2023(02)
■内容のある会議
++++
「――というワケで、来年の5月にあるファンタジックフェスタでFMにしうみで放送中の『にしうみ★よる9時キャンパス』と、星ヶ丘大学放送部とのコラボステージをやることに決定しました」
「インターフェイスでも例年通りラジオでのブース出展はやるつもりだし、ステージとラジオで重複するメンバーもいるとは思うけどその辺りは調整しつつだね」
俺はインターフェイスでやってるDJブースは知ってるけど、その裏で星ヶ丘がステージを出してたというのはあんまよく知らなかった。よく知らないなりにそーゆー感じの活動があんのな、と話を耳に留める。まァ言って俺はラジオ担当だろう。いや、気付いちまった。
「ちょい聞いていーすか?」
「はい、奏多」
「インターフェイスのDJブースとそっちのステージが並行するんなら、サキちーはそっちに行ってるっつー解釈で、インターフェイス側の機材の責任は俺が持つことになるって感じ?」
「ああ、そうだね。俺はFMにしうみのスタッフでもあるから。奏多に頼むことになるだろうね」
「わかった、そのつもりでいる」
「もちろん共倒れにならないようにしっかりと打ち合わせは重ねてくし、これからしばらくは俺も定例会に顔は出させてもらうんでお願いしまーす」
定例会には星ヶ丘の代表として彩人が出ているけど、星ヶ丘大学放送部としてもうちょっと強い立場で物を発せて全体を把握出来ている部長の深青っつーのがこの話を詰めに来るそうだ。腰まであるど迫力のポニーテールが目を引く女装の男だが、まあやり手だと。
そも、どうしてコミュニティラジオ局の番組がステージをやるのかという話で、単刀直入に言えば知名度アップのための宣伝だ。まだまだ始まったばかりの番組だから、手段は選ばずにしばらくは打てる手を打っていくらしい。ジュンがマラソンをしているのもそういうことだ。
一応はインターフェイスでもらった番組の枠だし、しばらくは参加メンバーもインターフェイスの中から募るつもりではあるが、ゆくゆくはインターフェイス以外からも参加メンバーが出ても面白いだろうという話にはなっているそうだ。じゃあ参加したくなる番組にしなければ、と。
「でもぶっちゃけインターフェイスとしてはタイムスケジュールの調整に気を遣うくらいで、他は星ヶ丘と9時キャン側で詰めてもらえるっつー感じでいいのか?」
「それだけで済むようにこっちでもやっていくつもりだね。一応局の上の人とも話は詰めて行くし。報告は適宜入れるから」
「わたくしたちも助力いたしますわよ。この合同ステージの成功はインターフェイスにも利するとわたくしは信じておりますから」
「つか、ステージにかかる予算とかはどこ持ちになんの?」
「FMにしうみのコーナーは局でも少し持ってもらえることになってます。まつりが「こんな大道具を作りたい!」とは言ってるんだけど、その辺のことは誰もノウハウがないからどうしようねって」
「9時キャンメンバーでステージ経験があるのがまつりだけだから、まつりの言うことが正しいって解釈されがちなんだよなー。俺はカメラなら扱えるけど、大道具知識はないし」
「まあ、その辺をウチでカバーしたり、定例会で有志を募ったりしたらいいんじゃん? なあ深青!」
「そうだな。当日は忙しくても準備だけなら出来る部員もいるだろうし。こっちでも募ってみる」
「あざっす!」
具体的に企画があると話し合いにも中身があっていいなと思う。ロクでもない話で何が進むでも戻るでもない会議が一番無駄だからな。
ファンタジックフェスタに関する定例会の方針としては、議長のエマがラジオとステージの全体を見つつ、彩人がステージ担当、サキちーはいつも通りFMにしうみとの渉外担当。俺とすがやんでDJブースをまとめていこうということになった。
