2025
■オハヨオハヨー
++++
「ふぁ~わ」
「北ちゃん、眠そうだね」
「玉ちゃんわかる~? 昨日サークルで夜遅くなっちゃってさあ。ふああ」
「ふわ~あ」
「あ、うつった」
「あはは。あくびってうつっちゃうよね」
大学に入学して2ヶ月が経って、新しくなった毎日のリズムの中で自然と友達も出来ていた。最近一緒に行動してるのは同じMMPの殿と、体育で一緒になって仲良くなった北ちゃんこと三鷹北斗くん。授業を一緒に受けたり、ご飯を一緒に食べたりしている。
今日の北ちゃんはとにかく眠そうにしている。北ちゃんは今年新しく出来た天文サークルに入ったそうだ。天文サークルってことは星を見たりするだろうから、夜遅い活動になるのはわかるような気がする。サークルの方でも、とりぃ先輩が天体観測をしていて夜更かしをしてしまったという話は何度か聞いたことがある。
「そう言えば、勝っちゃんが眠そうにしてるの全然見たことない気がする」
「あ、確かにそうだね。殿って居眠りどころか眠そうにしてるのも見たことないかも」
北ちゃんは殿のことを勝っちゃんと呼んでいる。名字の勝川から取って勝っちゃん。僕も同じように名字の玉野から玉ちゃんと呼ばれてるんだけど、そのおかげで自分の名前が玉野だったなあと覚えているような感じ。サークルに入ってからはパロって呼ばれるようになって、それにもう馴染んじゃったから。
「俺も、眠いときは眠い」
「えっ、全然見えないって」
「そうだよー」
「いや、日中ではなく、サークル終わりの帰宅中など」
「夜の7時過ぎくらいだね。それくらいになると殿は眠くなり始めるんだね。そっか、朝が早いからね」
「勝っちゃんて普段何時起きなの? 確か農園でバイトしてるって話じゃん。漁師か畑かみたいな早朝?」
「4時起きだ」
「早っ!? じゃあ逆に何時に寝てるの?」
「10時には床についている」
4時に起きて身支度や朝ご飯の支度をして、5時から7時まで働き、家に戻ってご飯を食べて、電車に乗って大学へ。1限の日は大体こんな感じで動いているそうだ。その生活リズムに僕と北ちゃんは感心しきりだし、驚きっぱなしでもある。
「じゃあ勝っちゃんは天体観測とかあんまりガッツリは出来なさそうだねえ」
「いや」
「えっ、夜イケるの!? 超朝型なのに!?」
「冬であれば、4時過ぎでもまだ暗い。星はまだ出ている」
「あー、なるほど逆転の発想」
「そう言えばさあ、春だからってこの前タケノコ掘りに行ったんだけど、そのときは僕も4時起きとかだったなあ。起きるのがもうしんどくって。殿はあれが毎日なんだよね。すごいなあ」
「玉ちゃんタケノコ掘りとか行くの!?」
「春だからね」
「春だからねじゃないのよ。春が旬なのは知ってるしテレビで見たことはあるけどテレビの出来事なんよ」
「楽しいよ」
「それこそテレビの知識だけど、タケノコ掘りとかって本当の山の中じゃん」
「山みたく見えるけど平地だよ」
「そういうことでもないんよ」
タケノコ掘りはよーし行くぞって気持ちがあって、大きいのがとれるかなっていう楽しみがあるからワクワクして朝早くても起きられる。だけどそれがバイトになると、起きられるかなあって不安になっちゃう。僕もバイトは決して嫌いじゃないし楽しいけど、仕事だもんなあ。
僕たちの早朝あるあるみたいな話を聞きながら、完全に黙っちゃったのが北ちゃんだ。北ちゃんはどちらかと言えば夜行性だ。だから天文サークルでの深夜帯の活動もバリバリやれるんだけど、逆に朝は。僕も毎日朝早く起きてるワケじゃないよって言っても、タケノコ掘るんでしょと弾き返されちゃう。
「でも、やっぱり天文サークルは天文サークルだけあって活動も夜が遅くって、大学生って感じがするよね」
「それはちょいわかる。部室も何もないから小さい教室を借りてやってるんだけど、8時くらいまでそこで活動して、観測の日はそこからが本番って感じで動くのが結構ワクワクするよ」
「それも楽しそうだね。僕たちは大体7時終わりだからね」
「高校の部活とかだとなかなかそうは行かないからね。あっ、でも勝っちゃんて確か高校も園芸部とかだっけ? 畑あるんなら朝早かったとか」
