2022(02)
■Place where God dwells
++++
「おはようございます」
「あれっ、野坂先輩! どーしたんすか?」
今年度は1月にも短めの昼放送を食堂で流していて、全体活動があるのならとサークル室にも週1回集まっています。集まる曜日はサークルの神として鎮座するケイトくんの倒れた方向で決定したので誰も異を唱えることはありませんでした。そんなこんなで月曜日の放課後、一応今日がみんなで集まる定期的な活動としては今年度最後になります。
そんな中、野坂先輩がサークル室にやって来ました。4年生の先輩がまさかこのタイミングで来てくれるとは誰も思っていなかったので驚きをもって迎えられます。年明けからも活動をしているということ自体は私とジュンが話していたので先輩の知るところではあったのですが。しかも先輩は徒歩で来られているはずですから、驚きもひとしおです。
「いや、水曜日からテストだろ。最後の最後に神頼みをしておこうと思って」
「ここで何の神頼みなんか――……あっ、もしかしてケイトくんすか!?」
「ケイトくんは今じゃ学業の神としても祀られてるんだろ? 圭斗先輩のお力でどうかこのテスト期間中の安全と心の安寧を保てますようにと」
「テストバッチリやれますよーにとかじゃないんすね」
「それをやるのは俺自身だから神に頼ることじゃない」
「やっぱオールSの人は言うことが違うっすね」
「人の力ではどうしようもないところをケイトくんにお願いしようかと」
そう言って野坂先輩はケイトくんを手に、この部屋のどこがケイトくんの加護を最大限に得られるパワースポットかな、と考えていらっしゃるようです。
「おはようございます」
「おはようございまーす」
「おーす自然班!」
「自然班? 収納班の他にもそんな括りが出来たのか」
「自然班は殿・パロ・ツッツの植物とか木材に強いグループの括りっすね」
「野坂先輩もおはようございます。今日はどうしたんですか?」
「かくしかかくうまな感じで神頼みを」
「だったらちょうどいいですよ。ツッツがうっしーに頼まれて作って来た物があるんです。よね、ツッツ」
「……でも、4年生の先輩に、怒られないかな」
そう言ってツッツはおどおどとした様子で手にした荷物を開くことを渋ります。如何せんうっしーが依頼主であるということがその内容を読みにくくします。うっしーは一応収納班のリーダーということにはなっているので真面目な内容である可能性もあるのですが、うっしーなだけに悪乗りに走っている可能性も無きにしも非ずなのです。
「ツッツの工作と4年がどう関係するんだ?」
「えっと、その……」
「うっしーは趣味で、菜月先輩が撮ってくれていたような、スナップ写真を撮り始めたんです。それで、せっかくだしパワー待ち受け的な感じで神の宿る写真を撮れないか、とケイトくんの写真を撮るための小道具をツッツに作ってくれって頼んでたみたいなんです」
「ほう。それは実に興味深い。ケイトくんの扱い如何ではうっしーを処すことも視野には入るが、パワー待ち受けの発想自体は悪くないんじゃないか? ツッツ、見せて見せて」
「こ、これなんですけど……」
そう言ってツッツが袋の中から取り出したのは、木製の鳥居でした。お札を飾れるようなスペースも作ってあって、神棚にそのまま飾ってあっても違和感がありません。さすがツッツと言えばそうなのですが、思ったよりもしっかりと作られていた鳥居にその場にいたメンバーはみんなおお~と声を上げます。
「ええと……ここの台座に、ケイトくんを、こう……座らせるイメージなんですけど……」
「ほう、これはいいじゃないか」
「よ、よかったです……」
「圭斗先輩に対する一番の過激派が認めたんだからもーこれオッケーだろ。ツッツ、良かったな」
「で、でも……うっしーが何て言うか……」
「ああ、依頼主が何て言うかの問題はあるな」
「い、一応……神社でお清めもしてもらってあるので、ケイトくんを座らせる分には、大丈夫かと……」
「そこまでやってもらってあるなら何も問題ないじゃないか」
木材も極力綺麗な物を選んであるようですし、神社でお清めまでしてもらってあるとはさすがとしか言いようがありません。ツッツのこだわりが宿る鳥居のようです。一応私も鳥居という名字なのでこれが全く気にならないということはないのです。
