2024
■ビジュアルと社会的責任
++++
「おはよう」
「千颯せんぱーい、たすけてー」
「千颯先輩はお気になさらず~。がくぴは今日もきゃわだなあ。きゃわきゃわですぅ~」
例年の傾向として、星港大学UHBCのメンバーは良くも悪くもクセが少なく、インターフェイスでは埋もれがちになるそうだ。同じ班になれば番組はきっちりこなしてくれるけれどもアクがないが故に印象に残りにくいとも言われる。俺たち2年生は特にそういう傾向が強いみたいだ。だけど今年の1年生はとんでもないのが来たぞ、と3年生の先輩も楽しんでいる。
その“とんでもないの”が野々市すず。上を水色、下をピンクのグラデーションに染めてパーマがかかった肩までの髪がまず目を引いて、カラーコンタクトレンズの色は日によって気分で変えてたり、ピアスもたくさんついている。上背は多分150センチもない感じでかなり小さいんだけど、存在感がとにかく凄い。
で、その見た目が派手と言うかギャルと言うか二次元っぽいすずはノリも軽め。それは見た目のイメージ通りなんだけど、実際は理工学部でハチャメチャに頭が良くて、高校時代は生徒会長なんかをやっていたんだそうだ。じゃあこの外見とノリは大学デビューかと言えば、同じ高校出身のひかるん曰く高校の時から既にこうだったそうだ。
「ひかるん、すずはがっくんの何がこうまで好きなのかな」
「顔ですね」
「顔かあ、じゃあしょうがないね」
「しょうがなくないですよー」
「がくぴ自分の顔がどんだけ殺傷能力高いか自覚した方がいいよ! インターフェイスの活動に出たら女子全員がくぴのファンになるレベルだよ」
「まあ、背が高くてスタイルもいいのは確かだけどね」
「でもがくぴの良さはインターフェイスにはまだバレてないから。これで人慣れしてがくぴのきゃわなキャラが出てきたら女子も男子も全員死ぬよ」
がくぴこと荒島岳、サークルやインターフェイス的にはがっくんという呼ばれ方が一般的な彼は、穏やかで優しそうな子だなっていうのがみんなの抱いた第一印象。顔の造形に関しては、すずに言われてまじまじ眺めて「言われてみれば確かに可愛い系の綺麗な顔立ちだね」とみんな気付いた感じ。
「何か、一歩間違えたら野々市ががっくんをイジメてるみたいにも見えるんだよなあ」
「はあ!? 愛ではしてもイジメるワケないし!」
「いや、ギャルと大人しい男子の構図的に?」
「はー、出た出た。見た目で決めつけんなって前々から言ってるんですけどぉ~」
「知ってまぁ~す。まあ、そういうことだしがっくん、頑張って」
「何を頑張ればいいのかな?」
「わかんないけど」
「でも~、がくぴもそろそろすずの見た目とキャラに慣れた頃だよね? って言うか慣れてもらわないと困るんですけどぉ~」
「見た目には多少は慣れたよ」
「って言うかがくぴダンスやってたんだったら派手な子とか見慣れてんじゃないの!?」
「いや……そういう場と学校みたいな平場っていうのかな、そういう場所とは違うかなって」
「はあ~? 変わんないと思いますけどぉ~」
「ほら、一般的に、すずみたいな髪の毛してたらまず先生に目を付けられない?」
「目は付けられるね。制服もアレンジしてたしピアスもしてるしメイクもネイルもバッチリキメてたしね。バイトもバリバリやってたから」
「星港高校ってそういうの緩いの?」
「緩くはないけど野々市が特別おかしかったからみんなそういうものだって思うようになってたって言う方が正しいかも。成績も毎回上位3人以内だし生徒会でもカリスマ会長扱いだし」
「何年か前の生徒会長も茶髪にピアスに原付乗り回してバイト三昧だったって言ってたけど、能力はバリ高かったって話だし、ウチの高校って見た目と能力は別にして考えるってことに慣れてんじゃん?」
すずの見た目と経歴のギャップもそうだけど、がっくんもちょっとおっとり系っぽいイメージだけどダンスをやってたっていうのは結構なギャップなんだよね。ダンスをやってるときのがっくんはきっとすごくカッコいいんだろうなあ。背も高めだし(俺よりはちょっと低いから180センチくらいかなあ?)迫力がありそう。
