2024
■誰もブレてない
++++
「みやっちい! カズさあん! ご結婚オメデトーゴザマース!」
「みなもー! 久し振りー!」
「みなもさんいらっしゃい。玄関で立ち話も難だし、上がって下さい」
「お邪魔シマース!」
大学卒業以来くらいでみなもとの再会。みなもは大学卒業後、地元、山浪の適当な会社の事務職として働いている。何が何でも残業はしないし完全週休2日制ということを最優先に会社を選んでいた。実際そのように働いて趣味三昧なので尊敬するよね! さすがみなも、ブレない!
で、そんなみなもが星港に来そうなイベントがあるなあと久々に連絡を入れてみたら、その日行くよお、とのことだったので、うちに招待したというワケ。山浪から星港だったら普通に全然行くし、みなもの守備範囲からすればうちが思う以上に星港には来てるんだろうけどね。
新居に遊びに来てもらうのも初めてなので、ちょっとしたお祝いを兼ねた山浪のお土産をもらった。前のマンションでの感じだったら玄関での立ち話でも十分だけど、今の家にはちゃんとしたダイニングがあるのでそこでの座り話。紅茶とカズの焼いてくれたクッキーを添えて。
「カズさんのクッキー懐かしい! うれしいなあ」
「みなもさんのお土産マジで感謝です。すげー、マジで憧れだったんだよこの包丁」
「アタシの地元と言えば刃物だからねえ。カズさんなら使ってくれると思ってえ」
「いやはや、大切に使わせていただきます。うわーうれしー。手入れ方法調べないと」
カズへのお土産は立派な包丁。地元で作ってる結構いいヤツなんだって。カズの目の輝きからするとうちが思ってる以上にガチなヤツなのかな? でも台所関係の道具を選ぶ辺り、さすがみなも、わかってるし外してない。
少し話していると、ピンポーンとインターホンが鳴る。何か頼んでたかな、フォロワーさんが何か送ってくれる予定あったかな、なんて思いながらそれに出ると、こちらも久々のお顔。カズはみなもからもらった包丁に夢中なのでうちが応対をしてあげよう。
「浅浦クンいらっしゃーい」
「お邪魔します。関さん、久し振り」
「浅浦クンお久し振りデス。気持ち程度髪が短い!」
「まあ、さすがに多少は切るよ」
「とりあえず浅浦クンにもお土産デース」
「え、俺にも? おー、前にもらった煎餅だ。これ美味しいんだよな。わざわざありがとう」
「いえいえ」
「でも俺何も用意してないんだ、気が利かずに申し訳ない」
「気にしないでえ」
ちなみに浅浦クンは国語の先生として羽丘高校に赴任することになって、今はそのように働いているとのこと。浅浦クンが高校の先生とか、そんなの女子たちの憧れの的にならない? と思っちゃうけど大卒1年目はまだその域にはないかな? ナメられるか友達扱いされるかも。
「浅浦、そこはお前にしか出来ない挽回方法を用意してやろうじゃねーの」
「碌でもないことを言いそうだな」
「お前が来るってわかってたからな、グラタンとオムライスの材料は揃えてある。どっちでも好きな方を作れ。包丁は右利き用しかないけど」
「端から作らせる気じゃねーかこの野郎」
「何言ってんだ。この俺が、自分の家のキッチンに慧梨夏以外の奴を立たせる! これが幼馴染みへの信頼と呼ばずに何と言う!」
「ダンナへの愛情じゃない?」
「通常運転やめろ。とにかくだ、みなもさんへのお土産云々はプライスレスの方でカバーすんだよ。お前の作るメシは美味いしその辺で買えるモンよりレアだ」
「浅浦クンのグラタンが食べたいデース!」
「ほら、みなももこう言ってる。浅浦クン、作ろう。4人分のグラタン皿も用意があるから」
「アンタってそういう人だよな」
何だかんだうちには定期的に来客があるので、イスと同じ数だけの食器はちゃんと揃えてある(来客慣れに関しては弁当サブスク制度のおまけ様々だね)。4人だったら全然イケるし、新居を探すときにキッチン周りを重視した旦那様のおかげで浅浦クンにも思う存分腕を振るってもらえるはず。左利き用の包丁はさすがにないけど。
「まあ、夕飯にはまだ早いし作るのはもうちょっと後でな」
「やったあ!」
「関さんて今どんな感じなの? プライベート最優先って感じで就活してたのは覚えてるけど」
「もちろんプライベート最優先ですよお。土日祝は絶対休みでえ、9時5時きっかりでえ。最初から有給も5つもらえててえ。そんな会社で事務やってまあす。今日も星港でのイベントで来ててえ」
「さすが関さん。ブレない」
「仕事のために生きてるんじゃないのでえ」
「さすがみなも。尊敬する」
「好きなことを仕事にしたみやっちの方が尊敬だよお。仕事もして、趣味もバリバリやってえ、家庭も持つってアタマおかしーですよお!?」
「えー!?」
「関さんの言うことには一定の理解は示せる。仕事、余暇、家庭の全部に現状高い水準で満足出来てるって、大卒1年目としては正直異常だぞ」
「うちのバイタリティを誉めていただきたいところ」
