2024(02)
■情報センタートモダチ化計画
++++
「じゃーん! 見てくださいミドリ先輩」
「えっと、何を見ればいいのかな?」
「見てください綾瀬さん、じゃーん」
「きゃーっ、スゴくいいよがっくん! あっ、もしかしてレン君が作ってくれたの?」
「そうなんですよ! やっぱり綾瀬さんは見る目が物凄ーくあるなあ」
「ああうん、見る目がなくてごめんね」
「全くないとは言ってませんよ、ジャンル違いだったなと思って」
がっくんがじゃーんと腕を広げて何を見せつけてきたのかなと思ったら、着ている真っ黒なシャツと青いベストだった。カナコさんの目によれば、有馬くん謹製らしい。確かにそう言われればただ真っ黒なシャツなんじゃなくて、リボンやフリル、レースがふんだんにあしらわれている。
有馬くんはロリータ服が好きで、自分で作ったピンク色のシャツをよく着ている。ロリータという大きな枠の中でも、甘い系が特に好きらしくて、平均より大きな自分の身長では、既製品を探すより作った方が早いからという理由で裁縫を覚えたとのこと。
そこまでは普通に馴染んでたんだけど、とうとう有馬くんが他人に服を作ってあげるようになったんだなと思って驚いている。しかもロリータという大きなジャンルの枠から外れずにだ。多分がっくんが作って欲しいと積極的に頼んだんだろうけどね、性格的に。
「ホントよく似合うなー、すごい」
「ね。凄いですよね有馬さん」
「これを着こなすがっくんも凄いですよねカナコさん」
「そうだね。必ずしも中性的ってワケじゃないのに服に着られずちゃんと自分の物にしてるがっくんもいいよね。そのように作るレン君が凄いのは大前提として。ちょっと近くで見せてね。レン君の技術、盗めるところは盗まなきゃ」
コスプレイヤーとして自分でも裁縫をするカナコさんは、洋裁の話で有馬くんとよく盛り上がっている。どちらかと言えば引っ込み思案な有馬くんだけど、カナコさんや真桜とよくファッションの話をしている。有馬くんがスタッフになってくれたのは去年からだけど、有馬くん自身のファッションに否定的な人もあまりいなかったからセンターに馴染んでくれるのは早かったな。
今もがっくんの服をまじまじと見て技術を見て盗むカナコさんだ。有馬くんが作った物からは刺激がビシバシ伝わってくるみたい。俺も工芸品とかでこれはと思う物があったらまじまじと、延々と見ちゃうから気持ちは良くわかる。とは言え俺は自分が工芸品を作るワケじゃないから見てるだけなんだけど。
「シャツが黒で、ベストが青系で、シャツの裾にさりげなくゴールドが振ってあって……くーッ、イイ!」
「今は手持ちのパンツを合わせてるんですけど、今は上に合う下の服も作ってくれてますね」
「じゃあこれが完成型でもないってこと!? えー、すっごく楽しみなんだけど!」
「でも、カナコさんが作るような服にしても思うんですけど、手作りの服って洗濯が難しそうじゃないですか?」
「そう、お手入れ問題っていうのは少なからずあるんだよね。私も苦労することがあってー。ちなみにレンくんから洗濯の方法は聞いてる?」
「乾燥機にさえ入れなきゃ後はネットに入れて普通に洗濯機で回して大丈夫だそうです」
「すごっ」
「お手入れが簡単なのも普段着にしやすいヒミツなのかも。さすがレンくん、洗濯機に入れられるレベルで縫えてるんだ」
俺が着ているのはごくごく普通のシャツだから、普通に洗濯機に入れてそのままぐるぐるジャブジャブ回しちゃう。だけど、おしゃれ着みたいな物は手洗いをして日陰で干して、みたいに気を遣ってあげなきゃいけないものもあるんだよね? でも、確かに洗いやすいっていうのは着やすさに繋がるなあ。
「それでですよ綾瀬さん、有馬さんの腕って物凄いじゃないですか」
「うん」
「デザインから起こしてもらってるんで、ちゃんとしたブランドの一点物と言っても過言じゃないじゃないですか」
「言いたいことはわかるよ」
「俺が今着ているこの服も、ロゴとかタグとかを付けて、有馬さんの作品だぞってわかるようにするべきだと思うんですよ」
「ブランドのロゴかあ。レンくんが何て言うかはともかく、私はいい案だなって思うよ」
「ですよね!」
「でも、がっくんいいなー。私もレンくんに服作ってもらいたいなー。お金なら出します。どうやって交渉したの?」
「普通に話の流れで、俺も有馬さんみたいな服着てみたいんですけどーって持ちかけただけですよ」
「えっ、じゃあ私も頼んでみようかな! 情報センターロリータ化計画で!」