でも、見た目じゃなくてその人の実際のことを見ていろいろな物を判断するっていうのはいい校風だなとは思った。アオ先輩も確かすずとひかるんと同じ星港高校の出身で生徒会役員をやっていたっていう話だから、その何年か前の生徒会長っていう人のことも知っているのかもしれない。でもこの髪色が怒られないはずはないよなあ。
「最近は本当に生きやすい! 私がバイトしてる店は元々ちょっと早く従業員の見た目の規則みたいなことが緩くなったんですけどぉ~、未だに黒髪じゃないと採用されませんみたいなトコも多いじゃないですかぁ~。すずの爆速チェッカー見てもまだファッション楽しんでる子がバカで無能だって言えるのかって話でぇ~、社会的道義に反してるかとか責任を果たせるかどうかなんて見た目じゃわかんないじゃないですかぁ~」
「そのネイルでよく器用にレジ通せるね」
「あんなのは規則性を見つけてぽんぽんぽ~ん! ですよ! マイバスケットとかの人のカゴに商品詰めるの超上手いって言ってお客さんビビって帰りますからね! すずを気に入ってくれてレジに並んでくれる常連のおばちゃんとかいますよ」
「それは普通に凄いね」
「ダンスも昔はヤンチャな人がやってることっていう認識だったみたいだし、時代って着実に変わってるんだね」
「って言うかがくぴのダンス見たいんですけどぉ~! ねえ見たいよねえひかるん!」
「あ、それはちょっと見たいかな」
「えっと、今ここではちょっと恥ずかしいかな」
end.
++++
突如降って湧いた星大の1年生たち。大ちゃんのキャラ立ちも含めて今年はこの3人が軸になるか?
UHBCは3年生になるとそこまでガツガツしない人も増えるので、見ているポジションの2年生として千颯が便利。
(phase3)
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「おはよう」
「千颯せんぱーい、たすけてー」
「千颯先輩はお気になさらず~。がくぴは今日もきゃわだなあ。きゃわきゃわですぅ~」
例年の傾向として、星港大学UHBCのメンバーは良くも悪くもクセが少なく、インターフェイスでは埋もれがちになるそうだ。同じ班になれば番組はきっちりこなしてくれるけれどもアクがないが故に印象に残りにくいとも言われる。俺たち2年生は特にそういう傾向が強いみたいだ。だけど今年の1年生はとんでもないのが来たぞ、と3年生の先輩も楽しんでいる。
その“とんでもないの”が野々市すず。上を水色、下をピンクのグラデーションに染めてパーマがかかった肩までの髪がまず目を引いて、カラーコンタクトレンズの色は日によって気分で変えてたり、ピアスもたくさんついている。上背は多分150センチもない感じでかなり小さいんだけど、存在感がとにかく凄い。
で、その見た目が派手と言うかギャルと言うか二次元っぽいすずはノリも軽め。それは見た目のイメージ通りなんだけど、実際は理工学部でハチャメチャに頭が良くて、高校時代は生徒会長なんかをやっていたんだそうだ。じゃあこの外見とノリは大学デビューかと言えば、同じ高校出身のひかるん曰く高校の時から既にこうだったそうだ。
「ひかるん、すずはがっくんの何がこうまで好きなのかな」
「顔ですね」
「顔かあ、じゃあしょうがないね」
「しょうがなくないですよー」
「がくぴ自分の顔がどんだけ殺傷能力高いか自覚した方がいいよ! インターフェイスの活動に出たら女子全員がくぴのファンになるレベルだよ」
「まあ、背が高くてスタイルもいいのは確かだけどね」
「でもがくぴの良さはインターフェイスにはまだバレてないから。これで人慣れしてがくぴのきゃわなキャラが出てきたら女子も男子も全員死ぬよ」
