2023
■ずっと荒っぽいかは誰次第?
++++
「おいツッツ、そんなビクビクしててもどーもなんねーんだよ」
「す、すみません……」
「まーまー奏多。ツッツ、俺もいるし安心してなー」
「ありがとうございます……」
インターフェイス夏合宿の班割りが発表されて、いよいよ本格的に打ち合わせに入るところは入り始めた。何だかんだ言って俺も夏合宿っつーのは初めてだから、今回の班顔合わせはどういう感じで立ち回っていくかの様子見としては結構大事な回だ。
俺は青女のちとせっつー子が班長の班に組み込まれた。班の欄を見てるとすがやんだのツッツだの、見知った名前がいくらか。かっすーと春風によれば、班編成は実力だの何だののバランスを見ながら組むらしいが、俺は番組もまあやれるだろって思われたらしい。まあやれるけどな。
この編成にめちゃくちゃホッとしたような様子だったのがツッツだ。コイツはとにかく人見知りで、現在荒療治の真っ最中。だけど今回の夏合宿では俺とすがやんがいるから自分と知ってる人間で班の半数になる。まあまあ甘やかされたようだ。
で、大学のある豊葦から星港までの道のりを、すがやんの車に乗せてもらって作戦会議をしながら行くことに。打ち合わせに行ってくるっつったら、どいつもこいつもツッツをよろしくだの何だのと。ったく。俺はベビーシッターかっつーの。
「ところで情報通のすがやんよ」
「何だよ。ってか情報通ではないけど」
「お前さ、あと2人の1年の情報入れてきてる?」
「あー、ちょっとは」
「おっ、さすがだな。初心者講習会でもパロの後ろでガタガタ震えてたツッツのために軽く予習させてやってくんねーか」
「あー……ツッツ、初心者講習会もダメだった感じ?」
「じ、人口密度が……あと、何か、奇抜な人とかもいて」
「お前よー、インターフェイスに出るんだったらちょっと奇抜なくらい何だよ。つかウチにだって殿っつー、他に類を見ないのがいるだろ」
「殿は、しょうがないじゃないですか。体が大きいのは、自分じゃどうにも出来ないですし。それに、殿は優しいです。俺が怖いのは、人為的に作られた雰囲気みたいな物と言うか……」
「見た目が何であれ話したらいい奴だったっつー経験はすでに殿で出来てんだから、何を恐れることがあるっつーんだ」
「まーまー奏多。今回は前より人口密度も低いし場の圧みたいなモンも少ないだろうから、ツッツも前よりイケるって」
「すがやん。お前どこまでツッツに甘いんだ」
このテの話になるとお前はツッツに厳しいだとか、荒療治にも程度があるとサークルの連中は言うけど、どーにもなんねーモンはならねーし、マジでダメなら体に出る。ツッツは今んトコ、ビビってるだけでマジな発作とかじゃねーからまだイケんだよ。っつーのが俺の考えな。
「つか俺ちとせっつー子もよく知らねーんだけどどーゆー子よ」
「ちとせはまあ、おっとりした感じのほわっとした子かな? 優しいと言うか」
「おっ、良かったじゃんかツッツ。あんま勢い強い感じじゃなさそうで。ウチだと誰に近いとかあるか?」
「えー? 今のMMPだったら強いて言えばパロに近いんじゃないかな?」
「だってよ」
「よ、良かったです……」
「じゃあ1年は?」
「星ヶ丘の子は結構ぐいっぐい来る超アッパーな感じの子だとは聞いてる。初心者講習会でもアナウンサー側の席に座ってた子みんなに強烈な挨拶をしてたとか」
「おー、なかなかやるじゃん。面白そうな奴」
「ひっ…!」
「青敬の子はラジコンとか模型が好きらしくて、そういうのを組み立てたり、サークルで作ってる作品の企画を練ったりするのに黙々と作業するのが好きなんだって」
「へ、へえ……」
「そいつ、タイプ的にお前に近いんじゃね?」
「ちょ、ちょっと、気になります……模型の話、とか……」
何にせよ実際話してみないとどーにもなんねーけど、今のところ危なそうなのは星ヶ丘の女子だな。グイッグイ来る超アッパーな奴とか、うっしー比どんくらいかがわかんねーとツッツにはキツいかもしんねーな。っつっても俺とすがやんがいるんだからビビってんじゃねーよっつー。
つかすがやんの情報網がガチなんだよないつもながら。今回の話は誰に聞いたんだっつったら、ササに頼んでそれぞれの大学の奴に聞いてもらったって。逆に自分もある程度情報を渡してるらしいし、誰の取説がどうだ、的なことはある程度頭に入れてあるとか。
「そしたらツッツの話も各大学に回ってんのか? 人見知りのビビリ的な評判で?」
「班編成の時点で考慮されてるんだったら少なくとも対策委員にはそういう認識をされてるんじゃないかなー」
「うう……」
