2022(02)
■ハッピータノシーバレンタイン
++++
「ジュンくーん、ハッピーバレンタイーン」
「おわっ」
「今日はバレンタインだからね! これまつりさんからの挨拶ねー!」
そう言えばそうだったなと思い出した。琉生の方はまずお気に入りのジュンに文字通り突進していった感じだけど、まつりは“挨拶”という名目のわかりやすい義理チョコをに配ってくれる。もらう側も肩肘張らずに済んでいいねっていう程度の挨拶はありがたい。
そういった日なので番組のテーマの中にももちろんバレンタインの話は盛り込まれている。お正月とかバレンタインとか、季節の話題はトークの題材として取り上げやすいんだよね。俺たちは大学生だから最近はテストだとか入試の話なんかもあったかな?
ただ、やっぱり問題はこのメンバーの経験だ。少しずつわかってきたことだけど、9時キャンメンバーはどこかよくある“あるある”から外れて来た5人が集まっているらしい。みんな違ってみんないいとは言うけど、共感性のないラジオ番組にならないかという不安点が残る。
「……あれっ? お前その辺のコンビニで今用意しただろって言われるかと思ったのに」
「下手に高級なのもらうと逆に怖くない?」
「フツーに美味そーだし嬉しーぜ!」
「よくあるけど絶妙に自分では買わない少しだけ高いチョコな辺りがいいと思いますよ。そこがまつり先輩のセンスだと思います」
まつりがくれたのは200円くらいのチョコだね。みんなそれぞれ種類は微妙に違うんだけど、ジュンが言ったように絶妙に自分じゃ買わないラインを突いて来てるんだよね。ちなみに俺にはカカオ分の高いチョコレートでオレンジピールをくるんだ物だった。太ったの気にしてるって話もしてたしありがたい。
「9時キャンメンバーホント優しい! ABCの友チョコはハードルが高くってさあ」
「あー……まあ、何となく察しは付くけど」
「お嬢のエマに暴食のみわ。この2人が好きそうなの探すのだけでも大変なのに、ちとせがいるからネタにも走れないし。マジメにバレンタインやるのも大変なんだよ」
「青女には青女なりの苦労があるんだなー」
「青敬ではバレンタインの話とかある?」
「北星がくるちゃんの動画撮影の助手で忙しそうにしてる。この時期限定のスイーツがあるからって」
「雨竜、多分まつりが聞いてるのはそういうことじゃないと思う」
「でも他にねーよ。サキ、お前もくるちゃん以外でバレンタインの話題なんかあるか?」
「人の話しかないね。ササとレナがどうしたとか、すがやんと春風がどうしたとか。くるみがみんなにチョコ配ってくれたけど、くるみの話だから今回はなしだね」
よくあるバレンタインっていうのが人から聞いた話でしか語れないメンバーばっかりなんだよね。今日のトークにしても雨竜と琉生とジュンの3人がどう回すのか。リスナーさんからの反応が番組中に来てくれることを願うしかない。出来ればよくあるバレンタインのエピソードを添えた感じで。
「そーだ忘れてた。サキ先輩と雨竜先輩もチョコどーぞー」
「ありがと」
「サンキューな! ――ってジュンと俺らに差ぁありすぎじゃねーか!?」
「ジュンくんにはこれからもジュンくんの成分をもらいまーすっていう挨拶なんでー」
「え、なにそれ怖っ。成分…? ああ、じゃあ俺らこの扱いでも納得だわ」
「……ジュン、嫌だったら拒否してもいいんだよ」
「最初は驚きましたし今も驚きますけど、悟りの境地に入りました」
琉生はジュンがよほどお気に入りなのか、毎度毎度顔を見るなり抱きつきに行っている。琉生曰くジュンの匂いというものがあって、それが凄く好きなんだと。琉生はMBCCでもちむりーをよくハグしてるけど、ああいう感じで行われるスキンシップの一種なのかな? この2人はこんなことをしているけど全くもって恋愛対象にはないらしい。
「うわーんジュンくーん、ちむちむしあわせになってー」
「ちむりーに何かあったのか?」
「ちむちむ今ゼミの合宿? とかで雪山に行ってるんだけど、帰って来たらー……あぶなーい、みんないたー」
「ちなみにジュン、向島では何かバレンタインにちなんだ話題は」
「他大学を凌ぐ圧倒的男社会でそんな物があると思いますか?」
「例えばだけど、ウチのOBのカズ先輩て人がバレンタインを口実にお菓子作りをよくやってたみたいだし、そっちでは例えば殿辺りが何か作って配り歩いたり」
「あー、なるほど。授業でもあればその可能性はあったかもしれないですけど、春休みですからね」
「まあそうだよね」
バレンタインの思い出にはあまり期待出来ない俺たちだから、人の話を膨らませていくしかないんだよね結局。こういうパターンもありますよって。一応ホワイトデー準備号として西海市内のお菓子屋さんなんかをちょっと紹介する予定はあるんだけどね。バレンタインデーの夜だから、行事を終えた人の方が多いだろうと見てね。
「ああ、そろそろいい時間だね。打ち合わせに入ろうか」
「はーい」
「あ、もうそんな時間か」
「いつも思うけど、このメンバーで集まって話してたら時間一瞬で溶ける。同じ大学の子たちと話しててももーちょっとゆっくりしてると思うんだけど」
「それはそうだね」
end.
++++
9時キャンメンバーは結構みんなあっさりしててこの手のイベントもサラッとくどくならなさそう
ABCのバレンタインと言えば直クン無双とさとちゃんの美味しいのだけど、この代はどんな風だろう
雨竜が結構ガヤガヤしてるんだけど、案外このメンバーの中じゃ平均と言うか、普通の子のポジション。
(phase3)
.
