2024
■罪と罰の間で
++++
「カオちゃん!」
「どうしましたか伊東さん」
「始まりましたねえソルツミの更新が!」
「あ~、社畜の繁忙期って単語にキラッキラしてるヤツ~」
かの会社は盆過ぎから10月過ぎまでは繁忙期ということで、結構な忙しさになる。8月末には棚卸があって、そこに至るまでの出荷が増える。9月にはお上の中間決算やらその他諸々で忙しく、10月はダウン製品の出荷最盛期ということだ。大石も忙しくなると言って嬉しそうにしていた。
USDX的にはつまり社畜キャラのソルさんがガッツリ社畜になり始めるということで、生存報告としてのツミツミ動画が毎日1本ずつ上がり始める。ソルツミと呼ばれたその再生リストにまとめられた動画の数が増えるということは……ということだ。
実際の塩見さんは有給を効果的に使う模範的社員だし、会社の体制もガチ社畜していた頃よりは緩やかになっている。今では残業はしても22時までだし、完全週休2日が確保されているのでバカみたいな働き方にはならない。……ので、残業代と休出手当が~と大石が嘆いていた(周りには俺の働き方ばかりがどうこう言われるが、コイツの方が異常だ)。
「繁忙期はソル推しが沸き立つ単語だからね!」
「動画への出演は減るのにそれでいいの?」
「毎日ソルツミが上がるということは、逆に言えば通常更新のときよりも生きているということが確実にわかるということだからね」
「うん? それはまあそういうことなのかな?」
オタク的な思考は俺にはあまり理解が出来ないのだけど、確かにソルツミというものはプロさんも関与し得ない部分の更新だとかで、塩見さんが自分のスマホからやっているらしいので完全に塩見さんの塩見さんによる生存報告コンテンツなのだ。正直メンバーだけどよく知らない。USDX加入に当たっても履修しろと言われなかったし(内容については割と真面目になっちが一番詳しいはずだ)。
「ああ、そうだ伊東さん」
「はい」
「レイの個人チャンネルが立ち上がることになりました」
「えーっ!? またどうして!?」
「この間玄で飲んだんだよ。高崎・拳悟・越野のいつメンに俺と山口と大石が混ざって」
「えー、さすがのいつメン、ド安定! えっと、大石クンっていうのはカズの言うところのちーちゃん、だよね?」
「そうそう、その水棲の体力お化けが越野の同僚な」
「それとレイ君の個チャンがどういう関係が」
「俺がぐだぐだに酔い散らかして高崎相手に罪を重ねた」
「……えっと、具体的には」
「店の時点ではアイツに抱きついて寝てたとか、背中によだれ垂らしてTシャツびしょびしょにしたとか、あとアイツの部屋に担ぎ込まれて夜を明かした? らしい」
「よく命がありましたね!?」
「ソルさんにも同じことを言われた」
「高崎クンを知ってたらその感想になるよ! ならざるを得ない! カズに聞いても同じ風に答えるよ! Tシャツによだれ!? 高崎クンの家に!? 呼ばれてないのに踏み入った!? 死罪~」
如何せん高崎にとって家、そしてパーソナルスペースというのは侵されたくない聖域のようなもので、そこに雑に踏み行った俺は重罪人という扱いになるんだそうだ。命があるだけありがたい、そのレベルだ。で、詫び肉どうこうの話になっての個チャン設立だ。
「なるほど。まあ、レイ君サブチャン荒らしに荒らしてますもんねえ。レイ君は1人でチャンネルを持てる活動量ではあります、確かに」
「そうそう。1人でじっくりやるゲームの動画や配信を上げたり、カンヂさんと遊んだりしてる動画を上げるのにもいいねって話はしてて」
「うんうん」
「あと、関係ないけどソルツミの他にソルさん関係でコンスタントに上げてソル成分を繋ごうっていう企画はあるんだよ」
