2024
■微妙な友達との距離感
++++
「ねーねー、聞ーていー?」
「どした琉生」
「バイト先の子がねー、中学とか高校の時のー、知ってはいるけどそんな仲良くない子から連絡が来たんだってー。ごはんいこーみたいな感じでー。断るのもちょっと気まずいって言ってるんだけどー、それってー、そんなに気まずいことなのかなー?」
MBCCには現段階で5人の1年生が入った。ちむりーの後に入ってきた琉生は、スチームパンク的な世界観をファッションで表現しているのが特徴で、髪も真っ白いし最初はお隣の美術部と間違えてきたんじゃないかと思った。ただ、興味があってきたのはMBCCだったようで、アナウンサーとして落ち着いた。
今の2年生ほどじゃないにせよ1年生たちも仲がいいし、練習も各々真面目に取り組んでいるのでそれを見守る3年生としてはホッとしているという感じ。もしかしたらこれから問題が起こってくるかもしれないけど、その頃には人となりもちょっとはわかっているだろうから話し合いには持ち込めるかもしれない。
サークル室にやってくるなり琉生が投げかけた疑問については、大学1年生あるある……とまではいかないにしても多少はある話だなあとは思う。尤も、俺の場合は紅社から遠く離れた向島への進学だったから、実際に会うところには至らない。
「ねー、ちむちむはどー思うー?」
「そうね~。微妙な距離感の知り合いなんだったら~、他に誰か来るのかを聞くといいかもしれないわね~。2人きりで会うのは、不安よね~」
「なるほどー。他ー。周ー」
「好きにすれば。誘いを断った程度で関係が悪くなる微妙な知り合いならその後も続かないよ」
「あー、また野球見ながらテキトー言ったー」
「逆にコイツの場合は野球優先でダチの誘いを断るとか日常茶飯事だったかもしんねーぞ。経験に基づく言葉、的な」
「あー、わかるー。ぽいー」
現に周のスマホにはうっすらと野球の気配が見て取れるので、多分野球関係の調べ物をしながら適当に返事をしてるんだとは思う。だけどその適当な返事が今回は案外間違ってもなさそうなので、スマホを見ながら会話するスキルが上がってるのかな、とも見て取れる。
そもそも仲のいい人であれば誘いを断るのも気まずくならないと言うか、会いたい人であれば他に空いている日を確認するくらいのことはすると思うんだよね。この日は無理だけど、次の土曜日なら空いてるよ、みたいに。微妙な関係だからこそ難しい。
「そもそも中高で微妙な関係だった相手を急にメシとかに誘うのって、宗教勧誘や押し売り、犯罪の小間使いにされる王道パターンだからな。怪しい連絡を信じる奴がバカなんだ」
「宗教かー。アナタハー、神ヲー、シンジマスカー?」
「None of your business~」
「ちむりー、地味にキツい言い方したね」
「あら~、高木先輩、分かりました~?」
「一応1年の時の英語は上級クラスだったんだよ」
「そうだったんですね~」
「中はー、もし久々に会った人にそーゆーコトされたらー、どーするー?」
「そうだなァ……口で俺に勝てんのって、逆に向こうが泣くまで攻め立てるかな」
「うわー、めんどくさー」
「めんどくさ」
「周! テメー今テキトーに琉生にノっただろ!」
中だったら本当にやりかねないなあとは俺も思う。そもそもがそういう怪しい連絡を無視するタイプだろうけど、いざとなったら暇潰し半分にそういうことをしそうだなというイメージはある。イメージはね。詐欺師を自称する占い師見習いだもんなあ。
「つか、前にそーゆーコトがあったんだよな実際」
「そうなのー?」
「ああ。高校ン時だったかな。何か1回2回話した程度の奴からメシ行こうぜって誘われて、ヒマだったしついてったんだよ。そしたら行った先に見るからに怪しい奴がいて、俺のことを聞くんだよ。誕生日だの生誕地だの。あ、これはロクでもない占星術もどきのヤツだなと思って全部ウソ言ってやったね」
「それで、どうなったの~?」
「星の動きを見ていると、このままだと3ヶ月後に運勢が最悪になるから、開運のお守りを買え、そうすれば運勢は逆回転してあなたには至上の幸福が訪れるでしょう。なんて言いやがるからぜーんぶ論破してやったよ。このイカサマ占い師がーっつって。そもそもマジモンの占い師が客の同意もなくいきなり占うかっつーの。商売道具の扱い方がなってねー」
中の用心深さはそういった経験に基づく物だったらしい。そして中はそういう微妙な関係のヤツに個人情報を微塵たりとも渡す気はないねと吐き捨てる。誕生日や生まれた場所だって十分な情報なんだと。それにちむりーと琉生の女子2人はなるほどーと納得した様子。
