2024(02)

■サキちープリちー荒々ちー

++++

「それでは、本日の定例会を終了いたします。お疲れさまでした」
「お疲れさまでしたー」

 先月で3年生が引退して、1年生と2年生で新たに始まったインターフェイス定例会も今回で2回目。今の時期はイベントも少ないし、そこまで忙しくないので話し合うことも各大学の活動報告や作品出展の話がメインっていう感じになる。それから、サキと奏多が担当しているシステム関係の進捗報告など。
 さてお疲れさまでしたーと解散する流れになると「この後どうする?」と誰ともなく訊ね合う。ご飯に行くのか、直帰するのか。ご飯に行くとすればどこに行くのかなど。ご飯に行くにしてもみんな一緒にっていう感じでもなくて、2、3人ずつで別行動にもなるし、メンバーの組み合わせが毎回同じでもないのが結構面白いなって思ってる。

「サキぃ、今日晩ご飯どうするー?」
「行く」
「カノンと奏多はー?」
「行く行くー」
「じゃ、俺もご一緒しましょうかね、っと」
「彩人は?」
「わり、俺この後約束があんだわ。また今度誘って」
「オッケー了解」

 会議後の食事への参加率が高いのは俺とサキだけど、俺とサキも毎回一緒に食べてるワケじゃない。サキはエマや雨竜と一緒だったりするし、俺はカノンや奏多と一緒のことが多い。今日はエマも雨竜も直帰組なので即こっちに来ることにした、みたいな感じかな。

「じゃ、降りるかー」
「あ、もうちょっと待って。サキがまだ準備出来てない」
「つかサキちーどこの雪ん子だよ!? もこもこしてんなァ」
「うるさいな」

 MBCC的にはお馴染みとなった冬のもこもこしたサキだけど、毎回会うワケじゃない面々にとってはやっぱりちょっと新鮮に映るみたいだ。サキは多分同期の中で1番寒いのが嫌いで、耳まで隠れるニット帽にマフラー、手袋をして、上着もボアで全身もこもこしている。着ている服も裏起毛だったり防風の物を選んでいるようで、最近は腹巻とムートンブーツに興味を持っているとか。
 暖房がガンガンにかかった屋内ではさすがにもこもこしたままではいられないので外すけど、如何せん結構な重装備なので、1回外すとまた付けるのに結構な時間がかかる。それを俺たち3人は頑張るなあという目で見守ってるけど、彩人が「俺もこれくらいした方がいいな、参考にしよう」と感心して帰っていくのにはみんな「マジで?」と表情だけでリアクションをして見送った。

「お待たせ」
「じゃあ行こうかー」

 フィネスタのビルが入る星港中心街のオフィスビルはエレベーターもオシャレだ。全面ガラス張りになった箱からはイルミネーションがブワーッと広がっているのが見える。街のイルミネーションが増えたり、くるみがケーキのカタログを持って来るとクリスマスシーズンだなあって思うよな。今年はどうしよ。デートのこととかもちょっと考えといた方がいいかもしれない。

「うわー、さすがに冷える。さみー」
「つか奏多服薄くね? いくらマフラーしててもさみーよそれは」
「まだイケるぜ。つかあんま分厚いと動きにくくなるし、俺はそっちの方が不都合だね」
「奏多とサキを見比べるとホントに同じ季節かなあってちょっと思うな」
「そうだよなー。奏多は薄いしサキは厚い」
「でも、奏多は今も鍛えてるし鳥ちゃんとランニングとかもしてるから全然平気的な?」
「そう言えばこないだも家でパソコン触ってばっかりだったから引き摺り出して走らせたって言ってたなー」
「ホントによ。人がインターフェイスの仕事をしてるっつーのにアイツが無理矢理走らせて来てよ、10キロだぜ10キロ!」
「うわっ」
「サキちー今あからさまに引いたよな」
「奏多ってやっぱり筋肉バカなんだなあと思って」
「あ? 何だ? 筋肉バカだ?」

