2023
■ニコイチのあり方
++++
「何て言うか~、せっかくのお鍋に俺が混ざっても良かったの~?」
「せっかくのお鍋だからじゃないですか。さ、さ、気にせずどうぞ」
「それじゃあお邪魔しま~す」
冬の間に1回伊東クンの鍋が食べたいという朝霞クンたっての希望でお鍋大会が開かれることになった。たまたま休みで予定が合ったからその招待を受けたんだけど、お客さんとして座って待ってることに慣れなくてそわそわしちゃう。
「伊東クン、冷やしとくのあるから冷蔵庫借りて大丈夫~?」
「オッケーオッケー。適当に入れといてー」
「りょうか~い」
「あ。カズ、カオちゃんほーんのちょっとだけ残業になったから先にやっててって」
「ありゃ。でもほーんのちょっとくらいだったらそこまでって感じじゃん? なんなら高ピーもまだだろうし」
今日の会の参加者は、ホストの伊東クン夫婦に朝霞クン、高崎クン、それに俺の5人。朝霞クンと高崎クンは普通に仕事をしてから来るそうだ。何で急に俺が出てきたのかって感じだけど、夫婦が賑やかなのが好きだから1人増えるくらいはむしろ歓迎ってスタンスなんだろうね。
俺は忘新年会のラッシュが過ぎてやっと落ち着いてきたんだけど、その間のみんなの近況の話はとても新鮮だ。仕事ばっかりしててあんまり友達と会うこともなかったからね。主に夜に働いてると予定が合いにくいっていうのがまずあるんだけど。
まず、正月早々朝霞クンの家に高崎クンが転がり込んで飲んでたとか、そこで話が盛り上がって2人で映画も見に行ったらしい。朝霞クンらしいムーブと言うか通常運転って感じ。相手が高崎クンっていうのが意外な感じだけど、共通の友達は多いし遅かれ早かれだったのかも。
「朝霞クンの残業って、時間の感覚がなくなって延々とやってそうなイメージだけど、本当にちょっとだけで終われるの~?」
「あのね、オンオフ問わずスケジュールがとにかく真っ黒だから仕事は逆にスパッと切り上げてるね」
「へ~、切り上げられるんだ~」
「時間の感覚にはすっごいシビアだよカオちゃん。移動中の時間すら一切無駄にしないもん。水堀とか東都に移動中の新幹線の中から普通に仕事してるくらいだし」
「それはイメージつく~」
「ウチの会社ってきっちり決まった時間だけ会社に拘束して~っていうスタンスじゃないから、家だろうが新幹線の中だろうがちゃんとやってればオッケーなんですよ」
「なるほど~。会社にずーっといたってそのうち何時間かは何もしてない時間もあるもんね~」
「そんなようなことですね」
伊東クンにお金を払って作ってもらってるお弁当は、遠くに行く日もきっちり持って行って、新幹線の車内や別件の打ち合わせ中に食べてるそうだ。その様子が映ってる動画があるよ、と慧梨夏サンがスマホを見せてくれる。伊東クンのお弁当は画面越しでも色鮮やかで美味しそう。
「慧梨夏サンて~、朝霞クンの同僚じゃないですか~」
「そうだね。ニコイチでやらせてもらってますけれども」
「でも、話を聞いてる感じじゃ友達みたいじゃないですか~」
「そうだねえ。友達でもあるね」
「仕事の上で、公私がごっちゃにならない?」
「うーん、あんまりならないかなあ」
「やっぱそうなんだね~」
「前にカオちゃんが言っててなるほどなーって思ったことがあるんだけど、カオちゃん的に、友達と仲間っていうのは全くの別物なんだって。で、仕事をするとか、ある目的を達成しようとするときに友情は必要なくて、志が同じであればその他、プライベートとか人間性とかは割とどうでもいいんだって。そうやって志を共に出来る人が仲間。友達は、私的なことにもちょいちょい踏み込んでいくから、同じ人相手でも何をするかによって肩書きは違うんだって」
俺もなるほどな~って思った。朝霞クンらしい考え方だなって。大学の放送部時代にもその考え方をしていたなら、俺に対するステージスターとしての信頼が友情によるものじゃないっていうのにも合点が行く。ひとつのステージを作り上げる同士で、仲間。友達ではない。
部活を引退して4年生になってからは親友という間柄で付き合うようになって、人となりの部分に触れるようにもなっていた。そういうところでガツガツ踏み込んでいける相手が友達で、その中でも極めて親しい相手だから俺のことを親友と呼んでくれたんだろうね。