「高木先輩は~、宗教に勧誘されたら、どうしますか~?」
「うーん、そうだなあ……。もう信仰している宗派がありますからって言うかな」
「高木先輩って特定の宗教に入信してるんすか」
「あ、いや、ちゃんとしたのじゃなくて、MBCCの中で有名なアメリカの宗教っていうのがあってね」
「アメリカ。またグローバルな」
「この間卒業していった高崎先輩って人が言ってたんだけど、俺が信じるのはカリカリのベーコンを崇める宗教だーって」
「あー、何か、空飛ぶナントカ、みたいな宗教もあったっすよね向こうの方って」
「強いて言えばカリカリのベーコンを……あ、いや、カルボナーラに入ってるのはプリプリの方が美味しいかもしれない。でもなー、トマトソース系統の時はカリカリの方が好きだなー」
「ブレてんなァー。高木先輩はベーコン教徒ではないと」
「ベーコン教よりは温玉教とかがあってくれればとは思うね」
「温玉教の教義はどうしましょ」
「うーん、そうだね。賞味期限の切れた卵は加熱して食べる。すぐには捨てない」
「温玉じゃないですね~」
「半生ですねー」
「あとそれ捨てんのってエージ先輩っしょ?」
卵の賞味期限が切れたとしても日付の設定の仕方が厳しめだから少しの間なら大丈夫だし、生食しなきゃ大丈夫なんだってエイジにはいつも言ってるのに。1日でも期限が切れるとすぐに捨てちゃうんだもんなあ。死にはしないしお腹だってそうそう痛くならないのに。
「とりあえずー、バイト先の子には、2人で会わないっていうのとー、断ることが気まずい相手なら別に会わなくていいんじゃーんって言っとくねー」
「周の話が拾われただと!?」
「中の話より現実的だったしー」
「それはそうね~」
「ちむちむ!?」
end.
++++
MBCCの1年生たちにも少しずつ肉付けをしているのだけど、1番に来ているはずの凛斗が弱いにも弱いにも
MMPでもジャックがやや弱めだし1番目のキャラクターはそうなる運命なのか
(phase3)
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「ねーねー、聞ーていー?」
「どした琉生」
「バイト先の子がねー、中学とか高校の時のー、知ってはいるけどそんな仲良くない子から連絡が来たんだってー。ごはんいこーみたいな感じでー。断るのもちょっと気まずいって言ってるんだけどー、それってー、そんなに気まずいことなのかなー?」
MBCCには現段階で5人の1年生が入った。ちむりーの後に入ってきた琉生は、スチームパンク的な世界観をファッションで表現しているのが特徴で、髪も真っ白いし最初はお隣の美術部と間違えてきたんじゃないかと思った。ただ、興味があってきたのはMBCCだったようで、アナウンサーとして落ち着いた。
今の2年生ほどじゃないにせよ1年生たちも仲がいいし、練習も各々真面目に取り組んでいるのでそれを見守る3年生としてはホッとしているという感じ。もしかしたらこれから問題が起こってくるかもしれないけど、その頃には人となりもちょっとはわかっているだろうから話し合いには持ち込めるかもしれない。
サークル室にやってくるなり琉生が投げかけた疑問については、大学1年生あるある……とまではいかないにしても多少はある話だなあとは思う。尤も、俺の場合は紅社から遠く離れた向島への進学だったから、実際に会うところには至らない。
「ねー、ちむちむはどー思うー?」
「そうね~。微妙な距離感の知り合いなんだったら~、他に誰か来るのかを聞くといいかもしれないわね~。2人きりで会うのは、不安よね~」
「なるほどー。他ー。周ー」
「好きにすれば。誘いを断った程度で関係が悪くなる微妙な知り合いならその後も続かないよ」
「あー、また野球見ながらテキトー言ったー」
「逆にコイツの場合は野球優先でダチの誘いを断るとか日常茶飯事だったかもしんねーぞ。経験に基づく言葉、的な」
「あー、わかるー。ぽいー」
現に周のスマホにはうっすらと野球の気配が見て取れるので、多分野球関係の調べ物をしながら適当に返事をしてるんだとは思う。だけどその適当な返事が今回は案外間違ってもなさそうなので、スマホを見ながら会話するスキルが上がってるのかな、とも見て取れる。
そもそも仲のいい人であれば誘いを断るのも気まずくならないと言うか、会いたい人であれば他に空いている日を確認するくらいのことはすると思うんだよね。この日は無理だけど、次の土曜日なら空いてるよ、みたいに。微妙な関係だからこそ難しい。
