2025
■相棒は変な奴
++++
「カオちゃん、何でも好きなもの食べちゃって」
「いいんですか」
「今日は無礼講です。あっ、でもお酒はほどほどにしてくださいね、さもなくば雨宮の火が噴くと思っていただければ」
伊東さんに誘われてやってきたのは、星港市内某所に新しく出来た飲み屋だ。カズが夜勤でいないからという理由で飯に誘われたんだけど、何でも好きな物を食べていいと言われると「どうした?」と思ってしまう。奢られる理由に心当たりはもちろんない。
「あの、伊東さん」
「はい」
「どういう経緯で俺が奢られる流れになってるのかの説明をいいですか。それに納得出来れば心置きなく好きなモンを好きなだけ食えるし」
「日頃カオちゃんからいただいているエピソードトークなどを燃料に、夏の各種イベントに出す新刊が3冊出来ました。以上です」
「焼き鳥盛り合わせ枝豆だし巻き、からの生お願いしまーす!」
「いよっ! 事情を察してからの切り返しがさすが!」
雨宮先生が出している夏のイベントのお品書きを見せてもらえば、これは心置きなく飲み食いしていいヤツだなと判断。飲み屋の基本セットを注文。新刊3冊(各150頁ほど)と簡単に言うけどいつその作業をやってるんだと言う話で。いや、カズが夜勤の日にガッツリやってるとは聞いてるけどだな。
ちなみに雨宮先生のファンの某氏によれば、お品書きが出たからと言って油断してはならなくて、雨宮先生は原稿を入稿してお品書きを作った後からでも平気で追加でコピー本を作ったりするそうだ。だから書いてある情報を鵜呑みにしてはいけないということらしい。減りはしないが増やしてくる、それが雨宮先生の恐ろしいところだと。
「と言うか、今ってまだイベント前で、原稿を入稿しただけじゃん」
「そうですね」
「俺に好きなだけ奢って大丈夫?」
「全然余裕ですね。カオちゃんの話を燃料に本を作れたということがまずお礼すべきことなので」
「そうですか」
「うちもさあ、社会人になったら仕事が忙しくて創作に時間とれなくて執筆ペース落ちるかなあって思ってたんです?」
「普通はそう思うって。大学生が持ってる時間ってデカい」
「執筆ペースとやる気に必要なのって結局ネタなんですよね」
「わからないでもない」
「どれだけ心が動くネタに出会えるか! そしてそれと出会ってしまえば最後、文字を叩き込むだけ」
「はい」
「定期的にとんでもないネタを投下してくる人と職場でニコイチやってみてくださいよ。本にしかならん!」
俺からすれば俺の話は日常そのものだけど、伊東さんからすれば俺の話はネタの宝庫でしかないそうだ。だから俺と1回話すと1冊本が出るらしい。それはやや誇張された表現にしても、春のイベントの後から数えて3ヶ月ほどで3冊作っているのでペース的にヤバいことには違いない。
雨宮先生のネット上での友人であるコスプレイヤーは、やると言ったことをやらない口だけの神よりも、やると言ったことを確実にやる凡人の方が好きなのだと言う。その点雨宮先生はやると言ったことは絶対にやるし、それ以上に物量で攻めてくるのでファンにはたまらないよなあと(この人の質とペースに慣れたら感覚が麻痺しそうなのが唯一の難点か)。
「ちなみに、どういうアレが新刊のネタになった?」
「うちで酔い潰れてよっぺさんに回収してもらったときのこととか」
「え、なにそれ知らない」
「心の友とのビアランタンの話とか」
「ああ、あれは幻想的だった」
「などなど」
「それで150頁を3冊作るのは凄い」
「プロ氏からも取り置き予約と一緒にUSDXメンバーがわちゃわちゃしてる時のエピソードトークをいただいてます」
「それもネタになるもの?」
「さすがにガッツリは入れ込まないけどフレーバーとかエッセンス程度にはね」
社会人になって、行動範囲や関わり合う人が変わったことでも創作意欲に火が付きっぱなしになったというからこの人は本当に凄い。俺も一応物書きの端くれとしていろいろ書いてはいるけど、刺激を受けてばっかりだ。この人がいるから俺もこの程度で満足出来ないぞって思えるワケだし。いろいろな活動をこれからも精力的にやっていきたい。