「朝練のある部活と変わらない登校時間だ」
「あっ、その程度なんだ」
「花壇に水をやり、畑の様子を見る程度だからな」
「って言うかさ、学校で畑って、育ててる物によっては盗まれたりしない?」
「季節によってまちまちだが、スイカやメロンなども育てていた」
「羨まし! 絶対盗まれるじゃん!」
「いや。俺が、園芸部だというのは、学内でも知れている。その上で、手を出そうという者は、現れない」
一瞬の沈黙。
殿のこの手の話をどう扱っていいのかは、仲良くなった今でも正解がわかっていない。殿は強面で体も大きいので知らない人にはよく怖がられるという話だ。実際第一印象は本当に同学年かなって感じだったし。話してみると怖いとかは全然なくって、むしろすごく優しいんだけどね。
「あっはっはっ! 確かにな! 勝っちゃんいるのに手ぇ出そうって気にはなんないわ! 盗ったのかって詰め寄られたら絶対漏らすもん!」
「ちょっと北ちゃん!」
「別に大丈夫くない? 笑い飛ばしてオッケーだから勝っちゃんもそういう風に言ってるんだろうし。今のって、厳つい自分が最強の警備員やってましたって話でしょ? 勝っちゃんの巨体ジョークよ」
「ジョークではないが、概ねそういうことでいい」
「ねーねー勝っちゃん、農業だけじゃなくて林業とかやってたりしない? 山の中でチェーンソー担いでて欲しい! 絶対カッコいいもん」
「林業は、今のところ素人だ」
「林業関係の授業ってあったっけ」
「どうだろ。環境コースだし、シラバスを見たらもしかしたらあるかもしれないけど」
「自然と共にある我らの未来を!」
「我らの未来をー」
「……次の授業が、始まるぞ」
end.
++++
サークル以外の様子も少し見たいという理由で向島の社学1年生に白羽の矢。前に1度だけ登場した天文サークルの子を拾う。
(phase3)
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「ふぁ~わ」
「北ちゃん、眠そうだね」
「玉ちゃんわかる~? 昨日サークルで夜遅くなっちゃってさあ。ふああ」
「ふわ~あ」
「あ、うつった」
「あはは。あくびってうつっちゃうよね」
大学に入学して2ヶ月が経って、新しくなった毎日のリズムの中で自然と友達も出来ていた。最近一緒に行動してるのは同じMMPの殿と、体育で一緒になって仲良くなった北ちゃんこと三鷹北斗くん。授業を一緒に受けたり、ご飯を一緒に食べたりしている。
今日の北ちゃんはとにかく眠そうにしている。北ちゃんは今年新しく出来た天文サークルに入ったそうだ。天文サークルってことは星を見たりするだろうから、夜遅い活動になるのはわかるような気がする。サークルの方でも、とりぃ先輩が天体観測をしていて夜更かしをしてしまったという話は何度か聞いたことがある。
「そう言えば、勝っちゃんが眠そうにしてるの全然見たことない気がする」
「あ、確かにそうだね。殿って居眠りどころか眠そうにしてるのも見たことないかも」
北ちゃんは殿のことを勝っちゃんと呼んでいる。名字の勝川から取って勝っちゃん。僕も同じように名字の玉野から玉ちゃんと呼ばれてるんだけど、そのおかげで自分の名前が玉野だったなあと覚えているような感じ。サークルに入ってからはパロって呼ばれるようになって、それにもう馴染んじゃったから。
「俺も、眠いときは眠い」
「えっ、全然見えないって」
「そうだよー」
「いや、日中ではなく、サークル終わりの帰宅中など」
「夜の7時過ぎくらいだね。それくらいになると殿は眠くなり始めるんだね。そっか、朝が早いからね」
「勝っちゃんて普段何時起きなの? 確か農園でバイトしてるって話じゃん。漁師か畑かみたいな早朝?」
「4時起きだ」
「早っ!? じゃあ逆に何時に寝てるの?」
「10時には床についている」
4時に起きて身支度や朝ご飯の支度をして、5時から7時まで働き、家に戻ってご飯を食べて、電車に乗って大学へ。1限の日は大体こんな感じで動いているそうだ。その生活リズムに僕と北ちゃんは感心しきりだし、驚きっぱなしでもある。