「そもそも中高で微妙な関係だった相手を急にメシとかに誘うのって、宗教勧誘や押し売り、犯罪の小間使いにされる王道パターンだからな。怪しい連絡を信じる奴がバカなんだ」
「宗教かー。アナタハー、神ヲー、シンジマスカー?」
「None of your business~」
「ちむりー、地味にキツい言い方したね」
「あら~、高木先輩、分かりました~?」
「一応1年の時の英語は上級クラスだったんだよ」
「そうだったんですね~」
「中はー、もし久々に会った人にそーゆーコトされたらー、どーするー?」
「そうだなァ……口で俺に勝てんのって、逆に向こうが泣くまで攻め立てるかな」
「うわー、めんどくさー」
「めんどくさ」
「周! テメー今テキトーに琉生にノっただろ!」
中だったら本当にやりかねないなあとは俺も思う。そもそもがそういう怪しい連絡を無視するタイプだろうけど、いざとなったら暇潰し半分にそういうことをしそうだなというイメージはある。イメージはね。詐欺師を自称する占い師見習いだもんなあ。
「つか、前にそーゆーコトがあったんだよな実際」
「そうなのー?」
「ああ。高校ン時だったかな。何か1回2回話した程度の奴からメシ行こうぜって誘われて、ヒマだったしついてったんだよ。そしたら行った先に見るからに怪しい奴がいて、俺のことを聞くんだよ。誕生日だの生誕地だの。あ、これはロクでもない占星術もどきのヤツだなと思って全部ウソ言ってやったね」
「それで、どうなったの~?」
「星の動きを見ていると、このままだと3ヶ月後に運勢が最悪になるから、開運のお守りを買え、そうすれば運勢は逆回転してあなたには至上の幸福が訪れるでしょう。なんて言いやがるからぜーんぶ論破してやったよ。このイカサマ占い師がーっつって。そもそもマジモンの占い師が客の同意もなくいきなり占うかっつーの。商売道具の扱い方がなってねー」
中の用心深さはそういった経験に基づく物だったらしい。そして中はそういう微妙な関係のヤツに個人情報を微塵たりとも渡す気はないねと吐き捨てる。誕生日や生まれた場所だって十分な情報なんだと。それにちむりーと琉生の女子2人はなるほどーと納得した様子。
「高木先輩は~、宗教に勧誘されたら、どうしますか~?」
「うーん、そうだなあ……。もう信仰している宗派がありますからって言うかな」
「高木先輩って特定の宗教に入信してるんすか」
「あ、いや、ちゃんとしたのじゃなくて、MBCCの中で有名なアメリカの宗教っていうのがあってね」
「アメリカ。またグローバルな」
「この間卒業していった高崎先輩って人が言ってたんだけど、俺が信じるのはカリカリのベーコンを崇める宗教だーって」
「あー、何か、空飛ぶナントカ、みたいな宗教もあったっすよね向こうの方って」
「強いて言えばカリカリのベーコンを……あ、いや、カルボナーラに入ってるのはプリプリの方が美味しいかもしれない。でもなー、トマトソース系統の時はカリカリの方が好きだなー」
「ブレてんなァー。高木先輩はベーコン教徒ではないと」
「ベーコン教よりは温玉教とかがあってくれればとは思うね」
「温玉教の教義はどうしましょ」
「うーん、そうだね。賞味期限の切れた卵は加熱して食べる。すぐには捨てない」
「温玉じゃないですね~」
「半生ですねー」
「あとそれ捨てんのってエージ先輩っしょ?」
卵の賞味期限が切れたとしても日付の設定の仕方が厳しめだから少しの間なら大丈夫だし、生食しなきゃ大丈夫なんだってエイジにはいつも言ってるのに。1日でも期限が切れるとすぐに捨てちゃうんだもんなあ。死にはしないしお腹だってそうそう痛くならないのに。
「とりあえずー、バイト先の子には、2人で会わないっていうのとー、断ることが気まずい相手なら別に会わなくていいんじゃーんって言っとくねー」
「周の話が拾われただと!?」
「中の話より現実的だったしー」
「それはそうね~」
「ちむちむ!?」
end.
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MBCCの1年生たちにも少しずつ肉付けをしているのだけど、1番に来ているはずの凛斗が弱いにも弱いにも
MMPでもジャックがやや弱めだし1番目のキャラクターはそうなる運命なのか
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