2025

■どんな仕事も懸命に

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 10月になり、取扱製品の販売元の中間決算が終わったので、それまでは山のようにあった出荷も少し落ち着きを見せてきた。ただ、繁忙期自体が過ぎ去ったワケではない。これから始まるのはダウン出荷の最盛期だ。ここから半月ほどは、ダウン製品との戦いが始まる。

「越野くーん! とりあえずこっち半分! こっち側半分を奥にこう! そうすればとりあえず出荷のスペースは確保出来るから!」
「了解でーす!」

 俺が駆り出されたのはB棟1階だ。ここで何をするのかと言うと、横持ちの仕事……ではなく水掃きの仕事だ。台風に刺激された雲がやりやがったんだ! B棟1階は、大雨になると水浸しになるという、倉庫としては正直欠陥しかない場所だ。しかもダウンの主戦場はここ。今日も例に漏れずびっちゃびちゃ。
 ただ、びっちゃびちゃだからと言って出荷を止めることは出来ない。量が少ないときなら出す物をピックして乾いたところで作業をすればいいけど、この時期は出荷量がとんでもないのでそれも出来ない。なのでせめて水を退かすだけ退かして作業スペースを確保するそうだ。俺はひたすらワイパーを手に作業スペースを守る係だ。ディフェンス!

「越野君、一旦これで壁作っちゃって」
「はーい」

 フロアの奥の方に水を持って行って、ひたすら作業スペースから水を遠ざけるだけの仕事。フロア責任者の高井さんが個人で用意した吸水性の土嚢(再利用可)を持ってきてくれたんだけど、2つしかないので置く場所は慎重に考える必要がある。

「あー、えー……ここかな! で、タオルをこう!」

 従来通りの壁材として古いバスタオルも預かっていたので、使い方を考えつつ壁を作る。ここからは1ヶ所にまとめた水をバケツに汲んで捨てての繰り返しだ。2階の冷風機という名の実質的除湿器は3台フルに動いている。掃き出せ、汲み出せ。
 俺が水と格闘する中、背中の方で作業が動いてんなあという声が響いている。ただ、俺はひたすらバケツに水を汲んでは捨てての繰り返しなので、出荷の進捗などは知る由もない。粗方作業スペースが確保出来たら水は放置でもいいんじゃねーかと思ったけど、奥は奥で入庫作業があるので水は出さないといけないそうだ。
 高井さんはケースごと出荷する物を延々とパレットで並べているし、平場ではパートさんがわあわあと仕事を進めている。ダウンの最盛期は日頃出荷量の多いA棟2階よりもこっちの方が盛り上がる。B棟2階も入荷量の少ないダウンや秋冬物のアパレル製品が盛り上がりを見せている。
 さっきまでは水浸しだったところをフォークリフトが走っているのを見ると、こんな仕事でも自分の仕事が役に立ってんだなあと思う反面、出荷に直接絡んでいるワケではないので何だかなあと思ったりもする。必要な仕事なのはわかってるけど、うーん。的な。

「越野君、ちょっと頼んでいい?」
「あ、はい。でも水がまだ」
「思ったより早く片付けてもらってるから、出荷の方を頼みたくて」
「待ってました!」
「おおー、いいねえ。そしたら、この5パレットに載ってる製品を、リストの数だけこっちの空パレットに横持ちの番号ごとに積み替えて、横持ちシール貼っていってもらっていい? 1パレにつき7ケース×3段で」
「了解っす」

 やっぱこの仕事やってるからには水掃きよりは出荷に絡みたい。まずはリストを確認して、何をどれだけ積むかを確認する。この品番のこのカラーのこのサイズがこんだけと、っと。うん、やっぱダウンって軽いわ。扱いやすい。ケースにぎゅうぎゅうに詰められてるけど1枚1枚が高いんだろうなー、ブランド物のダウンだし。
 積むだけ積んで、横持ちシールを貼る。どの横持ちなのかも番号をしっかり確認して、っと。んで、シールをはいはいはいはいーっと。この間内山が、パレットの周りをぐるぐる回る系の仕事をしてると目が回ってくるって言っていた。アイツは三半規管が弱いのかもしれない。俺はそんなことひとつもない。

「高井さーん」
「はーい」
「これってぇ、ケースまんまの時って番号書かなくて大丈夫でしたよねー」
「うん、大丈夫大丈夫」
「じゃオッケーっす。手前側から1、2、3~っす」
「ありがとねー、助かります」
「まだやるのあります?」
「あーっとねえ、荷受側の方で横持ちじゃなくて出荷の方、内山さんが伝票を貼ってくれてるから、その応援に行ってあげて欲しいかな」
「了解っすー」

 言われた方に向かうと、ダウンのケースが載ったパレットが無尽蔵に置かれていて、森みたいになっていた。そこで内山が出荷伝票を貼っている。いくつかのパレットはもう終わっているようだけど、まだまだ序盤ってトコか。

「内山ー。応援」
「あっ越野さん」
「俺も貼ってくから伝票ちょうだい」
「どうぞー」
「これって、貼るだけ貼って行き先分けるのって後から?」
「って高井さんは言ってました。少ないのを上にしてもらった方が助かるそうです」
「了解」
「これ、1ケースいくらぐらいの塊なんですかねー」
「値段もいろいろだろ。薄いのなら2万とかだし、高いのだったら10何万とか。こないだチラッと見たけど何かのブランドとのコラボ製品が20万オーバーとかあったぞ」
「えーっ! アタシもこの間通販調べついでにB棟でダウン見てて、可愛い色のがあったんですよね。でも6万円って書いてあって、高いなーって思って」
「ワンチャン社割でイケんのかな。45%オフで」
「イケて欲しいです」
「高いけど長くは使えるんだよな。俺のダチがこのブランドのダウン着てるけど、4、5年は余裕って話だし」
「だったら流行に左右されないのは1枚持ってていいですよね」
「俺も薄手のダウンフーディー欲しいなー」
「大石さんが何年か前にファミリーセールでダウン買ったらしいんですけど、凄いですよ。3万何千円が社割で4800円になったそうですよ」
「ヤバっ。俺もそのレベルで欲しー」
「アタシもでーす。あっ、越野さんこれ伝票貼った後のポットお願いしていいですか? アタシパレットの周りぐるぐる回るの苦手で」
「へーへー、やりゃいーんだろ」
「越野くーん、ゴメンけど、ポット打ったら行き先別に分けてもらえると助かるー」
「はぁーい、やりまぁーす」


end.


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こっしーには何でも頼みやすいという風潮。
突如降って湧いて来たウッチーがぐるぐる回るの苦手説。

(phase3)

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