2024
■進級後初繁忙期を越えて
++++
「川北、来たぞ」
「あっ、林原さんお疲れさまですー。すみません、お忙しい中わざわざ来てもらって」
「多少であれば構わん」
情報センターは履修登録や2年生以上の履修変更、それから1年生の履修変更が終わり、仕事が落ち着きつつあった。文系と理系で履修登録の会場が分かれたこともあって、これまでより明らかに繁忙期の人の波は穏やかだった。
とは言えバイトリーダーとして初めて迎える繁忙期だから、俺は個人的にちょっとバタバタしてた気がする。俺が知ってるバイトリーダーは2代続けていい意味での威厳みたいな物が凄く強かったし。俺にはどうしたって身につかない物だけど、イメージがね。
で、そんな少し落ち着いてきたタイミングの、夜の時間に情報センターに来てもらえますかーって林原さんに連絡を入れてたんだ。センター業務は閉めの仕事が終わって、後は鍵を閉めて帰るだけにはしておいた。あとは本題に入るだけだ。
「センター的には履修登録が落ち着き繁忙期を抜けかけているという頃合いか」
「そうですねー」
「バイトリーダーとして迎えた初の繁忙期はどうだ」
「もーうバタバタしてますよー。履修登録とは関係ないんですけど、案の定Adobeのソフトで遊ぶ人も出てきてますし、使い方を聞かれることも出てきてますね」
「そうか。どう対応している」
「遊ぶ人に関しては動画を見るのと同じで繁忙期でなければ黙認って感じですけど、ソフトの使い方に関してはわかった上で触ってくださいっていう方針になりました。今はたまたまフォトショップやイラストレーターを扱えるメンバーがまあまあ揃ってますけど、これからスタッフになってくれる人がみんな使い方を理解しているとも限りませんし、下手に口や手を出して何かあっても責任は取れないので」
「妥当な対応だろう」
「林原さんにそう言ってもらえて安心しましたー」
情報センターに関してはこのタイミングでいろいろな変化があったんだよね。履修登録の会場が文系の学部と理系の学部で分かれたっていうのもそうなんだけど、センターのマシンに入ってるソフトも結構増えて。それでどうなるかっていうのはまだまだこれからなんだけど。
一応、動画視聴や学習に直接関係のない作業に関しては、そのように見受けられ次第混雑時には退室を願うことがありますと壁に張り紙をすることに。その点は教務課の伊指さんという職員さんと話し合って決定したんだけど、那須田さんは相変わらずお飾り所長です。
「ほう、那須田さん以外の職員が動いてくれているのか」
「そうなんですよー。見た目は結構若い感じの人なんですけど、だからちょっと相談しやすいっていうのはありますねー」
「良かったな。適切に現場の声を汲み上げ、対応する職員はいるに越したことはない」
「本当ですよ。……って、そうじゃなかった。本題です。林原さんにお土産を渡そうと思って」
「土産」
「星港駅の百貨店で北辰展がやってたみたいなんで、ふらっと行ってみたんですよ。そしたら林原さんがよく春山さんにお願いしてた屯屯おかきを見つけたので、よかったらどうぞー。あっ、もちろんホタテ味を買ってきました」
「ほう。では、ありがたくいただこう。しかし、あれが催事に並んでいたのだな」
「はい。林原さんはあんまり見たことないって言ってましたけど、普通にありました」
「そうか」
「他にも乾き物のお土産のコーナーにはいろんなお菓子が並んでましたけど、あそこに並んでた物は大体春山さんと有馬くんが買ってきてくれたことがありましたし、何なら種類数的には春山さんの方が強いですね」
「伊達に妖怪菓子配りではないぞあの社畜は」
有馬くんは帰省から戻ってくるときにはこちらではあまり見ない北辰のお土産を選んで買ってきてくれるんだけど、センターには妖怪お菓子配りと呼ばれた春山さんがいたので、俺は大体「これ美味しいよねー」という反応になってしまって有馬くんを困惑させてしまっている。
でもアオや真桜は有馬くんのお土産に珍しーい、見たことなーいという反応をしているので、やっぱり俺が下手に知り過ぎてしまったんだなあと思って。カナコさんは研修生時代に春山さんと在籍期間がカブっているので、妖怪さんの施しもちょっと受けたことがあったりする。