「ああ、そういやファンフェスで思い出した。DJブースの装飾って言うか、目隠し用の横断幕って毎年紙で作ってるじゃん」
「そうですわね」
「確か去年辺り、そろそろちゃんとした布製の横断幕を1枚作ったらどうか的な話になってなかったっけ?」
「すがやんさん、議事録を確認していただけます? ちょうど手元にお持ちですし」
「ちょっと待ってなー。えーと、去年のファンフェス、っと。ああ、確かにそんな話になってたわ。誰がデザインするんだ問題とかで後回しになってるね」
「そろそろ本腰を入れて考えてもいいのかもしれませんわね。毎年どなたが作るのか揉めたり、作業時間の蓄積を考えますと、タイムパフォーマンス的にも節約になりそうですわ」
「だったらジュンに描いてもらおうぜ! 今のインターフェイスで絵描けんのっつったらジュンじゃね!?」
「雨竜さんはジュンさんを推していますけれど、他に推薦はございます?」
「俺もジュンがすごくいいと思うよ!」
「千颯さんも賛成と。推薦理由などは」
「あっエマ、千颯に絵のことを語らせるとすっ……ごい! 長くなるらしいから理由は端折った方がいいと思う」
「そうですの。ごめんあそばせ、賛成ということで。向島の皆様は」
「まー俺らはデザインさせるならジュン一択っつーアタマになっちまってるから、他にいい奴がいるのかをまずは聞きたい」
「奏多に同じ」
「すがやんさんは」
「俺も向島勢と似た考え方かなー」
「半分MMPだしな!」
「まだそれ言ってるの」
「サキがこえー!」
「1年生の皆様も推薦はございます? 自薦他薦は問いませんのよ」
……と言われても、定例会じゃ下級生がガツガツ前に出ていく状況ってあんま無いらしいんだよな、特殊な役割でも持ってない限り。それでも先入観なく話を広く振っていくっていうのがエマに期待された議長の役割らしいんだが。
「ツッツ、お前何か言いたげだな? 何か考えてんのか」
「えっ、あっ、すいません。な、何でしたっけ……」
「はえー、珍しいなー、ツッツが上の空になってるなんて。何考えてたんだー?」
「す、ステージの大道具の制作って、どんな感じなのかなって、考えてました……楽しそうだなって……す、すみません……」
「ツッツ、それならお前9時キャン連中の大道具作りに行け」
「ええっ…!? 奏多先輩…!?」
「そーゆーコトだからサキちー、こき使ってやってくれ。ウチの収納班の大エースだ、戦力になるぜ」
「一応聞くけど、人見知り問題はジュンがいるから大丈夫だね」
「あーもー問題ない問題ない! 何ならジュン相手には賭けふっかけて高いオシャレなコーヒー奢らせるくらいには強気も強気よ!」
「そしたら奏多、ウチからツッツに大道具制作の基礎を教えたらいいような感じ?」
「あー星ヶ丘さんまでわざわざご丁寧に! よろしく頼んます~。木工関係は飲み込みいいんで~」
「きぬが「つっつんはすごいんだよ!」って言ってんの聞いてたし、ウチにもリターンあるかも」
「うう……」
「ツッツ」
「はい」
「やる、よな?」
「や、やります……。やらせて下さい!」
「はいじゃあそういうことで! 横断幕の話に戻ってもらって~」
「……久々に見たな、奏多の荒療治」
今の「やらせて下さい!」はインターフェイスの現場で聞いたツッツの一番デカい声なんじゃないのか。ちょーっとずつではあるけど自分の意思みたいなモンが前に出てきてるな。いい傾向です。
「今日は話がいろいろと進んでいますわね。すがやんさん、現段階での議事はまとまっています?」
「大丈夫。何とか食らいついてる」
「では横断幕の話に戻りましょう。デザインをお願いする候補にジュンさんが上がっていますわね」
end.
