2024
■ホップアップヴィレッジ
++++
「カオちゃん」
「はい」
「ソルツミの更新が止まりました」
「そうですね」
「つまり繁忙期を抜けたということで?」
「しょうね」
「ウワーッ!」
ソルツミ。ソルさんが繁忙期の間にUSDXチャンネルで1日1本更新されるパズルゲーム・ツミツミのプレイ動画。ソルのツミツミの略でソルツミと呼ばれるようになる。声が入るでも攻略情報が入るでもなく、淡々とプレイするだけのそれは“生存報告”としての性質がある。
純粋にツミツミのプレイ動画として楽しむ層は少数派で、大多数は本当に生存報告としてそれを受け取っている。USDXの社畜キャラが会社の休み時間に息抜きとしてプレイしたそれを自分のスマホからポイッと投げているという様がいいらしいのだけれど。
「ソルさんが繁忙期を抜けたってことは、ソルコンの弾いてみたも更新ストップですよね!?」
「まあ、そういう話になってましたね」
「あああ……貴重な実写動画の供給が……」
ソルさんが繁忙期の間、USDXで少し変わった試みをしようという話にはなっていた。これまでに発表した楽曲を、ベースとドラムで弾いてみた動画を公開してみようと。それをソルさんの繁忙期入りとなった盆の頃からカレンダーの0のつく日に公開し続けてきた。
USDXの曲は純粋に凄い。演奏技術も、へっぽこギターと謎多きバイオリンを除きまあ凄いんだろう(俺がへっぽこ故に本当の凄さがまだわかっていない)。楽曲を公開し始めた最初の頃は打ち込みだったけど、本当に弾けるんだぞというところを見せてもいいかもねと。
で、本当に弾いてみた動画を制作していたそうだ。どうしてベースとドラムなのかはわからないけど、スケジュールの都合だとか、リズム隊だからいいとか、単純に須賀家のスタジオを使わせてもらうなら菅野はマストだろうとか、諸説ある。
「て言うかさカオちゃん知ってる?」
「多分知らないです」
「最近ちょっとずつUSDXの曲でベース弾いてみたっていう動画が増えてるんだよ」
「USDXの公式以外で?」
「そう、以外のベーシストが上げてる一般の弾いてみた」
「へー、本当に知らなかった」
「やってみたいと思わせる感じなんだろうねえ、音楽のことはよくわかんないけど」
「うん、俺も音楽のことはあんまよくわかってないからそれがどういう事なのかよくわかんないんだけど」
「音楽のことあんまよくわかってない演者イエーイ」
「いえーい」
「まあ、レイ君はペンを持たせてこそですからね」
「そうですよ。グッズ出すなら絶対万年筆。ちゃんと左利き用のも用意してさ」
「自分が使うこと前提イエーイ」
「いえーい。あ、でも併用かな? 万年筆はもう山口がくれたの持ってるし」
「くっ…! 突然そういうのを放ってくる!」
活動の中で誘われた話はあまり断らないでいたら、配信者の繋がりがまた繋がりを生み、結構な知り合いが出来ていた。“ムラ”的な物に参加するようにもなり、他の村のポップアップストアがどうしたこうしたという話も耳にしている。実際に遊びに行ってグッズを買ったり、恐れ多くも壁にサインさせてもらったりもした。
と言うか配信者グループが商業テナントぶち抜いてポップアップストアを開けてるってどういうことなんだよと思いつつ、他の配信者から「USDXではそういうのやらないの?」と聞かれてきたのに対しては「多分やらないです」と返したり。きっとプロさんがめんどくさがる。
一応プロさんからは「レイっていうキャラクターの扱いはUSDXの他メンバーより緩くしてあるから、カミツレとか他の村でイベントやるとかグッズ出すとか曲出すとかそういう話が来たらレイ君の判断でやっていいよ」とは言われている。ただ、判断を一任されるというのもまたプレッシャーなワケで。
「え、つまりUSDX公式以外の、他の枠でグッズが出る可能性?」
「なくはないです」
「えーっ!? お金貯めなきゃ!」
「あ、いや、今すぐじゃないけど。今のところそういう話もないし。こう、ユニットとか村的な物が盛り上がっていけば、あるかもしれないねってくらいのもしも話でね」
「いやいやいや、カミツレはどんどん盛り上がってるし、レイ君最近参加してるのってやまパンさんの村だよね?」
