2024
■ただのすずよりもっとすず!
++++
「あっミドリ先輩いたぁ」
「すず。どうしたの?」
今日は情報センターのバイトリーダーらしく事務所に缶詰めになっていて、人の少ない今くらいの時期だからこその緩さで仕事をしている。そんな中で、受付を覗き込んで来たのは星大の中でも極めて目立つピンクと水色のグラデーションの髪。UHBCの後輩、すずだ。
「ミドリ先輩今お時間大丈夫ですぅ~?」
「うん、そこまで人も多くないし、大丈夫だよ。どうかした?」
「ちょっとサークル? って言うかインターフェイス関係のことで相談があってぇ~」
立ち話も難なので、少しくらいならいいかなと事務所に通す。林原さんがいた頃なら怒られてたかもしれないけど、今は俺がバイトリーダーだし、こんなときに人なんか来ないだろうと踏んで。でも、そういう時に限って人って来ちゃうんだよなあ。来ないことを祈るしかないけど。
で、気になるのがインターフェイス関係の相談っていうことだよね。1、2年生の一部の子は今年もインターフェイスの夏合宿に参加していて、それがこの間終わりましたっていう報告を定例会議長として受けていた。特段大きな問題が起こったって話は聞かないんだけど。
「それで、相談って何かな。もしかして、何か大きな問題が起こったとか」
「そんな問題があったらぁ~、まず対策委員から定例会議長に報告入りませ~ん? それを怠る組織も無視される議長も問題だと思いますけどますけどぉ~?」
「ああうん、そうだね。大きな問題が起こったとかじゃないんならいいんだよ。で、何だった?」
「DJネームってあるじゃないですかぁ~、ラジオやる時に名乗る名前の~」
「うん、あるね」
「今はすずでやってますけどぉ~、途中で変えることって出来るのかなぁ~と思ってぇ~」
「ああ……なるほど。うーん、少なくとも俺が入ってからは前例がないからわかんないね」
「逆に言えば、ダメってワケでもないってことですよねぇ~」
「まあ、そういうことになるね。改名候補が今いる人とカブってなければとか、公序良俗に反する名前じゃなければまあ、名前が変わりましたってきちんと自分で説明出来ればいいんじゃないかな?」
「おっ、定例会議長の見解出ました出ましたぁ~」
俺は自分のDJネームの改名ということを全然考えたことがなかったし、前例がないとは言ったけど本当になかったよね? と思い返してみたけど本当に多分ない。青女のわかばがわかばという名前になる前に、向島のなっち先輩と被らないようにって考えてたら名付けが遅くなって~というのはあったけど、今回はまた違うケースだもんね。
「ちなみに、名前を変えたいって思ったきっかけって何だったの?」
「夏合宿でぇ~、緑メッシュの先輩に「出たユニ子!」みたいなドン引きリアクション取られてぇ~」
「緑メッシュ……彩人だね」
「あーそーそー! 確かそーゆー名前の先輩! がくぴとペア組んでた人!」
「って言うか彩人にドン引きされたって何したの?」
「何もしてないですよぉ~」
すずの「何もしてない」が本当だとしても、彩人は軽めの女性恐怖があるっていう話だから、がっくん目当てに突然飛んできたすずにビックリする可能性はあったかもしれないね。がっくんと班が一緒だったんなら一緒にいることも多かっただろうから。彩人は見た目は派手だけど定例会では静かだし、定例会比で大人しい子なのかもしれないね。
「で、ユニ子って響きが気に入ったんでぇ~、今後“ゆに”って名乗りたいんですよ。きゃわでしょ? きゃわじゃないです?」
「って言うか、そもそも何でユニ子って呼ばれたの?」
「一応何それって聞いたんですけどぉ~、すずの頭の色がユニコーン色だから? らしいですよ。別にユニコーン色ではないんですけどぉ~」
「ああ、なるほど。でも彩人の言いたいことは何となくわかるかも」
「でぇ~、“ゆに”ってひらがなで書いた時の形とかぁ~、“Uni”ってアルファベットで書いたときの感じも良くないですぅ~? UniqueとかUniverseともかかってただの“すず”よりもっと「ただ1人のすず!」って感じ!」
「UnisonとかUniversalなんていうのもあるね」
「おお~! さぁっすがミドリ先輩! とにかく、普通にすずで馴染んでる人はすずって呼んでくれればいいですし、DJネームとしては“ゆに”って名乗りますよ~って話ですね」
