2023(02)
■かわいいいきものを吸う
++++
「はー、ごちそうさまでした。カズのお弁当は今日も安定のおいしさですね」
「間違いない」
「花粉が今以上酷くなったらおかずの内容似通っちゃうかもしれないけど」
「いえいえ、俺は作ってもらってる立場だし、毎日同じモン食うのも全然平気なんでお気遣いなく」
買い弁や外食メインのカオちゃんにとってはカズの作るお弁当がすごく貴重な機会になってるみたい。買い弁でも外食でも普通に美味しいしちゃんと食べてるんだからそれでいいんだろうけど、顔の見える人の作る家庭料理っていうのはまた違うんだって。うちはカズの作るご飯がメインだから外食に特別感を覚えるかな。
会社ではカオちゃんと一緒に同じおかずが詰められたお弁当を一緒に広げてる。最初の頃はいろんな人に不思議な目で見られたし、何ならカオちゃんがうちの旦那さんだと思われることもあったっけ。その度にかくしかかくうまで……と説明をすればストンと納得されてしまうカオちゃんの仕事と生活の仕方でした。今じゃすっかりお馴染みです。
「あ、そうだ。今日は伊東さんと一緒に食べようと思って持って来たヤツがあるんだよ」
「ナニナニ? 純粋に美味しい物? ネタ系?」
「美味いモンだとは思う。俺も貰った物だし今初めて開けるから」
「え、いいんですかせっかくの戴きものを」
「結構いい箱に入ってんだよこれが」
そう言ってカオちゃんが出してきたのは本当にいい箱なんだもんね。これはそうそうネタではなさそう。って言うかカオちゃんの人脈ってどんな風に伸びて広がってるかが本当に未知数だから、いい意味でも悪い意味でも何が出て来るのかが本当にわからない。まあ、それが面白くもあるんだけどね。
「うわー、すっごいいい匂い!」
「チョコだな。説明書きが入ってる。キャラメル風味のヤツが多い感じか。あ、伊東さん好きなのつまんでもらって」
「いえいえいえ! あの、このチョコレート、実は知ってるんですよ……」
「えっ、そうなの?」
「星港じゃメチャクチャ有名なお店で、バレンタインの催事限定ショコラボックスが出るっていう話で……基本的に開場即売り切れ、並んでも買える保証がないトンデモボックスなんですよ」
「マジで!?」
「って言うかバレンタインギフトでしょ? そんなのくれるってガチにも程がありますよカオちゃん。お相手の人との今後の展開と言うかフラグめいたものなど……ちょっと本気で思い当たる節を整理した方がいいかもよ。恋愛相談なら乗りますし」
ちなみにうちがこのボックスの情報を知ってるのはチョコレート超ガチ勢の片桐さんのSNSで見たから。あの人は星港のチョコレートフェスタをコミフェと同列かそれ以上に捉えてるから、どの店のどの箱は絶対に買うんだって催事が始まる前からチェックしてましたしね。もちろん戦果もアップしてたんだけど、何万円使ったんだろうって。
「あー、平気平気。恋愛には進展しないから」
「何で言い切れるんです!?」
「これくれたの高崎だし」
「はー!?」
「恋愛の云々じゃなくて単純に買ったからやるよっていうアレだよ」
「それはそれでえーですよ。買ったからやるよってブツじゃないんですよ……」
「俺も今伊東さんの話聞いて、アイツとんでもないモンくれたんだなって震えてる。俺のあげたの普通に並ばなくても買えるヤツだしちょっと申し訳なくなってきた」
「ん? カオちゃん今何て? カオちゃんが? 高崎クンに? バレンタインギフトを?」
「バレンタインギフトって言うかさ、普段からやれどこのケーキが美味いだのどこの焼き菓子がどうのって話をしてると、この時期だけ食える美味いモンを共有したくなったっつーかさ。他意はないんだよ。美味いから食えよってだけの差し入れ的な」
は~…! 事実は小説より奇なり! これだからこの人と話すのはやめられないんですわ! 1回話すと1冊本が出るレベルのネタが出るわ出るわ。社会人になったら仕事に追われて同人趣味と向き合う時間が取れないかと思ったらネタが豊富過ぎて逆にペースが上がる上がる。片桐さんにも「お前就職したんじゃなかったのか」って執筆ペースを呆れられましたとも!