「なので4月お疲れさまでしたーっていうセンター用の差し入れとしては定番のお菓子を用意してーっていう感じです」
「今となっては記名せずとも勝手に食われることもないだろうからな」
「そうですねー。大体みんなできちんと分け合う空気ですねー」
「センターに秩序という物が生まれただと」
「それで、ちょっと気付いちゃったんです。春山さんがバラまいてくれたんで北辰のお土産っていろいろ知ってるんですけど、屯屯おかきホタテ味はすごく耳馴染みがあるのに自分で食べたことがなかったんですよ。大体林原さん専用お土産って感じだったじゃないですか」
「確かに、屯屯おかきやバターサンドなど、個人用土産の代名詞と化している物は分け合って食うという概念があまりなかったな」
「なので自分用に買って食べたんですけど、あれは美味しいですね! 本当に止まんないんですー」
「そうだろう」
物産展より強い春山さんのお土産攻勢だったけど、実際空港に行くとどうなってるんだろうっていうのは怖い物見たさでちょっと興味深い。お土産に限らず建築っていう点でもいろいろ見て回りたいし、本当にいつか行くとなるとスケジュールと荷物の管理が難しそうだ。
「窓よーし、電気よーし、マシンよし。鍵を閉めて、っと。さ、お疲れさまでしたー。すみません、何だかんだ話が長くなっちゃいました」
「構わん。川北、夕飯は食ったのか」
「これからですー」
「なら一緒に行くか。土産の礼もある。3年の新バイトリーダー初繁忙期の働きを労ってやる」
「えっ、いいんですかー!?」
「気が変わらんうちに行くぞ。さっさと鍵を返すのだな」
end.
++++
北海道展でアレを見つけたのでワーッとなって書いた。反省はしていない。
(phase3)
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「川北、来たぞ」
「あっ、林原さんお疲れさまですー。すみません、お忙しい中わざわざ来てもらって」
「多少であれば構わん」
情報センターは履修登録や2年生以上の履修変更、それから1年生の履修変更が終わり、仕事が落ち着きつつあった。文系と理系で履修登録の会場が分かれたこともあって、これまでより明らかに繁忙期の人の波は穏やかだった。
とは言えバイトリーダーとして初めて迎える繁忙期だから、俺は個人的にちょっとバタバタしてた気がする。俺が知ってるバイトリーダーは2代続けていい意味での威厳みたいな物が凄く強かったし。俺にはどうしたって身につかない物だけど、イメージがね。
で、そんな少し落ち着いてきたタイミングの、夜の時間に情報センターに来てもらえますかーって林原さんに連絡を入れてたんだ。センター業務は閉めの仕事が終わって、後は鍵を閉めて帰るだけにはしておいた。あとは本題に入るだけだ。
「センター的には履修登録が落ち着き繁忙期を抜けかけているという頃合いか」
「そうですねー」
「バイトリーダーとして迎えた初の繁忙期はどうだ」
「もーうバタバタしてますよー。履修登録とは関係ないんですけど、案の定Adobeのソフトで遊ぶ人も出てきてますし、使い方を聞かれることも出てきてますね」
「そうか。どう対応している」
「遊ぶ人に関しては動画を見るのと同じで繁忙期でなければ黙認って感じですけど、ソフトの使い方に関してはわかった上で触ってくださいっていう方針になりました。今はたまたまフォトショップやイラストレーターを扱えるメンバーがまあまあ揃ってますけど、これからスタッフになってくれる人がみんな使い方を理解しているとも限りませんし、下手に口や手を出して何かあっても責任は取れないので」
「妥当な対応だろう」
「林原さんにそう言ってもらえて安心しましたー」
情報センターに関してはこのタイミングでいろいろな変化があったんだよね。履修登録の会場が文系の学部と理系の学部で分かれたっていうのもそうなんだけど、センターのマシンに入ってるソフトも結構増えて。それでどうなるかっていうのはまだまだこれからなんだけど。
