2024(02)
■人間とメディア表現
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FMにしうみ。向島エリアは星港市の西隣に位置する西海市のコミュニティラジオ局で、地域に根ざしたメディアとして日々番組を放送している。地元在住・出身者のパーソナリティが担当する番組もあって、近所のあの人がラジオをやってる、ということもなくはない話だ。
このFMにしうみで、向島インターフェイス放送委員会のメンバーが次の1月から1時間枠の新番組を担当することになった。経緯は話せば長くなるけど、去年高崎先輩が卒業研究の一環でやっていた番組が好評で、学生が担当するフレッシュな番組があってもいいのかもね、という話になったそうだ。
「で、コーナーはどうする?」
インターフェイスから集まったのは5人のメンバーだ。2年生が局でバイトしている俺と、青敬の雨竜、青女のまつり。1年生はウチの琉生と向島のジュン。10月頃から顔合わせや打ち合わせをしてきた中で、人となりであったり技術的なことも少しずつではあるけどわかってきた。
番組の内容もある程度は俺たちに任されている、とは言え完全に好き勝手は出来ないので、局の人代表として先輩アルバイトである福井さんが時々打ち合わせに顔を出してくれる。福井さんは星大の院生でインターフェイス出身者でもあり、先の高崎先輩の番組でミキサーを担当していたディレクターだ。
「取り入れてもらいたいのは、西海市らしい要素……それから、せっかくであれば、メンバーの個性を生かしたコーナーを作ってみたり……」
「西海市らしい要素は、西海のここっていうスポットでアタシたちが実際に遊んで、その様子をレポートしたりすればいいと思うんだよね」
「西海のイベントに参加してみたりな!」
「そうそう! あと、ブログとかSNSで写真とか動画を公開したり?」
「おっ、動画と聞いて黙ってる俺じゃないぜ」
性格的に、打ち合わせでガンガン発言するのはやっぱりまつりと雨竜だ。実際、インターフェイスでも1年生の頃からガンガン系のキャラクターとして知られていて、勢いがあるなあという印象はとても強い。ただ、2年生になって、2人にはガンガンや勢いだけでない特色があることもわかってきた。
まつりは頭の回転が早いようで、ミキサーとしての腕もありつつ、ステージの台本を書くことも出来るそうだ。雨竜は音に対する感性が磨かれてきて、映像作品の中でどんな音でどういう効果を持たせるかという選択が上手くなってきた。2人のこの能力はラジオ番組の上でも十分戦えると思うし、俺も負けていられないと思う。
一方、1年生はまだ少し未知数だ。一応同じ大学ではあるけど、琉生は掴み所がわからない子だなという印象。ふわふわしすぎていると言うか。高木先輩やちむりーとは相性がいいようだけど、俺には理解が難しいなと思うことも多々。ジュンは真面目が第一印象だけど、口数が周りと比べると少ないのでまだまだ見えない部分が多い。
「メンバーの能力を生かすならー、ジュンくんの絵を推さない手はないと思うんですよー」
「ええ…? ラジオでどう絵を推すんだ」
「えー? だってー、ブログとかー、SNSがあるならー、そこに絵を上げたらいいんじゃなーい? って思うんだけどー。ねー先輩、いいですよねー」
「うんうん、いいんじゃない?」
「ジュンの画力だったら文字だけとか写真だけとかより目を引く可能性もあるよな! やる価値あると思うぜ!」
「やったー」
「いや、まだ決まってない」
琉生はジュンの絵が好きで、機会があればそれを推している。対策委員から拡散した絵をきっかけに合宿でジュンに話しかけに行ったそうで、その縁でこのラジオにジュンを誘ったっていう話だ。
「そう言ってますけど。福井さん、どう思います?」
「もし、本当に絵を上げるなら、気をつけることは多い……佐崎君は、ネットに触れる機会も多いと思う……最近の変化は、見ている…?」
「ああ、確かに。今はその辺少し香ばしい感じになってますね」
「……そう。もし、本当にやるのであれば、各サービスの規約を読み込んで、どこの会社が、どういう対応を取っているのかを、しっかり理解しないといけない……」
「サキ、俺にもわかるように通訳して」
「みんな、生成AIの話は聞いたことある?」
「何となく」
「あんまり」
「授業で聞いた」
「俺も授業でチラッとだけ」
「生成AIそのものは悪くない。それが前提。ネット上にある情報……テキストや画像データをAIに学習させて、生成する。その技術を悪用する人間の動きが警戒されてる。もちろんSNSへの投稿なんかも学習対象」
「自身の投稿物を、AIに学習させたくなければ、相応の対応が必要……完全な対策は、現状かなり難しい……。この手の話は、いたちごっこだから……。それでも、著作物を守るために、学習精度を落とすため、または学習されたとして、その著作物が誰の物であるのかを示すための印や、サインを入れる人が増えている……」
いつだって問題なのは技術そのものじゃなくて、それを悪用する人間の方だ。ディープフェイクの話だってある。何でもかんでもデジタル化するって風潮ではあるけど、一周回って、大事な書類は紙に手書きの上で捺印した物の方が信頼出来るようになるかもしれない。