がくぴこと荒島岳、サークルやインターフェイス的にはがっくんという呼ばれ方が一般的な彼は、穏やかで優しそうな子だなっていうのがみんなの抱いた第一印象。顔の造形に関しては、すずに言われてまじまじ眺めて「言われてみれば確かに可愛い系の綺麗な顔立ちだね」とみんな気付いた感じ。
「何か、一歩間違えたら野々市ががっくんをイジメてるみたいにも見えるんだよなあ」
「はあ!? 愛ではしてもイジメるワケないし!」
「いや、ギャルと大人しい男子の構図的に?」
「はー、出た出た。見た目で決めつけんなって前々から言ってるんですけどぉ~」
「知ってまぁ~す。まあ、そういうことだしがっくん、頑張って」
「何を頑張ればいいのかな?」
「わかんないけど」
「でも~、がくぴもそろそろすずの見た目とキャラに慣れた頃だよね? って言うか慣れてもらわないと困るんですけどぉ~」
「見た目には多少は慣れたよ」
「って言うかがくぴダンスやってたんだったら派手な子とか見慣れてんじゃないの!?」
「いや……そういう場と学校みたいな平場っていうのかな、そういう場所とは違うかなって」
「はあ~? 変わんないと思いますけどぉ~」
「ほら、一般的に、すずみたいな髪の毛してたらまず先生に目を付けられない?」
「目は付けられるね。制服もアレンジしてたしピアスもしてるしメイクもネイルもバッチリキメてたしね。バイトもバリバリやってたから」
「星港高校ってそういうの緩いの?」
「緩くはないけど野々市が特別おかしかったからみんなそういうものだって思うようになってたって言う方が正しいかも。成績も毎回上位3人以内だし生徒会でもカリスマ会長扱いだし」
「何年か前の生徒会長も茶髪にピアスに原付乗り回してバイト三昧だったって言ってたけど、能力はバリ高かったって話だし、ウチの高校って見た目と能力は別にして考えるってことに慣れてんじゃん?」
すずの見た目と経歴のギャップもそうだけど、がっくんもちょっとおっとり系っぽいイメージだけどダンスをやってたっていうのは結構なギャップなんだよね。ダンスをやってるときのがっくんはきっとすごくカッコいいんだろうなあ。背も高めだし(俺よりはちょっと低いから180センチくらいかなあ?)迫力がありそう。
でも、見た目じゃなくてその人の実際のことを見ていろいろな物を判断するっていうのはいい校風だなとは思った。アオ先輩も確かすずとひかるんと同じ星港高校の出身で生徒会役員をやっていたっていう話だから、その何年か前の生徒会長っていう人のことも知っているのかもしれない。でもこの髪色が怒られないはずはないよなあ。
「最近は本当に生きやすい! 私がバイトしてる店は元々ちょっと早く従業員の見た目の規則みたいなことが緩くなったんですけどぉ~、未だに黒髪じゃないと採用されませんみたいなトコも多いじゃないですかぁ~。すずの爆速チェッカー見てもまだファッション楽しんでる子がバカで無能だって言えるのかって話でぇ~、社会的道義に反してるかとか責任を果たせるかどうかなんて見た目じゃわかんないじゃないですかぁ~」
「そのネイルでよく器用にレジ通せるね」
「あんなのは規則性を見つけてぽんぽんぽ~ん! ですよ! マイバスケットとかの人のカゴに商品詰めるの超上手いって言ってお客さんビビって帰りますからね! すずを気に入ってくれてレジに並んでくれる常連のおばちゃんとかいますよ」
「それは普通に凄いね」
「ダンスも昔はヤンチャな人がやってることっていう認識だったみたいだし、時代って着実に変わってるんだね」
「って言うかがくぴのダンス見たいんですけどぉ~! ねえ見たいよねえひかるん!」
「あ、それはちょっと見たいかな」
「えっと、今ここではちょっと恥ずかしいかな」
end.
++++
突如降って湧いた星大の1年生たち。大ちゃんのキャラ立ちも含めて今年はこの3人が軸になるか?
UHBCは3年生になるとそこまでガツガツしない人も増えるので、見ているポジションの2年生として千颯が便利。
(phase3)
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