一応、動画視聴や学習に直接関係のない作業に関しては、そのように見受けられ次第混雑時には退室を願うことがありますと壁に張り紙をすることに。その点は教務課の伊指さんという職員さんと話し合って決定したんだけど、那須田さんは相変わらずお飾り所長です。
「ほう、那須田さん以外の職員が動いてくれているのか」
「そうなんですよー。見た目は結構若い感じの人なんですけど、だからちょっと相談しやすいっていうのはありますねー」
「良かったな。適切に現場の声を汲み上げ、対応する職員はいるに越したことはない」
「本当ですよ。……って、そうじゃなかった。本題です。林原さんにお土産を渡そうと思って」
「土産」
「星港駅の百貨店で北辰展がやってたみたいなんで、ふらっと行ってみたんですよ。そしたら林原さんがよく春山さんにお願いしてた屯屯おかきを見つけたので、よかったらどうぞー。あっ、もちろんホタテ味を買ってきました」
「ほう。では、ありがたくいただこう。しかし、あれが催事に並んでいたのだな」
「はい。林原さんはあんまり見たことないって言ってましたけど、普通にありました」
「そうか」
「他にも乾き物のお土産のコーナーにはいろんなお菓子が並んでましたけど、あそこに並んでた物は大体春山さんと有馬くんが買ってきてくれたことがありましたし、何なら種類数的には春山さんの方が強いですね」
「伊達に妖怪菓子配りではないぞあの社畜は」
有馬くんは帰省から戻ってくるときにはこちらではあまり見ない北辰のお土産を選んで買ってきてくれるんだけど、センターには妖怪お菓子配りと呼ばれた春山さんがいたので、俺は大体「これ美味しいよねー」という反応になってしまって有馬くんを困惑させてしまっている。
でもアオや真桜は有馬くんのお土産に珍しーい、見たことなーいという反応をしているので、やっぱり俺が下手に知り過ぎてしまったんだなあと思って。カナコさんは研修生時代に春山さんと在籍期間がカブっているので、妖怪さんの施しもちょっと受けたことがあったりする。
「なので4月お疲れさまでしたーっていうセンター用の差し入れとしては定番のお菓子を用意してーっていう感じです」
「今となっては記名せずとも勝手に食われることもないだろうからな」
「そうですねー。大体みんなできちんと分け合う空気ですねー」
「センターに秩序という物が生まれただと」
「それで、ちょっと気付いちゃったんです。春山さんがバラまいてくれたんで北辰のお土産っていろいろ知ってるんですけど、屯屯おかきホタテ味はすごく耳馴染みがあるのに自分で食べたことがなかったんですよ。大体林原さん専用お土産って感じだったじゃないですか」
「確かに、屯屯おかきやバターサンドなど、個人用土産の代名詞と化している物は分け合って食うという概念があまりなかったな」
「なので自分用に買って食べたんですけど、あれは美味しいですね! 本当に止まんないんですー」
「そうだろう」
物産展より強い春山さんのお土産攻勢だったけど、実際空港に行くとどうなってるんだろうっていうのは怖い物見たさでちょっと興味深い。お土産に限らず建築っていう点でもいろいろ見て回りたいし、本当にいつか行くとなるとスケジュールと荷物の管理が難しそうだ。
「窓よーし、電気よーし、マシンよし。鍵を閉めて、っと。さ、お疲れさまでしたー。すみません、何だかんだ話が長くなっちゃいました」
「構わん。川北、夕飯は食ったのか」
「これからですー」
「なら一緒に行くか。土産の礼もある。3年の新バイトリーダー初繁忙期の働きを労ってやる」
「えっ、いいんですかー!?」
「気が変わらんうちに行くぞ。さっさと鍵を返すのだな」
end.
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北海道展でアレを見つけたのでワーッとなって書いた。反省はしていない。
(phase3)
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