って言うか今の話をまとめるとこの時期にスイーツを交換し合ってたってことでしょ? この時期でこうならホワイトデーも絶対にやるじゃん! そもそも普段からどんな話をしてんのよ。かわいいですかよ! KAWAIIいきもの! しかも高崎クンなんてこないだカオちゃんケガしてた時も好きな物と需要のある物だけ詰めたお見舞い袋提げて来たって話だしああもう美味い!
「ちなみにカオちゃんは高崎クンに何をあげたんですか?」
「お茶チョコだよ。地元のお茶屋が作ってるヤツで、チョコからお茶の風味がぶわ~って来る。抹茶とか濃抹茶が特に美味いけど、ほうじ茶も風味が強かったかな」
「さすが山羽人」
「お茶は山羽人の心だからな。そのお茶チョコと、ティーバッグがセットになってるヤツ。俺の高校の同級生とアイツが大学のゼミで一緒だったらしくて、よく教授主催のお茶会でもそこの店のお茶飲んでたそうだから」
「あ~、確かに高崎クンよく安部ちゃんとお茶会やってたかも! 問題児だけが参加資格のあるヤツ!」
「何だそれ。とりあえず1個食ってみよう。ん。……うまっ。あ、伊東さんもどうぞ」
「すみません、それではお言葉に甘えて……いただきます」
おいしー!
「語彙が無くなる美味さってこのことだよな」
「それ!」
「今度高崎に丁重にお礼しとこう」
「うちは今日の話を創作物に落とし込みます」
「楽しみにしてます。雨宮先生見てるとホントに刺激を受けてばっかりなんだよ。あれだけ仕事もしてて家のこともしてるのに執筆速度が尋常じゃない上にクオリティも高いだろ。ホントいい意味でおかしい」
「カオちゃん、今日のおまいうです」
end.
++++
チョコレートお化けの片桐さん。フェーズ3になってからは姿を見ない。
お茶チョコは情報センターの概念みたいなところがあるけどPさん山羽人だからセーフ。
(phase3)
.
++++
「はー、ごちそうさまでした。カズのお弁当は今日も安定のおいしさですね」
「間違いない」
「花粉が今以上酷くなったらおかずの内容似通っちゃうかもしれないけど」
「いえいえ、俺は作ってもらってる立場だし、毎日同じモン食うのも全然平気なんでお気遣いなく」
買い弁や外食メインのカオちゃんにとってはカズの作るお弁当がすごく貴重な機会になってるみたい。買い弁でも外食でも普通に美味しいしちゃんと食べてるんだからそれでいいんだろうけど、顔の見える人の作る家庭料理っていうのはまた違うんだって。うちはカズの作るご飯がメインだから外食に特別感を覚えるかな。
会社ではカオちゃんと一緒に同じおかずが詰められたお弁当を一緒に広げてる。最初の頃はいろんな人に不思議な目で見られたし、何ならカオちゃんがうちの旦那さんだと思われることもあったっけ。その度にかくしかかくうまで……と説明をすればストンと納得されてしまうカオちゃんの仕事と生活の仕方でした。今じゃすっかりお馴染みです。
「あ、そうだ。今日は伊東さんと一緒に食べようと思って持って来たヤツがあるんだよ」
「ナニナニ? 純粋に美味しい物? ネタ系?」
「美味いモンだとは思う。俺も貰った物だし今初めて開けるから」
「え、いいんですかせっかくの戴きものを」
「結構いい箱に入ってんだよこれが」
そう言ってカオちゃんが出してきたのは本当にいい箱なんだもんね。これはそうそうネタではなさそう。って言うかカオちゃんの人脈ってどんな風に伸びて広がってるかが本当に未知数だから、いい意味でも悪い意味でも何が出て来るのかが本当にわからない。まあ、それが面白くもあるんだけどね。
「うわー、すっごいいい匂い!」
「チョコだな。説明書きが入ってる。キャラメル風味のヤツが多い感じか。あ、伊東さん好きなのつまんでもらって」
「いえいえいえ! あの、このチョコレート、実は知ってるんですよ……」
「えっ、そうなの?」
