2013
■奥村菜月の戴冠
++++
「おはよう」
「おはよー圭斗。あ、刷り上がったんだなビラ」
「ん、バッチリ。それじゃあ改めて、これが菜月作今年のMMP新歓に使うビラ300枚です」
ズドンと机に下ろされた紙の束。曰くそれはこの3日間の戦争期間中に配るサークル勧誘用のビラだとのこと。いつの間に菜月先輩がそれを作っていたのかもわからず、3年生(と言うか圭斗先輩と菜月先輩)が水面下で準備を進めていたんだなというのが見て取れる。
これに盛り上がるのが俺たち2年だ。3年生が背負っているのは「ゲッティング☆ガールプロジェクト」とデカデカ書かれたホワイトボード。来たれ女子というあからさまな作戦はともかく、自分たちの後輩を引っ張り込む期間だけに、自然と気合いが入る。
「それでは野郎共、各種ビラと学内に掲示されてる5枚のポスターを製作していただいた菜月様に最敬礼するぞ」
ははあ、と菜月先輩にひれ伏す圭斗先輩というのも初めて見るだけに、圭斗先輩はよっぽどこういう作業が苦手なのかなと察するにも時間はさほど要らなかった。そして、2年に4人いる男連中も同様だけに、菜月先輩への最敬礼は当然のこと。
「圭斗を上から目線で見れるのは実に気分がいいな」
「この分野に関しては完全に敵わないからね」
「菜月先輩、ビラも数パターン作られたんですか」
「如何せん「ゲッティング☆ガールプロジェクト」だろう? 女子ウケする方がいいと思ったんだ」
「菜月、原本はどうする?」
「ファイルにでも挟んどいてくれ。来年は資料として使えるだろ」
数種類あるビラの原本は圭斗先輩の手によってファイルに挟まれた。それをさっそく広げて見ると、パッと見でいろんなデザインがあるのがわかる。
それこそポップでファンシーな女子ウケを狙った物だったり、シンプルでわかりやすい物であったり。他にはスタイリッシュ路線などなど。まるでパソコンで作ったんじゃないかと思うほどだけど、手書きなんだ。
先輩方の会話から拾った情報によれば、いくつも案を出したはよかったけど、自分の一存ではやはり決めきれなかった菜月先輩が圭斗先輩に相談したところ、全部刷ればいいとの鶴の一声によって現在に至っているとのこと。
「でも本当に凝ってますね」
「ケータイでデザイン系のサイトを漁ってパターンを参考にしたり、フォントもフリーフォントをダウンロード出来るサイトを見ながらレタリングしてたからな」
「そこまでしたんですか!?」
「なんてね」
「えっ」
うちのパソコンはネットに繋がってないからフォントを落とせるようなサイトなんて見れないぞ、と菜月先輩は飄々としているけれど、それはそれで逆にすごいと言うか。ちょっと大袈裟に言っただけなのに騙されるなんてお前は馬鹿だなと言われるけど、信じてしまうクオリティなんだから仕方ない。
「でも菜月、ポスターはガチだろ。2年生、ポスターはもう貼ってあるから、探してでも見ろ」
「そこまでガチなんですか!?」
「ヒマだったから画材を2種類使っただけで大したことはないぞ」
「でもあの半透明レイヤーは見事だった」
「アナログでレイヤーを使ってるんですか!」
「騙されるなノサカ、薄い紙を貼っただけだぞ」
圭斗先輩と菜月先輩の話を聞いていると、それこそ本当に5カ所あるポスターを探したくなって。いや、ビラも配らないといけないしそのポスターが新入生の目に付くようにしないといけないんだけど。
菜月先輩ははぐらかすけれど、ポスターとビラに関しては相当気合いが入っていたんだなというのはわかる。「ゲッティング☆ガールプロジェクト」を牽引するのは他でもないMMPの女帝だ。
「それじゃあ、戦場へ赴こうか」
end.
++++
この時期の菜月さんはまさに民衆を導く自由の女神状態。野郎共が無能だからな!!
