2024
■Battle Battle Battle!
++++
「交流会は! 戦争だ!」
ホワイトボードにバンと強く手を打ち付けて、かっすーが突然大声を張り上げた。交流会は戦争。奈々さんこそ「そうだね、懐かしいね」と喜んでるけど去年のサークルのことを知らない残り全員は唖然として、突然何を言い出すんだコイツはという目でかっすーを見ている。ところで今日これから行われるのは緑ヶ丘との交流会だ。
2年くらい前から行われるようになった2校の交流会では、前半は緑ヶ丘主催の飲み会、後半は向島主催の缶蹴り大会をやるっていうのがお決まりの流れになっている。この缶蹴りに特にガチっていたのが圭斗サン菜月サンらの学年らしい。去年も缶蹴りのためだけにその学年の人らがこの会に参加してたって話だもんな。で、かっすーな。
「去年、我らがMMPは、残念ながらギッタンギッタンのボコボコにやられました! 総合戦績は1勝1敗の5分、つまりここで勝ち越しを狙って行かなきゃならないんだ!」
「うんうんッ、勝たなきゃ圭斗先輩と菜月先輩に顔向けできないよカノン」
「そうっすよね奈々先輩! ウチの戦力で言えば、今年は4年生の参加はないんで去年から見れば菜月先輩と野坂先輩っていうすっごく大きな戦力がなくなったんだよ」
「っつっても向こうの戦力もある程度ダウンしてんだろ?」
「そう。高崎先輩っていうレジェンドと今4年生の果林先輩がメチャクチャつえーのなんのって」
缶蹴り初年度、引き分けに終わりそうだったところを圭斗サンと緑ヶ丘の高崎サンのジャンケンで勝敗を決めたところ、圭斗サンが勝ったそうだ。翌年、これを相当根に持っていたらしい高崎サンが「連中を完膚なきまで叩き潰す」と宣言、その言葉通りにMMPをボコボコにしたそうだ。去年手ぇ抜いてました? とかそんなレベルでやられたとか。
そもそもが元々の身体能力は圧倒的に向こうの方が上で、ウチはホームアドバンテージと身体能力の高い菜月サン野坂さんでどうにか戦ってただけだったらしい。野坂さんは完璧超人だから缶蹴りに耐え得る身体能力もあるんだろうけど、菜月サンよな。こないだ撃ち合ってわかったけどあの人はバリクソ体育会系だし普通にめっちゃ動ける人だ。蹴るのはどっち足なんだろな。
「4年生以上の先輩がいらっしゃらないのであれば、全く別のチームを相手にするようなものですね」
「んっふっふ。鳥ちゃん、ノープロブレム! 菜月先輩と野坂先輩の穴は鳥ちゃんと奏多で十分埋まってるし、1年生が6人もいりゃ頭数でどーとでもなる!」
「いよっ、カノン絶好調ッ!」
「任してくださいよ奈々先輩」
うっすら気付いちまったが、かっすーは完全に俺と春風を扱き使う気なんじゃないだろうか。この缶蹴りは二次会という性質上、ある程度酒が入った状態で行われる。よく考えればわかることだが、インターフェイス内でも酒豪揃いで有名な緑ヶ丘の連中と下戸集団のウチが酒を飲んだ状態で対等に戦えるはずがない。緑ヶ丘で飲めないのって確かシノだけのはずだろ。逆に、ウチである程度飲めるのは俺と春風だけだぞ。
「ちなみに1年生って缶蹴りどんな感じ?」
「缶蹴りどんな感じと聞かれても、そんなことは最近やってないので何とも」
「ほら、誰が走るの速いかとか、あるじゃん」
「あっ。俺思いついてんけど、缶蹴りってかくれんぼみたいな性質もあるし、殿の後ろに隠れて缶に近付くとか出来るんちゃうん」
「それ、殿は見つかるんだから破綻するだろ」
「殿が見つかった瞬間俺とかパロとかが後ろからブワーッと。アカンか?」
「1回やる価値はあるかもしんないけど」
暗がりに殿が急に現れたらめちゃ怖いよな、と思いつつも、言わないでおく。うっしーが提示した殿の影に隠れる作戦は、通用しても1回きりだろう。
「あっそうだ。出る時にこのコンロ持って行くよーッ」
「使うんすか?」
「寒いからね。これでお湯を沸かしとくと、カップめん食べたり飲み物作ったり出来るよ。飲み足りない人がお湯割り作ってたりもするし」
「いいっすねー、楽しそー。俺駅でうどん買ってこーかな」
「あっ、奈々先輩俺にヤカン持って来いって言ってたのこのためっすか!」
「そうそう。終わった後、コンロは一旦ジャックが家に持ち帰って預かってくれる? サークル室には戻せないから」
「了解っす」
「1年生たちってジャックの家に泊まる子も何人かはいるよね?」
「なんなら全員来ますよ」
「じゃみんなで分担して荷物運べるね」
