2024

■しっかりってどうするの

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 7月。インターフェイス夏合宿の班編成が発表されて、動き出すところはもう動いている。対策委員は自分の班のことだけじゃなくて全体の運営にも関わっていかなければならないので忙しさは苛烈を極めている。これだけやってるワケでもないし。
 で、この時期になるとインターフェイス関係の話題は全部これに持って行かれるので、対策委員はみんなから質問責めに遭う。対策委員の会議はちゃんとやれているか、班はどんな雰囲気か、講習内容は、などなど。俺は答えられる範囲できっちり答えている。けれども。

「北星、班員の顔と名前は覚えれた?」
「みちるちゃん以外まだ一致しなくて~」
「当麻、他に誰いたっけ?」
「副班長がササで、後は1年生ですね」
「お前、こんな調子で班長業も対策委員の会議でも大丈夫なのかよ」
「う~ん、わかんないな~」
「しっかりしろよ」

 如何せん映像に関係しない人間の顔と名前を覚えるのには異常なまでの時間を要する北星だ。強いて言えばみちるは数少ない例外だと思うけど、一応いろんな現場で顔を合わせてたんだしくるちゃんからも聞いてただろうにササくらい知っていろよと思う。
 ササには俺から北星が無礼を働いたら申し訳ないというお断りと、簡単な取扱説明書を送っておいた。何かしらおかしなことをやらかしたらシバいていいとは言ったけど、聖人のササにそんなことが出来ると思わない。だからこそのみちるなんだけども。

「班に映像関係の子はいなかったの?」
「いないことはなかったんですよ、星大の子は映像やってるって」
「なら覚えたんじゃないの?」
「青女の子と~、名前が似てるんです~。ひかるとひかりで~、ニュアンスが混ざっちゃって~」
「ああ……」

 星大の大野光君と、青女の楢葉光莉さんの名前のニュアンスが混ざってせっかく映像をやっている大野君の名前もしっかり覚えきれないんだそうだ。顔は覚えたんだけど~、とのこと。本当の最初の頃は雨竜の名前すら覚えられなかったことを思えば進歩はしているけれども。あやめさんも頭を抱えている。

「DJネームは聞いた?」
「えっと~、ちょっと待ってくださいね~」

 そう言って北星はメモ帳を開いた。班打ち合わせの会議内容をメモしてきたらしい。うーん、やっぱり進歩が見られると思ってしまうのは俺が甘いのだろうか。そのページの記述によれば、紛らわしい2人はDJネームも似ているんだとか。北星にはしんどいぞ。

「いっそひかるんとひかりんの方は無視して大ちゃんとならっちで覚えた方がいいんじゃない? いつまでも班長に混乱されてるよりはどんな手段でもちゃんと覚えた方がいいかもよ」
「そうですね~。確かにそっちの方が覚えやすそうなんで~、そうしてみます~」
「ササもちゃんと覚えろよ」
「努力はしてる~。ササは~、特撮にちょっと興味があるんだって~、彼女さんの影響で~」
「へえ、そうなのか」

 俺はこの合宿でレナと同じ班になったけど、最近はササに延々と特撮やロボットアクション映画などを見せているっていう話をしたっけか。バスケロボットにハマって実際にバスケの試合を見に行くようになったとも言ってたし、超クールに見えて実は結構アクティブで熱い子なんだなとは思った。

「雨竜の班はどんな感じ?」
「班長は七海のはずなのに、完全に彩人が仕切ってる」
「うーん……確かに七海はそういうところがあるかもしれない。対策委員でも委員長のはずなんだけど、向島勢とかくるちゃんとか、他の子に存在感が食われがちと言うか。で、彩人が仕切って雨竜がガヤを入れて、1年は?」
「緑ヶ丘の中ってのがキャラ濃い」
「どう濃いんだ?」
「なーんか掴み所がないっつーか、口が達者と言うか。向島のパロってのが結構純粋と言うか可愛い感じのお喋り好きなんだけど、延々と中がパロで遊ぶ組み手やってる感じ」
「それはそれで面白そうだな」

 たまにパロが中に対して怒ることもあるそうだけど、次の瞬間にはまた普通に笑顔でお喋りをしているのでそこはまあまあ仲良くなったんだろうとのこと。何か、そういう1年生同士の人間関係どうこうっていう話を聞いていると、どうしても去年のことを思い出してしまう。

「当麻の班は?」
「ウチの班は俺とレナの2年2人班ですけど、1年生にしっかりしてる子もいるので練習を重ねればしっかり形になるかと思います」
「当麻お前、対策委員の真面目枠とかクール枠なんだって? しっかりしてる風に見られてるって話じゃんな」
「実際当麻はしっかりしてるでしょ」
「シノとかカノンみたいな熱い奴とか、北星みたいなボケっとしてる奴と比べたら真面目に見えるってだけっしょ」
「それは多分実際にそうだと思う。性格の分類じゃないけど、ガンガン系とふわっと系の子が多いから、真面目系のとりぃが凄く頼りになる」
「あー。定例会でもどうせ向島の新メンバーが来るならとりぃが良かったーっつってサキがよく奏多にケンカ売ってんわー」
「あれ、でもサキと奏多のそれってすがやんすらスルーし始めたレベルの挨拶なんだろ?」
「そうそう。最初の頃はみんなケンカかーっつって冷や冷やしてたけど、すがやんがいつものことっつー扱いを始めたらみんなもスルーよ。ねーあやめさん。っつー話をしてても北星! お前どーせすがやんのことわかってねーだろ!」

 ちなみに班編成の時点では緑ヶ丘のアナウンサー3人は全員よくわかってないって素振りだったよな。

「名前はくるちゃんから聞いてるし~。緑ヶ丘で仲良しなんだって~。あと、とりぃの彼氏の子だよね~」
「おっ、意外に知ってた」
「今度、2人で旅行に行くんだって~。星空が楽しめる遺跡~、だったかな~? そこでとりぃが星景写真を撮りたがってて、持ってる機材を聞いてどうやったら満足のいく写真が撮れるかっていうのをアドバイスしてるんだ」
「くるちゃんって言うよりとりぃ繋がりか」
「この北星が初対面で“星の子のとりぃ”で顔と名前を覚えたんだぞ」
「何で当麻がドヤるんだよ」
「前にくるちゃんにスマホでの星空の撮り方を教えたんだけど、それをくるちゃんがすがやん? に教えて~、それをとりぃが聞いたんだって。それでスマホじゃないカメラでの撮り方を相談されてるんだよ。いつか流星群の映像を撮りたいんだって。応援したいよね」
「うーん、これは星の子だ」

 こんな調子の北星だけど、実は今回の夏合宿では大きな仕事を任されている。それはまだ公にはしていないけど、対策委員内では映像の専門的な話をさせたらやっぱり北星が一番頼りになるという評価なので、合宿運営よりも班運営の方が圧倒的に心配だ。

「ところで北星」
「はい~」
「自分の班でペアを組む子って誰なの? 覚えられそうな2人のうちのどっちか?」
「じゃないんです~」
「ああ……」
「いいか北星、映像に関係なくたってちゃんと覚えろ。みちるはもう知ってるからたった4人でいいんだぞ」
「たった4人って言われても~」


end.


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その後ペアを組んだ子を自分が育てたみたいな感じでドヤり始めるので何がどうなるかはわからんなあ()
あと七海現象は七海現象として一種のキャラ立ちに役立てたい。実際話は彩人が回しそうだし。
中とパロの件も見てみたいし、MMPではあんまり怒らないパロがぷんすこしてるのも見たい

(phase3)

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