2023
■誕生日のサプライズをいくつか
++++
「伊東さん誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
今年の伊東さんの誕生日は金曜日。とは言え俺ら的には平常通りの出勤日なので、必要な用事は昼休憩の時間にやるのがベストだと判断。さすがにこんな日に夕飯サブスクの権利を使うほど空気が読めない奴じゃない。記念日とかイベントの時には外デート、的な話は聞いたことあったし。
伊東さんからは俺の誕生日に「カオちゃんとレイ君の誕生日が同じ日だなんて投げ銭が追いつかないんですが!? チャリンチャリンチャリン」などと縁起でもない擬音とともにツール収納ボックスと曰く「ギャグで作りました」というレイのアクリルスタンドをもらった。
ツール収納ボックスというのはノートPCや作業に必要な物を入れてまとめておけるだけじゃなくて、そのまま持ち運んで外作業にも行けるという代物だ。これが非常に使い勝手がいいんだ。必要な物はここに入れておけばいい、という場所が出来たことが何より素晴らしかった。
「俺は人の欲しい物がわかるタイプじゃないからさ、あんまり期待しないでもらえると助かるけど」
「よっぺさんの欲しい物がわからないのにうちのそれをわかられててもカオちゃん何やってんのもっとよっぺさんとハートでぶつかってってなるし、お気持ちだけで十分ですよ、はい」
「とりあえずは、こちらを」
「なんだろ。形的にメモ帳とか? 開けますね」
「どうぞ」
「は~…! カオちゃん、やってくれましたねえ! 欲しいもの来たー、テロだー、アカンヤツー! おうちでゆっくり楽しみますぅ~」
「今日は忙しいだろうし明日以降にでも」
まず渡したのは、以前俺が書いた本のサイドストーリーを新たに書き下ろした本だ。伊東さんからは割と熱めの感想をもらっていたので、彼女が特に気に入っていたであろうキャラクターのスピンオフ作品を書こうと思いついてからは早かった。
仕事も実況もまあまあ忙しかったけど、俺は忙しければ忙しいほど筆が乗る。気付けば当初予定していたより100ページも多くなってしまったけど、広く頒布するものじゃないし伊東さんを狙い打つためだけの物なので全然オッケーだ。
「300ページはまあまあやってますよカオちゃん」
「書いてる内に増えに増えてさ」
「あるあるだけど!」
「さすがにそれだけじゃアレだから、他にもあって」
「まだあるの!? 非売品の本がすでにプライスレスなんだけど!?」
「伊東さんと言えば作業のおともの紅茶かなって思って、紅茶と焼き菓子」
「カオちゃんホントに至れり尽くせり…! それで何でよっぺさんの欲しい物がわかんないの!?」
伊東さんは物書き同士という共通項があるし、ある意味弱点を晒して歩いているような人なので需要や急所を突こうと思えばピンポイントでやれる。山口は俺と違って物欲もあまりないし、これっていうのがわかりにくいんだよな。
俺とか伊東さんみたいな人種の奴には最悪「助かる~!」っていうような……生活の中でよく使って消えるもの、例えばレッドブルであったり紅茶であったり、っていう物を選んでおけば間違いなかったりする。あとは、ゲームのプリペイドカードだとか。わかりやすいんだ。
「てかこのお菓子何気にいいヤツ?」
「近所のケーキ屋で買ったヤツ」
「そういうのがすっごくおいしかったりするんですよ」
「それはわかる。俺、この店のダックワーズがすごい好きでさ」
「焼き菓子セットの中にダックワーズある?」
「あったと思う」
「カズと一緒にいただきますわ」
「どうぞ。俺もそれを想定してたから」
たまに近所を散歩すると、思わぬところに店があったりして驚くことがある。細い路地に入って行った先に小洒落た店が何件も並んでたりとか。人通りもないのにどんな客層が来るんだと不思議に思いながら、そういった店の探索をしている。
そんな店の一軒がケーキ屋で、扱っているケーキの品数自体はさほど多くないし、小洒落た店にありがちな感じで単価はちょっと高い(洒落てる=高いというのは俺の偏見かもしれない)。だけど実際味は良くて、テイクアウト用で個包装になった焼き菓子が特に気に入っている。
「ああ、それでさ伊東さん。預かり物があって」
「預かり物?」
「お前なら伊東さんに会うだろって言っていくつか預かってきてるから、こちらを」
「え、何。怖いんだけど」
「あ、大丈夫。至って普通のお菓子だって。まずこれが高崎から」
「えー、高崎クン!? マメ~!」
「それこそその焼き菓子の店でケーキ食べてるときに預かったんだ」
「さすが高崎クン、相変わらずカフェの気配に敏感。ありがとうございます」
「で、これがプロさんから」
「プロ氏!? こわっ! あ、いや、ありがとうございます」
「とんでもなく高い物が出てきそうな気がするっていう恐怖な」
「それ」
「で、これがカンヂさんから」
「はい!? カンヂさんて、あのカンヂさんです!? 実況界の大御所!?」
「はい、あのカンヂさんです」
「何で!? 意味がわかんない!」
