2024
■Even if don't get the spirit
++++
まだまだ日中は暑いくらいの日が多いけど、日付が進むにつれしっかりと秋っぽくなってきてる。この暑いのにファッション雑誌や洋服屋さんはすっかり秋なんだもんね。まだまだ全然Tシャツでいいんだけどね。今日は大学祭についてのちょっとした仕事を大まかにまとめていくぞって日。今年は2ブース出すし、ちゃんとしないと後が大変だからねッ。
MMPは一応放送サークルだから、今年は大学祭でDJブースを出しましょうっていう話になった。って言うか、去年は今後の活動資金を本気で稼ぐために一旦DJブースを取りやめて、商魂に全振りした。でもDJブースをやらなかったことで、それを知ってるのがうちだけになっちゃった。だから継承っていう意味合いが強い。
同時並行で食品ブースも出していく。今年も星大さんからジャガイモを大量に仕入れることが出来たから、3日間フル稼働。今までは3日間ある大学祭の1日目がDJブース、来場者の多い土日に食品ブースって感じでやってたけど、人数も増えたし2ブース同時にやれるんじゃないってカノンが提案してくれて、どっちも3日間ぶっ通しでやることになった。
「あー、考えることが多いッ!」
「奈々さん、一旦カテゴリーごとにまとめましょ。1コずつ着実に。まだ全然時間はあります」
「松兄がいてくれて良かったよーッ、うち1人だったら絶対パニックになっちゃってた」
「歴代の3年生? さすがに学祭の仕事を1人でやってた代はないんじゃないすか? まあ、使える物は使ってもろて。アンタの手となり足となりますから」
「えっとじゃあ、とりあえずうちは食品ブースについて考えようかなッ」
用意する必要があるのは食材や備品など食品ブースに必要な物、機材などDJブースに必要な物、それから個人番組と学年ごとの企画番組、あと2ブース分の看板。どっちも同時並行でやるってことは、人の割り振りの問題も発生して来るし、それでなくても今年はカノンが他の大学さんとの共同企画みたいな物を持って来てるからその兼ね合いもあって余計難しくなってる。
「ああ、ところで奈々さん」
「どした?」
「ちょっと俺なりに考えて、食品ブースとDJブースを合わせたシフト表っつーのを組んでみたんすけどね」
そう言って松兄が広げた自前のノートパソコンの画面上にはしっかりと組まれたタイムテーブルとメンバーの誰がいつ、何のブースに入るのかっていうシフト表。
「えっスゴっ。ホントのシフト表じゃんッ」
「まあこんなモンは適当に設計してパパッと組めば出来る勤務管理アプリなんで仕様については措いといて」
「いやいや説明されてもわかんないしッ」
「だから措いとくんすよ。で、食品ブースには奈々さん・俺・殿・パロの料理出来る組が常に1人はいた方が安牌じゃないすか」
「カノンは去年もやってるからある程度は大丈夫だと思うけど」
「まあ一応ね。どーします? 春風いろはうっしーみたいな地獄のフォーメーションになった日にゃ」
「……そうだねッ、見守る人は必要だよねッ」
「幸い全員ミキサーですし学年もバラけてるんで配置しやすいっちゃしやすいんで、食品の管理者的な感じで置きたいんすよやっぱ」
「安全に行きたいっていう松兄の考えはわかったよ。それじゃあそのように」
「組んだ物がこちらです」
「3分クッキングじゃんッ!」
3日分の全体スケジュールと誰がどこに入るのかっていうシフトが確認できて、カチカチッと必要な情報を入力したらすぐ表に反映されるのが簡単でわかりやすい。この日のこの時間はムリですってのを入力したらそれも反映してくれるみたい。ロボコン対策で組み込んだ機能なんすよーって言うけどうちには何が何だか。
「責任者を置くとは言いましたけど、もちろん拘束時間は全員平等になるよう設定してますし、それを超えてシフト登録しようとしたら働き過ぎだぞってアラートが鳴るようにしてます。あと、食品とDJがダブっても警告されますし。それからこのおまかせボタンは番組のタイムテーブルとNGの時間を加味した上で食品のシフトに入れそうなところを提案してくれるっていう機能で」
