2023
■将来に求める意味
＋＋＋＋
「泰稚さんカンさんご無沙汰してます！」
「ヤス、元気にしてたか」
年の瀬に、久々になるメンツで会うことになった。ヤスは好きな時に会おうと思えば会えたけど、だからこそいつでもいいかなという気になって実際会うところにまではなかなか至らなかった。就職したカンとはUSDX関係の打ち合わせで少し会っていたけど、やっぱり予定が合わないことも少し。前ほどは顔を合わせなくなっていた。
今年も年末の音楽祭には参加することにはなっている。CONTINUEとmish-mashでそれぞれだ。カンがバタバタ走り回っていて打ち合わせや練習に顔を出せないということは割と珍しくはなかった。だけどそれぞれのメンバーがやるべきことをやっていれば、カンはそこに合わせてコンディションを持って来る。
「カン、お前の会社って年末年始はどういう感じなんだ？」
「ん、割と普通。冬休みは人並みにある」
「あ、そうなんだ」
「っつってもやるコトばっかでなかなか忙しいぜ。コミフェとかさ」
「そっか、例によってサークル参加か」
「でもってキョージュとリンは俺に雑用を頼んで来るだろ!? リンは手数料くれるし俺も音楽ジャンルのサークル回りはするからともかくキョージュだよキョージュ！ 自分だってコミフェの現場にはいるんだから知り合いへの挨拶回りなんか自分でやれよっていうな！」
「はは……相変わらずだな」
仕事で音楽を作り、実況者としての活動の中でも音楽を作り、いくつか掛け持っているバンドに個人サークル。カンは四六時中音楽を作り続けている。正直、就職したとは言えやっていること自体はそこまで変わりない気がする。
USDXメンバーでは唯一朝霞が年末年始に関係なく働くような感じになっているようだ。とは言え、それもアイツらしいなと思うし、仕事の上で働いてなくたって何かしら動いているのが朝霞だからカンと大して変わらないよなあとは。言わないけど。
「そーいやよ、お前就職決まったん？」
「あー……それがまだなんす」
「は!? 大丈夫か!? つか何やってんだよ！」
「いろいろ面接受けたり回ってはいたんすけど、イマイチこう、しっくり来ないって言うか、ピンと来なかったんす」
「最初にピンと来た会社が一番いいとは限らないってのに」
「それもそうとしてわかってるんすけど、カンさんとか朝霞さんの話を聞いてると、テキトーに選んだ会社でテキトーに仕事してなんとなーく暮らすのって、意味ないなって思って」
「言いたいことはわかるけどよ、食ってくには金が要るんだぜ？」
「正直バイトと動画編集である程度食えます」
「そーやって時間稼ぎながら、お前風に言えばしっくりくる仕事を探すみたいなことか」
「家の人は何て？」
「１年２年くらいなら、自分でちゃんと食えるんであれば好きにしていいって言ってたっす」
就職がまだな俺も少し考えるところがある話のような気がする。ヤスの言うこともわかる。適当に選んだ会社で適当に仕事して何となく暮らすのが嫌だというのは。だけど、食べていくには働かないといけない。必ずしも入りたい会社に入れるとも限らない中で、どこかで妥協は必要なのかもしれない。それでもそのラインを下げ過ぎたくはないということなのだろう。
正直、カンと朝霞の話を参考にするのは良くないような気もするんだけどな。この２人はやりたいことをやりたい放題やっている代表みたいなイメージがある。とは言え、留年し続けて延々と大学や大学院から出ないことを繰り返しているプロさんもかなり特殊な例だ。USDXだとソルさんが一番一般的な社会人のような気がする。
「つかお前そんな食えるほど動画編集やってんの」
「USDXとレイ個チャンの分があるんでまあやってるっすよ。プロさんからは大学出てしばらく就職しないんならそれなりの金は出すんで動画編集続けてくれって言われてるんす。ゆっくりペースになってるUSDXはともかく、レイ個チャンがプロさん的に結構ハードワークらしくて」
「確かにこのまま行ったらUSDXのレイってよりカミツレのレイになっちまうよな。【４人】動画の伸びること」
「泰稚さんとカンさんなんで大丈夫だと思うんで言うんすけど、来年カミツレでオフイベやるんすよ」
「マジで!?」
「マジっす。告知用の短いムービー作ったの、カミツレメンバーがそのうち動画で使ってくれると思うっす。まあまあキャパあるハコでやるらしいっすよ。配信チケットも出すとか」
「カミツレのカ・ミ・ツがそもそも結構な大御所だもんな。それくらいやるか」
「確かに、何でそこにレが発生したって感じではある」
「レイ個チャンでそろそろ上がると思うんすけど、カンヂさんとの旅Vlogってのも編集してます」
「仕事して、書く物書いて、旅もしてってどーなってんだアイツ。実は５人くらいいるだろ」
「５人に分裂したいとは常日頃から言ってますけどね、朝霞さん」
「アイツは５人になったとしても、１人の仕事を５等分するんじゃなくて全員が５人分の仕事をするんだよ」
「間違いねー。つか俺も５人に分裂してー」