「星港じゃメチャクチャ有名なお店で、バレンタインの催事限定ショコラボックスが出るっていう話で……基本的に開場即売り切れ、並んでも買える保証がないトンデモボックスなんですよ」
「マジで!?」
「って言うかバレンタインギフトでしょ? そんなのくれるってガチにも程がありますよカオちゃん。お相手の人との今後の展開と言うかフラグめいたものなど……ちょっと本気で思い当たる節を整理した方がいいかもよ。恋愛相談なら乗りますし」
ちなみにうちがこのボックスの情報を知ってるのはチョコレート超ガチ勢の片桐さんのSNSで見たから。あの人は星港のチョコレートフェスタをコミフェと同列かそれ以上に捉えてるから、どの店のどの箱は絶対に買うんだって催事が始まる前からチェックしてましたしね。もちろん戦果もアップしてたんだけど、何万円使ったんだろうって。
「あー、平気平気。恋愛には進展しないから」
「何で言い切れるんです!?」
「これくれたの高崎だし」
「はー!?」
「恋愛の云々じゃなくて単純に買ったからやるよっていうアレだよ」
「それはそれでえーですよ。買ったからやるよってブツじゃないんですよ……」
「俺も今伊東さんの話聞いて、アイツとんでもないモンくれたんだなって震えてる。俺のあげたの普通に並ばなくても買えるヤツだしちょっと申し訳なくなってきた」
「ん? カオちゃん今何て? カオちゃんが? 高崎クンに? バレンタインギフトを?」
「バレンタインギフトって言うかさ、普段からやれどこのケーキが美味いだのどこの焼き菓子がどうのって話をしてると、この時期だけ食える美味いモンを共有したくなったっつーかさ。他意はないんだよ。美味いから食えよってだけの差し入れ的な」
は~…! 事実は小説より奇なり! これだからこの人と話すのはやめられないんですわ! 1回話すと1冊本が出るレベルのネタが出るわ出るわ。社会人になったら仕事に追われて同人趣味と向き合う時間が取れないかと思ったらネタが豊富過ぎて逆にペースが上がる上がる。片桐さんにも「お前就職したんじゃなかったのか」って執筆ペースを呆れられましたとも!
って言うか今の話をまとめるとこの時期にスイーツを交換し合ってたってことでしょ? この時期でこうならホワイトデーも絶対にやるじゃん! そもそも普段からどんな話をしてんのよ。かわいいですかよ! KAWAIIいきもの! しかも高崎クンなんてこないだカオちゃんケガしてた時も好きな物と需要のある物だけ詰めたお見舞い袋提げて来たって話だしああもう美味い!
「ちなみにカオちゃんは高崎クンに何をあげたんですか?」
「お茶チョコだよ。地元のお茶屋が作ってるヤツで、チョコからお茶の風味がぶわ~って来る。抹茶とか濃抹茶が特に美味いけど、ほうじ茶も風味が強かったかな」
「さすが山羽人」
「お茶は山羽人の心だからな。そのお茶チョコと、ティーバッグがセットになってるヤツ。俺の高校の同級生とアイツが大学のゼミで一緒だったらしくて、よく教授主催のお茶会でもそこの店のお茶飲んでたそうだから」
「あ~、確かに高崎クンよく安部ちゃんとお茶会やってたかも! 問題児だけが参加資格のあるヤツ!」
「何だそれ。とりあえず1個食ってみよう。ん。……うまっ。あ、伊東さんもどうぞ」
「すみません、それではお言葉に甘えて……いただきます」
おいしー!
「語彙が無くなる美味さってこのことだよな」
「それ!」
「今度高崎に丁重にお礼しとこう」
「うちは今日の話を創作物に落とし込みます」
「楽しみにしてます。雨宮先生見てるとホントに刺激を受けてばっかりなんだよ。あれだけ仕事もしてて家のこともしてるのに執筆速度が尋常じゃない上にクオリティも高いだろ。ホントいい意味でおかしい」
「カオちゃん、今日のおまいうです」
end.
++++
チョコレートお化けの片桐さん。フェーズ3になってからは姿を見ない。
お茶チョコは情報センターの概念みたいなところがあるけどPさん山羽人だからセーフ。
(phase3)
.