「おはよーございまーす」
「おはようございます」
「ジュン、うっしー、おはようございます。野坂先輩がいらしてますよ」
「マジすか! おっ! つかツッツ、例のヤツ出来たんか!?」
「で、出来たよ」
「これかー! うっわさっすがツッツ! 完璧やん!」
「良かったー……」
「うっしー、ツッツはこの鳥居をわざわざ神社でお清めまでしてもらったんですよ」
「マジか! ツッツの物づくりへのこだわり、しかと見た!」
「ええと、野坂先輩はどのようなご用件で?」
「テスト前の参拝」
「あっ、俺もご一緒させてもらっていいですか?」
「それで、ケイトくんをどこに鎮座させるか問題というのがあって。どこだったら圭斗先輩のパワーをより多く受けられるかと」
「でしたら、圭斗先輩が現役時代に座っていた席なんかはどうですか?」
「それだ! ジュン、お前天才か!? えーと、そしたら代表席にっと」
ここだという場所を決めれば、あとはケイトくんを座らせるだけです。ケイトくんのご神体は頭の大きなぬいぐるみなのでいつもはコロコロと転がってしまうのですが、ツッツの作ってくれた台座のおかげで比較的早くバランスをとることが出来ます。そして野坂先輩はカバンの中からお供え物としてお茶のペットボトルをその前に置きます。
「神頼みなんか要らんやろって人らがこぞってケイトくんに学業成就的なことを願っとるんが滑稽やわ。撮っとこ」
「野坂先輩は一応テストそのものに対するお参りではないと仰っていましたよ」
「圭斗先輩よか自分の方が成績いいから頼むまでもないみたいなことすか?」
「ちょっ、うっしー!」
「祈るのはテスト期間中の安全と心の安寧だそうですよ」
「あー、そーゆー」
end.
++++
一見するとノサカ何してんっていうヤツ。現役たちの間でもノサカのアレはもう周知だからいいんだろうけど
(phase3)
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「おはようございます」
「あれっ、野坂先輩! どーしたんすか?」
今年度は1月にも短めの昼放送を食堂で流していて、全体活動があるのならとサークル室にも週1回集まっています。集まる曜日はサークルの神として鎮座するケイトくんの倒れた方向で決定したので誰も異を唱えることはありませんでした。そんなこんなで月曜日の放課後、一応今日がみんなで集まる定期的な活動としては今年度最後になります。
そんな中、野坂先輩がサークル室にやって来ました。4年生の先輩がまさかこのタイミングで来てくれるとは誰も思っていなかったので驚きをもって迎えられます。年明けからも活動をしているということ自体は私とジュンが話していたので先輩の知るところではあったのですが。しかも先輩は徒歩で来られているはずですから、驚きもひとしおです。
「いや、水曜日からテストだろ。最後の最後に神頼みをしておこうと思って」
「ここで何の神頼みなんか――……あっ、もしかしてケイトくんすか!?」
「ケイトくんは今じゃ学業の神としても祀られてるんだろ? 圭斗先輩のお力でどうかこのテスト期間中の安全と心の安寧を保てますようにと」
「テストバッチリやれますよーにとかじゃないんすね」
「それをやるのは俺自身だから神に頼ることじゃない」
「やっぱオールSの人は言うことが違うっすね」
「人の力ではどうしようもないところをケイトくんにお願いしようかと」
そう言って野坂先輩はケイトくんを手に、この部屋のどこがケイトくんの加護を最大限に得られるパワースポットかな、と考えていらっしゃるようです。
「おはようございます」
「おはようございまーす」
「おーす自然班!」
「自然班? 収納班の他にもそんな括りが出来たのか」
「自然班は殿・パロ・ツッツの植物とか木材に強いグループの括りっすね」
「野坂先輩もおはようございます。今日はどうしたんですか?」
「かくしかかくうまな感じで神頼みを」
「だったらちょうどいいですよ。ツッツがうっしーに頼まれて作って来た物があるんです。よね、ツッツ」
「……でも、4年生の先輩に、怒られないかな」