「怖い怖い怖いッ。えっ、ホントに松兄がこのシステムを作ったのッ!?」
「作りましたよ。こんなモン悩みながら手でシフト組むよりシステム作る方が破綻が無くて速いっすからね。まずは機械的に組んでみて、それから人が微調整をすりゃいーんすよ。時間は有限。効率良く行きましょ」
「――って簡単に言うけど」
「後で専用URLからスマホ版アプリを使えるようにするんすけど、そこでは時間になったら通知が出るようになってるんで遠くに出歩いててもちゃんと戻って来れるようにはなってますし、急にこの時間ダメになったっつー場合のシフト変更なんかも出来るようになってて」
本人がよく自分はデキるって言ってるけど実際どうデキるのかっていったらこういう部分なんだろうね。必要なことと仕事を見極めて先回りしてる。何はともあれ松兄がアプリを作ってくれたおかげで人の動きに関する仕事は大幅に楽になった。あとは食品ブース関係かな。番組に関してはみんなそれぞれ頑張ってもらって。装飾はジュンとツッツにお願いすることになってるし。は~……後はカノンの動き次第かあ。
「ああ、そんで奈々さん、DJブースなんすけど」
「はい」
「かっすーはやる気満々っすけど、正直3日間のフル稼働は現実味がないんで、こんな感じの緩いタイムテーブルにしました。例えば何もない時間は緩く音楽かけとくだけでも十分かなと。ツッツが暇そうにしてるようならアイツのセンスで遊ばせてもいいですし」
「いいと思うよ。1日だったらフル稼働でちょうどいいけど3日もあったらね。番組を考えるのも一苦労だよ」
「あと、タイムテーブルを緩くした理由ってのがもうひとつあって」
「うん」
「ほら、かっすーが他の大学と配信で中継繋いでどうこうって言ってるじゃないすか」
「そうだね」
「現段階で他の大学が何をどう見せたいのかっていうのが一切わかんねーんすよ。かっすーはわかってんのかもしんないんすけど少なくとも俺には伝わってないんで、どんな事態にも対応出来るようにするための緩さっす。ほら、アナウンサーのネタ帳はあんまギチギチにすんな、的なアレ?」
「いいと思います」
「まあね、一応かっすーには大幅にこっちの都合狂わすようなコトはすんなよとはそれとなく釘差しときますけど、最近の感じを見てると多分期待出来ないっすね。なんでね、申し訳ないんすけどアイツの言動が泥船だと思ったら容赦なく切り捨てる覚悟はアンタも持っといてください」
一応沈ませないよう俺も努力はしますけどね、と松兄は大きく息を吐いた。挑戦することはもちろん大事だけど、どこまでなら行けるのかということの見極め。カノンのアイディアや行動力に救われて勢い付かせてもらったことは多いけど、時には毅然とした態度でノーと言う必要もあるということ。少なくともうちはMMPというサークルを守らなきゃいけない。
「松兄ってそういうトコ結構バッサリいっちゃえるんだね」
「ダチだとか仲間だとしたって、志が違うんであれば一緒に沈む義理はないっす。まあ、思い付きで突っ走んのが良くも悪くもかっすーなんすけどね。今回は完全に悪い方で、これまで以上にいい加減で見通しが甘いと言わざるを得ないっす。挙句それにインターフェイスを巻き込むって正気の沙汰じゃねえ」
「ゴメンけど、うちにはカノンを止めることは出来なさそうかな」
「大丈夫っす。俺がアイツの計画の甘さをそれとな~く詰めて、最低限見られるモンにはしますんで。アンタはMMPの中のことを頼みます」
「ホントにお願いね」
「任せてください。アイツも沈ませませんし、アンタを悪者にもさせませんから」
思いがけずシリアスな感じになっちゃって、もーどーしたらいーのッて感じ。松兄だけに全部背負わせるのも違うような気がするし。でもカノンの心配ばっかりで他のことに手が回らなくなるのも本末転倒だから、やっぱりうちは内輪のことをしっかりやっておかなきゃかあ。
「あー……重い。思いがけず重い」
「帰り何か美味いモンでも食ってきます?」
「いいねッ!」
「その前に食品ブースの話を詰めるんすよ」
「はーい」
end.
