2023
■クズの流儀
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たまにある非公式麻雀大会とは別の、公的なゼミの飲み会という物が開催されるということで会場に赴く。……で、この人がいますよね、もちろん。
「S君久し振り~!」
「あ、はい。お久し振りです京川さん。では失礼します」
「ちょーっとぉ、構ってくれてもいいでしょ?」
「俺は京川さんとはなるべくなら表面的な、当たり障りのない挨拶程度の関わりに止めておきたいと考えているのですが」
「相変わらずはっきり言うねえ」
いつから学生をやっているのか、そしていつまで学生をやるつもりなのかが全く以って謎な京川さんという院生だ。話によればダイさんより先に大学にいたはずなのに卒業はダイさんの方が早かったということだし、もしかしなくても大学院を出るのも俺の大学卒業より後になるだろう。
本能がこの人には関わるなと警鐘を鳴らしているにも関わらず、向こうがやたら俺に絡んでくる。去年までなら前原先輩や磐田先輩を隠れ蓑にすることも出来ていたけど今年はそうもいかない。そしてこの飲み会にはこの秋からゼミ生になる2年生と、プレゼミ生になる1年生もいる。
「まあいいや。S君が構ってくれないなら春風ちゃんに構ってもらおーっと」
「それは話が違いませんか」
「だって」
「だってもへちまもありません。春風に手を出そうものならさすがに」
「俺を何だと思ってるのS君」
「女性を弄ぶことを生業とする人としての屑だと思っていますが」
「あのねえ! 俺は自分からは弄ばないから! 相手にするのは相応のお金を払ってくれる人だけ! きちんと届け出だってしてある清廉潔白な事業です~」
「それはともかく、京川さんという人の胡散臭さを知っていると、サークルの後輩を近付けさせるわけにはいかないと思ってしまうんですよ」
「いやぁ~S君いい先輩だね!」
とは言え春風はゼミ生になるので、名前が出てくるという程度では処すほどにはないし、殺意までは湧かない。この人から菜月先輩のお名前が出てきたときはハンパなかった。あれはこれまでに経験したことのない殺意だった。処しておけば良かったと少し思ってしまうほどに。
ただ、俺が後輩たちを守らなければ、京川さんに近付けるまじと勝手に思っていても、程よい関係の後輩というものは先輩に挨拶をしたくなるもので、春風はご丁寧にもグラスを持って俺のところに挨拶に来てしまうのだ。飛んで火にいる何とやらだ。
「野坂先輩、お疲れさまです」
「ホントにお疲れなんだよなあ」
「あっ春風ちゃん。春風ちゃんの方から来てくれて嬉しいなあ」
「京川さんもお疲れさまです。ええと、野坂先輩、食べていらっしゃいますか?」
「ほどほどには」
春風は次の秋学期から正式に野島ゼミ生となることが決まっていて、これまでもプレゼミ生として研究室に顔は出していた。如何せん女子が珍しい環境だ、あの可愛い子は何者だと野郎たちが色めき立っていたのでアイツは彼氏いるぞと現実を突きつけておいてやった。
「そう言えばさ、春風ちゃんて天文部との縁は完全に切った感じ?」
「はい。今はMMP一本で活動しています」
「あーそうなんだ。だよねえ。春風ちゃんみたいな真面目な子がいる部活じゃないよあそこは。辞めて正解」
「京川さん、天文部事情に詳しいんですか?」
「あれ、S君知らなかったっけ? 俺って一応天文部だったんだよ」
「そうなんですか!?」
「だからまもちゃんとも仲良しなんじゃん」
「ああ、なるほど。それに京川さんがいたというだけで天文部のロクでもなさに強大な説得力が生まれますね」
「言っとくけど、俺はまだマジメに天文やってた方よ?」
「どうだか」