「うん、いいんじゃないかな? 次のイベントの時にでもそのようにみんなにお知らせすればいいと思うよ」
「ありがとうございまぁ~す」
DJネームは付けるのに苦労する場合も多いんだけど、昨今はプライバシー保護の観点から、付けられる場合は本名そのまま以外で何か付けた方がいいという風潮にもなりつつある。例えば、俺は名前そのままのミドリだからあまりよろしくないけど、アオは名前そのままじゃないから大丈夫なんじゃない? 的な。
「って言うかもう9月ですけどミドリ先輩実家に帰らないんです? 長篠でしたよね?」
「そうだね、長篠。でもそろそろ他の帰省組の子と入れ替わりで帰るよ」
「あっぶな! ミドリ先輩いなくなるトコだった!」
「って言うか普通にスマホで連絡してくれれば良かったのに」
「その発想はなかったですねぇ~。ここに来ればミドリ先輩かアオ先輩のどっちかはいるかな~って思ってぇ~」
「まあ実際どっちかはいただろうけど。アオだったらどう答えてたかなあ」
「わかんないからイイんですよ」
「そういうものかなあ」
「イイんですよ、少なくともすずにとっては。人に話を聞くことで自分だけじゃ思いもよらなかったアイディアが生まれたりもしますからね。直接会って話す方がぁ~、会話で使える五感が多いじゃないですかぁ~」
「会話で五感かあ。その発想はなかった。なるほど、そういう気付きがあるってことだね」
「そーそー! あっ、ミドリ先輩お仕事中ですよねぇ~。お邪魔しましたぁ~」
「はーい、お疲れさまでしたー」
うーん。あの子はやっぱりインターフェイスじゃ星大っぽくないって言われてそうな感じだよね。それが悪い意味じゃなければいいな。少なくともウチでは悪い子ではないからね。
end.
++++
彩人がちゃんとドン引きした件はまたいつかやりたい
DJネーム、星大とかは特に名前そのままになりがち。そう考えると奏多の命名センスは光っている…?
彩人の名付けセンスはモリ子から言わせればクソダサだけど、すずにはハマったのか。いや、たまたまだな
(phase3)
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「あっミドリ先輩いたぁ」
「すず。どうしたの?」
今日は情報センターのバイトリーダーらしく事務所に缶詰めになっていて、人の少ない今くらいの時期だからこその緩さで仕事をしている。そんな中で、受付を覗き込んで来たのは星大の中でも極めて目立つピンクと水色のグラデーションの髪。UHBCの後輩、すずだ。
「ミドリ先輩今お時間大丈夫ですぅ~?」
「うん、そこまで人も多くないし、大丈夫だよ。どうかした?」
「ちょっとサークル? って言うかインターフェイス関係のことで相談があってぇ~」
立ち話も難なので、少しくらいならいいかなと事務所に通す。林原さんがいた頃なら怒られてたかもしれないけど、今は俺がバイトリーダーだし、こんなときに人なんか来ないだろうと踏んで。でも、そういう時に限って人って来ちゃうんだよなあ。来ないことを祈るしかないけど。
で、気になるのがインターフェイス関係の相談っていうことだよね。1、2年生の一部の子は今年もインターフェイスの夏合宿に参加していて、それがこの間終わりましたっていう報告を定例会議長として受けていた。特段大きな問題が起こったって話は聞かないんだけど。
「それで、相談って何かな。もしかして、何か大きな問題が起こったとか」
「そんな問題があったらぁ~、まず対策委員から定例会議長に報告入りませ~ん? それを怠る組織も無視される議長も問題だと思いますけどますけどぉ~?」
「ああうん、そうだね。大きな問題が起こったとかじゃないんならいいんだよ。で、何だった?」
「DJネームってあるじゃないですかぁ~、ラジオやる時に名乗る名前の~」
「うん、あるね」
「今はすずでやってますけどぉ~、途中で変えることって出来るのかなぁ~と思ってぇ~」
「ああ……なるほど。うーん、少なくとも俺が入ってからは前例がないからわかんないね」
「逆に言えば、ダメってワケでもないってことですよねぇ~」
「まあ、そういうことになるね。改名候補が今いる人とカブってなければとか、公序良俗に反する名前じゃなければまあ、名前が変わりましたってきちんと自分で説明出来ればいいんじゃないかな?」