高崎は高校と大学の同級生で悪友だから純粋な誕生日プレゼントだし、プロさんは伊東さんの同人名義、雨宮さんのファンだからお布施とか投げ銭的な感覚でいいだろう。多分そこまでは伊東さんも理解出来るはずだ。伊東さんからすれば突然のカンヂさんの名前は意味が分からないだろうなあ。
「ほら、この間俺テレワークって体で外から仕事してたじゃん」
「そうですね」
「あのとき水堀に行ってたんだよ」
「あ~、カオちゃん最近ちょっとやり始めたヤツね。出先で仕事するヤーツ」
「それでカンヂさんとかといろいろ撮って、その合間に仕事して、本の原稿進めてってやっててさ。そんでその日の夜にカンヂさんと飲みながら仕事のこととかも話してたんだよ。どんな仕事の仕方しとんねんって言われて、相方に結構面倒かけてますって言ったらしいんだよ」
「……酔ってましたね?」
「記憶はありませんが意識はありました! まあでも俺がそんな仕事の仕方をしてるからこそ自分も遊べてるし仕事になってるからっていって、その相方の子に渡してくれって言われた物を預かってきた」
「お気遣いありがとうございますっていうのと、いつも動画楽しく拝見してますっていうのと、このどうしようもない相方をこれからもよろしくお願いしますとお伝えください」
「わかりました」
「あと個人的にレイくんがお酒飲んでやらかしそうになったらシバき倒してくださいってDMしようかなあ」
「それは勘弁してください!」
「何はともあれすごい誕生日になりました。ありがとうございます」
「どういたしまして」
来月高崎クンへのお返し預けるからよろしくと言われれば、友達なんだから自分で会えばいいのにと思いつつもわかりましたと返事をしてしまう俺がいる。アイツとはどうせ飯に行く約束はしてたし。家が徒歩圏内だから会いやすい、用事を引き受けやすいってのはある。
「そういや高崎って来月誕生日なのか」
「一応公式には非公開の情報ってことになってるからカオちゃんは知らなかった体でよろしく。伊東さんからの謎の小包ってことで」
「なんだそれ」
「高崎クンにもいろいろあるんですよ」
「その割に伊東さんは知ってる体で話を進めるのな」
「そこはうちですから」
「すべてを理解した」
end.
++++
慧梨夏の誕生日にPさんがテロを仕掛けようとした話。他の話題にかき消された。
路地裏のオシャなカフェでPさんと高崎がケーキつついてるところとか見たすぎる
そういや混ざるなキケンもだけど高崎も29日生まれだなあ
(phase3)
.
++++
「伊東さん誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
今年の伊東さんの誕生日は金曜日。とは言え俺ら的には平常通りの出勤日なので、必要な用事は昼休憩の時間にやるのがベストだと判断。さすがにこんな日に夕飯サブスクの権利を使うほど空気が読めない奴じゃない。記念日とかイベントの時には外デート、的な話は聞いたことあったし。
伊東さんからは俺の誕生日に「カオちゃんとレイ君の誕生日が同じ日だなんて投げ銭が追いつかないんですが!? チャリンチャリンチャリン」などと縁起でもない擬音とともにツール収納ボックスと曰く「ギャグで作りました」というレイのアクリルスタンドをもらった。
ツール収納ボックスというのはノートPCや作業に必要な物を入れてまとめておけるだけじゃなくて、そのまま持ち運んで外作業にも行けるという代物だ。これが非常に使い勝手がいいんだ。必要な物はここに入れておけばいい、という場所が出来たことが何より素晴らしかった。
「俺は人の欲しい物がわかるタイプじゃないからさ、あんまり期待しないでもらえると助かるけど」
「よっぺさんの欲しい物がわからないのにうちのそれをわかられててもカオちゃん何やってんのもっとよっぺさんとハートでぶつかってってなるし、お気持ちだけで十分ですよ、はい」
「とりあえずは、こちらを」
「なんだろ。形的にメモ帳とか? 開けますね」
「どうぞ」
「は~…! カオちゃん、やってくれましたねえ! 欲しいもの来たー、テロだー、アカンヤツー! おうちでゆっくり楽しみますぅ~」
「今日は忙しいだろうし明日以降にでも」
まず渡したのは、以前俺が書いた本のサイドストーリーを新たに書き下ろした本だ。伊東さんからは割と熱めの感想をもらっていたので、彼女が特に気に入っていたであろうキャラクターのスピンオフ作品を書こうと思いついてからは早かった。
仕事も実況もまあまあ忙しかったけど、俺は忙しければ忙しいほど筆が乗る。気付けば当初予定していたより100ページも多くなってしまったけど、広く頒布するものじゃないし伊東さんを狙い打つためだけの物なので全然オッケーだ。
「300ページはまあまあやってますよカオちゃん」
「書いてる内に増えに増えてさ」
「あるあるだけど!」
「さすがにそれだけじゃアレだから、他にもあって」
「まだあるの!? 非売品の本がすでにプライスレスなんだけど!?」