「そこは素直に誉めるところではある。確かに。ただ、誰の参考にもならないんだよ」
余暇。主に同人活動に関してはカオちゃんが悪いという一言に尽きるんだよね。1度話せば1冊本が出来るってレベルで面白いんだもの日常の話が。仕事の面でもニコイチやらせてもらってるけど、余暇の面での充実は絶対あの人のおかげだからね。
「浅浦クンはその辺どう? でも先生だし労働時間長そうだね」
「ああ、まあ……働き方云々のことは言われるけど、残業にはなる、正直。俺がまだ要領良く仕事出来てないっていうのもあるけど」
「まあ1年目じゃねえ」
「家が近いからまだやれてる。通勤時間が比較的短いから」
「羽丘だもんね」
「でも帰ってシャワーして寝る、みたいなこともまあある」
「お風呂好きの浅浦クンがシャワーで済ませちゃうんです!?」
「済まさざるを得ないこともたまに」
「しんど!」
「部活とかってどうなの? ほら、最近って地域の人に指導を任せて先生の労働時間を~みたいに言ってるけど」
「そういう部もあるけど、顧問は顧問として付いてるから任せっきりでもない。あと、指導者が都合よく見つからない場合は見に行かなきゃいけないし」
「浅浦クンて何か部活の顧問やってるの?」
「美術部の顧問やってる」
「美術部ぅ!?」
正直浅浦クンと部活っていうのは高校の頃からイメージにないし卓球の経験とかバスケの経験があったとしても体育館にはいなさそうなんだよね。かと言って美術部ならイメージにあるかと言えばそれもないワケで。なるほど、そう来たか。
「専門的な指導をするというよりは見守り型顧問?」
「だな。生徒の方がよっぽど知識も技量もあるから」
「はえー。浅浦クン、高校の現場の話をもっとお願いします、リアルな現場の生きた知識を」
「それで何をしようとしてるのかがわかるだけにな」
「あくまでも取材です。違う業界の人の話聞くの楽しいでしょ!?」
「それはそうだけど」
「浅浦クンもうちらみんなの話教壇でネタにしていいから!」
「伊東ー、そろそろ台所に退避させてくれー」
「お前、慧梨夏の圧に屈するんじゃねーよ」
end.
++++
フェーズ3始まって初めてになる久々4人の集合。特に浅浦雅弘とみなもちゃんなんてご無沙汰にもご無沙汰。
みなもちゃんの会社選びと働き方が本当に素晴らしいなと感動してしまう。社畜という言葉には縁遠い。
(phase3)
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「みやっちい! カズさあん! ご結婚オメデトーゴザマース!」
「みなもー! 久し振りー!」
「みなもさんいらっしゃい。玄関で立ち話も難だし、上がって下さい」
「お邪魔シマース!」
大学卒業以来くらいでみなもとの再会。みなもは大学卒業後、地元、山浪の適当な会社の事務職として働いている。何が何でも残業はしないし完全週休2日制ということを最優先に会社を選んでいた。実際そのように働いて趣味三昧なので尊敬するよね! さすがみなも、ブレない!
で、そんなみなもが星港に来そうなイベントがあるなあと久々に連絡を入れてみたら、その日行くよお、とのことだったので、うちに招待したというワケ。山浪から星港だったら普通に全然行くし、みなもの守備範囲からすればうちが思う以上に星港には来てるんだろうけどね。
新居に遊びに来てもらうのも初めてなので、ちょっとしたお祝いを兼ねた山浪のお土産をもらった。前のマンションでの感じだったら玄関での立ち話でも十分だけど、今の家にはちゃんとしたダイニングがあるのでそこでの座り話。紅茶とカズの焼いてくれたクッキーを添えて。
「カズさんのクッキー懐かしい! うれしいなあ」
「みなもさんのお土産マジで感謝です。すげー、マジで憧れだったんだよこの包丁」
「アタシの地元と言えば刃物だからねえ。カズさんなら使ってくれると思ってえ」
「いやはや、大切に使わせていただきます。うわーうれしー。手入れ方法調べないと」
カズへのお土産は立派な包丁。地元で作ってる結構いいヤツなんだって。カズの目の輝きからするとうちが思ってる以上にガチなヤツなのかな? でも台所関係の道具を選ぶ辺り、さすがみなも、わかってるし外してない。
少し話していると、ピンポーンとインターホンが鳴る。何か頼んでたかな、フォロワーさんが何か送ってくれる予定あったかな、なんて思いながらそれに出ると、こちらも久々のお顔。カズはみなもからもらった包丁に夢中なのでうちが応対をしてあげよう。
「浅浦クンいらっしゃーい」
「お邪魔します。関さん、久し振り」
「浅浦クンお久し振りデス。気持ち程度髪が短い!」
「まあ、さすがに多少は切るよ」
「とりあえず浅浦クンにもお土産デース」
「え、俺にも? おー、前にもらった煎餅だ。これ美味しいんだよな。わざわざありがとう」
「いえいえ」
「でも俺何も用意してないんだ、気が利かずに申し訳ない」
「気にしないでえ」