「カンさんも間違いなく５人分の仕事をするカンさんが増えるだけっすね」
USDXはメンバーの都合で動画投稿のペースも波があるけど、レイの個人チャンネルはかなり精力的な活動をしている。レイというキャラクターの動きを一応管理している京川さんとしても、他のUSDXメンバーとは扱いを同じにしてはいけないとはよく語っている。だからレイのキャラクターだけは他メンバーと権利関係も異なっている。
今ではUSDXというグループ、と言うより事務所か組織と言う方が正しいのかもしれない。USDXという組織で活動するＰ＆Ｓがいて、カミツレのレイもここに所属していて。コンの作るプラグインやMOD、チータの作る音楽の使用許諾なんかもここに話を通して。Ｐ＆Ｓと一緒に活動するようになった頃とはいろいろ変わってるな。
「俺とリン君が就職したら、USDXもまたちょっと変わってくのかな」
「お前もカズみたいに就職前に結婚のパターンがあるだろぶっちゃけ」
「まあ、実際なくはない。就職の関係で向島にいるとも限らないし」
「えー!? 泰稚さんがいなくなるとか嫌なんすけど！」
「別に死ぬわけじゃないんだぞ。海外に行くわけでもないし」
「つかお前定職に就かねーんならいつでも殴り込みに行けるだろ」
「すぐには就かないってだけでずっと就かないワケじゃないっす！ ずっとバイトと流しのベーシストと動画編集で食えるとも思ってないっすし」
「つかお前野良でベース弾いてんの？」
「たまにっすね。歌ってみたやってるゲーム実況配信者メインに頼まれれば弾くって感じで」
「……俺もドラム叩いていられる環境は整えておきたいなあ」
「それはお前、就職しようが結婚しようが向島から出ようがCONTINUEもUSDXもmish-mashも潰れねーしお前が叩かざるを得ない環境はいつだってあるぞ！ つかお前が叩かないことを誠司さんが許すかなぁ～？」
「あ～。泰稚さん、防音室のある部屋か電子パッド、あとは一戸建てに住みましょう！」
「パッドについては高崎君に相談してみようかな？ 彼、音楽祭来るよな？」
「来るはず。公務員は年末休みだし、ユーヤはソルのベースのあるところには来る」
end.
＋＋＋＋
一旦は一般の就職を見送ったコバヤス。プロ氏の組織運営はまあホワイトなので食えはしそう
後に会社代表となったどっかの誰かに拾われることで会社員となるけど、もうしばらく先のこと。
(phase3)
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「泰稚さんカンさんご無沙汰してます！」
「ヤス、元気にしてたか」
年の瀬に、久々になるメンツで会うことになった。ヤスは好きな時に会おうと思えば会えたけど、だからこそいつでもいいかなという気になって実際会うところにまではなかなか至らなかった。就職したカンとはUSDX関係の打ち合わせで少し会っていたけど、やっぱり予定が合わないことも少し。前ほどは顔を合わせなくなっていた。
今年も年末の音楽祭には参加することにはなっている。CONTINUEとmish-mashでそれぞれだ。カンがバタバタ走り回っていて打ち合わせや練習に顔を出せないということは割と珍しくはなかった。だけどそれぞれのメンバーがやるべきことをやっていれば、カンはそこに合わせてコンディションを持って来る。
「カン、お前の会社って年末年始はどういう感じなんだ？」
「ん、割と普通。冬休みは人並みにある」
「あ、そうなんだ」
「っつってもやるコトばっかでなかなか忙しいぜ。コミフェとかさ」
「そっか、例によってサークル参加か」
「でもってキョージュとリンは俺に雑用を頼んで来るだろ!? リンは手数料くれるし俺も音楽ジャンルのサークル回りはするからともかくキョージュだよキョージュ！ 自分だってコミフェの現場にはいるんだから知り合いへの挨拶回りなんか自分でやれよっていうな！」
「はは……相変わらずだな」
仕事で音楽を作り、実況者としての活動の中でも音楽を作り、いくつか掛け持っているバンドに個人サークル。カンは四六時中音楽を作り続けている。正直、就職したとは言えやっていること自体はそこまで変わりない気がする。
USDXメンバーでは唯一朝霞が年末年始に関係なく働くような感じになっているようだ。とは言え、それもアイツらしいなと思うし、仕事の上で働いてなくたって何かしら動いているのが朝霞だからカンと大して変わらないよなあとは。言わないけど。
「そーいやよ、お前就職決まったん？」
「あー……それがまだなんす」
「は!? 大丈夫か!? つか何やってんだよ！」
「いろいろ面接受けたり回ってはいたんすけど、イマイチこう、しっくり来ないって言うか、ピンと来なかったんす」
「最初にピンと来た会社が一番いいとは限らないってのに」
「それもそうとしてわかってるんすけど、カンさんとか朝霞さんの話を聞いてると、テキトーに選んだ会社でテキトーに仕事してなんとなーく暮らすのって、意味ないなって思って」
「言いたいことはわかるけどよ、食ってくには金が要るんだぜ？」
