2024
■即席ワークショップ
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今日は春風が友達を紹介してくれるというので、星港大学にやってきた。星大の子なのかなと思ったけど、前に話をチラっと聞いた時には専門学校に通っていると言っていたし、星大に通っている人ではなさそうだ。でも星大のミュージアムに来いという話なんだもんな。何でだろ。
「徹平くん。おはようございます」
「おはよう。なんか、インターフェイスの行事でもないのに人と星大に来てるって不思議な感覚だ」
「そうですね」
「いや、俺は個人的に星大にはたまに来てるんだけど、人と来る用事に心当たりがないと言うか」
「個人的に来ているのですか?」
「うん。星大ミュージアムでやってるワークショップだとか講演のためにちょこちょこ来てはいるんだよ。結構面白いことやってて」
「そうなのですね。私は科学館へはよく行くのですが、大学の博物館に行くという発想はありませんでした。私好みのワークショップなどもあるでしょうか」
「あるんじゃないかな?」
星港大学など、国立大学には博物館という施設があるところがちょこちょこあって、そこでやってる展示が結構良かったりする。昔から自分の趣味でどこの博物館や科学館でどんな企画をやってるかはいろいろ調べているのだけど、あまり遠出が出来なかった子供にとって近場の大学の博物館はありがたい施設だったなあ。
今では自分で車に乗るようになり、好き勝手に出かけることができるようになった。遠方の博物館にも行けるっちゃ行けるんだけど、やっぱ星大ミュージアムが最強だわ、という結論にたどり着くこと数知れず。シリーズものの講演会が結構熱くて、満席になる前に申し込まないと、と受付時間前にパソコン前で待機してたっけ。
「えっと、友達は……って、まだもうちょい時間には早いのか」
「そうですね。ですが晶 も時間にはきっちりしている方なので、そろそろ来る頃かとは思いますが」
待ち合わせ時間にはまだ10分ある。春風は、MMPのメンバーが結構時間にルーズで……と溜め息を吐いている。夏休み中も特別活動という体でちょこちょこサークルはやってたみたいだけど、その集合がまあまちまちで。ジュンは毎回ちゃんと時間前に来ていたけど、ほかのメンバーは大なり小なり遅れがちだった、と。
印象として、殿はまあまあちゃんとしてそうだと思うんだけど。そう思って聞いてみたら、殿は確かにあまり遅れるタイプではないけれど、道端に咲いている花を眺めていて時間を忘れてしまったということがあったそうだ。普段はちゃんとしているし、エピソードのかわいさにその日はお咎めなしとなったとのこと。
「ああ、来ましたね」
春風の声に、そっちの方に目をやると、確かにこちらに向かって歩いてくる人はいる。だけど風貌が、遠目に見てもかなり厳ついと言うか、何と言うか。パッと見、金髪の坊主頭で、サングラスをかけている。服装は黒の開襟シャツに黒の……スラックスかな? 殴られないかなってちょっと不安になる。
「春風、待たせて申し訳ない」
「いえ、まだ時間にはなっていませんよ。徹平くん、こちら、私の空手の友人の」
「久東晶 です」
「晶、こちら、私がお付き合いをさせてもらっている」
「菅谷徹平です」
晶さんは春風と並んでも引けをとらない体格に見える。声はやや低めとは言え女の人の声ではあったから、女性の人なんだろう。名前だけでは判別出来なかったけど。女の人としては大きいと言うか、俺ともそんなに変わらないんだよな。どーしよ。会話にとっかかりが。いや、ここに来たということは何かしらの目的があるはずだ。
「えっと、今日はどうして星大ミュージアムに?」
「最近体感として地震が増えてる気がするし、そもそも地震って何だろう、地球ってどう動いてるんだろうっていうことを教えてもらおうと思って」
「……俺に?」
「以外に、誰が」
春風がこそっと、彼氏が出来ましたという報告の時に俺がどういう人間であるかは軽く話していると耳打ちしてくれる。つまり今日は俺がいかに地学分野の話をわかりやすく伝えられるかを試されている。
「えっと、ご期待に添えるかわかりませんが頑張ります」
「よろしくお願いします」
「徹平くん、晶は理解出来る出来ないは措いておいて、自分の知らない世界の話を聞くのが好きな子なのですよ。なので私の天文学の話も聞いてくれるのです」
「へえ、そうなんだ。じゃあ今日は晶さんの専門分野の話も聞かせてもらいたいな。専門学校に行ってるんですよね。何の学校に行ってるんですか?」
「柔道整復師の養成学校に」
「柔道整復師。ってことは、医療、介護、スポーツの現場とかを視野に入れてるって感じですかね」
「そうですね。きっかけは自分が空手でやったケガと、春風の幼馴染みがケガしてからリハビリまでの話だったんで。どちらかと言えば進路希望はスポーツ寄りかもしんないです」
「春風、その幼馴染みって奏多?」
「はい。その頃の奏多は本当に大変そうでしたけど、ああいう人なので真正面から心配をさせてくれないのですよ」
春風が心配してもそれを弾き返す奏多は簡単に想像出来るので、昔からああいう感じだったんだろうなあとは。その入院期間にヒマだからという理由でプログラミングや資格の勉強をめっちゃしたって話だけど、リハビリも勉強もしんどいだろうに本当によくやったよ。
「えっと、地球の話をするっていうことは、展示を見ながらでいいかな?」
「そうですね、そろそろ中に入りましょうか。外で立ち話も難ですし」
end.