4月になって学年がリセットされたのでノサカの口調もほんの少しだけ若くしたつもりです。
そして菜月さんに向かって最敬礼する野郎共がきっとかわいいんだろうな、和むんだろうな。
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「おはよう」
「おはよー圭斗。あ、刷り上がったんだなビラ」
「ん、バッチリ。それじゃあ改めて、これが菜月作今年のMMP新歓に使うビラ300枚です」
ズドンと机に下ろされた紙の束。曰くそれはこの3日間の戦争期間中に配るサークル勧誘用のビラだとのこと。いつの間に菜月先輩がそれを作っていたのかもわからず、3年生(と言うか圭斗先輩と菜月先輩)が水面下で準備を進めていたんだなというのが見て取れる。
これに盛り上がるのが俺たち2年だ。3年生が背負っているのは「ゲッティング☆ガールプロジェクト」とデカデカ書かれたホワイトボード。来たれ女子というあからさまな作戦はともかく、自分たちの後輩を引っ張り込む期間だけに、自然と気合いが入る。
「それでは野郎共、各種ビラと学内に掲示されてる5枚のポスターを製作していただいた菜月様に最敬礼するぞ」
ははあ、と菜月先輩にひれ伏す圭斗先輩というのも初めて見るだけに、圭斗先輩はよっぽどこういう作業が苦手なのかなと察するにも時間はさほど要らなかった。そして、2年に4人いる男連中も同様だけに、菜月先輩への最敬礼は当然のこと。
「圭斗を上から目線で見れるのは実に気分がいいな」
「この分野に関しては完全に敵わないからね」
「菜月先輩、ビラも数パターン作られたんですか」
「如何せん「ゲッティング☆ガールプロジェクト」だろう? 女子ウケする方がいいと思ったんだ」
「菜月、原本はどうする?」
「ファイルにでも挟んどいてくれ。来年は資料として使えるだろ」
数種類あるビラの原本は圭斗先輩の手によってファイルに挟まれた。それをさっそく広げて見ると、パッと見でいろんなデザインがあるのがわかる。
それこそポップでファンシーな女子ウケを狙った物だったり、シンプルでわかりやすい物であったり。他にはスタイリッシュ路線などなど。まるでパソコンで作ったんじゃないかと思うほどだけど、手書きなんだ。
先輩方の会話から拾った情報によれば、いくつも案を出したはよかったけど、自分の一存ではやはり決めきれなかった菜月先輩が圭斗先輩に相談したところ、全部刷ればいいとの鶴の一声によって現在に至っているとのこと。
「でも本当に凝ってますね」
「ケータイでデザイン系のサイトを漁ってパターンを参考にしたり、フォントもフリーフォントをダウンロード出来るサイトを見ながらレタリングしてたからな」
「そこまでしたんですか!?」
「なんてね」
「えっ」
うちのパソコンはネットに繋がってないからフォントを落とせるようなサイトなんて見れないぞ、と菜月先輩は飄々としているけれど、それはそれで逆にすごいと言うか。ちょっと大袈裟に言っただけなのに騙されるなんてお前は馬鹿だなと言われるけど、信じてしまうクオリティなんだから仕方ない。
「でも菜月、ポスターはガチだろ。2年生、ポスターはもう貼ってあるから、探してでも見ろ」
「そこまでガチなんですか!?」
「ヒマだったから画材を2種類使っただけで大したことはないぞ」
「でもあの半透明レイヤーは見事だった」
「アナログでレイヤーを使ってるんですか!」
「騙されるなノサカ、薄い紙を貼っただけだぞ」
圭斗先輩と菜月先輩の話を聞いていると、それこそ本当に5カ所あるポスターを探したくなって。いや、ビラも配らないといけないしそのポスターが新入生の目に付くようにしないといけないんだけど。
菜月先輩ははぐらかすけれど、ポスターとビラに関しては相当気合いが入っていたんだなというのはわかる。「ゲッティング☆ガールプロジェクト」を牽引するのは他でもないMMPの女帝だ。
「それじゃあ、戦場へ赴こうか」
end.
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この時期の菜月さんはまさに民衆を導く自由の女神状態。野郎共が無能だからな!!
4月になって学年がリセットされたのでノサカの口調もほんの少しだけ若くしたつもりです。
そして菜月さんに向かって最敬礼する野郎共がきっとかわいいんだろうな、和むんだろうな。
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