「たまにだけどちゃんと観測だってやってたし。部室にある望遠鏡だって元は俺の私物。持ち帰るのめんどくさくて放置してたら部に私物化されたけどさ」
「そうだったのですか!?」
「そうよー」
「去年磐田先輩たちと部室を片付けた際に、先輩もいつからあるかわからないと仰っていたのです。京川さんの物だったのですね」
天文部のロクでもなさを最初に知ったのは菜月先輩の証言だったんだけど、前原先輩や磐田先輩の話でそれが確証に変わって、春風の話で完全に真っ黒になったんだよな。と言うか天文部としての活動実績がないのに部としての体裁を保ててるのが緩すぎだ。
真面目に天文をやろうとしていた人たちは、おそらく今では部からいなくなってしまったそうだ。磐田先輩たちの代は卒業、春風はMMPへの移籍、そして1人残った現4年生は部を辞めて新たに天文サークルを自分で作って活動しているとのこと。その人たちがいない天文部とは。
「今、天文部って結構きな臭くってね」
「きな臭いとは」
「前々から酒とセックスに溺れてる、みたいな言い方はされてたしそれは事実なんだけど、最近はそこにクスリまで加わってるって話」
「ええ……」
「クスリか。それは違法な物ですか?」
「合法な物をわざわざクスリって言わなくない? 確たる証拠が見つかったって話じゃないけど、俺が胡散臭いからこそ入ってくる風の噂で?」
「胡散臭さ故の説得力ですか」
「そーゆーコト。結構ヤバいの使ってるみたいだね。春風ちゃんみたいな可愛い子がいれば、まあ間違いなくキメてマワされるから、縁を切って正解だねって話。これからもあそこにいた経歴はなかったことにすることをおすすめするよ」
「そんなことになっているのですね……」
「ほら、春風ちゃんまもちゃんのプラネタリウムの保守とか結構気にしてたでしょ?」
「はい。あれに関しては田原先輩も持ち出すことが出来なかったそうなので、万が一があれば私が保守を、という風には考えていたのですが」
「あーあー、やめといた方がいいよ。まもちゃんには悪いけど、過去の遺構にして自分の身を守った方がいい」
この話に関しては俺も京川さんに完全に同意する。そこまでヤバいことになっている部活との縁なんか完全に切ってしまった方がいいし、そこにいたという経歴すら足枷になりかねない。と言うかその話が本当なら向島大学の、と言うか公立大学だから向島エリアの暗部なんだが?
「私が天文部で比較的きちんと活動が出来ていたのは奇跡的なことなのですね……」
「そうね。それこそ天文部がヤバいことを知ってたマエトモの口添えのおかげだし、その情報でまもちゃんが真面目な天文少女の春風ちゃんを囲ってくれたんだから。マエトモに相談した幼馴染みの子にも感謝した方がいいよ」
「前原先輩か……。あれだけクズなのにロボコンの話だけはガチなんだよなあ。謎に強かった」
「前原先輩というのは、奏多が打ち倒そうとしていたバドミントンサークルの先輩ですよね」
「ああ、その人だな」
「あの奏多が赤子の手を捻るようにしてやられたと聞いて、どんな実力者なんだろうと思っていたのです。最後に一度だけ勝つことが出来たそうで、奏多も悔いを残すことなくMMPの活動をやれているようです」
「酒と煙草と勝てない賭事の印象が強すぎてそんな風にはとても見えないのだが」
「S君、どんなクズだろうと真面目に向き合う物事のひとつやふたつくらいあるんだよ。S君もまあまあなクズなんだからわかるでしょ」
「俺がクズなのは否定しませんし真面目に向き合う物事もあるので言っていることはわかりますがだからと言って京川さんと同じ括りとして扱われるのは解せませんね」
「こわーい。S君こわーい。ねえ春風ちゃん」
「野坂先輩が屑だなんてとんでもありません! 野坂先輩はとても素晴らしい先輩でいらっしゃいます」
「うう……俺はそんな聖人君子じゃないのだが?」
end.