「だね。村の名前を決めたいとは言ってるけど。4文字の略称の響きから決めたいって言ってた」
「へー、期待ですねー」
そういうワケで俺個人は仕事もしつつ配信の方も忙しくさせてもらっていて、それと並行してTRPGのシナリオなどの書き物もさせてもらっているのであーたのしーって感じでレッドブルがキマるキマる。やっぱやることと締め切りはいくつも抱えてないとアガらないぜ。
「ところでUSDX的にはソルさんのお仕事も落ち着いて、これからは動画も増えてくるんです?」
「どうかなあ。そこを無理に頑張ると続かなくなるねって話にはなってるし。言ってUSDXってみんな兼業だしそれで飯を食えなきゃ死ぬって集団じゃないからそこまでガツガツしてないように見える。プロさんのやりたいようにやるグループだから、全部あの人の気分次第と言うか」
「確かに、急に頑張りすぎると続かなくなる現象はわかんないでもない。規模が大きくなり過ぎてやりたいことが出来なくなったり、活動方針が合わなくなったりして解散や休止に陥るグループもあるし。USDXには細くても長く活動してもらって」
「プロさんが言うには、USDXそのものの露出は少なくても、USDXのレイがガツガツ動いてるからUSDXというもの自体が続いてることはアピール出来てるって」
「ああ、なるほど。レイ君が広告塔なワケね」
「どこの収録に行ってもクセで「USDXの文字書き担当・レイでーす」って挨拶してるのに対するイジリ半分だとは思ってるけど」
「ああ! 確かに! どこの村でも「USDXの文字書き担当・レイでーす」だねえ。なんで? USDXの~って付けなくても認知度上がってきたんじゃ?」
「いや、レイなんてありふれた名前だし、USDXのって付けとかないと差別化出来なくね、って思ってやり始めたらね。文字書き担当はでじかもさんの配信に呼ばれたときの、世間に対するガチ初めましての自己紹介のまんまやってるって感じで」
今でこそ声だけでレイがいるとわかってくれる視聴者さんがいてくれたりもするんだけど、そもそもゲームも配信も初心者のへっぽこ、それがレイだから、常日頃から出会う人皆初対面の気持ちでいることが大事だ。人付き合いは丁寧に。逆に言えば、ある程度雑でいいのはUSDXの中、それもタメ組相手の時だけだ。
「って言うかホントにカオちゃんの時間管理ってどーなってんの? 1日36時間なんじゃないかっていう作業量なんだけど」
「伊東さんがそれを言っちゃいけないと思うけどなあ。仕事して家のことして書き物だろ? で、アウトプットだけじゃなくてインプットもしてる。どうなってんだ」
「これはあんまり表沙汰にしちゃいけないんですけど、家のことはあんまり出来てないです」
「えっ料理以外もですか」
「ゴミ出しと水回り以外の掃除はやってますけど、水回りは鉄壁の要塞なので、手出し出来ません」
「全てを察した」
「それで浮いた時間で動画を倍速再生しつつわーっと書く物を書いてゲームもしてですよ」
「うん、やっぱ言うほど浮いてないわ、それ」
「厳密にはカズの夜勤の日が作業時間としては結構大きめなんですよ。5、6時間は取れるのでそこで一気に」
「ああ、なるほど。5、6時間はデカい」
時間の捻出方法はともかく、俺の作業量、活動量に関しては近くにいい刺激を与えてくれる同志がいるっていうのは大きいなあ。野球か将棋か忘れたけど、何かのニュース記事で見た気がするもんな。天才を作るにはもう1人の天才が必要だ、みたいなことを。要するに切磋琢磨する存在は必要ってことだもんな。その点伊東さんは刺激も与えてくれるし配信者としての活動に対する指摘もしてくれるし、ホントにありがたい出会いです。あと俺の栄養面をめちゃくちゃ支えてくれてる旦那さんの存在も忘れちゃいけない。
「話めっちゃ戻るけど、世間一般での俺のギターの評価ってどうなのかな。いや、へっぽこなのは理解してるけど」
「ゴメン、そこはうちじゃなくて音楽知ってるエゴサの鬼に聞いた方がいいんじゃない?」
「確かに。そこはチータだな」
end.
++++
ただただ意味もなく喋ってるだけの話がやはり好き。
(phase3)
.
