2023

■勝負のレベル

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「何か、カズん家でサッカーじゃないスポーツ中継が入ってるイメージなかったわ」

 弁当サブスクについてくる晩飯の権利を使わせてもらいながら、テレビからの音に目をやる。映し出されているのは録画のバスケットボール。サッカー以外のスポーツにワールドカップがあるというのをあまりよく知らなかったんだけど、バスケのワールドカップというのを見ているんだそうだ。
 で、ウチの会社はちょっと前まで忙しかったから、俺も伊東さんも割と曜日や時間に関係なく働いていた。それでなくても伊東さんはコミフェ休暇をしっかり取っていたので他の休みを返上する形でバリバリやっていた。映画とバスケが見た過ぎるんだという話は1日に2回くらい。挨拶代わりの話題だった。

「ほら、慧梨夏は今でも一応時間を見てボールには触ってるくらいには実際のバスケも好きだからね」
「俺から見ると同人趣味のゲーマーって印象の方が強いから、実際のバスケっつーかスポーツ観戦が意外に思える」
「先の印象もそれはそれで合ってるっちゃ合ってる」
「これってどこの国の試合?」
「どこだろ。わかんない。配信サービスだと全部の試合が見れるらしくってさ」
「へー。そっか、カズがサッカー見るからそういうサービスには元々入ってんのか」
「そーゆーこと。趣味の出費は惜しむなっていうスタンスだからね」

 伊東さんは本当に食い入るようにテレビにかじりついている。俺はバスケはさっぱりだけど、分かる人にはこの画面を見て何がどうとかっていうのがわかってなお楽しいんだろう。……つか、俺はバスケ以外のスポーツもさっぱりだった。サッカーも山口に解説してもらったし、バスケは伊東さんに解説を頼んだらいいだろうか。
 スポーツ観戦と解説と言えば、すごく意外だったのがリン君がテニスを知ってるってことだったな。高校の時にテニス部だったらしい。って言うかリン君て意外に体育会系なんだよな。っていう話を伊東さんにしたら「リンちゃんはバリバリの体育会系だよー」ってあっけらかんと笑ってたので、やっぱ知ってるか知らないかだなあ。

「あー…! 久々に勝負したい~…!」
「慧梨夏、何かあった?」
「スリーポイントの決定率がやっばいの! うずうずする~…! カズじゃ相手になんないもんねえ」
「だな。他当たってくれ。それとも姉ちゃんのアポでも取るか?」
「先輩でお義姉さん相手にこう言っちゃ失礼かもだけど、スリーポイントだけの勝負だったらほぼ勝ち確なの。もっとヒリヒリした勝負がしたい!」
「あー、サトシ相手みたいな?」
「そう! そんな感じ!」
「まあ、どうせ勝負するなら同じシューターとやりたいよなあ。正直姉ちゃんにスリーポイントのイメージは全然ない。ドライブドライブからのドライブだもんよ」
「あー、誰か勝負に乗ってくれそうな人いないかなー」

 そんなことを言いながら、伊東さんはエアでシュートを打っている。フォームが綺麗であるということは素人なりにわかる。カズも高校の時にはバスケ部だったらしいけど、カズは素人に毛が生えたレベルで伊東さんの相手ではないとのこと。
 そう言えば山口も前に一緒にサッカーを見たときにはボールに触りたいなあと呟いていたように思う。競技に対する未練はないとは言うけど、趣味としてサッカーにはたまに触れたいと。果たして俺にはそういう物はあるだろうか。物書きはずっと触れ続けてるしなあ。

「カオちゃんの人脈で誰かバスケやってる人いない?」
「それこそ拳悟と越野になるんだけど」
「知ってるんだわ。あとスリーポイント勝負だったら大体勝てるんだわその2人だと」
「だよなあ」
「あとこっしーって今忙しいんじゃない?」
「そうなのか? あ、いや、そうだわ。確かにあの会社は今結構忙しいはずだ」

 大石が忙しい忙しいって言って楽しそうにしてるのもそうだし、USDXの方でもソルさんのツミツミ動画が淡々と毎日上がっているので忙しいんだなあと。グループの諸先輩方によれば、10月過ぎまではこの調子だそうだ。その2人が忙しいってことは越野も忙しいんだろうなあ。

「つかさ慧梨夏」
「なに」
「そもそもお前の基準でスリーポイント勝負をしようと思うから人選の幅が狭まるんだろ」
「でもどうせやるなら互角以上の相手とやりたいじゃん」
「気持ちはわかるけど」
「バスケに限らず勝負事ってそうなんだよ。ぷよテトやるならカオちゃんよりスガちゃんとやりたいとかね」
「あれ。慧梨夏お前スガちゃんとゲームやったことあんの」
「1回ぷよテトやったことある。すっごい強くて久々に燃えたよねあの時は!」
「確かにアイツは俺の知る中ではパズルゲーム最強だからな」

 去年1度京川さんの気紛れでパズルゲーム頂上決戦というのをやったことがあった。元々は雨宮さんこと伊東さんと、ナユことなっちの対決が見たいということで始まったんだけど、ついでだしパズルゲームUSDX最強のお前も参戦しろとかそんなノリで菅野が巻き込まれてたような気がする。

「スガちゃんてすげーよなー。勉強も出来るしスポーツも出来るのにゲームも音楽もやっててその上人格者だぜ? 1回人生相談されたことあるけどスガちゃんなら大丈夫としか言えねーよあんなん」
「菅野がお前に人生相談?」
「ああ、まあ、将来に関する具体的な計画とかそんなようなことかな? お金とか家とか仕事とか、あと結婚とか、そんなような」
「ああ、なるほど。確かに菅野は人格者ではある。俺の命の恩人でもあるしな」
「カズ、スガちゃんてスポーツ出来るならバスケも出来るかな?」
「サッカーは出来るみたいだけどバスケはわかんねーぞ。って言うか何巻き込もうとしてるんだお前は」
「いや、案外誘えば乗ってくるかもしれないぞ」
「バスケがしたいの! とにかく! うちと互角の相手を~」
「仕事と物書き以外使えなくて悪い」
「カオちゃんは仕事と物書きが出来れば十分なんですけど?」


end.


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公開のタイミングが完全に遅れたヤツ。でも今年っぽい話だから上げておく
仕事と物書きはちゃんと出来ますと言えるPさん。それだけで強い

(phase3)

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