++++
この感じ、奏多がファンフェスの班編成めんどいっつってIF専用班分けアプリ作る流れじゃん
学祭に向けて動いているMMPの、奈々がやっている密かな部分の仕事。奏多はほぼ助手。
(phase3)
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まだまだ日中は暑いくらいの日が多いけど、日付が進むにつれしっかりと秋っぽくなってきてる。この暑いのにファッション雑誌や洋服屋さんはすっかり秋なんだもんね。まだまだ全然Tシャツでいいんだけどね。今日は大学祭についてのちょっとした仕事を大まかにまとめていくぞって日。今年は2ブース出すし、ちゃんとしないと後が大変だからねッ。
MMPは一応放送サークルだから、今年は大学祭でDJブースを出しましょうっていう話になった。って言うか、去年は今後の活動資金を本気で稼ぐために一旦DJブースを取りやめて、商魂に全振りした。でもDJブースをやらなかったことで、それを知ってるのがうちだけになっちゃった。だから継承っていう意味合いが強い。
同時並行で食品ブースも出していく。今年も星大さんからジャガイモを大量に仕入れることが出来たから、3日間フル稼働。今までは3日間ある大学祭の1日目がDJブース、来場者の多い土日に食品ブースって感じでやってたけど、人数も増えたし2ブース同時にやれるんじゃないってカノンが提案してくれて、どっちも3日間ぶっ通しでやることになった。
「あー、考えることが多いッ!」
「奈々さん、一旦カテゴリーごとにまとめましょ。1コずつ着実に。まだ全然時間はあります」
「松兄がいてくれて良かったよーッ、うち1人だったら絶対パニックになっちゃってた」
「歴代の3年生? さすがに学祭の仕事を1人でやってた代はないんじゃないすか? まあ、使える物は使ってもろて。アンタの手となり足となりますから」
「えっとじゃあ、とりあえずうちは食品ブースについて考えようかなッ」
用意する必要があるのは食材や備品など食品ブースに必要な物、機材などDJブースに必要な物、それから個人番組と学年ごとの企画番組、あと2ブース分の看板。どっちも同時並行でやるってことは、人の割り振りの問題も発生して来るし、それでなくても今年はカノンが他の大学さんとの共同企画みたいな物を持って来てるからその兼ね合いもあって余計難しくなってる。
「ああ、ところで奈々さん」
「どした?」
「ちょっと俺なりに考えて、食品ブースとDJブースを合わせたシフト表っつーのを組んでみたんすけどね」
そう言って松兄が広げた自前のノートパソコンの画面上にはしっかりと組まれたタイムテーブルとメンバーの誰がいつ、何のブースに入るのかっていうシフト表。
「えっスゴっ。ホントのシフト表じゃんッ」
「まあこんなモンは適当に設計してパパッと組めば出来る勤務管理アプリなんで仕様については措いといて」
「いやいや説明されてもわかんないしッ」
「だから措いとくんすよ。で、食品ブースには奈々さん・俺・殿・パロの料理出来る組が常に1人はいた方が安牌じゃないすか」
「カノンは去年もやってるからある程度は大丈夫だと思うけど」
「まあ一応ね。どーします? 春風いろはうっしーみたいな地獄のフォーメーションになった日にゃ」
「……そうだねッ、見守る人は必要だよねッ」
「幸い全員ミキサーですし学年もバラけてるんで配置しやすいっちゃしやすいんで、食品の管理者的な感じで置きたいんすよやっぱ」
「安全に行きたいっていう松兄の考えはわかったよ。それじゃあそのように」
「組んだ物がこちらです」
「3分クッキングじゃんッ!」
3日分の全体スケジュールと誰がどこに入るのかっていうシフトが確認できて、カチカチッと必要な情報を入力したらすぐ表に反映されるのが簡単でわかりやすい。この日のこの時間はムリですってのを入力したらそれも反映してくれるみたい。ロボコン対策で組み込んだ機能なんすよーって言うけどうちには何が何だか。
「責任者を置くとは言いましたけど、もちろん拘束時間は全員平等になるよう設定してますし、それを超えてシフト登録しようとしたら働き過ぎだぞってアラートが鳴るようにしてます。あと、食品とDJがダブっても警告されますし。それからこのおまかせボタンは番組のタイムテーブルとNGの時間を加味した上で食品のシフトに入れそうなところを提案してくれるっていう機能で」