「うう、じゃねーんだよ。お前がビビリ散らかしてるからかっすーも春風もコイツをどーすんだっつって対策委員の連中に相談するハメになったんだろ。いいか。本来知らねー奴が5人のところを3人にまで減らしてもらってんだ。俺もすがやんもお前の面倒ばっか見てらんねーんだからな」
「すみません……」
「大体、最初に知り合う人数が少ない方が後々不利になるっつーのに」
「まーまー奏多。夏合宿本番でいろんな人と話すかもじゃんな。あっほら、まず打ち合わせのときに、好きなことの話でもしてみなよ。DIYのこととか。他の子と打ち解けるきっかけになるかもしれないし。それが難しければ、顔を上げて、一言挨拶だけでも頑張ってみよう」
「頑張ってみます……」
「は~あ。すがやんは甘いねえ」
「俺から見れば奏多も十分過ぎるくらいにツッツの心配をしてると思うけどな」
「うるせーよ。今は良くてもそのうちコイツだってミキサーとして番組だの班だのを引っ張らなきゃいけない立場になるかもしんねーだろ。長い目で見るんだよ」
奈々さんも、ウチの1年だったらミキサーとして一番面白いのはツッツだって言ってるし、この合宿の結果如何では十分学年を代表するミキサーと呼ばれることになる可能性だってあるんだ。名前が売れれば人と話さざるを得なくなる。いつまでもビビってばかりじゃいられない。
「ツッツ、自己紹介の練習してみ」
「う、内津由紘です……」
「声がちっちぇ~な~。もっと腹から声出せ。お前そんなんで発声練習ん時鬼教官の腹筋チェックをどーやって掻い潜ってんだ? もう1回」
「内津由紘です」
「まだまだ。今ここで教官に電話でチェックしてもらってもいいんだぞ~! もう1回」
「内津由紘です!」
「あのさあ奏多、さっきから言ってる教官ってのは? いや、何となく察してるんだけど」
「おっとすがやん、間違っても今日のおもしろエピソードにはしてくれるなよ?」
end.
++++
MMPの発声練習はカノン回より春風回の方が厳しめ。鬼教官・春風の腹筋チェックはガチ。
ツッツに対する奏多とすがやんが在りし日の高崎といち氏みを感じたので懐かしさを覚える
きぬはともかくとして青敬の子のキャラはこれから詰める。とりあえず存在を匂わせるいつもの。
(phase3)
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「おいツッツ、そんなビクビクしててもどーもなんねーんだよ」
「す、すみません……」
「まーまー奏多。ツッツ、俺もいるし安心してなー」
「ありがとうございます……」
インターフェイス夏合宿の班割りが発表されて、いよいよ本格的に打ち合わせに入るところは入り始めた。何だかんだ言って俺も夏合宿っつーのは初めてだから、今回の班顔合わせはどういう感じで立ち回っていくかの様子見としては結構大事な回だ。
俺は青女のちとせっつー子が班長の班に組み込まれた。班の欄を見てるとすがやんだのツッツだの、見知った名前がいくらか。かっすーと春風によれば、班編成は実力だの何だののバランスを見ながら組むらしいが、俺は番組もまあやれるだろって思われたらしい。まあやれるけどな。
この編成にめちゃくちゃホッとしたような様子だったのがツッツだ。コイツはとにかく人見知りで、現在荒療治の真っ最中。だけど今回の夏合宿では俺とすがやんがいるから自分と知ってる人間で班の半数になる。まあまあ甘やかされたようだ。
で、大学のある豊葦から星港までの道のりを、すがやんの車に乗せてもらって作戦会議をしながら行くことに。打ち合わせに行ってくるっつったら、どいつもこいつもツッツをよろしくだの何だのと。ったく。俺はベビーシッターかっつーの。
「ところで情報通のすがやんよ」
「何だよ。ってか情報通ではないけど」
「お前さ、あと2人の1年の情報入れてきてる?」
「あー、ちょっとは」
「おっ、さすがだな。初心者講習会でもパロの後ろでガタガタ震えてたツッツのために軽く予習させてやってくんねーか」
「あー……ツッツ、初心者講習会もダメだった感じ?」
「じ、人口密度が……あと、何か、奇抜な人とかもいて」
「お前よー、インターフェイスに出るんだったらちょっと奇抜なくらい何だよ。つかウチにだって殿っつー、他に類を見ないのがいるだろ」
「殿は、しょうがないじゃないですか。体が大きいのは、自分じゃどうにも出来ないですし。それに、殿は優しいです。俺が怖いのは、人為的に作られた雰囲気みたいな物と言うか……」
「見た目が何であれ話したらいい奴だったっつー経験はすでに殿で出来てんだから、何を恐れることがあるっつーんだ」
「まーまー奏多。今回は前より人口密度も低いし場の圧みたいなモンも少ないだろうから、ツッツも前よりイケるって」