「えーっと、全員はならないと思いますよ、とは言っておきますね」
「わかってるよ、真桜クンはV系だし」
「でも真桜さんよくV系とロリータは友達って言ってますし、俺も真桜さんと友達ですね!」
「えーっ、私も真桜クンと友達になるーっ」
カナコさんはわざわざロリータファッションにならなくても真桜から“姫”って呼ばれてるし、十分友達じゃないかと思うけど。と言うかカナコさんが本気でその衣装を着ると本物の“姫”になりそうだし、それこそ情報センターがどこですかここはって感じになりそう。現実離れすると言うか。なのでカナコさんにはほどほどに力を抜いてもらいたい。
「綾瀬さんもう卒業まで日がないですし、有馬さんに頼むなら早い方がいいですよ」
「そうだね、なる早でレン君に話してみなきゃ」
「そう言えば、カナコさんていつまでセンターにいてもらえるんでしたっけ? 3月のシフト考えてたのにド忘れしちゃって」
「卒業まではいるよー、安心してミドリくん」
「良かったー! 俺の知ってる歴代4年生はみんなギリギリまでいてくれるー! 助かるー!」
「春山さんと雄介さんはいなくなるって感じが本当になかったもんね」
「そうなんですよ! 何か、研修生時代から見てきたカナコさんが卒業なんだって思ったら俺もしみじみしちゃいます。今じゃ押しも押されもしないA番の守り神ですからね」
「私もしみじみするー! ミドリくーん! せんぱーい! バイトリーダー!」
「綾瀬さーん、俺も寂しいですー」
「がっくーん」
きゃっきゃっきゃっと手のひらをぱちぱち合わせて寂しさを表現するこのノリが、時代だなって思っちゃいますね。春山さん林原さん時代には無かった文化と言うか。がっくんとカナコさんがそうやってるのが眩しいんだよなあ。
「ねえミドリくん、私が言うのも難だけど、去年の送別会みたいな会はぜひ今年もやってください! 全員集まってゆっくり楽しむ機会って実はあんまりなかったから」
「わかりました、カナコさんの希望ということであればぜひやりましょう」
end.
++++
カナコも4年生なのでそのうちいなくなるけど、そういう世代になったんやなあ
がくぴがレンレンの懐にどうやって入ったのかはわからんけど、センターでのレンレンはちょっと明るくなってるだろうから話も出来たのかな?
(phase3)
.
++++
「じゃーん! 見てくださいミドリ先輩」
「えっと、何を見ればいいのかな?」
「見てください綾瀬さん、じゃーん」
「きゃーっ、スゴくいいよがっくん! あっ、もしかしてレン君が作ってくれたの?」
「そうなんですよ! やっぱり綾瀬さんは見る目が物凄ーくあるなあ」
「ああうん、見る目がなくてごめんね」
「全くないとは言ってませんよ、ジャンル違いだったなと思って」
がっくんがじゃーんと腕を広げて何を見せつけてきたのかなと思ったら、着ている真っ黒なシャツと青いベストだった。カナコさんの目によれば、有馬くん謹製らしい。確かにそう言われればただ真っ黒なシャツなんじゃなくて、リボンやフリル、レースがふんだんにあしらわれている。
有馬くんはロリータ服が好きで、自分で作ったピンク色のシャツをよく着ている。ロリータという大きな枠の中でも、甘い系が特に好きらしくて、平均より大きな自分の身長では、既製品を探すより作った方が早いからという理由で裁縫を覚えたとのこと。
そこまでは普通に馴染んでたんだけど、とうとう有馬くんが他人に服を作ってあげるようになったんだなと思って驚いている。しかもロリータという大きなジャンルの枠から外れずにだ。多分がっくんが作って欲しいと積極的に頼んだんだろうけどね、性格的に。
「ホントよく似合うなー、すごい」
「ね。凄いですよね有馬さん」
「これを着こなすがっくんも凄いですよねカナコさん」
「そうだね。必ずしも中性的ってワケじゃないのに服に着られずちゃんと自分の物にしてるがっくんもいいよね。そのように作るレン君が凄いのは大前提として。ちょっと近くで見せてね。レン君の技術、盗めるところは盗まなきゃ」
コスプレイヤーとして自分でも裁縫をするカナコさんは、洋裁の話で有馬くんとよく盛り上がっている。どちらかと言えば引っ込み思案な有馬くんだけど、カナコさんや真桜とよくファッションの話をしている。有馬くんがスタッフになってくれたのは去年からだけど、有馬くん自身のファッションに否定的な人もあまりいなかったからセンターに馴染んでくれるのは早かったな。