++++
「カオちゃん」
「はい」
「ソルツミの更新が止まりました」
「そうですね」
「つまり繁忙期を抜けたということで?」
「しょうね」
「ウワーッ!」
ソルツミ。ソルさんが繁忙期の間にUSDXチャンネルで1日1本更新されるパズルゲーム・ツミツミのプレイ動画。ソルのツミツミの略でソルツミと呼ばれるようになる。声が入るでも攻略情報が入るでもなく、淡々とプレイするだけのそれは“生存報告”としての性質がある。
純粋にツミツミのプレイ動画として楽しむ層は少数派で、大多数は本当に生存報告としてそれを受け取っている。USDXの社畜キャラが会社の休み時間に息抜きとしてプレイしたそれを自分のスマホからポイッと投げているという様がいいらしいのだけれど。
「ソルさんが繁忙期を抜けたってことは、ソルコンの弾いてみたも更新ストップですよね!?」
「まあ、そういう話になってましたね」
「あああ……貴重な実写動画の供給が……」
ソルさんが繁忙期の間、USDXで少し変わった試みをしようという話にはなっていた。これまでに発表した楽曲を、ベースとドラムで弾いてみた動画を公開してみようと。それをソルさんの繁忙期入りとなった盆の頃からカレンダーの0のつく日に公開し続けてきた。
USDXの曲は純粋に凄い。演奏技術も、へっぽこギターと謎多きバイオリンを除きまあ凄いんだろう(俺がへっぽこ故に本当の凄さがまだわかっていない)。楽曲を公開し始めた最初の頃は打ち込みだったけど、本当に弾けるんだぞというところを見せてもいいかもねと。
で、本当に弾いてみた動画を制作していたそうだ。どうしてベースとドラムなのかはわからないけど、スケジュールの都合だとか、リズム隊だからいいとか、単純に須賀家のスタジオを使わせてもらうなら菅野はマストだろうとか、諸説ある。
「て言うかさカオちゃん知ってる?」
「多分知らないです」
「最近ちょっとずつUSDXの曲でベース弾いてみたっていう動画が増えてるんだよ」
「USDXの公式以外で?」
「そう、以外のベーシストが上げてる一般の弾いてみた」
「へー、本当に知らなかった」
「やってみたいと思わせる感じなんだろうねえ、音楽のことはよくわかんないけど」
「うん、俺も音楽のことはあんまよくわかってないからそれがどういう事なのかよくわかんないんだけど」
「音楽のことあんまよくわかってない演者イエーイ」
「いえーい」
「まあ、レイ君はペンを持たせてこそですからね」
「そうですよ。グッズ出すなら絶対万年筆。ちゃんと左利き用のも用意してさ」
「自分が使うこと前提イエーイ」
「いえーい。あ、でも併用かな? 万年筆はもう山口がくれたの持ってるし」
「くっ…! 突然そういうのを放ってくる!」
活動の中で誘われた話はあまり断らないでいたら、配信者の繋がりがまた繋がりを生み、結構な知り合いが出来ていた。“ムラ”的な物に参加するようにもなり、他の村のポップアップストアがどうしたこうしたという話も耳にしている。実際に遊びに行ってグッズを買ったり、恐れ多くも壁にサインさせてもらったりもした。
と言うか配信者グループが商業テナントぶち抜いてポップアップストアを開けてるってどういうことなんだよと思いつつ、他の配信者から「USDXではそういうのやらないの?」と聞かれてきたのに対しては「多分やらないです」と返したり。きっとプロさんがめんどくさがる。
一応プロさんからは「レイっていうキャラクターの扱いはUSDXの他メンバーより緩くしてあるから、カミツレとか他の村でイベントやるとかグッズ出すとか曲出すとかそういう話が来たらレイ君の判断でやっていいよ」とは言われている。ただ、判断を一任されるというのもまたプレッシャーなワケで。
「え、つまりUSDX公式以外の、他の枠でグッズが出る可能性?」
「なくはないです」
「えーっ!? お金貯めなきゃ!」
「あ、いや、今すぐじゃないけど。今のところそういう話もないし。こう、ユニットとか村的な物が盛り上がっていけば、あるかもしれないねってくらいのもしも話でね」
「いやいやいや、カミツレはどんどん盛り上がってるし、レイ君最近参加してるのってやまパンさんの村だよね?」
