2024(02)

■機会は作るもの

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「……はっ」
「薫クン、大丈夫?」
「ねてた。……ヘッドスパってのはどうもダメだ、俺の人生における寝落ち率を更新し続ける」
「それだけリラックスしてもらってるってことで、何よりです」

 拳悟が働く美容院に通い始めてしばし。ここで髪を整えるついでにヘッドスパというものをやってもらっているんだけど、これがもーうダメだ。頭をマッサージされているうちに意識が無くなっていて、気付いた時には1時間のコースが終わっている。今はたまたま途中で意識が戻ってきたけど、普段は「終わったよ」と声をかけられるまで気付かない。
 俺としてはせっかくの時間なので拳悟と話をしていたいんだけど、それもなかなか叶わない。リラックスしているということだと言われれば、そうなのかもしれないと納得はするし、実際頭から首肩にかけては少し楽になっている。でも俺的には寝落ちすることで時間を無駄にしているなと感じるし、不完全燃焼だ。

「よし、せっかく起きたんだ。ここって雑談出来るブース?」
「出来る出来る。何話す?」
「年末の音楽祭の話。お前は今年も参加すんの?」
「するよ、もちろん。もーう練習練習だよ」
「仕事しながらよくやるなあ」
「薫クンには言われたくないなあ」
「よく言われるわ」
「それを聞くってことは、薫クンは今年」
「一応菅野かんのから話は聞いたけど、仕事で行けないんだ」
「仕事かー、それは残念」
「まあ、イベントの仕事ってのはそういうモンだと腹は括ってる。って言うか伊東さんが年末休み取ってるから必然的に俺は出なきゃいけない」
「何だっけ、宮ちゃんと職場でニコイチやってんだよね」
「そうそう」

 お前はイベントにハブるとキレて何をしでかすかわかったモンじゃないからな、と菅野が渋い顔をしながら俺に音楽祭のことを知らせてきた。俺を何だと思ってるんだと苦情を出すと、みんな「自分の言動を省みろ」と真顔で言ってきたのには正直納得行ってない。さすがに人様に迷惑をかけるようなキレ方をしたことはないはずだ。……うん、そのはず? 記憶が飛んだ部分はどうかと聞かれると自信はないが。
 どちらにしても年末はニコイチをやっている伊東さんがコミフェ休暇でいないことになっているので俺は出勤をしなければならなかった。音楽祭には出られないと言うと菅野の方が「テメー俺が親切で教えてやったのに出れないとかふざけんな」とキレ散らかしてきたので、みんながみんな年末に長い休みがあると思うなと返してやった。会社員ナメんな。いや、アイツも会社員だったわ。

「太一クンの反応、ぽいねー。音声付きでイメージ出来る」
「でも、話を聞いて何もしないのも嫌だから、書く物は書いて壮馬に投げようと思う。後は煮るなり焼くなりアイツが何かするだろ」
「おっ、楽しみだね」
「音楽祭と壮馬の話になると高崎がお決まりの文句を吐くんだよな」
「アレでしょ? お前はこんなトコに来てないで早くトリプルメソッドをデカいライブに出るようなバンドにしろ」
「それそれ」
「まあ、それもアイツなりの檄だよね。何だかんだ壮馬もクラファンのメンバーではアイツに一番懐いてるしね。いい兄貴分だと思うよ」
「兄貴分ねえ。わかんないでもないけど」

 夏のやらかし以来、高崎とは月イチくらいで会うようになっているけどまだまだ知らないことの方が多い。面白い、興味を引かれる奴だという印象はとても強いし、多少の粗相や暴言くらいは吐いても大丈夫な距離感にはなってきたんじゃないかと一方的に思っている。と言うか暴言に関してはアイツがまず俺に吐いてるし、おあいこだろう。粗相に関しては俺が借りている状態だ。
 拳悟はアイツのことをいい兄貴分だと言うけど、実際には末っ子らしい。ただ、緑ヶ丘の後輩たちの様子を見ていてもアイツを慕って懐いているような感じだから、いい兄貴分だというのは拳悟だけの評価というワケでもないようだ。まあ、世話になった先輩に懐く気持ちもわかるし、その人に会うと自分はずっと後輩だなって思う現象もある。ああ、そろそろ越谷さんに会いたいな。話したいことはいくらでもあるのに。

「うわっ! ぞわぞわする」
「ゴメン、これこういう機械。頭皮をマッサージする、EMSとかの」
「急に耳元でウィンウィンいうからビックリした」

 急に頭を何かよくわからないたくさんの突起物? か何かに這い回られて鳥肌が立った。やるなら言ってくれという気持ちになる。ただ、しばらく這われている間にその刺激には慣れて、気持ちよさを感じるようにはなった。最初は驚くなあ、頭の上で行われてて見えてないし。

「ゴメンね。一応これ毎回やってるんだけど、知らないってことは起きてる状態でやるのは初めてってことだね」
「まあ、知らないってことは多分そうだ。はー、そういう機械があるのか」
「あ、でも一般的な美容家電のコーナーにそれっぽいのはあるし、家でやってる人もいるにはいるよ」
「美容家電か、俺とは無縁だな」

 美容家電と考えてベティさんの顔が出てきたので、プチメゾンにもしばらく行ってないなと思い出す。今は学生のときと比べて西海までの交通費が重いとか痛いとかを気にしなくて良くなったので、時間があるときにでも遊びに行こうと思う。今はカズの料理が俺の中の家庭料理の割合を占めるけど、ベティさんの料理もべらぼうに美味いんだよな。ああ、舌がプチメゾンになってる。大石でも誘うかな、繁忙期は抜けてるはずだし。

「なあ拳悟」
「何?」
「お前らって夏の時みたいな集まり、冬もやったりしねーの?」
「冬かあ、あんまり意識したことなかったね。あっ、それなら今年の夏メン6人で集まる? 高崎と越野の予定は俺が聞いて、洋平クンと大石クンの予定は薫クンが聞く感じで」
「おっ、いいね。でもなあ、山口はなぁー、飲み屋の年末年始ぃ…!?」
「まあ、見るからに繁忙期だねえ。でも俺も繁忙期だし、薫クンと高崎は常に多忙! みんな似たようなモン!」
「だな! 機会は作るモンだ!」
「そうそう、機会は作ろう」
「場所はどうすっかな。やっぱ玄か」
「そうだね、いつメンの会ならあそこでしょ」
「いいねいいね」
「じゃ、そういうことで! 細かいことは髪乾かす時に席のタブレットで検索しよ」
「そうだな」
「じゃ、流しまーす」


end.


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お前朝霞班時代にファンフェスにハブられた結果キレて壁殴って怪我+謹慎したよな
やまよが迷惑被ったぞ、血の付いた壁掃除したり班長代行やったりな
それはそうとして今は人好きのいいあんちゃんだからPさんてヤツァー

(phase3)

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