「確か、福井さんは絵を描かれるんでしたっけ。この問題も他人事ではないですよね」
「私は、描いた物をネットに上げることは、ほとんどしない……だけど、この件で、私の幼馴染みが毒づいていた……。だから、話は少し、聞いている……」
「うーん、ジュンの絵をブログとかSNSに上げるの、いいと思ったんだけどなー」
「それが、出来ないとは言っていない……。ジュンが描いた絵の権利はジュンの物……それを、局にも確認した上で、絵には、しっかりサインを入れる……。絵柄に馴染むサインをデザインする、という楽しみもある……」
「自分の絵はサインを入れるような大層な物じゃないと思ってましたけど、本格的にネットに上げるとするなら考えていかないといけないことなんですね。ちょっと、自分でもその辺りのことについて勉強した上で考えてみます」
「……ほどほどに」
ジュンが「勉強します」と言うとその規模がとんでもないことになるというのも打ち合わせを重ねる中でわかってきたこと。夏合宿で一緒の班だったササが「ジュンは真面目すぎて何をしでかすかわからない」と言ってた意味も、少しずつ。ササとは別のベクトルで真面目さが変にぶっ飛ぶのかな。
「所詮、インターネット上にある情報は、人の営みの一部分に過ぎない……。まだまだ、AIが生成した物より人間が発した物の方が、しっくりくることも、ある……」
「たとえば」
「猫に関する本で、読んだ……。猫の可愛さはどこにあるのか、それを生成AIに聞いた結果と、猫好きの老若男女70人にインタビューした結果の記述……。AIの語る猫の可愛いところは、まだまだ実在する猫好きの語るそれに敵わないことを、私は知っている……」
「へえ、そんな本があるんですね。福井さん、良ければ紹介してください。手元にお持ちなら貸していただけませんか」
「私も、紹介してもらった物……手元にはない。後で、情報を送る……。ただ、本の主題はAIではなく、猫と社会科学に寄る……ジュンが、それで良ければ……」
興味の湧いた事柄についてすぐ横道にそれて深入りしがちなジュンの性質もわかってきたこと。あと、福井さんは相当猫が好きらしい。
「それで、肝心の番組のコーナーの方は。しばらくはまつり発案のマラソン企画で保たせるにしても、他よ他」
end.
++++
時事を少し盛り込みつつ、今期初の9時キャン組+美奈。
どっかの兄さんが相変わらず性悪で安心したし、AIに勝る人間の可能性とかどっかのカーデが好きそうだ。プチメゾンで会ったか?
(phase3)
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FMにしうみ。向島エリアは星港市の西隣に位置する西海市のコミュニティラジオ局で、地域に根ざしたメディアとして日々番組を放送している。地元在住・出身者のパーソナリティが担当する番組もあって、近所のあの人がラジオをやってる、ということもなくはない話だ。
このFMにしうみで、向島インターフェイス放送委員会のメンバーが次の1月から1時間枠の新番組を担当することになった。経緯は話せば長くなるけど、去年高崎先輩が卒業研究の一環でやっていた番組が好評で、学生が担当するフレッシュな番組があってもいいのかもね、という話になったそうだ。
「で、コーナーはどうする?」
インターフェイスから集まったのは5人のメンバーだ。2年生が局でバイトしている俺と、青敬の雨竜、青女のまつり。1年生はウチの琉生と向島のジュン。10月頃から顔合わせや打ち合わせをしてきた中で、人となりであったり技術的なことも少しずつではあるけどわかってきた。
番組の内容もある程度は俺たちに任されている、とは言え完全に好き勝手は出来ないので、局の人代表として先輩アルバイトである福井さんが時々打ち合わせに顔を出してくれる。福井さんは星大の院生でインターフェイス出身者でもあり、先の高崎先輩の番組でミキサーを担当していたディレクターだ。
「取り入れてもらいたいのは、西海市らしい要素……それから、せっかくであれば、メンバーの個性を生かしたコーナーを作ってみたり……」
「西海市らしい要素は、西海のここっていうスポットでアタシたちが実際に遊んで、その様子をレポートしたりすればいいと思うんだよね」
「西海のイベントに参加してみたりな!」
「そうそう! あと、ブログとかSNSで写真とか動画を公開したり?」
「おっ、動画と聞いて黙ってる俺じゃないぜ」
性格的に、打ち合わせでガンガン発言するのはやっぱりまつりと雨竜だ。実際、インターフェイスでも1年生の頃からガンガン系のキャラクターとして知られていて、勢いがあるなあという印象はとても強い。ただ、2年生になって、2人にはガンガンや勢いだけでない特色があることもわかってきた。
まつりは頭の回転が早いようで、ミキサーとしての腕もありつつ、ステージの台本を書くことも出来るそうだ。雨竜は音に対する感性が磨かれてきて、映像作品の中でどんな音でどういう効果を持たせるかという選択が上手くなってきた。2人のこの能力はラジオ番組の上でも十分戦えると思うし、俺も負けていられないと思う。