「えっ、そうなんです?」
「USDXの曲をベースとドラムで弾いてみた系の動画がいくつか出来てて、ソルさんが繁忙期を抜けるまではちょこちょこ上がります」
「えっ、実写!?」
「実写。あっ、もちろん顔は伏せてるけど」
「ええええええ!? ソルさんとコンちゃんの実写が!? コンスタントに!? アカンヤツぅ~……タダで見ていいんですか!?」
「見られますよ」
「ありがとうUSDX……投げるお金を稼がなきゃ、カオちゃんお仕事頑張ろう」
伊東さん的に、俺は同僚だしバネ君は友達のリン君、プロさんは同人の方で話をするのでレア感が低く、チータは出たがりっぽいから実写も、顔出しすらいつかはあるだろうと思っているそうだ(そのイメージはわかる)。で、実写がなさそうな2人の弾いてみた動画がコンスタントに上がることがヤバいらしい。
と言うか、いくら夫婦の方針が趣味には相互不干渉である程度はお金も好きに使っていいということになっているとは言え、自分の所属しているグループに変な投げ方をされるとわかっていて一緒にお仕事頑張りましょうとはとても返事が出来ない。カズに申し訳ないとすら。投げられた額によっては弁当サブスクに倍額払うことも視野だぞ。
「え、って言うかコンの中の奴も知ってるよね?」
「知ってるよ。スガちゃんでしょ?」
「聞いといて難だけど知ってるんだ」
「て言うかチータが去年のうちの誕生会の時に同席した友達のチータ推しに興奮して漏らした」
「ああ……それは漏れる、アイツなら。て言うかその友達のチータ推し、大丈夫だった? 絶対変な詰め寄られ方したでしょ」
「エゴサの時点でも怯えてるし、あの時も相当怯えてた」
「よなあ」
「うちは音楽そんなに詳しくないんだけど、音楽かじってるUSDXファンによれば、USDXの曲ってリズム隊の酷使がすっごいんだって」
「それはへっぽこながらに思う。周りのレベルに対して俺は手加減してもらってんだなあとは」
「特に編曲やってるチータからのドラムへの信頼が隠しきれなくってSDX世代のコンビ推しはにっこにこなんだそうですよ」
「ああ、それは部活のステージの時からそうかも。班長の菅野 は菅野 で班が保ってるって言ってたけど、菅野 の曲は菅野 のドラムがあってだな、少し音楽をかじった今となっては」
「部活組ごちそうさまです!」
「何それ部活組って」
「コンチータレイの3人の括りですよ。同じ部活だったんでしょ?」
「あ、そんな風に呼ばれてるんだ」
「プロコンバネは院生組だし、ソルチーレイは社会人組とか、いろいろありますよ」
エゴサの鬼の菅野 はもちろんそんな呼ばれ方なんかもとっくの昔に知ってるんだろうけど、いろいろあるんだなあとは遠い目で。でも、そういう反応みたいなものを知らなさすぎるのも演者としては良くないのかもしれない。プロデューサーとしてなら絶対ある程度は調べるもんなあ。
「でも、ソルコンの弾いてみた動画? 高崎クン的にもオイシイ動画だよねえ」
「そうなの? アイツ動画とかあんま見ないらしいけど」
「あれっ、高崎クンもとい、クラファンユーヤ君てソルさんの拗らせオタクとか強火ソル担みたいなことなんじゃなかったっけ?」
「何かあんまよくわかんないけど昔の話に関わってくるらしい」
「あっ。深入りしすぎたら死罪になるヤツだそれ。今の話はキャンセルということで」
「何気にアイツ禁止事項が多いな」
「高崎クンの高校以前の話に立ち入れるのって真面目に拳悟だけなんだって」
「今の家にもソルさんと拳悟以外自分の意思では入れてないって言ってた」
「……のに、酔い潰れて。……はあ。うん。カオちゃんてやっぱ大物だよね」
「褒められてはないですよね、今のニュアンスでは」
end.