「じゃあ勝っちゃんは天体観測とかあんまりガッツリは出来なさそうだねえ」
「いや」
「えっ、夜イケるの!? 超朝型なのに!?」
「冬であれば、4時過ぎでもまだ暗い。星はまだ出ている」
「あー、なるほど逆転の発想」
「そう言えばさあ、春だからってこの前タケノコ掘りに行ったんだけど、そのときは僕も4時起きとかだったなあ。起きるのがもうしんどくって。殿はあれが毎日なんだよね。すごいなあ」
「玉ちゃんタケノコ掘りとか行くの!?」
「春だからね」
「春だからねじゃないのよ。春が旬なのは知ってるしテレビで見たことはあるけどテレビの出来事なんよ」
「楽しいよ」
「それこそテレビの知識だけど、タケノコ掘りとかって本当の山の中じゃん」
「山みたく見えるけど平地だよ」
「そういうことでもないんよ」
タケノコ掘りはよーし行くぞって気持ちがあって、大きいのがとれるかなっていう楽しみがあるからワクワクして朝早くても起きられる。だけどそれがバイトになると、起きられるかなあって不安になっちゃう。僕もバイトは決して嫌いじゃないし楽しいけど、仕事だもんなあ。
僕たちの早朝あるあるみたいな話を聞きながら、完全に黙っちゃったのが北ちゃんだ。北ちゃんはどちらかと言えば夜行性だ。だから天文サークルでの深夜帯の活動もバリバリやれるんだけど、逆に朝は。僕も毎日朝早く起きてるワケじゃないよって言っても、タケノコ掘るんでしょと弾き返されちゃう。
「でも、やっぱり天文サークルは天文サークルだけあって活動も夜が遅くって、大学生って感じがするよね」
「それはちょいわかる。部室も何もないから小さい教室を借りてやってるんだけど、8時くらいまでそこで活動して、観測の日はそこからが本番って感じで動くのが結構ワクワクするよ」
「それも楽しそうだね。僕たちは大体7時終わりだからね」
「高校の部活とかだとなかなかそうは行かないからね。あっ、でも勝っちゃんて確か高校も園芸部とかだっけ? 畑あるんなら朝早かったとか」
「朝練のある部活と変わらない登校時間だ」
「あっ、その程度なんだ」
「花壇に水をやり、畑の様子を見る程度だからな」
「って言うかさ、学校で畑って、育ててる物によっては盗まれたりしない?」
「季節によってまちまちだが、スイカやメロンなども育てていた」
「羨まし! 絶対盗まれるじゃん!」
「いや。俺が、園芸部だというのは、学内でも知れている。その上で、手を出そうという者は、現れない」
一瞬の沈黙。
殿のこの手の話をどう扱っていいのかは、仲良くなった今でも正解がわかっていない。殿は強面で体も大きいので知らない人にはよく怖がられるという話だ。実際第一印象は本当に同学年かなって感じだったし。話してみると怖いとかは全然なくって、むしろすごく優しいんだけどね。
「あっはっはっ! 確かにな! 勝っちゃんいるのに手ぇ出そうって気にはなんないわ! 盗ったのかって詰め寄られたら絶対漏らすもん!」
「ちょっと北ちゃん!」
「別に大丈夫くない? 笑い飛ばしてオッケーだから勝っちゃんもそういう風に言ってるんだろうし。今のって、厳つい自分が最強の警備員やってましたって話でしょ? 勝っちゃんの巨体ジョークよ」
「ジョークではないが、概ねそういうことでいい」
「ねーねー勝っちゃん、農業だけじゃなくて林業とかやってたりしない? 山の中でチェーンソー担いでて欲しい! 絶対カッコいいもん」
「林業は、今のところ素人だ」
「林業関係の授業ってあったっけ」
「どうだろ。環境コースだし、シラバスを見たらもしかしたらあるかもしれないけど」
「自然と共にある我らの未来を!」
「我らの未来をー」
「……次の授業が、始まるぞ」
end.
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サークル以外の様子も少し見たいという理由で向島の社学1年生に白羽の矢。前に1度だけ登場した天文サークルの子を拾う。
(phase3)
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