ちなみに浅浦クンは国語の先生として羽丘高校に赴任することになって、今はそのように働いているとのこと。浅浦クンが高校の先生とか、そんなの女子たちの憧れの的にならない? と思っちゃうけど大卒1年目はまだその域にはないかな? ナメられるか友達扱いされるかも。
「浅浦、そこはお前にしか出来ない挽回方法を用意してやろうじゃねーの」
「碌でもないことを言いそうだな」
「お前が来るってわかってたからな、グラタンとオムライスの材料は揃えてある。どっちでも好きな方を作れ。包丁は右利き用しかないけど」
「端から作らせる気じゃねーかこの野郎」
「何言ってんだ。この俺が、自分の家のキッチンに慧梨夏以外の奴を立たせる! これが幼馴染みへの信頼と呼ばずに何と言う!」
「ダンナへの愛情じゃない?」
「通常運転やめろ。とにかくだ、みなもさんへのお土産云々はプライスレスの方でカバーすんだよ。お前の作るメシは美味いしその辺で買えるモンよりレアだ」
「浅浦クンのグラタンが食べたいデース!」
「ほら、みなももこう言ってる。浅浦クン、作ろう。4人分のグラタン皿も用意があるから」
「アンタってそういう人だよな」
何だかんだうちには定期的に来客があるので、イスと同じ数だけの食器はちゃんと揃えてある(来客慣れに関しては弁当サブスク制度のおまけ様々だね)。4人だったら全然イケるし、新居を探すときにキッチン周りを重視した旦那様のおかげで浅浦クンにも思う存分腕を振るってもらえるはず。左利き用の包丁はさすがにないけど。
「まあ、夕飯にはまだ早いし作るのはもうちょっと後でな」
「やったあ!」
「関さんて今どんな感じなの? プライベート最優先って感じで就活してたのは覚えてるけど」
「もちろんプライベート最優先ですよお。土日祝は絶対休みでえ、9時5時きっかりでえ。最初から有給も5つもらえててえ。そんな会社で事務やってまあす。今日も星港でのイベントで来ててえ」
「さすが関さん。ブレない」
「仕事のために生きてるんじゃないのでえ」
「さすがみなも。尊敬する」
「好きなことを仕事にしたみやっちの方が尊敬だよお。仕事もして、趣味もバリバリやってえ、家庭も持つってアタマおかしーですよお!?」
「えー!?」
「関さんの言うことには一定の理解は示せる。仕事、余暇、家庭の全部に現状高い水準で満足出来てるって、大卒1年目としては正直異常だぞ」
「うちのバイタリティを誉めていただきたいところ」
「そこは素直に誉めるところではある。確かに。ただ、誰の参考にもならないんだよ」
余暇。主に同人活動に関してはカオちゃんが悪いという一言に尽きるんだよね。1度話せば1冊本が出来るってレベルで面白いんだもの日常の話が。仕事の面でもニコイチやらせてもらってるけど、余暇の面での充実は絶対あの人のおかげだからね。
「浅浦クンはその辺どう? でも先生だし労働時間長そうだね」
「ああ、まあ……働き方云々のことは言われるけど、残業にはなる、正直。俺がまだ要領良く仕事出来てないっていうのもあるけど」
「まあ1年目じゃねえ」
「家が近いからまだやれてる。通勤時間が比較的短いから」
「羽丘だもんね」
「でも帰ってシャワーして寝る、みたいなこともまあある」
「お風呂好きの浅浦クンがシャワーで済ませちゃうんです!?」
「済まさざるを得ないこともたまに」
「しんど!」
「部活とかってどうなの? ほら、最近って地域の人に指導を任せて先生の労働時間を~みたいに言ってるけど」
「そういう部もあるけど、顧問は顧問として付いてるから任せっきりでもない。あと、指導者が都合よく見つからない場合は見に行かなきゃいけないし」
「浅浦クンて何か部活の顧問やってるの?」
「美術部の顧問やってる」
「美術部ぅ!?」
正直浅浦クンと部活っていうのは高校の頃からイメージにないし卓球の経験とかバスケの経験があったとしても体育館にはいなさそうなんだよね。かと言って美術部ならイメージにあるかと言えばそれもないワケで。なるほど、そう来たか。
「専門的な指導をするというよりは見守り型顧問?」
「だな。生徒の方がよっぽど知識も技量もあるから」
「はえー。浅浦クン、高校の現場の話をもっとお願いします、リアルな現場の生きた知識を」
「それで何をしようとしてるのかがわかるだけにな」
「あくまでも取材です。違う業界の人の話聞くの楽しいでしょ!?」
「それはそうだけど」
「浅浦クンもうちらみんなの話教壇でネタにしていいから!」
「伊東ー、そろそろ台所に退避させてくれー」
「お前、慧梨夏の圧に屈するんじゃねーよ」
end.
++++
フェーズ3始まって初めてになる久々4人の集合。特に浅浦雅弘とみなもちゃんなんてご無沙汰にもご無沙汰。
みなもちゃんの会社選びと働き方が本当に素晴らしいなと感動してしまう。社畜という言葉には縁遠い。
(phase3)
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