++++
サキ語「まだそれ言ってるの」:意)「すがやんはウチのなんだけど」
すがやんが千颯の絵の話が長いのを知っているのはくるみ経由
ジュンがインターフェイスの仕事云々は別の話と時系列ムチャクチャになっちゃった
(phase3)
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「――というワケで、来年の5月にあるファンタジックフェスタでFMにしうみで放送中の『にしうみ★よる9時キャンパス』と、星ヶ丘大学放送部とのコラボステージをやることに決定しました」
「インターフェイスでも例年通りラジオでのブース出展はやるつもりだし、ステージとラジオで重複するメンバーもいるとは思うけどその辺りは調整しつつだね」
俺はインターフェイスでやってるDJブースは知ってるけど、その裏で星ヶ丘がステージを出してたというのはあんまよく知らなかった。よく知らないなりにそーゆー感じの活動があんのな、と話を耳に留める。まァ言って俺はラジオ担当だろう。いや、気付いちまった。
「ちょい聞いていーすか?」
「はい、奏多」
「インターフェイスのDJブースとそっちのステージが並行するんなら、サキちーはそっちに行ってるっつー解釈で、インターフェイス側の機材の責任は俺が持つことになるって感じ?」
「ああ、そうだね。俺はFMにしうみのスタッフでもあるから。奏多に頼むことになるだろうね」
「わかった、そのつもりでいる」
「もちろん共倒れにならないようにしっかりと打ち合わせは重ねてくし、これからしばらくは俺も定例会に顔は出させてもらうんでお願いしまーす」
定例会には星ヶ丘の代表として彩人が出ているけど、星ヶ丘大学放送部としてもうちょっと強い立場で物を発せて全体を把握出来ている部長の深青っつーのがこの話を詰めに来るそうだ。腰まであるど迫力のポニーテールが目を引く女装の男だが、まあやり手だと。
そも、どうしてコミュニティラジオ局の番組がステージをやるのかという話で、単刀直入に言えば知名度アップのための宣伝だ。まだまだ始まったばかりの番組だから、手段は選ばずにしばらくは打てる手を打っていくらしい。ジュンがマラソンをしているのもそういうことだ。
一応はインターフェイスでもらった番組の枠だし、しばらくは参加メンバーもインターフェイスの中から募るつもりではあるが、ゆくゆくはインターフェイス以外からも参加メンバーが出ても面白いだろうという話にはなっているそうだ。じゃあ参加したくなる番組にしなければ、と。
「でもぶっちゃけインターフェイスとしてはタイムスケジュールの調整に気を遣うくらいで、他は星ヶ丘と9時キャン側で詰めてもらえるっつー感じでいいのか?」
「それだけで済むようにこっちでもやっていくつもりだね。一応局の上の人とも話は詰めて行くし。報告は適宜入れるから」
「わたくしたちも助力いたしますわよ。この合同ステージの成功はインターフェイスにも利するとわたくしは信じておりますから」
「つか、ステージにかかる予算とかはどこ持ちになんの?」
「FMにしうみのコーナーは局でも少し持ってもらえることになってます。まつりが「こんな大道具を作りたい!」とは言ってるんだけど、その辺のことは誰もノウハウがないからどうしようねって」
「9時キャンメンバーでステージ経験があるのがまつりだけだから、まつりの言うことが正しいって解釈されがちなんだよなー。俺はカメラなら扱えるけど、大道具知識はないし」
「まあ、その辺をウチでカバーしたり、定例会で有志を募ったりしたらいいんじゃん? なあ深青!」
「そうだな。当日は忙しくても準備だけなら出来る部員もいるだろうし。こっちでも募ってみる」
「あざっす!」
具体的に企画があると話し合いにも中身があっていいなと思う。ロクでもない話で何が進むでも戻るでもない会議が一番無駄だからな。
ファンタジックフェスタに関する定例会の方針としては、議長のエマがラジオとステージの全体を見つつ、彩人がステージ担当、サキちーはいつも通りFMにしうみとの渉外担当。俺とすがやんでDJブースをまとめていこうということになった。