++++
この話の本題は【向西倉庫繁忙期入り】です
盆のいつメン飲み後、やらかしたコアラは詫び肉のために奔走するのであった
Pさん、慧梨夏のお金の心配をしてるけどプロ氏が慧梨夏に投げてるから大丈夫よ、戻るだけです
(phase3)
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「カオちゃん!」
「どうしましたか伊東さん」
「始まりましたねえソルツミの更新が!」
「あ~、社畜の繁忙期って単語にキラッキラしてるヤツ~」
かの会社は盆過ぎから10月過ぎまでは繁忙期ということで、結構な忙しさになる。8月末には棚卸があって、そこに至るまでの出荷が増える。9月にはお上の中間決算やらその他諸々で忙しく、10月はダウン製品の出荷最盛期ということだ。大石も忙しくなると言って嬉しそうにしていた。
USDX的にはつまり社畜キャラのソルさんがガッツリ社畜になり始めるということで、生存報告としてのツミツミ動画が毎日1本ずつ上がり始める。ソルツミと呼ばれたその再生リストにまとめられた動画の数が増えるということは……ということだ。
実際の塩見さんは有給を効果的に使う模範的社員だし、会社の体制もガチ社畜していた頃よりは緩やかになっている。今では残業はしても22時までだし、完全週休2日が確保されているのでバカみたいな働き方にはならない。……ので、残業代と休出手当が~と大石が嘆いていた(周りには俺の働き方ばかりがどうこう言われるが、コイツの方が異常だ)。
「繁忙期はソル推しが沸き立つ単語だからね!」
「動画への出演は減るのにそれでいいの?」
「毎日ソルツミが上がるということは、逆に言えば通常更新のときよりも生きているということが確実にわかるということだからね」
「うん? それはまあそういうことなのかな?」
オタク的な思考は俺にはあまり理解が出来ないのだけど、確かにソルツミというものはプロさんも関与し得ない部分の更新だとかで、塩見さんが自分のスマホからやっているらしいので完全に塩見さんの塩見さんによる生存報告コンテンツなのだ。正直メンバーだけどよく知らない。USDX加入に当たっても履修しろと言われなかったし(内容については割と真面目になっちが一番詳しいはずだ)。
「ああ、そうだ伊東さん」
「はい」
「レイの個人チャンネルが立ち上がることになりました」
「えーっ!? またどうして!?」
「この間玄で飲んだんだよ。高崎・拳悟・越野のいつメンに俺と山口と大石が混ざって」
「えー、さすがのいつメン、ド安定! えっと、大石クンっていうのはカズの言うところのちーちゃん、だよね?」
「そうそう、その水棲の体力お化けが越野の同僚な」
「それとレイ君の個チャンがどういう関係が」
「俺がぐだぐだに酔い散らかして高崎相手に罪を重ねた」
「……えっと、具体的には」
「店の時点ではアイツに抱きついて寝てたとか、背中によだれ垂らしてTシャツびしょびしょにしたとか、あとアイツの部屋に担ぎ込まれて夜を明かした? らしい」
「よく命がありましたね!?」
「ソルさんにも同じことを言われた」
「高崎クンを知ってたらその感想になるよ! ならざるを得ない! カズに聞いても同じ風に答えるよ! Tシャツによだれ!? 高崎クンの家に!? 呼ばれてないのに踏み入った!? 死罪~」
如何せん高崎にとって家、そしてパーソナルスペースというのは侵されたくない聖域のようなもので、そこに雑に踏み行った俺は重罪人という扱いになるんだそうだ。命があるだけありがたい、そのレベルだ。で、詫び肉どうこうの話になっての個チャン設立だ。
「なるほど。まあ、レイ君サブチャン荒らしに荒らしてますもんねえ。レイ君は1人でチャンネルを持てる活動量ではあります、確かに」
「そうそう。1人でじっくりやるゲームの動画や配信を上げたり、カンヂさんと遊んだりしてる動画を上げるのにもいいねって話はしてて」