「正直バイトと動画編集である程度食えます」
「そーやって時間稼ぎながら、お前風に言えばしっくりくる仕事を探すみたいなことか」
「家の人は何て？」
「１年２年くらいなら、自分でちゃんと食えるんであれば好きにしていいって言ってたっす」
就職がまだな俺も少し考えるところがある話のような気がする。ヤスの言うこともわかる。適当に選んだ会社で適当に仕事して何となく暮らすのが嫌だというのは。だけど、食べていくには働かないといけない。必ずしも入りたい会社に入れるとも限らない中で、どこかで妥協は必要なのかもしれない。それでもそのラインを下げ過ぎたくはないということなのだろう。
正直、カンと朝霞の話を参考にするのは良くないような気もするんだけどな。この２人はやりたいことをやりたい放題やっている代表みたいなイメージがある。とは言え、留年し続けて延々と大学や大学院から出ないことを繰り返しているプロさんもかなり特殊な例だ。USDXだとソルさんが一番一般的な社会人のような気がする。
「つかお前そんな食えるほど動画編集やってんの」
「USDXとレイ個チャンの分があるんでまあやってるっすよ。プロさんからは大学出てしばらく就職しないんならそれなりの金は出すんで動画編集続けてくれって言われてるんす。ゆっくりペースになってるUSDXはともかく、レイ個チャンがプロさん的に結構ハードワークらしくて」
「確かにこのまま行ったらUSDXのレイってよりカミツレのレイになっちまうよな。【４人】動画の伸びること」
「泰稚さんとカンさんなんで大丈夫だと思うんで言うんすけど、来年カミツレでオフイベやるんすよ」
「マジで!?」
「マジっす。告知用の短いムービー作ったの、カミツレメンバーがそのうち動画で使ってくれると思うっす。まあまあキャパあるハコでやるらしいっすよ。配信チケットも出すとか」
「カミツレのカ・ミ・ツがそもそも結構な大御所だもんな。それくらいやるか」
「確かに、何でそこにレが発生したって感じではある」
「レイ個チャンでそろそろ上がると思うんすけど、カンヂさんとの旅Vlogってのも編集してます」
「仕事して、書く物書いて、旅もしてってどーなってんだアイツ。実は５人くらいいるだろ」
「５人に分裂したいとは常日頃から言ってますけどね、朝霞さん」
「アイツは５人になったとしても、１人の仕事を５等分するんじゃなくて全員が５人分の仕事をするんだよ」
「間違いねー。つか俺も５人に分裂してー」
「カンさんも間違いなく５人分の仕事をするカンさんが増えるだけっすね」
USDXはメンバーの都合で動画投稿のペースも波があるけど、レイの個人チャンネルはかなり精力的な活動をしている。レイというキャラクターの動きを一応管理している京川さんとしても、他のUSDXメンバーとは扱いを同じにしてはいけないとはよく語っている。だからレイのキャラクターだけは他メンバーと権利関係も異なっている。
今ではUSDXというグループ、と言うより事務所か組織と言う方が正しいのかもしれない。USDXという組織で活動するＰ＆Ｓがいて、カミツレのレイもここに所属していて。コンの作るプラグインやMOD、チータの作る音楽の使用許諾なんかもここに話を通して。Ｐ＆Ｓと一緒に活動するようになった頃とはいろいろ変わってるな。
「俺とリン君が就職したら、USDXもまたちょっと変わってくのかな」
「お前もカズみたいに就職前に結婚のパターンがあるだろぶっちゃけ」
「まあ、実際なくはない。就職の関係で向島にいるとも限らないし」
「えー!? 泰稚さんがいなくなるとか嫌なんすけど！」
「別に死ぬわけじゃないんだぞ。海外に行くわけでもないし」
「つかお前定職に就かねーんならいつでも殴り込みに行けるだろ」
「すぐには就かないってだけでずっと就かないワケじゃないっす！ ずっとバイトと流しのベーシストと動画編集で食えるとも思ってないっすし」
「つかお前野良でベース弾いてんの？」
「たまにっすね。歌ってみたやってるゲーム実況配信者メインに頼まれれば弾くって感じで」
「……俺もドラム叩いていられる環境は整えておきたいなあ」
「それはお前、就職しようが結婚しようが向島から出ようがCONTINUEもUSDXもmish-mashも潰れねーしお前が叩かざるを得ない環境はいつだってあるぞ！ つかお前が叩かないことを誠司さんが許すかなぁ～？」
「あ～。泰稚さん、防音室のある部屋か電子パッド、あとは一戸建てに住みましょう！」
「パッドについては高崎君に相談してみようかな？ 彼、音楽祭来るよな？」
「来るはず。公務員は年末休みだし、ユーヤはソルのベースのあるところには来る」
end.
＋＋＋＋
一旦は一般の就職を見送ったコバヤス。プロ氏の組織運営はまあホワイトなので食えはしそう
後に会社代表となったどっかの誰かに拾われることで会社員となるけど、もうしばらく先のこと。
(phase3)
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