2023
■何やかんやわちゃわちゃ
++++
「ねえねえみえちゃん! この間のアニメどこまで出来た!?」
「えっと、この間のから20秒追加出来たよ」
「20秒~!? 短いー!」
「で、でも……クレイアニメの20秒は、きっと、想像以上に大変なはず……だよね?」
夏合宿の班打ち合わせを何回かしているうちに、気付けば1年生はそこそこ仲良くなっていた。クソ人見知りのツッツでさえ、何となく輪の中で会話をするまでになっている。だーから放り込んでみなきゃわかんねーっつってんのにアイツらは。
「いやー、今日も1年はわちゃわちゃなこって」
「仲良くなったみたいで良かったよ。なあ奏多」
「だからお前は心配しすぎなんだよ」
こっちがちょっと心配していた星ヶ丘の大井沢きぬは確かにドアッパーな奴だしテンションがバリ高い。初対面だろうが何だろうが臆せず来る奴だ。一歩間違えば無礼極まりないし地雷を踏みかねないんだが、班の巡り合わせで現状ギリギリセーフってトコだろう。
青敬の松本美瑛っつー子は、ツッツときぬの間くらいのテンションの奴で、両極端な2人の潤滑剤みたくなっている。サークルではクレイアニメを制作しているとかで、まずは物珍しさにきぬが食いつき、制作風景の職人ぽさにツッツも関心を示した。
一方で、きぬもツッツに最初からガンガン突っ込んできたし、美瑛の方もツッツのDIY趣味に興味を持ったようで案外スムーズに話が進んだように思う。すがやんなんか自分トコの後輩よりツッツの心配をしてたから、今じゃニッコニコよ。
「ねえツッツ」
「な、なに…?」
「ちょっと相談していいかな? 趣味の事なのね」
「うん、話を聞くだけなら、いいよ」
「ありがとう。あのね、私ね、クレイアニメの息抜きにジグソーパズルとかナノブロックを組み立ててるのね」
「うん」
「ナノブロックはいいんだけど、組みかけのジグソーパズルの収納に困ってるのね。広げたままだと場所を取るし散らばっちゃうのね」
「確かに、そうだね」
「それでネットで調べたんだけど、こういう棚が出てきたのね」
「ちょっと見せてもらって。……うーん、なるほど。MDF材をトレーみたいにして組んであるんだね。で、それが引き出しになってて」
「これがいいなって思うんだけど、これって業務用と言うか公共の施設みたいなところで使われてるみたいなのね。一般の人が買おうにも買えないみたいなのね」
「そしたら、美瑛さえ良ければ作ってみようか?」
「出来るの?」
「全く同じ物にはならないけど、“ぽい”物は出来ると思う。この棚の値段くらいで予算を見てみるよ」
「ありがとう!」
クレイアニメの息抜きにジグソーパズルとナノブロックって、どっちにしても細かい作業じゃねーかと思うが、多分美瑛的にはクレイアニメに比べりゃ息抜きに出来る程度の作業なんだろう。性格なのか何なのか、細かい作業に対する集中力は目を見張る物がある。
それは実際にミキサーとしても表れていて、音の流れみたいなモンをフレームに区切って考えてる節がある。パッと聞いた分には滑らかに聞こえてるモンでも「今のは手が早すぎたのね。音がガタツいてるのね」なんて言って納得しない。コマだのフレームだのの考え方は実に青敬らしい。
「つっつんはすごいねえ。写真見ただけで“ぽい”物が作れるとか!」
「あ、うん……何となく、構造がわかれば、あとは自分なりに、仕様を考えて……このパズル棚は、結構単純だから、材料を集めれば、すぐかな……」
「すっご! つっつんがうちの班にいてくれたら大道具とか小道具とかパパッーと作ってくれそう!」
「お、大道具はともかく、小道具は、向いてないと、思う……」
「えー? そうかなー? この間3人で粘土こねた時、すっごい上手だったじゃん! ねえみえちゃん!」
「そうなのね。ツッツは手先が器用なのね。きっと小さい物も上手になるのね。やり方を覚えたら、木工細工で腕時計とかスマホスタンドとか作っちゃうのね」
――という話を聞きながら、木工細工をググってんのはすがやんだ。すがやんは多趣味だし、本人はレザークラフトに興味があるらしい。工芸品みたいなモンも好きみたいだし、あれこれ調べていいないいなーってテンション上がってやがる。