「チキン南蛮と軟骨追加しようかな」
「オッケオッケ、じゃんじゃん行っちゃって。何ならカオちゃんが好き放題食べてるのを見てるだけでも参考資料としてオイシすぎるから」
「え、何それ」
「例えば、ここに軟骨の唐揚げがあるとします」
「はい」
「その軟骨に添えられているレモンにうちが手をかけ、それをギューッと絞って全体に回しかけるとする」
「いやいや、それは犯罪だろ」
「――というひとつのリアクションがもらえるワケですよ。うちの執筆スタイルだとその唐揚げレモンの件で1ページ書けるし、うちの作風だとその1ページが味になるんですよ」
「わかる。雨宮先生のその1ページは確かに空気を生むんだよ」
「あと、カオちゃんパセリ食べる人じゃないですか」
「ですね」
「うちにとってパセリは基本飾りなんだけど、カオちゃんがパセリ食べてるのを見て、他の人はどうかなって気にするきっかけになったよね」
「観察な」
「ですね」
そんなことが積み重なって、書きたい物が増えていくんだそうだ。そもそもが現場を歩いて自分の目で見て、聞いた物を創作のネタにしていくというのが基本スタイルの俺たちは、互いを変な奴だと思って興味の対象としている。変な奴が相棒なら、日常が面白くなって仕方ないよなあ。そりゃ書きたくもなる。
「って言うかキョージュさんがガチでマジな雨宮先生のファン過ぎて引くレベルにまで来てる」
「これで美味しい物食べてねって投げられたお金がUSDXにまた戻って行ってると思ってください。美味しい物も食べてるけど」
「もしや今日のこれも」
「お察しください」
「だとしたらパトロンが太過ぎるんすよ」
end.
++++
Pさんの弁当サブスクくらいの額なら日常的にポンと投げれるプロ氏である
(phase3)
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「カオちゃん、何でも好きなもの食べちゃって」
「いいんですか」
「今日は無礼講です。あっ、でもお酒はほどほどにしてくださいね、さもなくば雨宮の火が噴くと思っていただければ」
伊東さんに誘われてやってきたのは、星港市内某所に新しく出来た飲み屋だ。カズが夜勤でいないからという理由で飯に誘われたんだけど、何でも好きな物を食べていいと言われると「どうした?」と思ってしまう。奢られる理由に心当たりはもちろんない。
「あの、伊東さん」
「はい」
「どういう経緯で俺が奢られる流れになってるのかの説明をいいですか。それに納得出来れば心置きなく好きなモンを好きなだけ食えるし」
「日頃カオちゃんからいただいているエピソードトークなどを燃料に、夏の各種イベントに出す新刊が3冊出来ました。以上です」
「焼き鳥盛り合わせ枝豆だし巻き、からの生お願いしまーす!」
「いよっ! 事情を察してからの切り返しがさすが!」
雨宮先生が出している夏のイベントのお品書きを見せてもらえば、これは心置きなく飲み食いしていいヤツだなと判断。飲み屋の基本セットを注文。新刊3冊(各150頁ほど)と簡単に言うけどいつその作業をやってるんだと言う話で。いや、カズが夜勤の日にガッツリやってるとは聞いてるけどだな。
ちなみに雨宮先生のファンの某氏によれば、お品書きが出たからと言って油断してはならなくて、雨宮先生は原稿を入稿してお品書きを作った後からでも平気で追加でコピー本を作ったりするそうだ。だから書いてある情報を鵜呑みにしてはいけないということらしい。減りはしないが増やしてくる、それが雨宮先生の恐ろしいところだと。
「と言うか、今ってまだイベント前で、原稿を入稿しただけじゃん」
「そうですね」
「俺に好きなだけ奢って大丈夫?」
「全然余裕ですね。カオちゃんの話を燃料に本を作れたということがまずお礼すべきことなので」
「そうですか」
「うちもさあ、社会人になったら仕事が忙しくて創作に時間とれなくて執筆ペース落ちるかなあって思ってたんです?」
