2024(02)
■奇警な人々と出会う
++++
「あー……怒濤だったぁー…!」
「朝霞君お疲れさま。パーティーの翌出勤日に振り返りをやるまでがパーティーだからね」
「カオちゃんお疲れさまです」
「って言うか伊丹さん! 何か話に聞いてたより凄いデカいパーティーだったんですけど!? いや、進行資料の時点でうっすら思ってはいましたよ? にしたってやり過ぎですよ!」
ウチの会社の年納め的イベントとして、社員と取引先の方などをお招きして開くパーティーという物がある。有名ホテルのナントカの間みたいな凄い部屋を借り切った立食パーティーみたいな感じ。伊丹さんからは「忘年会みたいな物だから」と聞いていたけど、そんなモンじゃねえ!
まずその取引先の方ってのが結構な地位の方々だったし、これまでのイベントでご一緒したらしいタレントさんや個人で活動していらっしゃる独自の肩書きの方など、数え上げればキリがない。このパーティーはそんな方々との縁を繋ぎつつ新しい縁を生み、面白いことの種を蒔く会であると解釈した。
で、そんなパーティーの司会をひょんなことから任された俺だ。きっかけは会議でイキり散らした発言(演説)をしたこと。後から思えば完全なやらかしで、それで上の人から目を付けられたらしい。ただ、毎年新人の誰かがやることらしいので、与えられた仕事は全うしなければならないだろう。助手として巻き込まれた伊東さんには申し訳なさがあるけれども。
「でも、上の人たち、残念そうにしながらも感心してたよ」
「残念って何がですか」
「ほら、このパーティーの司会を新人の子がたどたどしくやるのがイイっていう特殊嗜好の人も少なからずいるから。総務部の部長なんかがまさにそういう人なんだけど、今年の子は心臓がないんじゃないかって言ってたよ」
「人の心がないとかアンドロイドだとか鬼だとかはこれまでにも散々言われてますが」
「あと、社長にすき焼きに連れて行ってもらったのが何よりの評価だね。これまでにパーティーの司会やってお疲れさんって声をかけられた子はいても、すき焼きに行こうって言われた子は見たことないよ」
「ヤバい肉ではありました、実際。はい」
パーティーの後、社長直々に声をかけられて、一緒にすき焼きを食べに行こうと誘われた。そのすき焼きの席では社長が懇意にしている取引先の偉い人や個人活動者の方と同席して、いろいろなことを聞かせていただいた。あと、この辺で名が通る肉の超有名店のすき焼きだったので、自分の給料じゃまだ食えないなと思いました。
実際俺にとっては肉よりも普通に生活してたんじゃまず出会えない人と膝付き合わす機会をいただけたことがご褒美だと思う。パーティーの現場では司会という立場上、いろいろな人に挨拶はしたけど突っ込んだ話は出来なかった。だけどこの場では少しガッツいてしまったことを反省しているが後悔はしていない。そもそもそういうイキりやらかしが司会に抜擢されたきっかけなのだから、社長にしても今更だろう。
「そのすき焼きでご一緒した人の話を聞いてても、自分はまだまだ常識の範囲内に収まってるなーって感じで、より良い、面白いものを作っていくためには人並み以上に努力しないといけないんだなって思いました。となると独力じゃやっぱり限界があるので、いろんな人と出会って、話を聞いて、一緒に作って行かなきゃなと」
「朝霞君のどこが常識の範囲内なんだかって思うけど、そういうストイックなところは後輩ながら尊敬するよ」
「ホントに。カオちゃん十分ぶっ飛んでますよ」
「いーや! 伊東さん、そこで俺を甘やかさないで。周りにせっかく面白い人がいるのに、それを生かす側のこっちが手を抜いたりしょーもなかったりしたら全部台無しだ。――って、学生の頃から同じようなことばっかり言ってんな」
学生の頃はステージのプロデューサーとして、山口と戸田の能力を最大限生かすためには俺が一番努力しなければならないというようなことを思ってやってきていた。舞台が変わっただけで感じることは似たようなモンだなと思ったので、自分はまだまだ何も変われていないし、駆け出しの状態なんだなと痛感する。
「朝霞君て司会の経験あまりないって言ってたよね? 学生の頃に向舞祭の手伝いはしてたって聞いたけど」
「そうですね。部活でステージはやってましたけど、俺は企画側で壇上にはほとんど立ちませんし」
「大学で発表とかよくやってたりとか? やたら喋り慣れてるなと思って」
「人並みだと思いますけど、ねえ…? ああ、でも部活の一環でスキー場でラジオDJをやったことならあります」
「えっ、凄いねえ!」
とは言え俺がマイクを使って喋り出したのなんか本当にここ2年弱くらいのことで、まさかゲーム実況やってますとは多くの人に言えない。なのでインターフェイスの活動の中からそれらしい物を適当に出しておいた。高崎みたくラジオ局でレギュラー持ってたとかではなく単発の番組だけど、ウソは言ってない。伊東さんが悪い目をしている。
