2023

■infinite vitality

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「いやぁ~圭斗君! 今年も愛の伝道師らしからぬ誕生日の過ごし方をしているねえ! ウッケる~!」
「それで? 誕生日の相手を飲みに誘ったからにはもちろん先輩の奢りですよね? とりあえず刺身が食べたいなあ~」
「圭斗テメー! それが先輩に対する態度かー!」

 煽られてムカついたからやり返したくらいでどうこう言われる筋合いもない。と言うか、この人もこれくらいではひとつも動じていないので、至っていつも通りのやり取りというワケだね。まあ、誕生日に過ごす相手が村井おじちゃんというのは不覚なのだけれども。

「つか俺刺身食えんし食うなら自分で出せよ」
「チッ、使えねー」
「ンだとテメー!」
「それじゃあ魚の刺身はいいですから、馬刺が食べたいです」
「馬刺ねえ……また絶妙にちょっとだけ高いモンを」
「でも村井サンも食べたいでしょ?」
「それはそう」

 すいませーんと高らかにおじちゃんの声が通り、店員が注文を取りに来る。本当に“とりあえず”頼んだものと、本命の馬刺と。それからおじちゃんがついでに頼んだ鶏の刺身と。

「な~まにくっ、な~まにくっ」
「はしゃぐねえ圭斗。お前いくつになったの」
「村井サンの1コ下ですよ」
「知ってんよ。年甲斐もないはしゃぎ方すんなっつってんだよ」
「言って僕も村井サンもまだまだ若造、ガキじゃないですか」
「そりゃ男はいくつになってもガキだっつーけどだな」
「ところで鶏の刺身は美味いんですか?」
「いや、俺も食ったことない。あんま見たことないし食ってみてーって思って」
「いいですね」

 僕は23歳の社会人1年目だし、村井サンは次の1月に24になる社会人2年目なので、まだまだこれからであることには間違いない。年甲斐も何も、という気はする。せめてあと3、4年経ってから言ってくれという話だね。

「歳と言えばさ、こないだダイさんと遊んだんよ」
「へえ、ダイさんですか」
「ダイさんはマジで若い。体力もヤバい」
「僕の3コ上ですから、26ですか。いつ会っても活力が漲っているという印象はありますよね」
「そうそう、そーゆーコトな。途中からマジでついてけんくなった。えーお前もうバテたのっつって怒られるもんな」
「そう言えば、ダイさんはお麻里様とは別れたんですよね」
「そーね。っつっても結構前の話だけどな。いつまでガキみたいなことしてんのっつって麻里に愛想尽かされたって言ってた」
「僕たちにも突き刺さりますね」
「んだ」

 とは言えお麻里様が新たに付き合っている相手も一般的な会社員などではなくある種の夢追い人という話で、ありゃしばらく付き合ってまた同じ別れ方するぜ、とはおじちゃんの見解。麻里さんは如何せん半ヒモ(完全なヒモではない)と付き合いがちな傾向にあるそうで。

「ダイさんが若いのって、トレンドとか世の中の話題を勉強してるのもそうだけど、若い空気の中に突っ込んでいく機会があるからってのもあると思うんだよな」
「ああ、空気というのは確かに大事ですよね」
「今年も例によってインターフェイス夏合宿の講師やってたじゃんか。若い子との交流楽しい楽しいっつって」
「ダイさんらしいと言えばらしいですけど、よくやりますよね」
「でも、今年はモニター会にFMにしうみだのFMむかいじまだのの偉い人が来てたらしくて、業界の人との繋がりも出来たからちょっとラッキーだったっつってたな」
「へえ、なかなかガチなラジオ局じゃないですか。そんな人がモニター会に来てたんですか」
「何か、FMにしうみで学生番組の企画が上がってるらしくて、その視察だってよ。FMむかいじまの人は、高崎を輩出した団体の合宿に興味があるとかでついてきたって」
「高崎? あの高崎ですか」
「ほら、何年か前にFMむかいじまのパーソナリティーコンテストってあっただろ、広瀬が準グラ取ったとか三井が惨敗したとかってヤツ」
「ああ、あったような気がしますね」
「FMむかいじまの人はあのコンテストで高崎に予定になかった賞をあげたっつー人らしい」
「予定になかった賞をあげられるとか、相当偉い人じゃないですか」
「その人もまた何かノリがいい人らしくて波長が結構合うんだと。飲みに行くようにもなったらしいし」

 ダイさんと波長が合ういい大人。とりあえず、物凄いバイタリティなんだろうなという想像には難くない。ダイさんにしてもラジオ局の偉い人にしても、いろんな現場に自分の足で行くということをするのがまず異次元の活力だなと思うわけで。
 僕は休みになる度疲れたなあと言って引きこもる生活に片足を突っ込んでいるので、完全なインドアになって出会いがなくなる前に何とかしなければ。特に、ダイさんの今の話を聞いていると、恋愛に限らず仕事や趣味の出会い、繋がりというのも欲しいなとは。思いはするのだけれど。

「と言うか、ダイさんに付き合ってせっかくの休みに遊ぶ村井サンも結構な体力ですよね」
「あー、まー俺はインドアアウトドア半々くらいの人間だからなあ」
「休みに外出るの、単純にしんどくないです? 出なくても暮らせはするじゃないですか。最悪買い物もネットで済みますし。特に夏の日差しなんて害悪ですよ。まだ暑いじゃないですか。外に出たくないよう、しくしくしく」
「なーんか似たようなことを誰かが言ってんの聞いたことあるなあ。誰かはすぐ出てこねーけど」
「僕もすぐにはパッと出て来ませんね。聞いたことはあったと思うんですが」

 ――などと話していると、何らかの通知が入る。普段通りにそれを確認すると、村井サンの疑問の答えがそこに。

「あ。村井サン、そんなようなことを言っていたのは菜月さんですよ」
「おー! そーだ菜月だ!」
「泣く子も黙るアビスの女王ですよ」
「つーか、アイツ生きてんのかね。緑風だろ?」
「生きてはいますよ。たった今、僕の誕生日を祝うメッセージが届きました」
「良かったなあ圭斗、誕生日を祝ってくれる同期がいて」
「ええ。そうですね」
「誕生日を祝ってやってる先輩もありがたがれ?」
「は?」
「とりあえず、菜月に返信したれよ」
「そうですね。今年はロボット大戦の年ですし、大学祭にでも誘ってみましょうか。遠方ですから誘うなら早い方がいいでしょう」
「何それ、ロボット大戦がそんな意味あんの。2年に1回やってるヤツだろ?」
「野坂の晴れ舞台ですからね。どうせならセッティングしてやりましょうという先輩の心遣いじゃないですか」
「ひゅ~っ、余計なお世話~っ! でもナイスゥ! つかアイツらって今どーなってんの?」
「どうもしないんじゃないですか。僕は知りませんよ」


end.


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圭斗さんと村井おじちゃんはちょっと下世話なくらいがちょうどいい
圭斗さんの誕生日はおまけ程度の要素だけど、やってもらえる辺りがさすが圭斗さん

(phase3)

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