一方、1年生はまだ少し未知数だ。一応同じ大学ではあるけど、琉生は掴み所がわからない子だなという印象。ふわふわしすぎていると言うか。高木先輩やちむりーとは相性がいいようだけど、俺には理解が難しいなと思うことも多々。ジュンは真面目が第一印象だけど、口数が周りと比べると少ないのでまだまだ見えない部分が多い。
「メンバーの能力を生かすならー、ジュンくんの絵を推さない手はないと思うんですよー」
「ええ…? ラジオでどう絵を推すんだ」
「えー? だってー、ブログとかー、SNSがあるならー、そこに絵を上げたらいいんじゃなーい? って思うんだけどー。ねー先輩、いいですよねー」
「うんうん、いいんじゃない?」
「ジュンの画力だったら文字だけとか写真だけとかより目を引く可能性もあるよな! やる価値あると思うぜ!」
「やったー」
「いや、まだ決まってない」
琉生はジュンの絵が好きで、機会があればそれを推している。対策委員から拡散した絵をきっかけに合宿でジュンに話しかけに行ったそうで、その縁でこのラジオにジュンを誘ったっていう話だ。
「そう言ってますけど。福井さん、どう思います?」
「もし、本当に絵を上げるなら、気をつけることは多い……佐崎君は、ネットに触れる機会も多いと思う……最近の変化は、見ている…?」
「ああ、確かに。今はその辺少し香ばしい感じになってますね」
「……そう。もし、本当にやるのであれば、各サービスの規約を読み込んで、どこの会社が、どういう対応を取っているのかを、しっかり理解しないといけない……」
「サキ、俺にもわかるように通訳して」
「みんな、生成AIの話は聞いたことある?」
「何となく」
「あんまり」
「授業で聞いた」
「俺も授業でチラッとだけ」
「生成AIそのものは悪くない。それが前提。ネット上にある情報……テキストや画像データをAIに学習させて、生成する。その技術を悪用する人間の動きが警戒されてる。もちろんSNSへの投稿なんかも学習対象」
「自身の投稿物を、AIに学習させたくなければ、相応の対応が必要……完全な対策は、現状かなり難しい……。この手の話は、いたちごっこだから……。それでも、著作物を守るために、学習精度を落とすため、または学習されたとして、その著作物が誰の物であるのかを示すための印や、サインを入れる人が増えている……」
いつだって問題なのは技術そのものじゃなくて、それを悪用する人間の方だ。ディープフェイクの話だってある。何でもかんでもデジタル化するって風潮ではあるけど、一周回って、大事な書類は紙に手書きの上で捺印した物の方が信頼出来るようになるかもしれない。
「確か、福井さんは絵を描かれるんでしたっけ。この問題も他人事ではないですよね」
「私は、描いた物をネットに上げることは、ほとんどしない……だけど、この件で、私の幼馴染みが毒づいていた……。だから、話は少し、聞いている……」
「うーん、ジュンの絵をブログとかSNSに上げるの、いいと思ったんだけどなー」
「それが、出来ないとは言っていない……。ジュンが描いた絵の権利はジュンの物……それを、局にも確認した上で、絵には、しっかりサインを入れる……。絵柄に馴染むサインをデザインする、という楽しみもある……」
「自分の絵はサインを入れるような大層な物じゃないと思ってましたけど、本格的にネットに上げるとするなら考えていかないといけないことなんですね。ちょっと、自分でもその辺りのことについて勉強した上で考えてみます」
「……ほどほどに」
ジュンが「勉強します」と言うとその規模がとんでもないことになるというのも打ち合わせを重ねる中でわかってきたこと。夏合宿で一緒の班だったササが「ジュンは真面目すぎて何をしでかすかわからない」と言ってた意味も、少しずつ。ササとは別のベクトルで真面目さが変にぶっ飛ぶのかな。
「所詮、インターネット上にある情報は、人の営みの一部分に過ぎない……。まだまだ、AIが生成した物より人間が発した物の方が、しっくりくることも、ある……」
「たとえば」
「猫に関する本で、読んだ……。猫の可愛さはどこにあるのか、それを生成AIに聞いた結果と、猫好きの老若男女70人にインタビューした結果の記述……。AIの語る猫の可愛いところは、まだまだ実在する猫好きの語るそれに敵わないことを、私は知っている……」
「へえ、そんな本があるんですね。福井さん、良ければ紹介してください。手元にお持ちなら貸していただけませんか」
「私も、紹介してもらった物……手元にはない。後で、情報を送る……。ただ、本の主題はAIではなく、猫と社会科学に寄る……ジュンが、それで良ければ……」
興味の湧いた事柄についてすぐ横道にそれて深入りしがちなジュンの性質もわかってきたこと。あと、福井さんは相当猫が好きらしい。
「それで、肝心の番組のコーナーの方は。しばらくはまつり発案のマラソン企画で保たせるにしても、他よ他」
end.
++++
時事を少し盛り込みつつ、今期初の9時キャン組+美奈。
どっかの兄さんが相変わらず性悪で安心したし、AIに勝る人間の可能性とかどっかのカーデが好きそうだ。プチメゾンで会ったか?
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