「ああ、そういやファンフェスで思い出した。DJブースの装飾って言うか、目隠し用の横断幕って毎年紙で作ってるじゃん」
「そうですわね」
「確か去年辺り、そろそろちゃんとした布製の横断幕を1枚作ったらどうか的な話になってなかったっけ?」
「すがやんさん、議事録を確認していただけます? ちょうど手元にお持ちですし」
「ちょっと待ってなー。えーと、去年のファンフェス、っと。ああ、確かにそんな話になってたわ。誰がデザインするんだ問題とかで後回しになってるね」
「そろそろ本腰を入れて考えてもいいのかもしれませんわね。毎年どなたが作るのか揉めたり、作業時間の蓄積を考えますと、タイムパフォーマンス的にも節約になりそうですわ」
「だったらジュンに描いてもらおうぜ! 今のインターフェイスで絵描けんのっつったらジュンじゃね!?」
「雨竜さんはジュンさんを推していますけれど、他に推薦はございます?」
「俺もジュンがすごくいいと思うよ!」
「千颯さんも賛成と。推薦理由などは」
「あっエマ、千颯に絵のことを語らせるとすっ……ごい! 長くなるらしいから理由は端折った方がいいと思う」
「そうですの。ごめんあそばせ、賛成ということで。向島の皆様は」
「まー俺らはデザインさせるならジュン一択っつーアタマになっちまってるから、他にいい奴がいるのかをまずは聞きたい」
「奏多に同じ」
「すがやんさんは」
「俺も向島勢と似た考え方かなー」
「半分MMPだしな!」
「まだそれ言ってるの」
「サキがこえー!」
「1年生の皆様も推薦はございます? 自薦他薦は問いませんのよ」
……と言われても、定例会じゃ下級生がガツガツ前に出ていく状況ってあんま無いらしいんだよな、特殊な役割でも持ってない限り。それでも先入観なく話を広く振っていくっていうのがエマに期待された議長の役割らしいんだが。
「ツッツ、お前何か言いたげだな? 何か考えてんのか」
「えっ、あっ、すいません。な、何でしたっけ……」
「はえー、珍しいなー、ツッツが上の空になってるなんて。何考えてたんだー?」
「す、ステージの大道具の制作って、どんな感じなのかなって、考えてました……楽しそうだなって……す、すみません……」
「ツッツ、それならお前9時キャン連中の大道具作りに行け」
「ええっ…!? 奏多先輩…!?」
「そーゆーコトだからサキちー、こき使ってやってくれ。ウチの収納班の大エースだ、戦力になるぜ」
「一応聞くけど、人見知り問題はジュンがいるから大丈夫だね」
「あーもー問題ない問題ない! 何ならジュン相手には賭けふっかけて高いオシャレなコーヒー奢らせるくらいには強気も強気よ!」
「そしたら奏多、ウチからツッツに大道具制作の基礎を教えたらいいような感じ?」
「あー星ヶ丘さんまでわざわざご丁寧に! よろしく頼んます~。木工関係は飲み込みいいんで~」
「きぬが「つっつんはすごいんだよ!」って言ってんの聞いてたし、ウチにもリターンあるかも」
「うう……」
「ツッツ」
「はい」
「やる、よな?」
「や、やります……。やらせて下さい!」
「はいじゃあそういうことで! 横断幕の話に戻ってもらって~」
「……久々に見たな、奏多の荒療治」
今の「やらせて下さい!」はインターフェイスの現場で聞いたツッツの一番デカい声なんじゃないのか。ちょーっとずつではあるけど自分の意思みたいなモンが前に出てきてるな。いい傾向です。
「今日は話がいろいろと進んでいますわね。すがやんさん、現段階での議事はまとまっています?」
「大丈夫。何とか食らいついてる」
「では横断幕の話に戻りましょう。デザインをお願いする候補にジュンさんが上がっていますわね」
end.
++++
サキ語「まだそれ言ってるの」:意)「すがやんはウチのなんだけど」
すがやんが千颯の絵の話が長いのを知っているのはくるみ経由
ジュンがインターフェイスの仕事云々は別の話と時系列ムチャクチャになっちゃった
(phase3)
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