 奏多が筋肉バカであるかはともかく、日常的にランニングをしてるとは聞いてても10キロはやっぱちょっと驚く(しかも予告なしに引き摺り出されてそれだけ走れるのも凄い)。でも奏多が多少の寒さは平気って言ってるのは多分そうした全身運動と言うか、有酸素運動みたいなことをやってるからっていうのもありそうだ。実際筋肉も凄いし。

「春風の奴、絶対食欲の秋の名残で食い過ぎたんだぜ。それはそうと、サキちーがそんな寒がってんのってメシ食わねーのもちょっと関係してんじゃね?」
「うるさいな。食べてるし」
「そういや最近はバイト終わりにバーで食べてんだっけ」
「うん」
「バー!? シャレオツ~」
「いちいち腹立つ」
「つか運動しない、メシも食わない、そりゃさみーよ」
「だから装備を厚くしてるんでしょ」

 奏多によれば、ニュアンスとして、体の中心の熱を守るために体の先端の血管が縮まり、冷えが起こるとのこと。冷えた血液を体内に巡らせればその分体温が下がり、最悪の場合低体温症になってしまうとも。今のサキは鼻や口元もマフラーで隠れてるから、目元以外ほとんど外気に触れない格好だ。だから何とか耐えてるっていう感じだろうな。

「あーあ。代謝高くなりたい」
「じゃあ運ど」
「運動以外で」
「ひでーなあサキちー」
「代謝は上げたいし、ダイエットもしないといけないけど運動はしたくない」
「ンなワガママな。つかサキちー痩せる必要あるか? 腹つまませてみ?」
「は?」
「いや、痩せる必要があるかないかを見極めるためにな」
「奏多に触られるとか嫌過ぎる。あと、今のはバカにされた気がした」
「あーはいはいそーですかーっと。バカにはしてませんけどねェ。太ったっつーならサキちーからぷにちーに改名しな? おっと、ぷにちーの拳がもこちーだからちーっともダメージ入りませーん、残念だったなァ」

 奏多の煽りが相当ムカついたのか、とうとう足が出た。まあ、手袋がもこもこだからパンチの威力は下がるよなあ、確かに。それにしても奏多相手のサキは乱暴だ。奏多相手じゃなかったら問題になってるだろうけど、奏多相手じゃなかったらサキもここまではやんないか、さすがに。この応酬に、俺とカノンは苦笑いだ。

「太り過ぎても痩せ過ぎても寒がりになるって言うし、ほどほどが一番だぜ?」
「へえ、痩せてる人が寒がりなのは何となくわかるけど、太ってても寒くなるんだ」
「筋肉と脂肪の熱伝導率とかの関係だな。あと単純に分厚くて体の中心の熱が全体に伝わらないんだと」
「へー」
「でも、あんま痩せすぎてるよりは、ほんのちょっと体重がある方がいいっつーのが俺の持論だな」
「っていうのは?」
「もし、不測の事態が起こるとするだろ。通り魔に刺されるとか、事故に巻き込まれるとか。そん時に、同じ出血量でも痩せ過ぎの方がリスクはデカくなる」
「奏多とジュンだったら奏多の方が生き残る確率が高いみたいなこと?」
「極端に言えばな。ま、ウチだと一番危ねーのはジャックだろうけどな」
「あ、確かに」
「もちろん太り過ぎも良くはねーけどな。ぷにちーも、精々自己管理頑張るんだな」
「うるさい」
「いやあ、何だかんだサキちー呼びが定着したな! “ぷにちー”に名前の要素ひとつも入ってねーのに反応してくれて、かわいいかわいい、いやプリちーってか?」
「すがやん、サバイバルナイフとか持ってない? 奏多くらい大きければ、1回くらい大丈夫でしょ」
「サキ、殴る程度にしといてくれ」


end.


++++

サキちーがぷにちーでもこちー。タイトルは悪ふざけ。

(phase3)

.
8/31ページ