その辺の考え方を理解した上でニコイチで仕事をしている慧梨夏サンは朝霞クンの同僚であって仕事上では相棒。プライベートでもちょこちょこ仲良くしているけど、そのときには友達としてのスタンスでやっている。この人もそういう切り替えが上手なんだね~って。
「ほら、俺って広く浅い友達付き合いをしててさ~、一番仲良いと思ってる朝霞クンがああでしょ? 未だに考えてることがよくわかんなくてね~。欲しいものとかはわかるんだけどね~」
「あ、それ前にカオちゃんも似たようなこと言ってましたよ」
「ウソ~!?」
「カオちゃん的にはよっぺさんの考えてることは何となくわかるけど、欲しいものとかは全然わかんないって」
「真逆だね~」
「だからこそピッタリハマるんじゃないです?」
「かもね~。どれだけ久し振りでもブランクは一瞬で埋まるもんね。で、朝霞クンてああいう人だから、近況だけ軽く聞いたらもう先を見てる。思い出には浸らせてくれないよね」
「そのスタンスがハマって最近仲良くしてるのが高崎クンなんですよ。高崎クンも手の届く範囲で先を見てる人なんで」
「あ~、なるほどね~」
そんな感じで話しているとインターホンが鳴った。きっとまだ来てないお客さんのどっちかかな?
「うーす。おっ、山口。お前もいるのか」
「高崎クンご無沙汰で~す。たまたま休みだったから~お呼ばれしました~」
「高ピー、カオルは?」
「何で俺が知ってると思うんだ。そこのコンビニに寄ってるから、もうちょいで来るだろ」
「知ってるんじゃん」
「って言うかそこまでご一緒でした?」
「あ、山口がいるなら好都合だ。今日はお前があのクソ野郎をどうにかしろよ」
end.
++++
久々のやまよ。朝霞P的友達と仲間の違い。
単純にこのメンバーで鍋食べてるのも見たいからまたいつか。
(phase3)
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「何て言うか~、せっかくのお鍋に俺が混ざっても良かったの~?」
「せっかくのお鍋だからじゃないですか。さ、さ、気にせずどうぞ」
「それじゃあお邪魔しま~す」
冬の間に1回伊東クンの鍋が食べたいという朝霞クンたっての希望でお鍋大会が開かれることになった。たまたま休みで予定が合ったからその招待を受けたんだけど、お客さんとして座って待ってることに慣れなくてそわそわしちゃう。
「伊東クン、冷やしとくのあるから冷蔵庫借りて大丈夫~?」
「オッケーオッケー。適当に入れといてー」
「りょうか~い」
「あ。カズ、カオちゃんほーんのちょっとだけ残業になったから先にやっててって」
「ありゃ。でもほーんのちょっとくらいだったらそこまでって感じじゃん? なんなら高ピーもまだだろうし」
今日の会の参加者は、ホストの伊東クン夫婦に朝霞クン、高崎クン、それに俺の5人。朝霞クンと高崎クンは普通に仕事をしてから来るそうだ。何で急に俺が出てきたのかって感じだけど、夫婦が賑やかなのが好きだから1人増えるくらいはむしろ歓迎ってスタンスなんだろうね。
俺は忘新年会のラッシュが過ぎてやっと落ち着いてきたんだけど、その間のみんなの近況の話はとても新鮮だ。仕事ばっかりしててあんまり友達と会うこともなかったからね。主に夜に働いてると予定が合いにくいっていうのがまずあるんだけど。
まず、正月早々朝霞クンの家に高崎クンが転がり込んで飲んでたとか、そこで話が盛り上がって2人で映画も見に行ったらしい。朝霞クンらしいムーブと言うか通常運転って感じ。相手が高崎クンっていうのが意外な感じだけど、共通の友達は多いし遅かれ早かれだったのかも。
「朝霞クンの残業って、時間の感覚がなくなって延々とやってそうなイメージだけど、本当にちょっとだけで終われるの~?」
「あのね、オンオフ問わずスケジュールがとにかく真っ黒だから仕事は逆にスパッと切り上げてるね」
「へ~、切り上げられるんだ~」
「時間の感覚にはすっごいシビアだよカオちゃん。移動中の時間すら一切無駄にしないもん。水堀とか東都に移動中の新幹線の中から普通に仕事してるくらいだし」