「すがやん。お前どこまでツッツに甘いんだ」
このテの話になるとお前はツッツに厳しいだとか、荒療治にも程度があるとサークルの連中は言うけど、どーにもなんねーモンはならねーし、マジでダメなら体に出る。ツッツは今んトコ、ビビってるだけでマジな発作とかじゃねーからまだイケんだよ。っつーのが俺の考えな。
「つか俺ちとせっつー子もよく知らねーんだけどどーゆー子よ」
「ちとせはまあ、おっとりした感じのほわっとした子かな? 優しいと言うか」
「おっ、良かったじゃんかツッツ。あんま勢い強い感じじゃなさそうで。ウチだと誰に近いとかあるか?」
「えー? 今のMMPだったら強いて言えばパロに近いんじゃないかな?」
「だってよ」
「よ、良かったです……」
「じゃあ1年は?」
「星ヶ丘の子は結構ぐいっぐい来る超アッパーな感じの子だとは聞いてる。初心者講習会でもアナウンサー側の席に座ってた子みんなに強烈な挨拶をしてたとか」
「おー、なかなかやるじゃん。面白そうな奴」
「ひっ…!」
「青敬の子はラジコンとか模型が好きらしくて、そういうのを組み立てたり、サークルで作ってる作品の企画を練ったりするのに黙々と作業するのが好きなんだって」
「へ、へえ……」
「そいつ、タイプ的にお前に近いんじゃね?」
「ちょ、ちょっと、気になります……模型の話、とか……」
何にせよ実際話してみないとどーにもなんねーけど、今のところ危なそうなのは星ヶ丘の女子だな。グイッグイ来る超アッパーな奴とか、うっしー比どんくらいかがわかんねーとツッツにはキツいかもしんねーな。っつっても俺とすがやんがいるんだからビビってんじゃねーよっつー。
つかすがやんの情報網がガチなんだよないつもながら。今回の話は誰に聞いたんだっつったら、ササに頼んでそれぞれの大学の奴に聞いてもらったって。逆に自分もある程度情報を渡してるらしいし、誰の取説がどうだ、的なことはある程度頭に入れてあるとか。
「そしたらツッツの話も各大学に回ってんのか? 人見知りのビビリ的な評判で?」
「班編成の時点で考慮されてるんだったら少なくとも対策委員にはそういう認識をされてるんじゃないかなー」
「うう……」
「うう、じゃねーんだよ。お前がビビリ散らかしてるからかっすーも春風もコイツをどーすんだっつって対策委員の連中に相談するハメになったんだろ。いいか。本来知らねー奴が5人のところを3人にまで減らしてもらってんだ。俺もすがやんもお前の面倒ばっか見てらんねーんだからな」
「すみません……」
「大体、最初に知り合う人数が少ない方が後々不利になるっつーのに」
「まーまー奏多。夏合宿本番でいろんな人と話すかもじゃんな。あっほら、まず打ち合わせのときに、好きなことの話でもしてみなよ。DIYのこととか。他の子と打ち解けるきっかけになるかもしれないし。それが難しければ、顔を上げて、一言挨拶だけでも頑張ってみよう」
「頑張ってみます……」
「は~あ。すがやんは甘いねえ」
「俺から見れば奏多も十分過ぎるくらいにツッツの心配をしてると思うけどな」
「うるせーよ。今は良くてもそのうちコイツだってミキサーとして番組だの班だのを引っ張らなきゃいけない立場になるかもしんねーだろ。長い目で見るんだよ」
奈々さんも、ウチの1年だったらミキサーとして一番面白いのはツッツだって言ってるし、この合宿の結果如何では十分学年を代表するミキサーと呼ばれることになる可能性だってあるんだ。名前が売れれば人と話さざるを得なくなる。いつまでもビビってばかりじゃいられない。
「ツッツ、自己紹介の練習してみ」
「う、内津由紘です……」
「声がちっちぇ~な~。もっと腹から声出せ。お前そんなんで発声練習ん時鬼教官の腹筋チェックをどーやって掻い潜ってんだ? もう1回」
「内津由紘です」
「まだまだ。今ここで教官に電話でチェックしてもらってもいいんだぞ~! もう1回」
「内津由紘です!」
「あのさあ奏多、さっきから言ってる教官ってのは? いや、何となく察してるんだけど」
「おっとすがやん、間違っても今日のおもしろエピソードにはしてくれるなよ?」
end.
++++
MMPの発声練習はカノン回より春風回の方が厳しめ。鬼教官・春風の腹筋チェックはガチ。
ツッツに対する奏多とすがやんが在りし日の高崎といち氏みを感じたので懐かしさを覚える
きぬはともかくとして青敬の子のキャラはこれから詰める。とりあえず存在を匂わせるいつもの。
(phase3)
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