きの主婦で留めておくことにした。こういう場合、必要以上に踏み込むとロクでもないことに巻き込まれるのが定石だ。
「深海展は本当に面白かったですし、このチケットを持っていると水族館の入館料が少し安くなるというキャンペーンが行われていたので展示を見た後で水族館に行ったのですが、そこでちとせさんと千颯さんと会いまして、水族館の歩き方も教えてもらえて楽しく過ごせました」
「丸く収まったようで何より」
空の上でも地面の下でもなく海の底。確かに海、特に深海も謎だらけの領域ではあるらしいんだよな。あー、俺も菜月先輩と科学館に行きてー…! 春風とこの手の話をするとまあここに着地するよな。クソッ、見せつけてきやがって。いや、動いてない俺が悪いんだけれどもだ。50になっても付き合いがある先輩か。いや、その付き合いの名前が肝心なんだよ。
end.
++++
すがはるちゃんのケンカの時期が9月下旬から10月上旬くらいかな、と決まりそうな感じ。
ナノスパはご都合主義で出来ています。ノサママの千佳子さんとやんママのくみちゃんは先輩後輩。
(phase3)
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