「普通はそう思うって。大学生が持ってる時間ってデカい」
「執筆ペースとやる気に必要なのって結局ネタなんですよね」
「わからないでもない」
「どれだけ心が動くネタに出会えるか! そしてそれと出会ってしまえば最後、文字を叩き込むだけ」
「はい」
「定期的にとんでもないネタを投下してくる人と職場でニコイチやってみてくださいよ。本にしかならん!」
俺からすれば俺の話は日常そのものだけど、伊東さんからすれば俺の話はネタの宝庫でしかないそうだ。だから俺と1回話すと1冊本が出るらしい。それはやや誇張された表現にしても、春のイベントの後から数えて3ヶ月ほどで3冊作っているのでペース的にヤバいことには違いない。
雨宮先生のネット上での友人であるコスプレイヤーは、やると言ったことをやらない口だけの神よりも、やると言ったことを確実にやる凡人の方が好きなのだと言う。その点雨宮先生はやると言ったことは絶対にやるし、それ以上に物量で攻めてくるのでファンにはたまらないよなあと(この人の質とペースに慣れたら感覚が麻痺しそうなのが唯一の難点か)。
「ちなみに、どういうアレが新刊のネタになった?」
「うちで酔い潰れてよっぺさんに回収してもらったときのこととか」
「え、なにそれ知らない」
「心の友とのビアランタンの話とか」
「ああ、あれは幻想的だった」
「などなど」
「それで150頁を3冊作るのは凄い」
「プロ氏からも取り置き予約と一緒にUSDXメンバーがわちゃわちゃしてる時のエピソードトークをいただいてます」
「それもネタになるもの?」
「さすがにガッツリは入れ込まないけどフレーバーとかエッセンス程度にはね」
社会人になって、行動範囲や関わり合う人が変わったことでも創作意欲に火が付きっぱなしになったというからこの人は本当に凄い。俺も一応物書きの端くれとしていろいろ書いてはいるけど、刺激を受けてばっかりだ。この人がいるから俺もこの程度で満足出来ないぞって思えるワケだし。いろいろな活動をこれからも精力的にやっていきたい。
「チキン南蛮と軟骨追加しようかな」
「オッケオッケ、じゃんじゃん行っちゃって。何ならカオちゃんが好き放題食べてるのを見てるだけでも参考資料としてオイシすぎるから」
「え、何それ」
「例えば、ここに軟骨の唐揚げがあるとします」
「はい」
「その軟骨に添えられているレモンにうちが手をかけ、それをギューッと絞って全体に回しかけるとする」
「いやいや、それは犯罪だろ」
「――というひとつのリアクションがもらえるワケですよ。うちの執筆スタイルだとその唐揚げレモンの件で1ページ書けるし、うちの作風だとその1ページが味になるんですよ」
「わかる。雨宮先生のその1ページは確かに空気を生むんだよ」
「あと、カオちゃんパセリ食べる人じゃないですか」
「ですね」
「うちにとってパセリは基本飾りなんだけど、カオちゃんがパセリ食べてるのを見て、他の人はどうかなって気にするきっかけになったよね」
「観察な」
「ですね」
そんなことが積み重なって、書きたい物が増えていくんだそうだ。そもそもが現場を歩いて自分の目で見て、聞いた物を創作のネタにしていくというのが基本スタイルの俺たちは、互いを変な奴だと思って興味の対象としている。変な奴が相棒なら、日常が面白くなって仕方ないよなあ。そりゃ書きたくもなる。
「って言うかキョージュさんがガチでマジな雨宮先生のファン過ぎて引くレベルにまで来てる」
「これで美味しい物食べてねって投げられたお金がUSDXにまた戻って行ってると思ってください。美味しい物も食べてるけど」
「もしや今日のこれも」
「お察しください」
「だとしたらパトロンが太過ぎるんすよ」
end.
++++
Pさんの弁当サブスクくらいの額なら日常的にポンと投げれるプロ氏である
(phase3)
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