2023

■そろそろ自分でやらなくちゃ

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「ゲンゴローと一緒なの久し振りだねー」
「そうだねー」
「すがやんもよろしくねー」
「よろしくお願いしまーす」

 ファンフェスの班が決まって、さっそくやるのは班の打ち合わせだ。今回はユキ先輩が班長で、あとは俺と星ヶ丘のゲンゴロー先輩という3人班。ゲンゴロー先輩と一緒の班になるのは初めてだけど、何となくのんびりしたような人なのかなっていう印象がある。
 ユキ先輩は定例会の先輩だし、春風とはインターフェイスの外で知り合って良くしてもらっていたそうで、名前を聞く機会が多い。春風からミドリ先輩の話を聞かせてもらうということは、俺の事もある程度は伝わってるんだろうなあ。

「ユキ先輩とゲンゴロー先輩は久し振りになるんですか?」
「1年の夏合宿で一緒の班だったんだよ」
「懐かしいねー。タカティも一緒だったんだよ」
「へー、そうだったんすねー。高木先輩は1年の頃からああいうスタイルの番組を主体にしてたって向島の先輩たちから聞いてるんすけど、その夏合宿でもそーゆー感じだったんすか?」
「そうそう。なっち先輩が、どうせタカティとやるならそういう感じにしたいーって言ってさ。あたしはりっちゃん先輩にほとんどお任せだったけど、ゲンゴローはそのためにすっごいミキサーの練習してたもんね」
「大変だったけど、そのおかげで朝霞班のステージにも追いつけるようになれたし、本当にいい経験だったよ」
「すがやんは向島への留学? で変わった番組の構成を考える訓練をしてたんでしょ?」
「訓練ってほど大それたことはしてないですけど、向島ならではの空気や番組には揉まれてきました」

 高木先輩式だとか、向島式だとか。インターフェイスの中でもなかなかにぶっ飛んだことを経験してきたメンバーだから、大体のことは出来ちゃいそうだねーと先輩たちはニコニコ笑っている。もちろん先輩たちはインターフェイスだけじゃなくて自分の大学でも経験を積んでいる。その点で言えば俺はまだまだだ。
 ユキ先輩は青女のステージの台本を書いているそうだし、ゲンゴロー先輩は自分の班の他にもバカデカい星ヶ丘の放送部を束ねる部長だ。一方で俺は向島に留学して番組をやっていたけど、向こうに行っていた分緑ヶ丘での経験がない。自分に何が出来るのかなって考えたら、なかなか即答が出来ないんだよな。

「それで、番組はどういう感じでやろうか?」
「構成とか?」
「うん」
「そこはミキサーのゲンゴローがサクッと?」
「えっ、俺が考えるの? 俺あんまりそういうのはやったことないんだよね。インターフェイスでも何だかんだラジオ系大学の人にお任せになっちゃってたから」
「大学ではやんないの?」
「台本とか構成とかはプロデューサーが考えるのが基本だよ。えっ、青女さんはその辺どんな感じなの?」
「出来る人がやるって感じだよ。3年生はあたしがやってるし、2年生は今植物園ステージの準備してくれてるけど、台本とかはまつりが書いてるから別にパート関係なくやってるって感じで」
「へー、まつりって確かミキサーだよね」
「そうだね」

 ファンフェスの番組はひと班につき60分枠で、ピントークが15分ずつとダブルトークが30分というのが基本になっているそうだ。絶対変わった構成にしなきゃいけないってワケじゃなくて、普通にやっても全然大丈夫ではあるらしい。でもミソラ先輩は変わった構成にするよって最初から宣言して高木先輩を持ってったし、他の班でも一応って感じで話し合ってるみたいだ。

「朝霞班の時からパート関係なくどんな仕事でもやってきたつもりだったけど、ユキちゃんの話を聞いてるとミキサー寄りの仕事しかやって来てなかったなーって思うよ。えっと、すがやんはその辺のスキルはどう? 向島さんと面白い番組をやってたんでしょ?」
「あー、俺もその辺は向島の人たちにお任せな感じでしたね。やっぱり向こうの人の方が柔軟だなと思います」
「そしたら、今回は敢えてすがやんとゲンゴローでやってみる?」
「えっ、俺たちですか?」
「うん。別に奇抜じゃなくていいし」
「構成を考えるって聞くとどうしても高木先輩の顔が浮かぶんですけど、あそこまではやんなくていいですよね!?」
「あそこまではやんなくていいよ! それで番組が立ち行かなくなったら本末転倒だし」
「ゲンゴロー先輩、そしたらピントークの打ち合わせの時にでも考えてみましょうか」
「そうだねー」

 大学祭の時も高木先輩のお世話になりっ放しだったし、向島での年末番組も俺は遠隔中継のアイディアを出しただけで構成や番組の内容については向島の人たちがわーっと出した物に対して返事をしてたくらいだ。だからちゃんと自分で番組の構成を考えるっていうのは本当に新たな挑戦。だけどいつかはやらなきゃいけないことだとは思う。いつでもミキサーや班の人に頼りっ放しじゃ良くない。

「番組のテーマはどうしましょうか。雰囲気と言うかトークテーマと言うか」
「それじゃあ今日はそれを考えていこっかー」
「時期が5月の連休明けくらいだし、その辺も考慮しないとねー」
「場所のことも考えた方がいいんですかね、ファンフェスへの忖度じゃないですけど」
「過度に忖度する必要はないと思うけど、公共の場所でやるワケだしトーク内容や使う曲に最低限の配慮は要るよ」
「そーなんすね。その辺は一般的な感覚で大丈夫そうですかね?」
「フツーの感覚で大丈夫だと思う」
「ああ、そうだ。俺、部活でファンフェスのステージもやるからブース出展要項も探せばあると思う。禁止事項とかも書いてるんじゃないかな。次の打ち合わせまでに用意してもらうし一緒に見てみよっかー」
「マジすか、ありがとうございます」


end.


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ブース出展要項を用意してもらう相手はもちろんレオ。ゲンゴローは書類仕事が嫌いだからね。

(phase3)

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