2025

■Let's Try!

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「そんなに面白くもない部屋だけど、どーぞ」
「お邪魔します」

 サークル後、大学近くのアパートで一人暮らしをしているジャックの部屋に同期のメンバーで遊びに来た。放送サークルMMPに入った1年生は現時点で5人。なかなか個性が強い人たちだなあと思いながら見ている。
 1番にサークルに入ったのがジャックで、第一印象はまず見た目と言うか、ファッションが独特だなと思った。完全にそうではないけど、取り入れているテイストはUKロック的な感じらしい。でも別にそういう音楽を聴いているワケでもないとか。単純に見た目の好みだという。
 ジャックはアニメやマンガ、ゲームが好きないわゆるオタクで、4月から始まったアニメのどれを見るのに忙しいと楽しそうにしている。ただ、俺はアニメを見ないしマンガもあまり読まないので話の内容自体は理解できていない。
 そんな彼がラジオをやりたいと思ったのは、それこそインターネット上の配信がきっかけだったそうだ。配信者の雑談などを聞いているうちに、話すことなら自分にも出来そうだしちょっとやってみたいなという風に興味が生まれていたと。

「みんなメシどーする? あんま大したモンないけど」
「ああ、お構いなく」
「ジャック、一応聞いてみるけどこの人数に出せそうな物って何かあるの?」
「あー……うーん、ラーメンとか? 昨日買ったばっかの袋のヤツがある。あと、野菜くらいかな。ご飯は炊かなきゃ無いし。って言うか俺が腹減ってるからラーメン作るわ」
「素ラーメンを?」
「素ラーメンを」

 サークルが終わるのは夜7時。普通に夕飯時でみんなお腹は空いている。だけどジャックの家のありったけの食料を食べ尽くしてしまうのではないかと少し遠慮がちになってしまう。解決策がないことはない。帰るときにもジャックに送ってもらうことにはなるので、その足で駅近くのスーパーに行って、食べた分をみんなで買い返そうと提案することだ。

「ジャックって普段は自炊してるの?」
「出来る範囲では。毎日はさすがにしてないかな。コンビニとかカップめんとかで適当に済ますこともまあ」
「毎日はさすがに厳しいよね」
「このメンツ俺以外自宅生だもんな。料理とか全然しなくても大丈夫っちゃ大丈夫なんか?」

 ジャックは青尋エリアから向島に出てきている。普段から青尋の方言と言うか特有のイントネーションが出ていて、それが番組をやる上での課題となっているものの、敢えて訛りを消さないのも味なのでは? という説もあって、先輩たちがよく議論しているのを見る。

「僕はたまに趣味でやってるよ。料理に使う調味料や香辛料が好きで、珍しいのがあるとつい買っちゃって。それをどう使うとおいしいのか試すのが好きなんだよ」
「へー、パロって料理するんだ。じゃあうちの調味料なんかを見たらフツーだなーみたいな感想になるよなあ」
「結局一般的な物が一番使いやすいっていう結論にはなると思うよ。しっかりやる人だったら凝った物があると一段レベルが上がると思うけどね。あっ、殿みたいな人とか!」
「えっ!? 殿って料理やるの!?」
「そうなんだよ。殿は普段からやってて、朝、畑のバイトに行く前に炊飯器にお米をセットして行ってるそうだし、休みの日にみんなで食べるご飯とかは殿が作ってるんだよ」
「はえー、すげーなあ。家族みんな食う飯作ってるとか」
「うん、初耳だ」

 そんな話になっても殿は表情一つ変えずに小さく会釈をするだけだ。殿は190センチを越える大柄な体が印象的で、顔は強面……良く言えば精悍な顔つきでとにかく寡黙なので第一印象がとにかく「怖っ」みたいな感じになりがちだ。少し付き合うと慣れてその怖さも和らぐのだけど、彼のことを知るのはまだまだこれからだ。
 その彼と仲がいいのは同じ社会学部のパロだ。パロは小柄で可愛らしい感じの子で、人懐こくコミュニケーション能力が高い。本人曰く殿との共通の話題が多くよく話すので、一言二言で終わってしまう殿の言葉をパロが補足するという構図が出来上がっている。サークル内では明かされない殿の人となりなんかも、パロはよく知っている。

「ジュンは? 料理」
「うーん……恥ずかしながら俺は全然やらないんだ」
「そっかあ。でも、やらない人は全然やらないし、そのときになればジュンならきっと出来るよ。レシピに従えばそうそう失敗しないからね」
「そっか、うん。でも、ハタチにもなって、今年21になる学年なのに料理のひとつやふたつ、出来るようになった方がいいというのはあるな」
「ジュン、そしたら素ラーメンに乗っける野菜炒めでも作ってみる?」
「え、俺が? ムリムリ、みんなが食べるものでそんなこと」
「大丈夫だって、殿もパロもいるんだから」

 ジャックは急に何を言い出すんだ。ラーメンの上に載せる野菜炒めを俺が作れ? いやいや、そんなことやったことないし。それこそラーメンを茹でるくらいしかしないんだけど。

「はいジュン、こっち来て」
「いやいや、そこは家主のジャックが」
「今はジュンがやる流れだろって!」
「ジュン、やってみようよ」
「ええー……」
「俺が、サポートをする」
「うわっ。殿にまで言われたらもう引けなくなった。いやいやいや、もうお湯沸いてるし麺をさ、茹でてしまってさ、素ラーメンを食べよう」
「や、ラーメンの上に野菜炒めを載せないと始まらねーのよこれが。らーめん8号スタイルで行こう」
「何それ、固有名詞? 知らない知らない」
「藍沢発祥のラーメンチェーンだ。藍沢や緑風、青尋ではソウルフードとも呼べる。こちらで言う、寿さし屋のようなものだ」
「へー、殿、物知りだね」
「ラーメンの上に、野菜炒めが乗っている物が看板メニューだ」
「そーそーそれそれ! ほらジュン、殿がここまで言ってくれてんだから野菜炒め作ってくれよー!」
「ええ…?」

 そして否応無く握らされる包丁。まな板の上にはキャベツ。えっ、本当に野菜炒め、作るの?


end.


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うっしー加入前なのでジャックがまだまだ大人しいいい子。
この現場には一応ツッツもいるけど控えめなので喋ってない。

(phase3)

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