「だね。村の名前を決めたいとは言ってるけど。4文字の略称の響きから決めたいって言ってた」
「へー、期待ですねー」
そういうワケで俺個人は仕事もしつつ配信の方も忙しくさせてもらっていて、それと並行してTRPGのシナリオなどの書き物もさせてもらっているのであーたのしーって感じでレッドブルがキマるキマる。やっぱやることと締め切りはいくつも抱えてないとアガらないぜ。
「ところでUSDX的にはソルさんのお仕事も落ち着いて、これからは動画も増えてくるんです?」
「どうかなあ。そこを無理に頑張ると続かなくなるねって話にはなってるし。言ってUSDXってみんな兼業だしそれで飯を食えなきゃ死ぬって集団じゃないからそこまでガツガツしてないように見える。プロさんのやりたいようにやるグループだから、全部あの人の気分次第と言うか」
「確かに、急に頑張りすぎると続かなくなる現象はわかんないでもない。規模が大きくなり過ぎてやりたいことが出来なくなったり、活動方針が合わなくなったりして解散や休止に陥るグループもあるし。USDXには細くても長く活動してもらって」
「プロさんが言うには、USDXそのものの露出は少なくても、USDXのレイがガツガツ動いてるからUSDXというもの自体が続いてることはアピール出来てるって」
「ああ、なるほど。レイ君が広告塔なワケね」
「どこの収録に行ってもクセで「USDXの文字書き担当・レイでーす」って挨拶してるのに対するイジリ半分だとは思ってるけど」
「ああ! 確かに! どこの村でも「USDXの文字書き担当・レイでーす」だねえ。なんで? USDXの~って付けなくても認知度上がってきたんじゃ?」
「いや、レイなんてありふれた名前だし、USDXのって付けとかないと差別化出来なくね、って思ってやり始めたらね。文字書き担当はでじかもさんの配信に呼ばれたときの、世間に対するガチ初めましての自己紹介のまんまやってるって感じで」
今でこそ声だけでレイがいるとわかってくれる視聴者さんがいてくれたりもするんだけど、そもそもゲームも配信も初心者のへっぽこ、それがレイだから、常日頃から出会う人皆初対面の気持ちでいることが大事だ。人付き合いは丁寧に。逆に言えば、ある程度雑でいいのはUSDXの中、それもタメ組相手の時だけだ。
「って言うかホントにカオちゃんの時間管理ってどーなってんの? 1日36時間なんじゃないかっていう作業量なんだけど」
「伊東さんがそれを言っちゃいけないと思うけどなあ。仕事して家のことして書き物だろ? で、アウトプットだけじゃなくてインプットもしてる。どうなってんだ」
「これはあんまり表沙汰にしちゃいけないんですけど、家のことはあんまり出来てないです」
「えっ料理以外もですか」
「ゴミ出しと水回り以外の掃除はやってますけど、水回りは鉄壁の要塞なので、手出し出来ません」
「全てを察した」
「それで浮いた時間で動画を倍速再生しつつわーっと書く物を書いてゲームもしてですよ」
「うん、やっぱ言うほど浮いてないわ、それ」
「厳密にはカズの夜勤の日が作業時間としては結構大きめなんですよ。5、6時間は取れるのでそこで一気に」
「ああ、なるほど。5、6時間はデカい」
時間の捻出方法はともかく、俺の作業量、活動量に関しては近くにいい刺激を与えてくれる同志がいるっていうのは大きいなあ。野球か将棋か忘れたけど、何かのニュース記事で見た気がするもんな。天才を作るにはもう1人の天才が必要だ、みたいなことを。要するに切磋琢磨する存在は必要ってことだもんな。その点伊東さんは刺激も与えてくれるし配信者としての活動に対する指摘もしてくれるし、ホントにありがたい出会いです。あと俺の栄養面をめちゃくちゃ支えてくれてる旦那さんの存在も忘れちゃいけない。
「話めっちゃ戻るけど、世間一般での俺のギターの評価ってどうなのかな。いや、へっぽこなのは理解してるけど」
「ゴメン、そこはうちじゃなくて音楽知ってるエゴサの鬼に聞いた方がいいんじゃない?」
「確かに。そこはチータだな」
end.
++++
ただただ意味もなく喋ってるだけの話がやはり好き。
(phase3)
.