「木っていいよなー。そもそも育つのに時間がかかるだろ? 年輪でいろいろ分かるしロマンの塊っつーか」
「はいはい出たよ出たよ、ミルフィーユを重ねる時間のロマン、的なすがやんの迷言が」
「それを言うならミルクレープな」
「どっちも一緒だろ」
「俺もツッツに本棚作るの手伝ってもらってるけど、小さい雑貨もいいなー」
「お前らツッツを便利屋か何かだと思ってねーか?」
「松兄はいつもつっつんと一緒だからつっつんがどれだけスゴいかわかってないんすよ! マヒってんすよ!」
「や、コイツのDIYがすげーのは知ってるけど、それとお前らが何でもかんでもツッツに頼んでるのは別だろ」
「お、俺は、好きでやってるので……。本当に無理な話は、断りますし……」
「お前に人の頼みを断れるだけの胆力があんのかよ。顔合わせでビビってやがるクセに」
「うう……」
「まーまー奏多! ツッツもこれだけ頑張れてんだから、なっ!」
「あー! 松兄がつっつんイジメてるー!」
「これのどこがイジメなんだよ。いいか? コイツの人見知りはウチの連中が全員匙を投げたんだ。その面倒を見てる俺は聖人君子なワケ!」
「それを自分で言わなきゃなあ。奏多の面倒見がいいのは本当なんだから」
「ホントにー! 松兄調子良すぎっすよ」
「大丈夫なのね。ツッツも、松兄の事はとても信頼してるのね。曰く、格好良くて頼れる兄貴分なのね。ミキサーも上手くて凄いって言ってたのね」
「ちょっ…! 美瑛…!」
「ほほーん、ツッツ~、お前は俺の魅力を分かってくれてるみてーだなァ! よしよし、これからも任せとけって!」
「これは今日のおもしろエピソードに」
「すんなよ! すがやん!」
end.
++++
おもしろエピソード)春風にチクる くらいの意味になってそう
キャラが増えると話が広がるのはナノスパあるある。青敬サイドも盛り上がって欲しい。
ツッツはみんなのDIYを手伝ってるけどその分のお金はちゃんと貰ってる。材料費だとか。
(phase3)
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「ねえねえみえちゃん! この間のアニメどこまで出来た!?」
「えっと、この間のから20秒追加出来たよ」
「20秒~!? 短いー!」
「で、でも……クレイアニメの20秒は、きっと、想像以上に大変なはず……だよね?」
夏合宿の班打ち合わせを何回かしているうちに、気付けば1年生はそこそこ仲良くなっていた。クソ人見知りのツッツでさえ、何となく輪の中で会話をするまでになっている。だーから放り込んでみなきゃわかんねーっつってんのにアイツらは。
「いやー、今日も1年はわちゃわちゃなこって」
「仲良くなったみたいで良かったよ。なあ奏多」
「だからお前は心配しすぎなんだよ」
こっちがちょっと心配していた星ヶ丘の大井沢きぬは確かにドアッパーな奴だしテンションがバリ高い。初対面だろうが何だろうが臆せず来る奴だ。一歩間違えば無礼極まりないし地雷を踏みかねないんだが、班の巡り合わせで現状ギリギリセーフってトコだろう。
青敬の松本美瑛っつー子は、ツッツときぬの間くらいのテンションの奴で、両極端な2人の潤滑剤みたくなっている。サークルではクレイアニメを制作しているとかで、まずは物珍しさにきぬが食いつき、制作風景の職人ぽさにツッツも関心を示した。
一方で、きぬもツッツに最初からガンガン突っ込んできたし、美瑛の方もツッツのDIY趣味に興味を持ったようで案外スムーズに話が進んだように思う。すがやんなんか自分トコの後輩よりツッツの心配をしてたから、今じゃニッコニコよ。
「ねえツッツ」
「な、なに…?」
「ちょっと相談していいかな? 趣味の事なのね」
「うん、話を聞くだけなら、いいよ」
「ありがとう。あのね、私ね、クレイアニメの息抜きにジグソーパズルとかナノブロックを組み立ててるのね」
「うん」
「ナノブロックはいいんだけど、組みかけのジグソーパズルの収納に困ってるのね。広げたままだと場所を取るし散らばっちゃうのね」
「確かに、そうだね」
「それでネットで調べたんだけど、こういう棚が出てきたのね」