そう言ってツッツはおどおどとした様子で手にした荷物を開くことを渋ります。如何せんうっしーが依頼主であるということがその内容を読みにくくします。うっしーは一応収納班のリーダーということにはなっているので真面目な内容である可能性もあるのですが、うっしーなだけに悪乗りに走っている可能性も無きにしも非ずなのです。
「ツッツの工作と4年がどう関係するんだ?」
「えっと、その……」
「うっしーは趣味で、菜月先輩が撮ってくれていたような、スナップ写真を撮り始めたんです。それで、せっかくだしパワー待ち受け的な感じで神の宿る写真を撮れないか、とケイトくんの写真を撮るための小道具をツッツに作ってくれって頼んでたみたいなんです」
「ほう。それは実に興味深い。ケイトくんの扱い如何ではうっしーを処すことも視野には入るが、パワー待ち受けの発想自体は悪くないんじゃないか? ツッツ、見せて見せて」
「こ、これなんですけど……」
そう言ってツッツが袋の中から取り出したのは、木製の鳥居でした。お札を飾れるようなスペースも作ってあって、神棚にそのまま飾ってあっても違和感がありません。さすがツッツと言えばそうなのですが、思ったよりもしっかりと作られていた鳥居にその場にいたメンバーはみんなおお~と声を上げます。
「ええと……ここの台座に、ケイトくんを、こう……座らせるイメージなんですけど……」
「ほう、これはいいじゃないか」
「よ、よかったです……」
「圭斗先輩に対する一番の過激派が認めたんだからもーこれオッケーだろ。ツッツ、良かったな」
「で、でも……うっしーが何て言うか……」
「ああ、依頼主が何て言うかの問題はあるな」
「い、一応……神社でお清めもしてもらってあるので、ケイトくんを座らせる分には、大丈夫かと……」
「そこまでやってもらってあるなら何も問題ないじゃないか」
木材も極力綺麗な物を選んであるようですし、神社でお清めまでしてもらってあるとはさすがとしか言いようがありません。ツッツのこだわりが宿る鳥居のようです。一応私も鳥居という名字なのでこれが全く気にならないということはないのです。
「おはよーございまーす」
「おはようございます」
「ジュン、うっしー、おはようございます。野坂先輩がいらしてますよ」
「マジすか! おっ! つかツッツ、例のヤツ出来たんか!?」
「で、出来たよ」
「これかー! うっわさっすがツッツ! 完璧やん!」
「良かったー……」
「うっしー、ツッツはこの鳥居をわざわざ神社でお清めまでしてもらったんですよ」
「マジか! ツッツの物づくりへのこだわり、しかと見た!」
「ええと、野坂先輩はどのようなご用件で?」
「テスト前の参拝」
「あっ、俺もご一緒させてもらっていいですか?」
「それで、ケイトくんをどこに鎮座させるか問題というのがあって。どこだったら圭斗先輩のパワーをより多く受けられるかと」
「でしたら、圭斗先輩が現役時代に座っていた席なんかはどうですか?」
「それだ! ジュン、お前天才か!? えーと、そしたら代表席にっと」
ここだという場所を決めれば、あとはケイトくんを座らせるだけです。ケイトくんのご神体は頭の大きなぬいぐるみなのでいつもはコロコロと転がってしまうのですが、ツッツの作ってくれた台座のおかげで比較的早くバランスをとることが出来ます。そして野坂先輩はカバンの中からお供え物としてお茶のペットボトルをその前に置きます。
「神頼みなんか要らんやろって人らがこぞってケイトくんに学業成就的なことを願っとるんが滑稽やわ。撮っとこ」
「野坂先輩は一応テストそのものに対するお参りではないと仰っていましたよ」
「圭斗先輩よか自分の方が成績いいから頼むまでもないみたいなことすか?」
「ちょっ、うっしー!」
「祈るのはテスト期間中の安全と心の安寧だそうですよ」
「あー、そーゆー」
end.
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一見するとノサカ何してんっていうヤツ。現役たちの間でもノサカのアレはもう周知だからいいんだろうけど
(phase3)
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