「あー、でもせっかくいいホテルでのパーティーで、普段お目にかかれないような料理や酒が並んでたのに全然飲み食いする隙がなかった!」
「ああー。確かにカオちゃんずっと挨拶周りという名の縁作りやってたもんねえ」
「伊東さん的にホテルの料理どうだった?」
「美味しかったけど、おうちに帰って旦那さんにお茶漬け作ってもらいました」
「いいねえー…! 俺も伊東さんの旦那さんみたいな優しい奥さん欲しいなー…!」
「応援してます!」
「ありがとねえ」
カズが作るシメのお茶漬けとか美味いに決まってるし、今度俺もシメじゃなくたって普通に食わせていただきたい。あと、配偶者にカズのレベルを求めるといつまで経っても求めるものには出会えないと思う。仕事に理解があって趣味も程良い距離感で放置してくれんの最高だろ。
「でも、シャンパンとか飲みたかったなー」
「でもさカオちゃん、カオちゃんがシャンパン1杯ぽっちでやめられますか?」
「あっはい、すみません。知ってるのでジンジャーエールしか飲んでません」
「ちなみにすき焼きの場ではお酒入れたの?」
「さすがに1杯は飲みましたけど、以降は全部お茶ですよ」
「すごい! カオちゃんが1杯でやめてる!」
「えっ、伊東さんからしたらそれは凄いことなの?」
「聞いてくださいよ伊丹さん、この人1回うちで酔っぱらってやらかしてるんですよぉ」
「あーもー待ってその件だったらめっちゃ反省したしそれ以来はやってないっしょ!?」
「やらないのが普通なの!」
「しかも新婚夫婦の家でねえ」
「ねえ」
大体その時のやらかし(記憶にはない)をネタに自分だって本作ってるんだからお互い様だろと言いたいところだけどグッと堪え、反省のポーズ。二度とやらないように気をつけるとは毎回思ってはいる。
「あっ、そしたら朝霞君に対する真のお疲れさま会ってことで、今度飲みに行く? 伊東さんもご飯一緒にどう?」
「俺はもちろん行きます」
「えっ、伊丹さんがお酒入ったカオちゃんのお世話してくれるんですか!? じゃあ行きます!」
「えっと、一応場所は朝霞君の家の近くにしようかな? 帰り送り届けやすいようにね」
end.
++++
会社名がまだないので枠の名前が決まり切らない。会社名決めなきゃ。
(phase3)
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「あー……怒濤だったぁー…!」
「朝霞君お疲れさま。パーティーの翌出勤日に振り返りをやるまでがパーティーだからね」
「カオちゃんお疲れさまです」
「って言うか伊丹さん! 何か話に聞いてたより凄いデカいパーティーだったんですけど!? いや、進行資料の時点でうっすら思ってはいましたよ? にしたってやり過ぎですよ!」
ウチの会社の年納め的イベントとして、社員と取引先の方などをお招きして開くパーティーという物がある。有名ホテルのナントカの間みたいな凄い部屋を借り切った立食パーティーみたいな感じ。伊丹さんからは「忘年会みたいな物だから」と聞いていたけど、そんなモンじゃねえ!
まずその取引先の方ってのが結構な地位の方々だったし、これまでのイベントでご一緒したらしいタレントさんや個人で活動していらっしゃる独自の肩書きの方など、数え上げればキリがない。このパーティーはそんな方々との縁を繋ぎつつ新しい縁を生み、面白いことの種を蒔く会であると解釈した。
で、そんなパーティーの司会をひょんなことから任された俺だ。きっかけは会議でイキり散らした発言(演説)をしたこと。後から思えば完全なやらかしで、それで上の人から目を付けられたらしい。ただ、毎年新人の誰かがやることらしいので、与えられた仕事は全うしなければならないだろう。助手として巻き込まれた伊東さんには申し訳なさがあるけれども。
「でも、上の人たち、残念そうにしながらも感心してたよ」
「残念って何がですか」
「ほら、このパーティーの司会を新人の子がたどたどしくやるのがイイっていう特殊嗜好の人も少なからずいるから。総務部の部長なんかがまさにそういう人なんだけど、今年の子は心臓がないんじゃないかって言ってたよ」
「人の心がないとかアンドロイドだとか鬼だとかはこれまでにも散々言われてますが」
「あと、社長にすき焼きに連れて行ってもらったのが何よりの評価だね。これまでにパーティーの司会やってお疲れさんって声をかけられた子はいても、すき焼きに行こうって言われた子は見たことないよ」
「ヤバい肉ではありました、実際。はい」
パーティーの後、社長直々に声をかけられて、一緒にすき焼きを食べに行こうと誘われた。そのすき焼きの席では社長が懇意にしている取引先の偉い人や個人活動者の方と同席して、いろいろなことを聞かせていただいた。あと、この辺で名が通る肉の超有名店のすき焼きだったので、自分の給料じゃまだ食えないなと思いました。
