2025

■真夏の予行演習

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「すごーい! かわいー!」
「これ、上のハンドルを回すと目が動くらしい」

 MBCC2年の文系メンバー4人でシノの部屋に集まって、サークルが始まるまでの時間を潰す。何故サークル室じゃなくてシノの部屋なのかというと、ちょっとしたパーティーをやろうという話になったからだ。今回理系メンバーは履修の都合上参加出来なかったので、今回はみんなでやるパーティーの予行演習、まずはやってみて改良点を探す会という体だ。
 部屋の真ん中、机の上に鎮座するのは手動のかき氷機、名前はきょろちゃん。モチーフは多分クマで、シノの説明と箱に書いてある通り、上のハンドルを回すと目がきょろきょろと左右に動くのできょろちゃん。今日行われるのは本格的な夏を前にしたかき氷パーティー。予行演習なのでシロップの種類は少なめだけど。

「って言うか鵠沼先輩の部屋ってパーティーに使える物なら何でもある気がする」
「その辺で七輪使って何でも焼いてたみたいな話もあるもんな」
「GREENsがそういうのが好きで、使った道具を鵠沼先輩の部屋に置いてくから倉庫みたいになってるとは言ってたけど、かき氷機があるとは思わないじゃんな」

 かき氷機はシノのお向かいさんである鵠沼先輩から貸してもらっている。そもそもが、ゼミの日にシノが「かき氷が食いたいけど店のヤツは高いし市販のは少ない!」と嘆いていたところに「じゃあ機械あるけど使うか?」と声をかけてくれたんだよな。
 最近は物価が上がってるし、髭でかき氷を食べようと思っても安くて500円くらいからスタートだ。限定物になるとトッピングをつけなくたって800円超。普通サイズにトッピングでソフトクリームをつけると1000円を超えてしまうので、倹約の鬼であるシノであれば十分手を出さない理由になる。髭の1000円だって他の店のオシャレなのに比べれば良心的なんだけどな。

「くるみって髭とかでも限定メニューってまず食べる方だろ」
「もちろん! 最新スイーツはコンビニ以外も常にチェックしてる!」
「髭のラムネ氷、どうだった?」
「おいしいよ。中のゼリーもぷるぷるしてて、上にかかってるラムネパウダーがすっぱおいしー! って感じ」
「さすがに店のとは全く同じにならないと思うけど、“ぽい”粉末は作ってみたぜー」
「さすがすがやん!」

 今回目指すのは、髭で出されている期間限定メニューのラムネ氷だ。青いかき氷の中に青いゼリーが入っていて、上にはラムネ粉末がかかっているらしい。既に店で食べているすがやんとくるみがそれっぽい物を作ってみてくれるとのことで、今回俺はお客さんだ。シノは事前に氷とゼリーを用意してくれている。

「かき氷の盛りつけは髭でバイトしてるすがやんがバッチリ決めてくれるでしょ? シノ、氷とゼリーは大丈夫?」
「言われた通りに作ってみたけど、ちょっと見てみてくんね? あんま自信ないわ」

 そう言ってシノが冷蔵庫から持ってきた容器の中には、ぷるぷるした物が入っている。今回は材料費の都合で青い色を付けることはしなかったそうだけど、ラムネ味のゼリーのレシピをくるみが調べて送ってくれたので、そのように作ったそうだ。

「ん! 出来てる出来てる!」
「よかったぁー」
「すがやん、どーする? 包丁とかで切り分けて盛りつける? それともスプーンとかでテキトーにやっちゃう?」
「切り分けといた方がラクかもなー。この部屋の環境だと盛りつけには一定以上のスピードが要求されそうだし」

 倹約の鬼の部屋なので冷房は本当に最低限だ。今は申し訳程度に扇風機をつけてもらってるけど、最近のシノは冷房代の節約と称して図書館に行くことを覚えたらしい。確かにあそこは涼しいし、俺だったら本当に1日いられるから賢いと言えば賢い。

「って言うか、手動だし氷が溶けちゃうだろうから1人ずつ順番に食べる感じになりそうだね」
「でだ。鵠沼先輩が言ってたけど、勝負はここからなんだよ」
「うん」
「きょろちゃんは手動式のかき氷機だ。1人ならいいけどある程度メンバーを集めてパーティーをやるなら誰がどれだけハンドルを回すのか。ガチで回すと絶対筋肉痛になるらしい」
「お、俺は盛りつけ担当だしー」
「あたしは女子だし腕の力はそんなにだよ」
「相棒、ここらで勝負するか」

 シノが突きつける拳からは、ジャンケンだという意図を酌み取る。鵠沼先輩が言うにはきょろちゃんのハンドルを延々と回し続けるのは本当にキツいらしく、現役で体を動かしていても筋肉痛不可避。しかも、本来はみんなでその役割を分担すればいいんだろうけど罰ゲーム的なノリで1人が延々と回す空気になりがち。
 まあでも、それも一興ということか。フルメンバー揃ったとて加わるのはサキと玲那。腕力であるとか肉体労働という点で期待するのはやや酷か。どちらにしても、ハンドルを回すのは俺かシノかという空気になるのなら。

「いいだろう。相棒、勝負だ」
「一応確認だけど、勝った方が回す、な」
「オッケー」
「最初はグー! ジャンケンポン!」
「おおー…!」

 パーのあいこ。ヒリついてきたぜ。

「あいこでしょ!」
「お~」
「しょ! しょ!」
「ねー、ササ、シノ、息ピッタリなのはいいけどわざとやってない?」
「ガチだよなあ相棒!」
「わざとじゃないです」
「あいこでしょ!」
「あーっ!」
「よーしササの勝ち!」

 勝ってしまった。やるのか俺が。って言うかすがやんとくるみはともかくシノがどれくらいの大きさのかき氷を食べようとしてるかっていう話だぞ。丼なんか出してこようものなら腹壊すぞって言って普通サイズでやめさすからな。

「シノ、器ある?」
「あるある」
「あれ、意外と大人しめだった。パンまつりのボウルか」
「ラムネ氷も食べるけど、カルピスも美味いって聞いてるから、普通サイズのを何回か食べる作戦で」
「えーっ! カルピスとか絶対美味しい! あたしも食べたい!」
「GREENsのかき氷大会のノウハウもらってるけど、スライスしたフルーツ乗せたり、味とか色のついた氷を事前に作ってたりしてめっちゃガチ」
「フルーツも絶対美味しいよー。レナとサキも好きだと思う! そっちも試すべきだったってシノ! 今からでもその先輩に詳しいやり方聞いといてー」
「じゃ明日ゼミだし聞いとくわー」


end.


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作った方が安いの精神。
シノが鵠さんのお世話になってるならこういう回があってもいい。
GREENsの倉庫扱いになってるから何でも出てくるは割と酷い話。大体慧梨夏の所為。

(phase3)

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