2023

■異色なメンバーに交わる

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「何か、不思議なメンバーでのお出かけですね。ちょっとだけ緊張しちゃいます」
「パロでも、そんな風に思うのか」
「だって、他校の先輩の車に乗せてもらってエリアを越えるんだよ? 殿は平気なの?」
「サキ先輩には、夏合宿で世話になった。それに、すがやん先輩は、カノン先輩の言葉を借りれば、半分MMPの人だ。そこまで、他校の先輩という感覚はない」
「殿がそんな風に言ってくれるなんてすっげー嬉しいな。じゃ、改めてよろしくなー」

 サキと向島の殿、それからパロを連れてこれから向かうのは、りっちゃん先輩がバイトしてるっていう山浪の喫茶店だ。なかなかいい店だって話は聞いてたんだけど、如何せん場所が遠いからちょっとそこまでっていう感覚では行けなくって。
 だけど、これから授業が本格化すると時間もなくなるし、冬になっちまったら余計厳しい。これが最初で最後のチャンスだと強行突破することにした。りっちゃん先輩が住んでるのは山浪でも山の方とは聞いてたから持久戦の覚悟はしている。山道運転は薪ストーブの会で経験済みだ。
 その店は店主がコーヒーにかなりこだわっているらしくて、とにかくコーヒーが美味いらしい。果たしてその違いが俺にわかるかは微妙だけど、軽食も美味いそうだ。村のたまり場になってるって話だから、地元の常連の人はメニューにないメニューを急に注文したりもするとか。

「この間、即興で作ってもらった夏野菜トーストが、美味かったです」
「ああ、あれは本当に美味しかったよね。エージ先輩もとても気に入ってて、僕も一緒にりっちゃん先輩から作り方も教わったんですよ。お店オリジナルのパンの上にカットした野菜をバーッと乗せて、チーズをぱらぱらーっとかけて、焼くんです。野菜のうまみがじゅわ~っとして」
「うわー、美味そー。なあサキー」
「そうだね」
「サキは最近美味い物に目がないから。りっちゃん先輩に何作ってもらうか今から考えとけー」
「って言うか、現地でメニューを見なきゃわからないじゃない」

 ラジオ局でバイトを始めてからのサキは、仕事終わりの夜食が美味しすぎて少し食べ過ぎてしまうことが悩みらしい。この間、夏合宿のモニターに来ていたベティさんが切り盛りするバーの食事が本当に美味しすぎて、サキでも普通の人の1人前を余裕で平らげてしまうほどだとか。
 去年向島に留学してたときにも見聞きしたから、りっちゃん先輩の料理の腕は知っている。正直、メニューに書いてある喫茶店の定番メニューじゃなくて、りっちゃん先輩に無茶振り注文をしたい気持ちが強い。でも、それが叶うかどうかは時の運だ。

「そう言えば、殿って今、作品出典で春風とジュンと映像作品だっけ? 作ってるんだろ? 宇宙がテーマの挿し絵のあるラジオだとは聞いてるけど」
「はい。とは言っても、自分は、声の収録くらいしか、していません」
「編集は?」
「編集は、ジュンが担当します」
「挿し絵のあるラジオっていう体の映像作品だったら、声と、背景と、BGMが最低でも必要になるのか」
「そうです」
「春風に聞いた話では、挿し絵はジュンが担当してくれてるそうなんだけど、春風が喋ってる内容を自分も理解してないと納得の行く絵が描けないって言って星とか宇宙の勉強をめちゃくちゃやってるらしいな」
「ジュンらしいね」
「ジュンって、緩む時間があるのが嫌な人なのかな」
「サキ、どーゆーこと?」
「いや、FMにしうみの学生番組の打ち合わせも始まるのに、ガツガツやることを突っ込むでしょ。1分1秒たりとも時間を無駄にしたくないとか、ヒマな時間の過ごし方を知らないとか、いろいろあるんだろうけど」
「いやいやいや、サキ、お前今結構大事なことサラッと言ったな!? えっ、FMにしうみの学生番組の話が始まるって?」
「ああ、そうなんだよ。もうちょっと話が詰まってから定例会で報告するつもりだったんだけど、別に内緒の話でもないからいいかなって」

 今の話の文脈を読み解けば、ジュンがその学生番組に参加するってことだろ? 何か、俺の中ではジュンがそういう企画に参加するイメージはあんまなかったからただただ驚いている。きっとそれはリアクションを見る限り、パロも同じみたいだ。殿はいつも通り、動じてないけど。
 夏合宿にラジオ局の人が見に来ていたのも、学生番組の企画を進める上で必要な現段階での学生のレベルを測りに来ていたっていう話だ。局のアルバイトスタッフであるサキを中心に、何人かを集めて1時間番組をやる……というところまでは聞いてたんだよ。

「サキ先輩、ジュンがラジオをやるんですか!?」
「そういうことになってるね」
「殿、聞いてた?」
「ああ。作品出展の制作中に、聞いた」
「じゃ春風も知ってんのかな」
「個人的に報告をしていないのであれば、存じないかと。その場は、自分だけでした」
「へー、ジュンかー。向島から出るんだったらジャックとかうっしーかなって思ってたけど」
「僕もそういうイメージでした。実際興味はあるみたいでしたけど、毎週豊葦から西海に行くのはツラいなーとも言ってました」
「あー、そうなるよなー。豊葦からだったら確かにキツい」
「サキ先輩、他に決まってるメンバーは誰がいるんですか?」
「俺と、ジュンと、ウチの琉生。それから青女のまつりに、青敬の雨竜だね」
「2年のメンバーは何かわかるな。雨竜もまつりも活動的なイメージだし。番組の企画とか、メンバー間のバランスはよくわかんないけど」
「雨竜もまつりも、一見ぎゃあぎゃあウルサいだけに見えて番組制作に関しては強みがあるから個人的には全く心配してないね。ジュンは知っての通り、落ち着いてるし常識人枠っぽいから、一番心配なのは琉生かな」
「あー、何となくわかっちまうな、身内だけに。ツッコミはサキがいるからまあ大丈夫だろうけど」
「え、俺がツッコむの。嫌だよ」
「サキ先輩は適任な気がします」
「パロ、知った風な口利かないで」
「ううっ、すみませんっ…!」
「あーもーサキ、今のちょっとキツいぞ。パロ、ごめんなー」
「あ、いえ、大丈夫です」
「すがやんが謝ることじゃないでしょ」
「サキ先輩は、問題があれば、その場で指摘出来る。話を進めたり、軌道修正の力に優れるとは、俺も思います」
「え、そうかな」
「俺は殿の言う通りだと思うぜー」
「すがやん。適当に同意しないで」
「適当じゃねーっつの」

 そんなことを話しながらも、着々と景色は緑色が深く濃くなっている。今向かっているのは先代のMMPが誇るラブ&ピース……悪意のあるボケをさせたら右に出る者はいないと言われるりっちゃん先輩のバイト先。後輩相手だから厳しいかもだけど、りっちゃん先輩とサキの組み手が見たいなー。

「さ、もうすぐだ。何食いたいか考えないと」


end.


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りっちゃんのラブピを懐かしみ、見たいなーと思ってるすがやんがちゃんとMMPに染まっていたなど

(phase3)

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