「うんうん」
「あと、関係ないけどソルツミの他にソルさん関係でコンスタントに上げてソル成分を繋ごうっていう企画はあるんだよ」
「えっ、そうなんです?」
「USDXの曲をベースとドラムで弾いてみた系の動画がいくつか出来てて、ソルさんが繁忙期を抜けるまではちょこちょこ上がります」
「えっ、実写!?」
「実写。あっ、もちろん顔は伏せてるけど」
「ええええええ!? ソルさんとコンちゃんの実写が!? コンスタントに!? アカンヤツぅ~……タダで見ていいんですか!?」
「見られますよ」
「ありがとうUSDX……投げるお金を稼がなきゃ、カオちゃんお仕事頑張ろう」
伊東さん的に、俺は同僚だしバネ君は友達のリン君、プロさんは同人の方で話をするのでレア感が低く、チータは出たがりっぽいから実写も、顔出しすらいつかはあるだろうと思っているそうだ(そのイメージはわかる)。で、実写がなさそうな2人の弾いてみた動画がコンスタントに上がることがヤバいらしい。
と言うか、いくら夫婦の方針が趣味には相互不干渉である程度はお金も好きに使っていいということになっているとは言え、自分の所属しているグループに変な投げ方をされるとわかっていて一緒にお仕事頑張りましょうとはとても返事が出来ない。カズに申し訳ないとすら。投げられた額によっては弁当サブスクに倍額払うことも視野だぞ。
「え、って言うかコンの中の奴も知ってるよね?」
「知ってるよ。スガちゃんでしょ?」
「聞いといて難だけど知ってるんだ」
「て言うかチータが去年のうちの誕生会の時に同席した友達のチータ推しに興奮して漏らした」
「ああ……それは漏れる、アイツなら。て言うかその友達のチータ推し、大丈夫だった? 絶対変な詰め寄られ方したでしょ」
「エゴサの時点でも怯えてるし、あの時も相当怯えてた」
「よなあ」
「うちは音楽そんなに詳しくないんだけど、音楽かじってるUSDXファンによれば、USDXの曲ってリズム隊の酷使がすっごいんだって」
「それはへっぽこながらに思う。周りのレベルに対して俺は手加減してもらってんだなあとは」
「特に編曲やってるチータからのドラムへの信頼が隠しきれなくってSDX世代のコンビ推しはにっこにこなんだそうですよ」
「ああ、それは部活のステージの時からそうかも。班長の
「部活組ごちそうさまです!」
「何それ部活組って」
「コンチータレイの3人の括りですよ。同じ部活だったんでしょ?」
「あ、そんな風に呼ばれてるんだ」
「プロコンバネは院生組だし、ソルチーレイは社会人組とか、いろいろありますよ」
エゴサの鬼の
「でも、ソルコンの弾いてみた動画? 高崎クン的にもオイシイ動画だよねえ」
「そうなの? アイツ動画とかあんま見ないらしいけど」
「あれっ、高崎クンもとい、クラファンユーヤ君てソルさんの拗らせオタクとか強火ソル担みたいなことなんじゃなかったっけ?」
「何かあんまよくわかんないけど昔の話に関わってくるらしい」
「あっ。深入りしすぎたら死罪になるヤツだそれ。今の話はキャンセルということで」
「何気にアイツ禁止事項が多いな」
「高崎クンの高校以前の話に立ち入れるのって真面目に拳悟だけなんだって」
「今の家にもソルさんと拳悟以外自分の意思では入れてないって言ってた」
「……のに、酔い潰れて。……はあ。うん。カオちゃんてやっぱ大物だよね」
「褒められてはないですよね、今のニュアンスでは」
end.
++++
この話の本題は【向西倉庫繁忙期入り】です
盆のいつメン飲み後、やらかしたコアラは詫び肉のために奔走するのであった
Pさん、慧梨夏のお金の心配をしてるけどプロ氏が慧梨夏に投げてるから大丈夫よ、戻るだけです
(phase3)
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