「ちょっと見せてもらって。……うーん、なるほど。MDF材をトレーみたいにして組んであるんだね。で、それが引き出しになってて」
「これがいいなって思うんだけど、これって業務用と言うか公共の施設みたいなところで使われてるみたいなのね。一般の人が買おうにも買えないみたいなのね」
「そしたら、美瑛さえ良ければ作ってみようか?」
「出来るの?」
「全く同じ物にはならないけど、“ぽい”物は出来ると思う。この棚の値段くらいで予算を見てみるよ」
「ありがとう!」
クレイアニメの息抜きにジグソーパズルとナノブロックって、どっちにしても細かい作業じゃねーかと思うが、多分美瑛的にはクレイアニメに比べりゃ息抜きに出来る程度の作業なんだろう。性格なのか何なのか、細かい作業に対する集中力は目を見張る物がある。
それは実際にミキサーとしても表れていて、音の流れみたいなモンをフレームに区切って考えてる節がある。パッと聞いた分には滑らかに聞こえてるモンでも「今のは手が早すぎたのね。音がガタツいてるのね」なんて言って納得しない。コマだのフレームだのの考え方は実に青敬らしい。
「つっつんはすごいねえ。写真見ただけで“ぽい”物が作れるとか!」
「あ、うん……何となく、構造がわかれば、あとは自分なりに、仕様を考えて……このパズル棚は、結構単純だから、材料を集めれば、すぐかな……」
「すっご! つっつんがうちの班にいてくれたら大道具とか小道具とかパパッーと作ってくれそう!」
「お、大道具はともかく、小道具は、向いてないと、思う……」
「えー? そうかなー? この間3人で粘土こねた時、すっごい上手だったじゃん! ねえみえちゃん!」
「そうなのね。ツッツは手先が器用なのね。きっと小さい物も上手になるのね。やり方を覚えたら、木工細工で腕時計とかスマホスタンドとか作っちゃうのね」
――という話を聞きながら、木工細工をググってんのはすがやんだ。すがやんは多趣味だし、本人はレザークラフトに興味があるらしい。工芸品みたいなモンも好きみたいだし、あれこれ調べていいないいなーってテンション上がってやがる。
「木っていいよなー。そもそも育つのに時間がかかるだろ? 年輪でいろいろ分かるしロマンの塊っつーか」
「はいはい出たよ出たよ、ミルフィーユを重ねる時間のロマン、的なすがやんの迷言が」
「それを言うならミルクレープな」
「どっちも一緒だろ」
「俺もツッツに本棚作るの手伝ってもらってるけど、小さい雑貨もいいなー」
「お前らツッツを便利屋か何かだと思ってねーか?」
「松兄はいつもつっつんと一緒だからつっつんがどれだけスゴいかわかってないんすよ! マヒってんすよ!」
「や、コイツのDIYがすげーのは知ってるけど、それとお前らが何でもかんでもツッツに頼んでるのは別だろ」
「お、俺は、好きでやってるので……。本当に無理な話は、断りますし……」
「お前に人の頼みを断れるだけの胆力があんのかよ。顔合わせでビビってやがるクセに」
「うう……」
「まーまー奏多! ツッツもこれだけ頑張れてんだから、なっ!」
「あー! 松兄がつっつんイジメてるー!」
「これのどこがイジメなんだよ。いいか? コイツの人見知りはウチの連中が全員匙を投げたんだ。その面倒を見てる俺は聖人君子なワケ!」
「それを自分で言わなきゃなあ。奏多の面倒見がいいのは本当なんだから」
「ホントにー! 松兄調子良すぎっすよ」
「大丈夫なのね。ツッツも、松兄の事はとても信頼してるのね。曰く、格好良くて頼れる兄貴分なのね。ミキサーも上手くて凄いって言ってたのね」
「ちょっ…! 美瑛…!」
「ほほーん、ツッツ~、お前は俺の魅力を分かってくれてるみてーだなァ! よしよし、これからも任せとけって!」
「これは今日のおもしろエピソードに」
「すんなよ! すがやん!」
end.
++++
おもしろエピソード)春風にチクる くらいの意味になってそう
キャラが増えると話が広がるのはナノスパあるある。青敬サイドも盛り上がって欲しい。
ツッツはみんなのDIYを手伝ってるけどその分のお金はちゃんと貰ってる。材料費だとか。
(phase3)
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