2023
■滑り込みの食糧
++++
「あー……お腹空いた」
「レナ、顔が死んでるよ。そんなにお腹空いてるの」
「新しく出来たパン屋に行ってみたんだけどさ、着いた時に売り切れでーすって」
「残念だったね」
「レナ、それでメシ食えてねーの?」
「うん」
レナが死んだような顔をしてサークル室にやってきた。事情を聞くと、起きてから今この時まで何も食べていないらしい。レナは結構しっかりと生活をしているというイメージがあったけど、実際は生活リズムが結構ガタガタで、夜更かしや寝坊は当たり前なんだとか。
今日も寝坊したので朝食を抜いて家を出て、通学ついでに寄ったパン屋が到着直後に閉店してしまったので昼食も抜きになって、飲み物で食い繋ぎながら授業を受けて現在に至っている。何か食べるものを持ってないかと聞かれたけど、俺もサキも持っていなかった。
「ここに来る前に購買とかに行って来ればよかったのに」
「その発想にならなかった……」
「お腹が空き過ぎると頭が回らなくなるんだよきっと」
「そっかー。レナ、動くのもしんどいなら何か食う物買って来ようか?」
「すがやんにそこまでしてもらうのはさすがに申し訳ない」
「でも、そこまでしんどそうなのも見てらんないって」
「すがやんの優しさが眩しくて溶ける…! ねえすがやん、春風って規則正しく生活してる方だよね?」
「あー、そうだな。夜行性ではあるけど朝はちゃんと起きるしメシもちゃんと食べるし」
「どうやったらそんな風に真っ当になれるのか」
「なろうとしてないのによく言うよね」
「あーもうサキにはお見通しだよ」
レナとサキと春風の3人でよくゲームをやってるそうなんだけど、それが夜中遅くになることが多いらしいんだ。3人とも夜行性だからそれ自体は苦じゃないんだけど、問題は朝早く起きること。サキと春風は夜更かしの後でも早起きが出来るけど、レナは本当に早起きが出来ないそうで。
で、サキにはお見通しという本人の発言にもあるように、レナは現状の生活を改めようとはこれっぽっちも思ってなくて、今の生活をしたまま睡眠時間が少なくてもやっていける体質になりたいらしい。正直虫のいい話だとは思うけど、起きていられる時間が長くなるなら趣味に使える時間も増えるというのは俺も理解するところなんだよなあ。
「ウチのサークルで夜行性とかショートスリーパーって言ったら誰だろう。教えを請いたい」
「夜行性なだけだとダメなんじゃない。高木先輩とか、あの人も朝は苦手だし」
「じゃエージ先輩とか? あの人は朝に強いじゃんな」
「エージ先輩は逆に夜に弱いからダメだ」
「深夜帯でバイトしてるシノとか」
「シノは最近怪しくなり始めてるって陸が言ってた」
「逆に朝6時とかからバイトしてるくるみは?」
「そんな時間から働いて本当に尊敬する」
「それで言ったらやっぱり果林先輩が一番なんじゃない」
「そっかー、やっぱそうなるかー」
「あと、それこそササなんじゃね? ササのバイタリティは並半端じゃないと思うけど」
「あ、それは確かにそうだ。そうだそうだ。陸さんに教えを請おう、そうしよう」
とか何とか話していても、レナの空腹問題は何も解決していない。買い物行って来ようかって聞いてみたけど、それを頼むなら俺よりはササの方が気兼ねしないそうだし。まあ、俺がレナの立場でも弱音みたいなことは他の友達よりは春風の方が言いやすいかもしれない。
「おはよう」
「おはようございます」
「レナ、しんどそうだけど大丈夫?」
「ああ、高木先輩。大したことじゃないのでお構いなく」
「レナは夜更かしからの寝坊コンボで今ここまで食事をとれてないだけですね」
「それは大変だね。よくわかるよ。ああ、そうだ。昼にハナちゃんと会ってパンをもらったから、ひとつあげるよ」
「ホントですか!?」
「うん。現状俺よりレナの方がひもじそうだしね」
「ハナ先輩がくれたパンってやっぱりナチュールのパンですか?」