「それはイメージつく~」
「ウチの会社ってきっちり決まった時間だけ会社に拘束して~っていうスタンスじゃないから、家だろうが新幹線の中だろうがちゃんとやってればオッケーなんですよ」
「なるほど~。会社にずーっといたってそのうち何時間かは何もしてない時間もあるもんね~」
「そんなようなことですね」
伊東クンにお金を払って作ってもらってるお弁当は、遠くに行く日もきっちり持って行って、新幹線の車内や別件の打ち合わせ中に食べてるそうだ。その様子が映ってる動画があるよ、と慧梨夏サンがスマホを見せてくれる。伊東クンのお弁当は画面越しでも色鮮やかで美味しそう。
「慧梨夏サンて~、朝霞クンの同僚じゃないですか~」
「そうだね。ニコイチでやらせてもらってますけれども」
「でも、話を聞いてる感じじゃ友達みたいじゃないですか~」
「そうだねえ。友達でもあるね」
「仕事の上で、公私がごっちゃにならない?」
「うーん、あんまりならないかなあ」
「やっぱそうなんだね~」
「前にカオちゃんが言っててなるほどなーって思ったことがあるんだけど、カオちゃん的に、友達と仲間っていうのは全くの別物なんだって。で、仕事をするとか、ある目的を達成しようとするときに友情は必要なくて、志が同じであればその他、プライベートとか人間性とかは割とどうでもいいんだって。そうやって志を共に出来る人が仲間。友達は、私的なことにもちょいちょい踏み込んでいくから、同じ人相手でも何をするかによって肩書きは違うんだって」
俺もなるほどな~って思った。朝霞クンらしい考え方だなって。大学の放送部時代にもその考え方をしていたなら、俺に対するステージスターとしての信頼が友情によるものじゃないっていうのにも合点が行く。ひとつのステージを作り上げる同士で、仲間。友達ではない。
部活を引退して4年生になってからは親友という間柄で付き合うようになって、人となりの部分に触れるようにもなっていた。そういうところでガツガツ踏み込んでいける相手が友達で、その中でも極めて親しい相手だから俺のことを親友と呼んでくれたんだろうね。
その辺の考え方を理解した上でニコイチで仕事をしている慧梨夏サンは朝霞クンの同僚であって仕事上では相棒。プライベートでもちょこちょこ仲良くしているけど、そのときには友達としてのスタンスでやっている。この人もそういう切り替えが上手なんだね~って。
「ほら、俺って広く浅い友達付き合いをしててさ~、一番仲良いと思ってる朝霞クンがああでしょ? 未だに考えてることがよくわかんなくてね~。欲しいものとかはわかるんだけどね~」
「あ、それ前にカオちゃんも似たようなこと言ってましたよ」
「ウソ~!?」
「カオちゃん的にはよっぺさんの考えてることは何となくわかるけど、欲しいものとかは全然わかんないって」
「真逆だね~」
「だからこそピッタリハマるんじゃないです?」
「かもね~。どれだけ久し振りでもブランクは一瞬で埋まるもんね。で、朝霞クンてああいう人だから、近況だけ軽く聞いたらもう先を見てる。思い出には浸らせてくれないよね」
「そのスタンスがハマって最近仲良くしてるのが高崎クンなんですよ。高崎クンも手の届く範囲で先を見てる人なんで」
「あ~、なるほどね~」
そんな感じで話しているとインターホンが鳴った。きっとまだ来てないお客さんのどっちかかな?
「うーす。おっ、山口。お前もいるのか」
「高崎クンご無沙汰で~す。たまたま休みだったから~お呼ばれしました~」
「高ピー、カオルは?」
「何で俺が知ってると思うんだ。そこのコンビニに寄ってるから、もうちょいで来るだろ」
「知ってるんじゃん」
「って言うかそこまでご一緒でした?」
「あ、山口がいるなら好都合だ。今日はお前があのクソ野郎をどうにかしろよ」
end.
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久々のやまよ。朝霞P的友達と仲間の違い。
単純にこのメンバーで鍋食べてるのも見たいからまたいつか。
(phase3)
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