++++
「ジュンくーん、ハッピーバレンタイーン」
「おわっ」
「今日はバレンタインだからね! これまつりさんからの挨拶ねー!」
そう言えばそうだったなと思い出した。琉生の方はまずお気に入りのジュンに文字通り突進していった感じだけど、まつりは“挨拶”という名目のわかりやすい義理チョコをに配ってくれる。もらう側も肩肘張らずに済んでいいねっていう程度の挨拶はありがたい。
そういった日なので番組のテーマの中にももちろんバレンタインの話は盛り込まれている。お正月とかバレンタインとか、季節の話題はトークの題材として取り上げやすいんだよね。俺たちは大学生だから最近はテストだとか入試の話なんかもあったかな?
ただ、やっぱり問題はこのメンバーの経験だ。少しずつわかってきたことだけど、9時キャンメンバーはどこかよくある“あるある”から外れて来た5人が集まっているらしい。みんな違ってみんないいとは言うけど、共感性のないラジオ番組にならないかという不安点が残る。
「……あれっ? お前その辺のコンビニで今用意しただろって言われるかと思ったのに」
「下手に高級なのもらうと逆に怖くない?」
「フツーに美味そーだし嬉しーぜ!」
「よくあるけど絶妙に自分では買わない少しだけ高いチョコな辺りがいいと思いますよ。そこがまつり先輩のセンスだと思います」
まつりがくれたのは200円くらいのチョコだね。みんなそれぞれ種類は微妙に違うんだけど、ジュンが言ったように絶妙に自分じゃ買わないラインを突いて来てるんだよね。ちなみに俺にはカカオ分の高いチョコレートでオレンジピールをくるんだ物だった。太ったの気にしてるって話もしてたしありがたい。
「9時キャンメンバーホント優しい! ABCの友チョコはハードルが高くってさあ」
「あー……まあ、何となく察しは付くけど」
「お嬢のエマに暴食のみわ。この2人が好きそうなの探すのだけでも大変なのに、ちとせがいるからネタにも走れないし。マジメにバレンタインやるのも大変なんだよ」
「青女には青女なりの苦労があるんだなー」
「青敬ではバレンタインの話とかある?」
「北星がくるちゃんの動画撮影の助手で忙しそうにしてる。この時期限定のスイーツがあるからって」
「雨竜、多分まつりが聞いてるのはそういうことじゃないと思う」
「でも他にねーよ。サキ、お前もくるちゃん以外でバレンタインの話題なんかあるか?」
「人の話しかないね。ササとレナがどうしたとか、すがやんと春風がどうしたとか。くるみがみんなにチョコ配ってくれたけど、くるみの話だから今回はなしだね」
よくあるバレンタインっていうのが人から聞いた話でしか語れないメンバーばっかりなんだよね。今日のトークにしても雨竜と琉生とジュンの3人がどう回すのか。リスナーさんからの反応が番組中に来てくれることを願うしかない。出来ればよくあるバレンタインのエピソードを添えた感じで。
「そーだ忘れてた。サキ先輩と雨竜先輩もチョコどーぞー」
「ありがと」
「サンキューな! ――ってジュンと俺らに差ぁありすぎじゃねーか!?」
「ジュンくんにはこれからもジュンくんの成分をもらいまーすっていう挨拶なんでー」
「え、なにそれ怖っ。成分…? ああ、じゃあ俺らこの扱いでも納得だわ」
「……ジュン、嫌だったら拒否してもいいんだよ」
「最初は驚きましたし今も驚きますけど、悟りの境地に入りました」
琉生はジュンがよほどお気に入りなのか、毎度毎度顔を見るなり抱きつきに行っている。琉生曰くジュンの匂いというものがあって、それが凄く好きなんだと。琉生はMBCCでもちむりーをよくハグしてるけど、ああいう感じで行われるスキンシップの一種なのかな? この2人はこんなことをしているけど全くもって恋愛対象にはないらしい。
「うわーんジュンくーん、ちむちむしあわせになってー」
「ちむりーに何かあったのか?」
「ちむちむ今ゼミの合宿? とかで雪山に行ってるんだけど、帰って来たらー……あぶなーい、みんないたー」
「ちなみにジュン、向島では何かバレンタインにちなんだ話題は」
「他大学を凌ぐ圧倒的男社会でそんな物があると思いますか?」
「例えばだけど、ウチのOBのカズ先輩て人がバレンタインを口実にお菓子作りをよくやってたみたいだし、そっちでは例えば殿辺りが何か作って配り歩いたり」
「あー、なるほど。授業でもあればその可能性はあったかもしれないですけど、春休みですからね」
「まあそうだよね」
バレンタインの思い出にはあまり期待出来ない俺たちだから、人の話を膨らませていくしかないんだよね結局。こういうパターンもありますよって。一応ホワイトデー準備号として西海市内のお菓子屋さんなんかをちょっと紹介する予定はあるんだけどね。バレンタインデーの夜だから、行事を終えた人の方が多いだろうと見てね。
「ああ、そろそろいい時間だね。打ち合わせに入ろうか」
「はーい」
「あ、もうそんな時間か」
「いつも思うけど、このメンバーで集まって話してたら時間一瞬で溶ける。同じ大学の子たちと話しててももーちょっとゆっくりしてると思うんだけど」
「それはそうだね」
end.
++++
9時キャンメンバーは結構みんなあっさりしててこの手のイベントもサラッとくどくならなさそう
ABCのバレンタインと言えば直クン無双とさとちゃんの美味しいのだけど、この代はどんな風だろう
雨竜が結構ガヤガヤしてるんだけど、案外このメンバーの中じゃ平均と言うか、普通の子のポジション。
(phase3)
.