「そうだね。今度サークルにも持って来るって言ってたけど、俺が特別貧相な食生活をしてるっていうイメージなんだろうね。ちゃんと食べないと果林先輩に怒られるよって言ってちょっと多めにもらったんだよ」
高木先輩の食生活がちょっと残念っていうイメージは1コ下の俺らでもちょっとわかってしまうから、実情を知ってる3年生の先輩たちからしたらもっとはっきりと残念だと言い切れてしまうんだろうなあ。で、ハナ先輩がパンをくれたと。そのパンはレナの手元に回って来たワケだけど、レナがパンに向ける目が久々に生気を取り戻したって感じなんだよな。
「あー…! おいしい…! 本当に生き返りました! 高木先輩は私の命の恩人です!」
「そんな大袈裟な。そっか、レナはサキとかL先輩みたくちょっとの量で大丈夫なワケじゃないんだね」
「そうなんですよ。通学途中に寄ったパン屋がちょうど売り切れで閉まっちゃって、授業もあるしご飯食べそびれちゃってもうひもじくてひもじくて」
「あー、俺もよくやるよそれ。しんどいよね」
「そんな高木先輩からパンを奪ったら、それこそ果林先輩にこっぴどく怒られそうだよね。レナ、覚悟しといた方がいいかもよ」
「前に陸さんが受けたみたいな軍曹式アナウンサー訓練とかだったらいくらでも受けて立ちたいくらいですけど」
「あ、それは俺も興味あるなあ。レナ、果林先輩にLINE打ってみ? 高木先輩にパン恵んでもらいましたーって」
「いやいや……俺と果林先輩を何だと思ってるの」
end.
++++
2年生に上がったレナがどんどん残念になってきた感。ただのクールビューティーではない。
この頃だとTKGは2年生たちから見ても残念な生活だけど、エイジがいるからどうにかなってるという認識
朝型夜型なんかも結構くっきりタイプ分けされてる。2年生たちで話してみて欲しい
(phase3)
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「あー……お腹空いた」
「レナ、顔が死んでるよ。そんなにお腹空いてるの」
「新しく出来たパン屋に行ってみたんだけどさ、着いた時に売り切れでーすって」
「残念だったね」
「レナ、それでメシ食えてねーの?」
「うん」
レナが死んだような顔をしてサークル室にやってきた。事情を聞くと、起きてから今この時まで何も食べていないらしい。レナは結構しっかりと生活をしているというイメージがあったけど、実際は生活リズムが結構ガタガタで、夜更かしや寝坊は当たり前なんだとか。
今日も寝坊したので朝食を抜いて家を出て、通学ついでに寄ったパン屋が到着直後に閉店してしまったので昼食も抜きになって、飲み物で食い繋ぎながら授業を受けて現在に至っている。何か食べるものを持ってないかと聞かれたけど、俺もサキも持っていなかった。
「ここに来る前に購買とかに行って来ればよかったのに」
「その発想にならなかった……」
「お腹が空き過ぎると頭が回らなくなるんだよきっと」
「そっかー。レナ、動くのもしんどいなら何か食う物買って来ようか?」
「すがやんにそこまでしてもらうのはさすがに申し訳ない」
「でも、そこまでしんどそうなのも見てらんないって」
「すがやんの優しさが眩しくて溶ける…! ねえすがやん、春風って規則正しく生活してる方だよね?」
「あー、そうだな。夜行性ではあるけど朝はちゃんと起きるしメシもちゃんと食べるし」
「どうやったらそんな風に真っ当になれるのか」
「なろうとしてないのによく言うよね」
「あーもうサキにはお見通しだよ」
レナとサキと春風の3人でよくゲームをやってるそうなんだけど、それが夜中遅くになることが多いらしいんだ。3人とも夜行性だからそれ自体は苦じゃないんだけど、問題は朝早く起きること。サキと春風は夜更かしの後でも早起きが出来るけど、レナは本当に早起きが出来ないそうで。