カセットコンロを使ってお湯を沸かすのは初回からやっていたことだそうで、お湯があると何かと使えるそうだ。俺も後で駅のコンビニで買い物するかな。コーヒーとか飲めるようにしといたらいいかな。
「とりぃは今回ハンドルキーパーをやってもらって感謝だよーッ」
「夜の大学は不便ですからね。終電までに帰りたい子もいるでしょうし、私で良ければ動きますよ」
「ホント、たくさん食べてねッ!」
「奈々さぁん、春風にそんなこと言ったら冗談抜きに食い尽くされますよー」
「あっ、とりぃくらいならインターフェイス的には慣れっこだと思うから平気平気ッ」
「奏多、インターフェイスには私よりもたくさん食べる人がいるのよ」
「お前それドヤることではねーぞ」
「とりぃ、いっぱい食べたいと思ったら、あんまり食べない子に交渉するとかしてね」
「サキちーとかな」
「後でサキさんに謝っておかないと。奏多と同じ考えをしてしまっただなんて失礼過ぎます」
「サキちーが食わないのは事実でインターフェイスの共通認識だろ、何が失礼なんだよ」
今回、春風とすがやんがハンドルキーパーを担当するらしい。その分飲み会で払う金額がちょっと安くなるとか。すがやんはともかく春風は飯を食うんだから飲み放題分くらいは普通に取っても構わないと思うが。あー、そういやサークル入りたての頃の焼肉ン時に何か言ってたな、緑ヶ丘には四次元胃袋の持ち主がいるとか何とか。野坂さんとぶつけると戦争が起こるんだったか?
「とりあえず、鳥ちゃんが飲まないこと確定してるし缶蹴りのエースとして期待していいよね?」
「私がですか…?」
「もちろん奏多もな! 奏多は酒強いし缶蹴りのためにわざわざセーブしてもらわなくても大丈夫そう?」
「つか、わざわざセーブするとかそういう概念があんのかよ」
「全ては向島大学MMPの勝利のために! 交流会は戦争だ!」
end.
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A.蹴るのは左足です。
月日が経ち、圭斗さんの迷言の形が少し変わりました。正しくは「交流会だけど、戦争だ」
(phase3)
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「交流会は! 戦争だ!」
ホワイトボードにバンと強く手を打ち付けて、かっすーが突然大声を張り上げた。交流会は戦争。奈々さんこそ「そうだね、懐かしいね」と喜んでるけど去年のサークルのことを知らない残り全員は唖然として、突然何を言い出すんだコイツはという目でかっすーを見ている。ところで今日これから行われるのは緑ヶ丘との交流会だ。
2年くらい前から行われるようになった2校の交流会では、前半は緑ヶ丘主催の飲み会、後半は向島主催の缶蹴り大会をやるっていうのがお決まりの流れになっている。この缶蹴りに特にガチっていたのが圭斗サン菜月サンらの学年らしい。去年も缶蹴りのためだけにその学年の人らがこの会に参加してたって話だもんな。で、かっすーな。
「去年、我らがMMPは、残念ながらギッタンギッタンのボコボコにやられました! 総合戦績は1勝1敗の5分、つまりここで勝ち越しを狙って行かなきゃならないんだ!」
「うんうんッ、勝たなきゃ圭斗先輩と菜月先輩に顔向けできないよカノン」
「そうっすよね奈々先輩! ウチの戦力で言えば、今年は4年生の参加はないんで去年から見れば菜月先輩と野坂先輩っていうすっごく大きな戦力がなくなったんだよ」
「っつっても向こうの戦力もある程度ダウンしてんだろ?」
「そう。高崎先輩っていうレジェンドと今4年生の果林先輩がメチャクチャつえーのなんのって」
缶蹴り初年度、引き分けに終わりそうだったところを圭斗サンと緑ヶ丘の高崎サンのジャンケンで勝敗を決めたところ、圭斗サンが勝ったそうだ。翌年、これを相当根に持っていたらしい高崎サンが「連中を完膚なきまで叩き潰す」と宣言、その言葉通りにMMPをボコボコにしたそうだ。去年手ぇ抜いてました? とかそんなレベルでやられたとか。
そもそもが元々の身体能力は圧倒的に向こうの方が上で、ウチはホームアドバンテージと身体能力の高い菜月サン野坂さんでどうにか戦ってただけだったらしい。野坂さんは完璧超人だから缶蹴りに耐え得る身体能力もあるんだろうけど、菜月サンよな。こないだ撃ち合ってわかったけどあの人はバリクソ体育会系だし普通にめっちゃ動ける人だ。蹴るのはどっち足なんだろな。