「怖い怖い怖いッ。えっ、ホントに松兄がこのシステムを作ったのッ!?」
「作りましたよ。こんなモン悩みながら手でシフト組むよりシステム作る方が破綻が無くて速いっすからね。まずは機械的に組んでみて、それから人が微調整をすりゃいーんすよ。時間は有限。効率良く行きましょ」
「――って簡単に言うけど」
「後で専用URLからスマホ版アプリを使えるようにするんすけど、そこでは時間になったら通知が出るようになってるんで遠くに出歩いててもちゃんと戻って来れるようにはなってますし、急にこの時間ダメになったっつー場合のシフト変更なんかも出来るようになってて」
本人がよく自分はデキるって言ってるけど実際どうデキるのかっていったらこういう部分なんだろうね。必要なことと仕事を見極めて先回りしてる。何はともあれ松兄がアプリを作ってくれたおかげで人の動きに関する仕事は大幅に楽になった。あとは食品ブース関係かな。番組に関してはみんなそれぞれ頑張ってもらって。装飾はジュンとツッツにお願いすることになってるし。は~……後はカノンの動き次第かあ。
「ああ、そんで奈々さん、DJブースなんすけど」
「はい」
「かっすーはやる気満々っすけど、正直3日間のフル稼働は現実味がないんで、こんな感じの緩いタイムテーブルにしました。例えば何もない時間は緩く音楽かけとくだけでも十分かなと。ツッツが暇そうにしてるようならアイツのセンスで遊ばせてもいいですし」
「いいと思うよ。1日だったらフル稼働でちょうどいいけど3日もあったらね。番組を考えるのも一苦労だよ」
「あと、タイムテーブルを緩くした理由ってのがもうひとつあって」
「うん」
「ほら、かっすーが他の大学と配信で中継繋いでどうこうって言ってるじゃないすか」
「そうだね」
「現段階で他の大学が何をどう見せたいのかっていうのが一切わかんねーんすよ。かっすーはわかってんのかもしんないんすけど少なくとも俺には伝わってないんで、どんな事態にも対応出来るようにするための緩さっす。ほら、アナウンサーのネタ帳はあんまギチギチにすんな、的なアレ?」
「いいと思います」
「まあね、一応かっすーには大幅にこっちの都合狂わすようなコトはすんなよとはそれとなく釘差しときますけど、最近の感じを見てると多分期待出来ないっすね。なんでね、申し訳ないんすけどアイツの言動が泥船だと思ったら容赦なく切り捨てる覚悟はアンタも持っといてください」
一応沈ませないよう俺も努力はしますけどね、と松兄は大きく息を吐いた。挑戦することはもちろん大事だけど、どこまでなら行けるのかということの見極め。カノンのアイディアや行動力に救われて勢い付かせてもらったことは多いけど、時には毅然とした態度でノーと言う必要もあるということ。少なくともうちはMMPというサークルを守らなきゃいけない。
「松兄ってそういうトコ結構バッサリいっちゃえるんだね」
「ダチだとか仲間だとしたって、志が違うんであれば一緒に沈む義理はないっす。まあ、思い付きで突っ走んのが良くも悪くもかっすーなんすけどね。今回は完全に悪い方で、これまで以上にいい加減で見通しが甘いと言わざるを得ないっす。挙句それにインターフェイスを巻き込むって正気の沙汰じゃねえ」
「ゴメンけど、うちにはカノンを止めることは出来なさそうかな」
「大丈夫っす。俺がアイツの計画の甘さをそれとな~く詰めて、最低限見られるモンにはしますんで。アンタはMMPの中のことを頼みます」
「ホントにお願いね」
「任せてください。アイツも沈ませませんし、アンタを悪者にもさせませんから」
思いがけずシリアスな感じになっちゃって、もーどーしたらいーのッて感じ。松兄だけに全部背負わせるのも違うような気がするし。でもカノンの心配ばっかりで他のことに手が回らなくなるのも本末転倒だから、やっぱりうちは内輪のことをしっかりやっておかなきゃかあ。
「あー……重い。思いがけず重い」
「帰り何か美味いモンでも食ってきます?」
「いいねッ!」
「その前に食品ブースの話を詰めるんすよ」
「はーい」
end.
++++
この感じ、奏多がファンフェスの班編成めんどいっつってIF専用班分けアプリ作る流れじゃん
学祭に向けて動いているMMPの、奈々がやっている密かな部分の仕事。奏多はほぼ助手。
(phase3)
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