++++
公的な、お金の飛ばないライトな野島ゼミの飲み会。プレゼミ生がいるとのことなので多分その辺にジュンもいる
樹理ちゃんが天文部OBという設定はフェーズ1で樹理ちゃんが出てきたばかりの頃に言ってたので拾った
(phase3)
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たまにある非公式麻雀大会とは別の、公的なゼミの飲み会という物が開催されるということで会場に赴く。……で、この人がいますよね、もちろん。
「S君久し振り~!」
「あ、はい。お久し振りです京川さん。では失礼します」
「ちょーっとぉ、構ってくれてもいいでしょ?」
「俺は京川さんとはなるべくなら表面的な、当たり障りのない挨拶程度の関わりに止めておきたいと考えているのですが」
「相変わらずはっきり言うねえ」
いつから学生をやっているのか、そしていつまで学生をやるつもりなのかが全く以って謎な京川さんという院生だ。話によればダイさんより先に大学にいたはずなのに卒業はダイさんの方が早かったということだし、もしかしなくても大学院を出るのも俺の大学卒業より後になるだろう。
本能がこの人には関わるなと警鐘を鳴らしているにも関わらず、向こうがやたら俺に絡んでくる。去年までなら前原先輩や磐田先輩を隠れ蓑にすることも出来ていたけど今年はそうもいかない。そしてこの飲み会にはこの秋からゼミ生になる2年生と、プレゼミ生になる1年生もいる。
「まあいいや。S君が構ってくれないなら春風ちゃんに構ってもらおーっと」
「それは話が違いませんか」
「だって」
「だってもへちまもありません。春風に手を出そうものならさすがに」
「俺を何だと思ってるのS君」
「女性を弄ぶことを生業とする人としての屑だと思っていますが」
「あのねえ! 俺は自分からは弄ばないから! 相手にするのは相応のお金を払ってくれる人だけ! きちんと届け出だってしてある清廉潔白な事業です~」
「それはともかく、京川さんという人の胡散臭さを知っていると、サークルの後輩を近付けさせるわけにはいかないと思ってしまうんですよ」
「いやぁ~S君いい先輩だね!」
とは言え春風はゼミ生になるので、名前が出てくるという程度では処すほどにはないし、殺意までは湧かない。この人から菜月先輩のお名前が出てきたときはハンパなかった。あれはこれまでに経験したことのない殺意だった。処しておけば良かったと少し思ってしまうほどに。
ただ、俺が後輩たちを守らなければ、京川さんに近付けるまじと勝手に思っていても、程よい関係の後輩というものは先輩に挨拶をしたくなるもので、春風はご丁寧にもグラスを持って俺のところに挨拶に来てしまうのだ。飛んで火にいる何とやらだ。
「野坂先輩、お疲れさまです」
「ホントにお疲れなんだよなあ」
「あっ春風ちゃん。春風ちゃんの方から来てくれて嬉しいなあ」
「京川さんもお疲れさまです。ええと、野坂先輩、食べていらっしゃいますか?」
「ほどほどには」
春風は次の秋学期から正式に野島ゼミ生となることが決まっていて、これまでもプレゼミ生として研究室に顔は出していた。如何せん女子が珍しい環境だ、あの可愛い子は何者だと野郎たちが色めき立っていたのでアイツは彼氏いるぞと現実を突きつけておいてやった。
「そう言えばさ、春風ちゃんて天文部との縁は完全に切った感じ?」
「はい。今はMMP一本で活動しています」
「あーそうなんだ。だよねえ。春風ちゃんみたいな真面目な子がいる部活じゃないよあそこは。辞めて正解」
「京川さん、天文部事情に詳しいんですか?」
「あれ、S君知らなかったっけ? 俺って一応天文部だったんだよ」
「そうなんですか!?」
「だからまもちゃんとも仲良しなんじゃん」
「ああ、なるほど。それに京川さんがいたというだけで天文部のロクでもなさに強大な説得力が生まれますね」
「言っとくけど、俺はまだマジメに天文やってた方よ?」
「どうだか」
「たまにだけどちゃんと観測だってやってたし。部室にある望遠鏡だって元は俺の私物。持ち帰るのめんどくさくて放置してたら部に私物化されたけどさ」