で、サキにはお見通しという本人の発言にもあるように、レナは現状の生活を改めようとはこれっぽっちも思ってなくて、今の生活をしたまま睡眠時間が少なくてもやっていける体質になりたいらしい。正直虫のいい話だとは思うけど、起きていられる時間が長くなるなら趣味に使える時間も増えるというのは俺も理解するところなんだよなあ。
「ウチのサークルで夜行性とかショートスリーパーって言ったら誰だろう。教えを請いたい」
「夜行性なだけだとダメなんじゃない。高木先輩とか、あの人も朝は苦手だし」
「じゃエージ先輩とか? あの人は朝に強いじゃんな」
「エージ先輩は逆に夜に弱いからダメだ」
「深夜帯でバイトしてるシノとか」
「シノは最近怪しくなり始めてるって陸が言ってた」
「逆に朝6時とかからバイトしてるくるみは?」
「そんな時間から働いて本当に尊敬する」
「それで言ったらやっぱり果林先輩が一番なんじゃない」
「そっかー、やっぱそうなるかー」
「あと、それこそササなんじゃね? ササのバイタリティは並半端じゃないと思うけど」
「あ、それは確かにそうだ。そうだそうだ。陸さんに教えを請おう、そうしよう」
とか何とか話していても、レナの空腹問題は何も解決していない。買い物行って来ようかって聞いてみたけど、それを頼むなら俺よりはササの方が気兼ねしないそうだし。まあ、俺がレナの立場でも弱音みたいなことは他の友達よりは春風の方が言いやすいかもしれない。
「おはよう」
「おはようございます」
「レナ、しんどそうだけど大丈夫?」
「ああ、高木先輩。大したことじゃないのでお構いなく」
「レナは夜更かしからの寝坊コンボで今ここまで食事をとれてないだけですね」
「それは大変だね。よくわかるよ。ああ、そうだ。昼にハナちゃんと会ってパンをもらったから、ひとつあげるよ」
「ホントですか!?」
「うん。現状俺よりレナの方がひもじそうだしね」
「ハナ先輩がくれたパンってやっぱりナチュールのパンですか?」
「そうだね。今度サークルにも持って来るって言ってたけど、俺が特別貧相な食生活をしてるっていうイメージなんだろうね。ちゃんと食べないと果林先輩に怒られるよって言ってちょっと多めにもらったんだよ」
高木先輩の食生活がちょっと残念っていうイメージは1コ下の俺らでもちょっとわかってしまうから、実情を知ってる3年生の先輩たちからしたらもっとはっきりと残念だと言い切れてしまうんだろうなあ。で、ハナ先輩がパンをくれたと。そのパンはレナの手元に回って来たワケだけど、レナがパンに向ける目が久々に生気を取り戻したって感じなんだよな。
「あー…! おいしい…! 本当に生き返りました! 高木先輩は私の命の恩人です!」
「そんな大袈裟な。そっか、レナはサキとかL先輩みたくちょっとの量で大丈夫なワケじゃないんだね」
「そうなんですよ。通学途中に寄ったパン屋がちょうど売り切れで閉まっちゃって、授業もあるしご飯食べそびれちゃってもうひもじくてひもじくて」
「あー、俺もよくやるよそれ。しんどいよね」
「そんな高木先輩からパンを奪ったら、それこそ果林先輩にこっぴどく怒られそうだよね。レナ、覚悟しといた方がいいかもよ」
「前に陸さんが受けたみたいな軍曹式アナウンサー訓練とかだったらいくらでも受けて立ちたいくらいですけど」
「あ、それは俺も興味あるなあ。レナ、果林先輩にLINE打ってみ? 高木先輩にパン恵んでもらいましたーって」
「いやいや……俺と果林先輩を何だと思ってるの」
end.
++++
2年生に上がったレナがどんどん残念になってきた感。ただのクールビューティーではない。
この頃だとTKGは2年生たちから見ても残念な生活だけど、エイジがいるからどうにかなってるという認識
朝型夜型なんかも結構くっきりタイプ分けされてる。2年生たちで話してみて欲しい
(phase3)
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