「おっ、定例会議長の見解出ました出ましたぁ~」
俺は自分のDJネームの改名ということを全然考えたことがなかったし、前例がないとは言ったけど本当になかったよね? と思い返してみたけど本当に多分ない。青女のわかばがわかばという名前になる前に、向島のなっち先輩と被らないようにって考えてたら名付けが遅くなって~というのはあったけど、今回はまた違うケースだもんね。
「ちなみに、名前を変えたいって思ったきっかけって何だったの?」
「夏合宿でぇ~、緑メッシュの先輩に「出たユニ子!」みたいなドン引きリアクション取られてぇ~」
「緑メッシュ……彩人だね」
「あーそーそー! 確かそーゆー名前の先輩! がくぴとペア組んでた人!」
「って言うか彩人にドン引きされたって何したの?」
「何もしてないですよぉ~」
すずの「何もしてない」が本当だとしても、彩人は軽めの女性恐怖があるっていう話だから、がっくん目当てに突然飛んできたすずにビックリする可能性はあったかもしれないね。がっくんと班が一緒だったんなら一緒にいることも多かっただろうから。彩人は見た目は派手だけど定例会では静かだし、定例会比で大人しい子なのかもしれないね。
「で、ユニ子って響きが気に入ったんでぇ~、今後“ゆに”って名乗りたいんですよ。きゃわでしょ? きゃわじゃないです?」
「って言うか、そもそも何でユニ子って呼ばれたの?」
「一応何それって聞いたんですけどぉ~、すずの頭の色がユニコーン色だから? らしいですよ。別にユニコーン色ではないんですけどぉ~」
「ああ、なるほど。でも彩人の言いたいことは何となくわかるかも」
「でぇ~、“ゆに”ってひらがなで書いた時の形とかぁ~、“Uni”ってアルファベットで書いたときの感じも良くないですぅ~? UniqueとかUniverseともかかってただの“すず”よりもっと「ただ1人のすず!」って感じ!」
「UnisonとかUniversalなんていうのもあるね」
「おお~! さぁっすがミドリ先輩! とにかく、普通にすずで馴染んでる人はすずって呼んでくれればいいですし、DJネームとしては“ゆに”って名乗りますよ~って話ですね」
「うん、いいんじゃないかな? 次のイベントの時にでもそのようにみんなにお知らせすればいいと思うよ」
「ありがとうございまぁ~す」
DJネームは付けるのに苦労する場合も多いんだけど、昨今はプライバシー保護の観点から、付けられる場合は本名そのまま以外で何か付けた方がいいという風潮にもなりつつある。例えば、俺は名前そのままのミドリだからあまりよろしくないけど、アオは名前そのままじゃないから大丈夫なんじゃない? 的な。
「って言うかもう9月ですけどミドリ先輩実家に帰らないんです? 長篠でしたよね?」
「そうだね、長篠。でもそろそろ他の帰省組の子と入れ替わりで帰るよ」
「あっぶな! ミドリ先輩いなくなるトコだった!」
「って言うか普通にスマホで連絡してくれれば良かったのに」
「その発想はなかったですねぇ~。ここに来ればミドリ先輩かアオ先輩のどっちかはいるかな~って思ってぇ~」
「まあ実際どっちかはいただろうけど。アオだったらどう答えてたかなあ」
「わかんないからイイんですよ」
「そういうものかなあ」
「イイんですよ、少なくともすずにとっては。人に話を聞くことで自分だけじゃ思いもよらなかったアイディアが生まれたりもしますからね。直接会って話す方がぁ~、会話で使える五感が多いじゃないですかぁ~」
「会話で五感かあ。その発想はなかった。なるほど、そういう気付きがあるってことだね」
「そーそー! あっ、ミドリ先輩お仕事中ですよねぇ~。お邪魔しましたぁ~」
「はーい、お疲れさまでしたー」
うーん。あの子はやっぱりインターフェイスじゃ星大っぽくないって言われてそうな感じだよね。それが悪い意味じゃなければいいな。少なくともウチでは悪い子ではないからね。
end.
++++
彩人がちゃんとドン引きした件はまたいつかやりたい
DJネーム、星大とかは特に名前そのままになりがち。そう考えると奏多の命名センスは光っている…?
彩人の名付けセンスはモリ子から言わせればクソダサだけど、すずにはハマったのか。いや、たまたまだな
(phase3)
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