2013

■双璧への挑戦状

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「高崎先輩、おはよーごぜーやす」
「うーす」

 指定されたカフェはインターフェイスの、と言うか対策委員が会議をするときに使う定番の場所。2階の禁煙席に陣取ったその人に声をかければ、相手の方も自分を認識したらしい。如何せん向こうはインターフェイスの有名人。ちゃんと顔を合わせるのはこれが初めてとは言え、人違いじゃなくて一安心。

「坂井先輩はまだスか?」
「千尋は遅れるってよ。心配しなくても向島基準なら可愛いレベルに収まるらしい」
「そースか、じゃあ待ちやすか」

 自分ら2年生もファンタジックフェスタに番組をやる側として参加することになった。この定例会主導のイベントで、その定例会の議長が自分たちが所属するサークルのトップなのだから、否応なしに。
 初めて対外的な公開生放送をやるということで、いつものイベントとは気持ちもちょっと違う。去年の夏合宿でも他校の人とは班を組んだけど、それよりも少し班の規模は小さめ。その分、向き合う時間はより密に。

「3年生アナの先輩同士でペア組むとかあるんすね」
「まあ、俺らがアナばっかっつーのもあるし、お前らがミキばっかっつーのもあるだろうな。班編成には大人の事情もある」
「出来るだけ緑ヶ丘と向島が固まりすぎないようにした、とは圭斗先輩が言ってたスけどね。去年の例がありやすし」
「つーか去年のは極端だけどな」

 去年のファンフェスには見る側として来ていた。目の前にいるこの高崎先輩と菜月先輩、そして伊東先輩がやっていた100分番組の印象が今でも深く刻まれている。そんな人と手合わせ願えるだなんてまたとないチャンスじゃないスかァー。

「坂井先輩はどういうタイプのアナさんなんスか? つか星大ってコトは厳密にはPの可能性も」
「いや、アイツはPじゃねぇ。純粋なアナだ。ま、星大だけあって良くも悪くも普通だな。ただ、巻きだの延ばしの対応は結構上手い印象がある。あと夏合宿を見ただけだけど、インフォ対応も良かったな」
「じゃァー生向きスね」
「ま、そういうこった」
「高崎先輩は言わずと知れたIFの大スターなんで、自分今回ラク出来やすね」

 俺はミキに楽をさせてやるほど甘くはない、とイメージ通りの返しをもらって。言っても、自分も普段MMPで楽をさせてもらったことはない。高崎先輩が言うのと自分の言う意味が違うことはわかっているつもりではあるんスけど。

「一応高崎先輩がどーゆーアナさんなのかっていうのは菜月先輩から事前に聞いてるンである程度知ってるんスよ」
「なら話は早いな。ダブルトークはともかく、ピントークん時は容赦しねぇから覚悟しとけよ」
「高崎先輩、圭斗先輩やヒロ相手にミキシングするのがどンだけ逆キュー反応や咄嗟の番組構成切り替え能力を求められるかってコトなんスよ」
「っつーコトは、お前もそこそこ生番組イケるっつーことだな」
「じゃなきゃ、高崎先輩の班に単独ミキでぶち込まれてないスよ」
「ある程度は菜月から聞いてたけど律、お前いい性格してんな」
「やァー、高崎先輩からお褒めの言葉をいただけるなんて。自分、これで死んでもいースわー。今のは向島に持ち帰って菜月先輩にも自慢しときやす」

 この大スター相手にどれだけ自分の技術が通用するのか、試してみたくはありますよね。それでもやっぱり、自分の我もある程度通してくれて、番組構成に対する意見をくれる方が圧倒的にラクなんスよねェー。高崎先輩はどんだけ自分がラクさせてくれるアナウンサーなのかってのを知らな過ぎスよ。

「さ、そろそろ千尋も来る頃だな」
「やァー、どーゆー人なのか楽しみスねェー」


end.


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ここぞとばかりに星大に新キャラを作りまくってます。坂井千尋ちゃん。女の子の3年生アナウンサーさんだよ!
この子次第では星大(UHBC)の幅がさらに広がるよ! 石川や美奈との掛け合いも見たいじゃない。
うん、りっちゃんは普段ヒロと圭斗さんに大変な目に遭わされてるからね! そら菜月や高崎相手なんてラクですよ!

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