「伊東さんと言えば作業のおともの紅茶かなって思って、紅茶と焼き菓子」
「カオちゃんホントに至れり尽くせり…! それで何でよっぺさんの欲しい物がわかんないの!?」
伊東さんは物書き同士という共通項があるし、ある意味弱点を晒して歩いているような人なので需要や急所を突こうと思えばピンポイントでやれる。山口は俺と違って物欲もあまりないし、これっていうのがわかりにくいんだよな。
俺とか伊東さんみたいな人種の奴には最悪「助かる~!」っていうような……生活の中でよく使って消えるもの、例えばレッドブルであったり紅茶であったり、っていう物を選んでおけば間違いなかったりする。あとは、ゲームのプリペイドカードだとか。わかりやすいんだ。
「てかこのお菓子何気にいいヤツ?」
「近所のケーキ屋で買ったヤツ」
「そういうのがすっごくおいしかったりするんですよ」
「それはわかる。俺、この店のダックワーズがすごい好きでさ」
「焼き菓子セットの中にダックワーズある?」
「あったと思う」
「カズと一緒にいただきますわ」
「どうぞ。俺もそれを想定してたから」
たまに近所を散歩すると、思わぬところに店があったりして驚くことがある。細い路地に入って行った先に小洒落た店が何件も並んでたりとか。人通りもないのにどんな客層が来るんだと不思議に思いながら、そういった店の探索をしている。
そんな店の一軒がケーキ屋で、扱っているケーキの品数自体はさほど多くないし、小洒落た店にありがちな感じで単価はちょっと高い(洒落てる=高いというのは俺の偏見かもしれない)。だけど実際味は良くて、テイクアウト用で個包装になった焼き菓子が特に気に入っている。
「ああ、それでさ伊東さん。預かり物があって」
「預かり物?」
「お前なら伊東さんに会うだろって言っていくつか預かってきてるから、こちらを」
「え、何。怖いんだけど」
「あ、大丈夫。至って普通のお菓子だって。まずこれが高崎から」
「えー、高崎クン!? マメ~!」
「それこそその焼き菓子の店でケーキ食べてるときに預かったんだ」
「さすが高崎クン、相変わらずカフェの気配に敏感。ありがとうございます」
「で、これがプロさんから」
「プロ氏!? こわっ! あ、いや、ありがとうございます」
「とんでもなく高い物が出てきそうな気がするっていう恐怖な」
「それ」
「で、これがカンヂさんから」
「はい!? カンヂさんて、あのカンヂさんです!? 実況界の大御所!?」
「はい、あのカンヂさんです」
「何で!? 意味がわかんない!」
高崎は高校と大学の同級生で悪友だから純粋な誕生日プレゼントだし、プロさんは伊東さんの同人名義、雨宮さんのファンだからお布施とか投げ銭的な感覚でいいだろう。多分そこまでは伊東さんも理解出来るはずだ。伊東さんからすれば突然のカンヂさんの名前は意味が分からないだろうなあ。
「ほら、この間俺テレワークって体で外から仕事してたじゃん」
「そうですね」
「あのとき水堀に行ってたんだよ」
「あ~、カオちゃん最近ちょっとやり始めたヤツね。出先で仕事するヤーツ」
「それでカンヂさんとかといろいろ撮って、その合間に仕事して、本の原稿進めてってやっててさ。そんでその日の夜にカンヂさんと飲みながら仕事のこととかも話してたんだよ。どんな仕事の仕方しとんねんって言われて、相方に結構面倒かけてますって言ったらしいんだよ」
「……酔ってましたね?」
「記憶はありませんが意識はありました! まあでも俺がそんな仕事の仕方をしてるからこそ自分も遊べてるし仕事になってるからっていって、その相方の子に渡してくれって言われた物を預かってきた」
「お気遣いありがとうございますっていうのと、いつも動画楽しく拝見してますっていうのと、このどうしようもない相方をこれからもよろしくお願いしますとお伝えください」
「わかりました」
「あと個人的にレイくんがお酒飲んでやらかしそうになったらシバき倒してくださいってDMしようかなあ」
「それは勘弁してください!」
「何はともあれすごい誕生日になりました。ありがとうございます」
「どういたしまして」
来月高崎クンへのお返し預けるからよろしくと言われれば、友達なんだから自分で会えばいいのにと思いつつもわかりましたと返事をしてしまう俺がいる。アイツとはどうせ飯に行く約束はしてたし。家が徒歩圏内だから会いやすい、用事を引き受けやすいってのはある。
「そういや高崎って来月誕生日なのか」
「一応公式には非公開の情報ってことになってるからカオちゃんは知らなかった体でよろしく。伊東さんからの謎の小包ってことで」
「なんだそれ」
「高崎クンにもいろいろあるんですよ」
「その割に伊東さんは知ってる体で話を進めるのな」
「そこはうちですから」
「すべてを理解した」
end.
++++
慧梨夏の誕生日にPさんがテロを仕掛けようとした話。他の話題にかき消された。
路地裏のオシャなカフェでPさんと高崎がケーキつついてるところとか見たすぎる
そういや混ざるなキケンもだけど高崎も29日生まれだなあ
(phase3)
.