「4年生以上の先輩がいらっしゃらないのであれば、全く別のチームを相手にするようなものですね」
「んっふっふ。鳥ちゃん、ノープロブレム! 菜月先輩と野坂先輩の穴は鳥ちゃんと奏多で十分埋まってるし、1年生が6人もいりゃ頭数でどーとでもなる!」
「いよっ、カノン絶好調ッ!」
「任してくださいよ奈々先輩」
うっすら気付いちまったが、かっすーは完全に俺と春風を扱き使う気なんじゃないだろうか。この缶蹴りは二次会という性質上、ある程度酒が入った状態で行われる。よく考えればわかることだが、インターフェイス内でも酒豪揃いで有名な緑ヶ丘の連中と下戸集団のウチが酒を飲んだ状態で対等に戦えるはずがない。緑ヶ丘で飲めないのって確かシノだけのはずだろ。逆に、ウチである程度飲めるのは俺と春風だけだぞ。
「ちなみに1年生って缶蹴りどんな感じ?」
「缶蹴りどんな感じと聞かれても、そんなことは最近やってないので何とも」
「ほら、誰が走るの速いかとか、あるじゃん」
「あっ。俺思いついてんけど、缶蹴りってかくれんぼみたいな性質もあるし、殿の後ろに隠れて缶に近付くとか出来るんちゃうん」
「それ、殿は見つかるんだから破綻するだろ」
「殿が見つかった瞬間俺とかパロとかが後ろからブワーッと。アカンか?」
「1回やる価値はあるかもしんないけど」
暗がりに殿が急に現れたらめちゃ怖いよな、と思いつつも、言わないでおく。うっしーが提示した殿の影に隠れる作戦は、通用しても1回きりだろう。
「あっそうだ。出る時にこのコンロ持って行くよーッ」
「使うんすか?」
「寒いからね。これでお湯を沸かしとくと、カップめん食べたり飲み物作ったり出来るよ。飲み足りない人がお湯割り作ってたりもするし」
「いいっすねー、楽しそー。俺駅でうどん買ってこーかな」
「あっ、奈々先輩俺にヤカン持って来いって言ってたのこのためっすか!」
「そうそう。終わった後、コンロは一旦ジャックが家に持ち帰って預かってくれる? サークル室には戻せないから」
「了解っす」
「1年生たちってジャックの家に泊まる子も何人かはいるよね?」
「なんなら全員来ますよ」
「じゃみんなで分担して荷物運べるね」
カセットコンロを使ってお湯を沸かすのは初回からやっていたことだそうで、お湯があると何かと使えるそうだ。俺も後で駅のコンビニで買い物するかな。コーヒーとか飲めるようにしといたらいいかな。
「とりぃは今回ハンドルキーパーをやってもらって感謝だよーッ」
「夜の大学は不便ですからね。終電までに帰りたい子もいるでしょうし、私で良ければ動きますよ」
「ホント、たくさん食べてねッ!」
「奈々さぁん、春風にそんなこと言ったら冗談抜きに食い尽くされますよー」
「あっ、とりぃくらいならインターフェイス的には慣れっこだと思うから平気平気ッ」
「奏多、インターフェイスには私よりもたくさん食べる人がいるのよ」
「お前それドヤることではねーぞ」
「とりぃ、いっぱい食べたいと思ったら、あんまり食べない子に交渉するとかしてね」
「サキちーとかな」
「後でサキさんに謝っておかないと。奏多と同じ考えをしてしまっただなんて失礼過ぎます」
「サキちーが食わないのは事実でインターフェイスの共通認識だろ、何が失礼なんだよ」
今回、春風とすがやんがハンドルキーパーを担当するらしい。その分飲み会で払う金額がちょっと安くなるとか。すがやんはともかく春風は飯を食うんだから飲み放題分くらいは普通に取っても構わないと思うが。あー、そういやサークル入りたての頃の焼肉ン時に何か言ってたな、緑ヶ丘には四次元胃袋の持ち主がいるとか何とか。野坂さんとぶつけると戦争が起こるんだったか?
「とりあえず、鳥ちゃんが飲まないこと確定してるし缶蹴りのエースとして期待していいよね?」
「私がですか…?」
「もちろん奏多もな! 奏多は酒強いし缶蹴りのためにわざわざセーブしてもらわなくても大丈夫そう?」
「つか、わざわざセーブするとかそういう概念があんのかよ」
「全ては向島大学MMPの勝利のために! 交流会は戦争だ!」
end.
++++
A.蹴るのは左足です。
月日が経ち、圭斗さんの迷言の形が少し変わりました。正しくは「交流会だけど、戦争だ」
(phase3)
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