++++
春風は友達が少なかったけど全然いないわけではなく、校区が違う人の方が友達にはなりやすかった
大学ミュージアムに趣味で行ってそうなの誰だランキング上位に来そうなのはやっぱすがやん
(phase3)
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今日は春風が友達を紹介してくれるというので、星港大学にやってきた。星大の子なのかなと思ったけど、前に話をチラっと聞いた時には専門学校に通っていると言っていたし、星大に通っている人ではなさそうだ。でも星大のミュージアムに来いという話なんだもんな。何でだろ。
「徹平くん。おはようございます」
「おはよう。なんか、インターフェイスの行事でもないのに人と星大に来てるって不思議な感覚だ」
「そうですね」
「いや、俺は個人的に星大にはたまに来てるんだけど、人と来る用事に心当たりがないと言うか」
「個人的に来ているのですか?」
「うん。星大ミュージアムでやってるワークショップだとか講演のためにちょこちょこ来てはいるんだよ。結構面白いことやってて」
「そうなのですね。私は科学館へはよく行くのですが、大学の博物館に行くという発想はありませんでした。私好みのワークショップなどもあるでしょうか」
「あるんじゃないかな?」
星港大学など、国立大学には博物館という施設があるところがちょこちょこあって、そこでやってる展示が結構良かったりする。昔から自分の趣味でどこの博物館や科学館でどんな企画をやってるかはいろいろ調べているのだけど、あまり遠出が出来なかった子供にとって近場の大学の博物館はありがたい施設だったなあ。
今では自分で車に乗るようになり、好き勝手に出かけることができるようになった。遠方の博物館にも行けるっちゃ行けるんだけど、やっぱ星大ミュージアムが最強だわ、という結論にたどり着くこと数知れず。シリーズものの講演会が結構熱くて、満席になる前に申し込まないと、と受付時間前にパソコン前で待機してたっけ。
「えっと、友達は……って、まだもうちょい時間には早いのか」
「そうですね。ですが
待ち合わせ時間にはまだ10分ある。春風は、MMPのメンバーが結構時間にルーズで……と溜め息を吐いている。夏休み中も特別活動という体でちょこちょこサークルはやってたみたいだけど、その集合がまあまちまちで。ジュンは毎回ちゃんと時間前に来ていたけど、ほかのメンバーは大なり小なり遅れがちだった、と。
印象として、殿はまあまあちゃんとしてそうだと思うんだけど。そう思って聞いてみたら、殿は確かにあまり遅れるタイプではないけれど、道端に咲いている花を眺めていて時間を忘れてしまったということがあったそうだ。普段はちゃんとしているし、エピソードのかわいさにその日はお咎めなしとなったとのこと。
「ああ、来ましたね」
春風の声に、そっちの方に目をやると、確かにこちらに向かって歩いてくる人はいる。だけど風貌が、遠目に見てもかなり厳ついと言うか、何と言うか。パッと見、金髪の坊主頭で、サングラスをかけている。服装は黒の開襟シャツに黒の……スラックスかな? 殴られないかなってちょっと不安になる。
「春風、待たせて申し訳ない」
「いえ、まだ時間にはなっていませんよ。徹平くん、こちら、私の空手の友人の」
「
「晶、こちら、私がお付き合いをさせてもらっている」
「菅谷徹平です」
晶さんは春風と並んでも引けをとらない体格に見える。声はやや低めとは言え女の人の声ではあったから、女性の人なんだろう。名前だけでは判別出来なかったけど。女の人としては大きいと言うか、俺ともそんなに変わらないんだよな。どーしよ。会話にとっかかりが。いや、ここに来たということは何かしらの目的があるはずだ。
「えっと、今日はどうして星大ミュージアムに?」
「最近体感として地震が増えてる気がするし、そもそも地震って何だろう、地球ってどう動いてるんだろうっていうことを教えてもらおうと思って」
「……俺に?」
「以外に、誰が」
春風がこそっと、彼氏が出来ましたという報告の時に俺がどういう人間であるかは軽く話していると耳打ちしてくれる。つまり今日は俺がいかに地学分野の話をわかりやすく伝えられるかを試されている。
「えっと、ご期待に添えるかわかりませんが頑張ります」
「よろしくお願いします」
「徹平くん、晶は理解出来る出来ないは措いておいて、自分の知らない世界の話を聞くのが好きな子なのですよ。なので私の天文学の話も聞いてくれるのです」
「へえ、そうなんだ。じゃあ今日は晶さんの専門分野の話も聞かせてもらいたいな。専門学校に行ってるんですよね。何の学校に行ってるんですか?」
「柔道整復師の養成学校に」
「柔道整復師。ってことは、医療、介護、スポーツの現場とかを視野に入れてるって感じですかね」
「そうですね。きっかけは自分が空手でやったケガと、春風の幼馴染みがケガしてからリハビリまでの話だったんで。どちらかと言えば進路希望はスポーツ寄りかもしんないです」
「春風、その幼馴染みって奏多?」
「はい。その頃の奏多は本当に大変そうでしたけど、ああいう人なので真正面から心配をさせてくれないのですよ」
春風が心配してもそれを弾き返す奏多は簡単に想像出来るので、昔からああいう感じだったんだろうなあとは。その入院期間にヒマだからという理由でプログラミングや資格の勉強をめっちゃしたって話だけど、リハビリも勉強もしんどいだろうに本当によくやったよ。
「えっと、地球の話をするっていうことは、展示を見ながらでいいかな?」
「そうですね、そろそろ中に入りましょうか。外で立ち話も難ですし」
end.
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春風は友達が少なかったけど全然いないわけではなく、校区が違う人の方が友達にはなりやすかった
大学ミュージアムに趣味で行ってそうなの誰だランキング上位に来そうなのはやっぱすがやん
(phase3)
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