実際俺にとっては肉よりも普通に生活してたんじゃまず出会えない人と膝付き合わす機会をいただけたことがご褒美だと思う。パーティーの現場では司会という立場上、いろいろな人に挨拶はしたけど突っ込んだ話は出来なかった。だけどこの場では少しガッツいてしまったことを反省しているが後悔はしていない。そもそもそういうイキりやらかしが司会に抜擢されたきっかけなのだから、社長にしても今更だろう。
「そのすき焼きでご一緒した人の話を聞いてても、自分はまだまだ常識の範囲内に収まってるなーって感じで、より良い、面白いものを作っていくためには人並み以上に努力しないといけないんだなって思いました。となると独力じゃやっぱり限界があるので、いろんな人と出会って、話を聞いて、一緒に作って行かなきゃなと」
「朝霞君のどこが常識の範囲内なんだかって思うけど、そういうストイックなところは後輩ながら尊敬するよ」
「ホントに。カオちゃん十分ぶっ飛んでますよ」
「いーや! 伊東さん、そこで俺を甘やかさないで。周りにせっかく面白い人がいるのに、それを生かす側のこっちが手を抜いたりしょーもなかったりしたら全部台無しだ。――って、学生の頃から同じようなことばっかり言ってんな」
学生の頃はステージのプロデューサーとして、山口と戸田の能力を最大限生かすためには俺が一番努力しなければならないというようなことを思ってやってきていた。舞台が変わっただけで感じることは似たようなモンだなと思ったので、自分はまだまだ何も変われていないし、駆け出しの状態なんだなと痛感する。
「朝霞君て司会の経験あまりないって言ってたよね? 学生の頃に向舞祭の手伝いはしてたって聞いたけど」
「そうですね。部活でステージはやってましたけど、俺は企画側で壇上にはほとんど立ちませんし」
「大学で発表とかよくやってたりとか? やたら喋り慣れてるなと思って」
「人並みだと思いますけど、ねえ…? ああ、でも部活の一環でスキー場でラジオDJをやったことならあります」
「えっ、凄いねえ!」
とは言え俺がマイクを使って喋り出したのなんか本当にここ2年弱くらいのことで、まさかゲーム実況やってますとは多くの人に言えない。なのでインターフェイスの活動の中からそれらしい物を適当に出しておいた。高崎みたくラジオ局でレギュラー持ってたとかではなく単発の番組だけど、ウソは言ってない。伊東さんが悪い目をしている。
「あー、でもせっかくいいホテルでのパーティーで、普段お目にかかれないような料理や酒が並んでたのに全然飲み食いする隙がなかった!」
「ああー。確かにカオちゃんずっと挨拶周りという名の縁作りやってたもんねえ」
「伊東さん的にホテルの料理どうだった?」
「美味しかったけど、おうちに帰って旦那さんにお茶漬け作ってもらいました」
「いいねえー…! 俺も伊東さんの旦那さんみたいな優しい奥さん欲しいなー…!」
「応援してます!」
「ありがとねえ」
カズが作るシメのお茶漬けとか美味いに決まってるし、今度俺もシメじゃなくたって普通に食わせていただきたい。あと、配偶者にカズのレベルを求めるといつまで経っても求めるものには出会えないと思う。仕事に理解があって趣味も程良い距離感で放置してくれんの最高だろ。
「でも、シャンパンとか飲みたかったなー」
「でもさカオちゃん、カオちゃんがシャンパン1杯ぽっちでやめられますか?」
「あっはい、すみません。知ってるのでジンジャーエールしか飲んでません」
「ちなみにすき焼きの場ではお酒入れたの?」
「さすがに1杯は飲みましたけど、以降は全部お茶ですよ」
「すごい! カオちゃんが1杯でやめてる!」
「えっ、伊東さんからしたらそれは凄いことなの?」
「聞いてくださいよ伊丹さん、この人1回うちで酔っぱらってやらかしてるんですよぉ」
「あーもー待ってその件だったらめっちゃ反省したしそれ以来はやってないっしょ!?」
「やらないのが普通なの!」
「しかも新婚夫婦の家でねえ」
「ねえ」
大体その時のやらかし(記憶にはない)をネタに自分だって本作ってるんだからお互い様だろと言いたいところだけどグッと堪え、反省のポーズ。二度とやらないように気をつけるとは毎回思ってはいる。
「あっ、そしたら朝霞君に対する真のお疲れさま会ってことで、今度飲みに行く? 伊東さんもご飯一緒にどう?」
「俺はもちろん行きます」
「えっ、伊丹さんがお酒入ったカオちゃんのお世話してくれるんですか!? じゃあ行きます!」
「えっと、一応場所は朝霞君の家の近くにしようかな? 帰り送り届けやすいようにね」
end.
++++
会社名がまだないので枠の名前が決まり切らない。会社名決めなきゃ。
(phase3)
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