今もがっくんの服をまじまじと見て技術を見て盗むカナコさんだ。有馬くんが作った物からは刺激がビシバシ伝わってくるみたい。俺も工芸品とかでこれはと思う物があったらまじまじと、延々と見ちゃうから気持ちは良くわかる。とは言え俺は自分が工芸品を作るワケじゃないから見てるだけなんだけど。
「シャツが黒で、ベストが青系で、シャツの裾にさりげなくゴールドが振ってあって……くーッ、イイ!」
「今は手持ちのパンツを合わせてるんですけど、今は上に合う下の服も作ってくれてますね」
「じゃあこれが完成型でもないってこと!? えー、すっごく楽しみなんだけど!」
「でも、カナコさんが作るような服にしても思うんですけど、手作りの服って洗濯が難しそうじゃないですか?」
「そう、お手入れ問題っていうのは少なからずあるんだよね。私も苦労することがあってー。ちなみにレンくんから洗濯の方法は聞いてる?」
「乾燥機にさえ入れなきゃ後はネットに入れて普通に洗濯機で回して大丈夫だそうです」
「すごっ」
「お手入れが簡単なのも普段着にしやすいヒミツなのかも。さすがレンくん、洗濯機に入れられるレベルで縫えてるんだ」
俺が着ているのはごくごく普通のシャツだから、普通に洗濯機に入れてそのままぐるぐるジャブジャブ回しちゃう。だけど、おしゃれ着みたいな物は手洗いをして日陰で干して、みたいに気を遣ってあげなきゃいけないものもあるんだよね? でも、確かに洗いやすいっていうのは着やすさに繋がるなあ。
「それでですよ綾瀬さん、有馬さんの腕って物凄いじゃないですか」
「うん」
「デザインから起こしてもらってるんで、ちゃんとしたブランドの一点物と言っても過言じゃないじゃないですか」
「言いたいことはわかるよ」
「俺が今着ているこの服も、ロゴとかタグとかを付けて、有馬さんの作品だぞってわかるようにするべきだと思うんですよ」
「ブランドのロゴかあ。レンくんが何て言うかはともかく、私はいい案だなって思うよ」
「ですよね!」
「でも、がっくんいいなー。私もレンくんに服作ってもらいたいなー。お金なら出します。どうやって交渉したの?」
「普通に話の流れで、俺も有馬さんみたいな服着てみたいんですけどーって持ちかけただけですよ」
「えっ、じゃあ私も頼んでみようかな! 情報センターロリータ化計画で!」
「えーっと、全員はならないと思いますよ、とは言っておきますね」
「わかってるよ、真桜クンはV系だし」
「でも真桜さんよくV系とロリータは友達って言ってますし、俺も真桜さんと友達ですね!」
「えーっ、私も真桜クンと友達になるーっ」
カナコさんはわざわざロリータファッションにならなくても真桜から“姫”って呼ばれてるし、十分友達じゃないかと思うけど。と言うかカナコさんが本気でその衣装を着ると本物の“姫”になりそうだし、それこそ情報センターがどこですかここはって感じになりそう。現実離れすると言うか。なのでカナコさんにはほどほどに力を抜いてもらいたい。
「綾瀬さんもう卒業まで日がないですし、有馬さんに頼むなら早い方がいいですよ」
「そうだね、なる早でレン君に話してみなきゃ」
「そう言えば、カナコさんていつまでセンターにいてもらえるんでしたっけ? 3月のシフト考えてたのにド忘れしちゃって」
「卒業まではいるよー、安心してミドリくん」
「良かったー! 俺の知ってる歴代4年生はみんなギリギリまでいてくれるー! 助かるー!」
「春山さんと雄介さんはいなくなるって感じが本当になかったもんね」
「そうなんですよ! 何か、研修生時代から見てきたカナコさんが卒業なんだって思ったら俺もしみじみしちゃいます。今じゃ押しも押されもしないA番の守り神ですからね」
「私もしみじみするー! ミドリくーん! せんぱーい! バイトリーダー!」
「綾瀬さーん、俺も寂しいですー」
「がっくーん」
きゃっきゃっきゃっと手のひらをぱちぱち合わせて寂しさを表現するこのノリが、時代だなって思っちゃいますね。春山さん林原さん時代には無かった文化と言うか。がっくんとカナコさんがそうやってるのが眩しいんだよなあ。
「ねえミドリくん、私が言うのも難だけど、去年の送別会みたいな会はぜひ今年もやってください! 全員集まってゆっくり楽しむ機会って実はあんまりなかったから」
「わかりました、カナコさんの希望ということであればぜひやりましょう」
end.
++++
カナコも4年生なのでそのうちいなくなるけど、そういう世代になったんやなあ
がくぴがレンレンの懐にどうやって入ったのかはわからんけど、センターでのレンレンはちょっと明るくなってるだろうから話も出来たのかな?
(phase3)
.