「そうだったのですか!?」
「そうよー」
「去年磐田先輩たちと部室を片付けた際に、先輩もいつからあるかわからないと仰っていたのです。京川さんの物だったのですね」
天文部のロクでもなさを最初に知ったのは菜月先輩の証言だったんだけど、前原先輩や磐田先輩の話でそれが確証に変わって、春風の話で完全に真っ黒になったんだよな。と言うか天文部としての活動実績がないのに部としての体裁を保ててるのが緩すぎだ。
真面目に天文をやろうとしていた人たちは、おそらく今では部からいなくなってしまったそうだ。磐田先輩たちの代は卒業、春風はMMPへの移籍、そして1人残った現4年生は部を辞めて新たに天文サークルを自分で作って活動しているとのこと。その人たちがいない天文部とは。
「今、天文部って結構きな臭くってね」
「きな臭いとは」
「前々から酒とセックスに溺れてる、みたいな言い方はされてたしそれは事実なんだけど、最近はそこにクスリまで加わってるって話」
「ええ……」
「クスリか。それは違法な物ですか?」
「合法な物をわざわざクスリって言わなくない? 確たる証拠が見つかったって話じゃないけど、俺が胡散臭いからこそ入ってくる風の噂で?」
「胡散臭さ故の説得力ですか」
「そーゆーコト。結構ヤバいの使ってるみたいだね。春風ちゃんみたいな可愛い子がいれば、まあ間違いなくキメてマワされるから、縁を切って正解だねって話。これからもあそこにいた経歴はなかったことにすることをおすすめするよ」
「そんなことになっているのですね……」
「ほら、春風ちゃんまもちゃんのプラネタリウムの保守とか結構気にしてたでしょ?」
「はい。あれに関しては田原先輩も持ち出すことが出来なかったそうなので、万が一があれば私が保守を、という風には考えていたのですが」
「あーあー、やめといた方がいいよ。まもちゃんには悪いけど、過去の遺構にして自分の身を守った方がいい」
この話に関しては俺も京川さんに完全に同意する。そこまでヤバいことになっている部活との縁なんか完全に切ってしまった方がいいし、そこにいたという経歴すら足枷になりかねない。と言うかその話が本当なら向島大学の、と言うか公立大学だから向島エリアの暗部なんだが?
「私が天文部で比較的きちんと活動が出来ていたのは奇跡的なことなのですね……」
「そうね。それこそ天文部がヤバいことを知ってたマエトモの口添えのおかげだし、その情報でまもちゃんが真面目な天文少女の春風ちゃんを囲ってくれたんだから。マエトモに相談した幼馴染みの子にも感謝した方がいいよ」
「前原先輩か……。あれだけクズなのにロボコンの話だけはガチなんだよなあ。謎に強かった」
「前原先輩というのは、奏多が打ち倒そうとしていたバドミントンサークルの先輩ですよね」
「ああ、その人だな」
「あの奏多が赤子の手を捻るようにしてやられたと聞いて、どんな実力者なんだろうと思っていたのです。最後に一度だけ勝つことが出来たそうで、奏多も悔いを残すことなくMMPの活動をやれているようです」
「酒と煙草と勝てない賭事の印象が強すぎてそんな風にはとても見えないのだが」
「S君、どんなクズだろうと真面目に向き合う物事のひとつやふたつくらいあるんだよ。S君もまあまあなクズなんだからわかるでしょ」
「俺がクズなのは否定しませんし真面目に向き合う物事もあるので言っていることはわかりますがだからと言って京川さんと同じ括りとして扱われるのは解せませんね」
「こわーい。S君こわーい。ねえ春風ちゃん」
「野坂先輩が屑だなんてとんでもありません! 野坂先輩はとても素晴らしい先輩でいらっしゃいます」
「うう……俺はそんな聖人君子じゃないのだが?」
end.
++++
公的な、お金の飛ばないライトな野島ゼミの飲み会。プレゼミ生がいるとのことなので多分その辺にジュンもいる
樹理ちゃんが天文部OBという設定はフェーズ1で樹理ちゃんが出てきたばかりの頃に言ってたので拾った
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